MCSA Windows Server 2016(70-740/70-741/70-742)を勉強中に「試験が廃止される」と知ると、いまの本を続けるべきか迷います。結論として、当該試験はすでにリタイアしており、資格取得が目的なら学習先の更新が現実的です。一方で、学んだ内容は現場の基礎として今も活きます。この記事では、状況整理から後継の考え方、具体的な学習ロードマップまでまとめます。
まず押さえるべき事実:MCSA Windows Server 2016(70-740/70-741/70-742)は既にリタイア
Microsoft は、従来の MCSA/MCSE/MCSD と、それらに紐づく多くの試験をリタイアし、役割(ロール)ベースの認定資格へ軸足を移しました。Windows Server 2016 の MCSA で必須だった 70-740 / 70-741 / 70-742 も、このリタイア対象の一覧に含まれ、最終的に 2021年1月31日 をもって受験できなくなっています。
そのため「今の本で勉強して、試験に合格して MCSA を取る」というルートは、現在は成立しません。すでに取得済みの人の実績が消えるわけではありませんが、“今から新規に取得する”ことはできない状態です。
なぜ廃止されたのか:クラウド/ハイブリッド中心の「役割ベース」に集約された
廃止の背景には、製品単体(例:Windows Server 2016)を深掘りするよりも、現場で求められる役割(管理者、アーキテクト、セキュリティ担当など)を軸にスキルを証明する流れが強まったことがあります。Microsoft は “残っている MCSA/MCSE/MCSD 関連試験を 2021年1月31日にリタイアする” と明記し、同時に新しい認定資格を拡充していく方針を示しました。
つまり、Windows Server が不要になったというよりも「Windows Server を含むインフラ運用が、Azure や Microsoft Entra を含むハイブリッド前提で語られることが増えた」ことがポイントです。資格の構造が変わっただけで、AD DS / DNS / DHCP / Hyper-V などの基礎が消えたわけではありません。
| 時期 | 起きたこと(公式情報ベース) | 学習者の行動の目安 |
|---|---|---|
| 2020年〜2021年 | MCSA/MCSE/MCSD と関連試験を順次リタイアし、最終的に 2021年1月31日 で完了 | 「旧資格を取り切る」か「役割ベースへ転換」かを早めに判断 |
| 現在 | 70-740/741/742 は受験不可(新規に MCSA Windows Server 2016 を取るルートはなし) | 資格目的なら現行の認定(例:Windows Server Hybrid Administrator など)へ移行 |
| 今後 | 現行資格は試験範囲や更新日が変わることがある(例:英語版の更新予定や既存試験の更新) | 学習開始前に必ず “Study guide(技能範囲)” を確認し、更新点を吸収 |
勉強を続けるべきかは「目的」で決まる:やめる/続けるの判断軸
迷いが出るのは、「試験に合格するための勉強」と「現場で役立つ知識を積む勉強」が混ざってしまうからです。まずは目的を3つに分解すると判断が一気に楽になります。
- 目的A:資格(バッジ)が最優先…転職・昇進で“今通用する認定資格名”が必要
- 目的B:現場スキルが最優先…AD DS、DNS、GPO、Hyper-V などの運用を確実にしたい
- 目的C:どちらも欲しい…日々の運用に直結しつつ、履歴書にも載る形で整理したい
この3つのどれに近いかで、同じ「Windows Server 2016 の本」を読む意味合いが変わります。
| あなたの状況 | おすすめ方針 | 理由 |
|---|---|---|
| 資格が最優先(目的A) | 旧MCSA本は“基礎の補助”に格下げし、現行資格の試験範囲へ切り替える | 旧試験は受験できないため、合格に直結しない学習時間が増えやすい |
| 現場スキルが最優先(目的B) | 旧MCSA本は続行しつつ、運用現場で使う機能をハンズオンで固める | AD DS / DNS / DHCP / Hyper-V などは今も管理の基礎。新資格にも登場する |
| 両方欲しい(目的C) | 旧MCSA本で基礎→Windows Server Hybrid 系で資格に接続する | 基礎は流用しつつ、最新の“ハイブリッド運用”を追加で学べる |
“後継”として最も近いのはこれ:Windows Server Hybrid Administrator Associate(AZ-800 / AZ-801)
MCSA Windows Server 2016 と完全に同等の後継が用意されたわけではありません。しかし、Windows Server 管理者が次に目指しやすい資格として、Microsoft Certified: Windows Server Hybrid Administrator Associate が用意されています。Windows Server をオンプレミスだけでなく、Azure と組み合わせたハイブリッド環境として管理するロールが前提です。
この資格は AZ-800 と AZ-801 の2試験で構成され、Windows Admin Center、PowerShell、Azure Arc、Azure Monitor、Azure Update Manager、Defender 系など、現代の運用で出てきやすい要素も含まれています。
AZ-800 は「AD DS/ハイブリッド管理/仮想化とコンテナ/ネットワーク/ストレージとファイル」など基礎領域を幅広く扱い、AZ-801 は「セキュリティ、可用性、災害復旧、移行、監視・トラブルシュート」など運用の“上流〜横断”を強化するイメージです。
| 旧MCSA(例) | 学んでいたテーマ | 今つながりやすい学習先(例) |
|---|---|---|
| 70-740 | インストール、記憶域、Hyper-V、基本的な高可用性など | AZ-800 の「仮想マシン/Hyper-V」「ストレージとファイル」、AZ-801 の「高可用性」 |
| 70-741 | DNS/DHCP、IPAM、VPN/リモートアクセス、ネットワーク基礎 | AZ-800 の「名前解決(DNS)」「IP アドレッシング(DHCP/IPAM)」「ハイブリッド接続」 |
| 70-742 | AD DS、GPO、証明書、フェデレーション、アクセス制御 | AZ-800 の「AD DS(オンプレ/クラウド)」「ハイブリッドID(Microsoft Entra 連携)」「Group Policy」 |
「Windows Server は新制度に含まれない」は半分本当、半分誤解
リタイア直後は、Windows Server “単体”の MCSA のように分かりやすい後継がなく、「Windows Server の資格はもう無いのでは?」という声が出やすい状況でした。実際、MCSA と同じ3試験で完結するルートは復活していません。
一方で現在は、Windows Server を ハイブリッド運用(オンプレ+Azure) の文脈で扱う資格として Windows Server Hybrid Administrator が用意されています。つまり“無くなった”のではなく、“切り口が変わった”と考える方が現実に合います。
なお、最新の認定資格は固定ではありません。Microsoft Learn の 「Browse Credentials」 から、ロール・レベル・製品でフィルタして探すのが最も確実です(情報が更新されたときに追従しやすい)。
Windows Server 管理者が“次に選びやすい”関連資格(ハイブリッド前提)
Windows Server の現場は、ID(認証)、ネットワーク、監視、セキュリティ、移行が絡み合います。そこで「Windows Server Hybrid Administrator」を軸にしつつ、必要に応じて周辺資格を足していくと、学習投資がムダになりにくいです。
| 伸ばしたい領域 | 向いている人 | 候補(例) | つながる実務 |
|---|---|---|---|
| クラウド運用の土台 | Azure の基本を固めて、運用自動化や設計の会話に入れるようにしたい | Azure Administrator Associate(AZ-104) | VM/ネットワーク/ストレージ/ID など Azure の日常運用 |
| 設計・アーキテクト寄り | 要件から構成を組み立て、可用性やBCPを設計したい | Azure Solutions Architect Expert(AZ-305) | 設計レビュー、ガバナンス、監視設計、DR設計 |
| IDとアクセス管理 | Entra(旧Azure AD)周りを“専門”として強化したい | Identity and Access Administrator Associate(SC-300) | 認証方式、条件付きアクセス、IDガバナンス |
どれを優先するかは、あなたの職務(オンプレ運用中心か、クラウド運用も任されるか、IDがボトルネックか)で決めるのがコツです。資格は“並べる”より、現場での責任範囲に合わせて“狙い撃ち”した方が強いです。
古い本は捨てなくていい:MCSA本を「基礎の辞書」として再利用する方法
MCSA Windows Server 2016 向けの書籍は、試験対策としては役目を終えていますが、内容そのものは運用の土台です。特に次の分野は、現行の Windows Server Hybrid 系の学習にも直結します。
- AD DS(ドメイン、OU設計、ドメインコントローラー、レプリケーション)
- DNS(ゾーン、転送、条件付き転送、名前解決のトラブルシュート)
- DHCP(スコープ、予約、オプション、可用性)
- GPO(設計と運用、委任、トラブルシュート)
- Hyper-V(仮想スイッチ、VHDX、HA、運用)
- ファイルサーバー(共有、アクセス制御、FSRM、DFS)
一方で、現行の資格・現場で求められやすいのは、ここに“ハイブリッド運用の追加パーツ”を載せることです。AZ-800 の学習範囲には、Azure Arc を使ったサーバー管理、Azure Update Manager での更新管理、Entra とのハイブリッドID、Azure Files / File Sync なども含まれます。
おすすめ学習ロードマップ:基礎→ハイブリッド→運用の順で積み上げる
資格と実務を両立させるなら、「基礎をやり直してから新要素に入る」のではなく、基礎を押さえながら新要素を“結合”させるのが近道です。以下は一例ですが、学習が迷子になりにくい順番です。
| フェーズ | 狙い | やること(例) | 成果物(アウトプット) |
|---|---|---|---|
| フェーズ1:コア基礎 | 運用で詰まりやすい所を潰す | AD DS / DNS / DHCP / GPO のセットアップと障害切り分け | 手順書(自分用)+トラブル時のチェックリスト |
| フェーズ2:仮想化とストレージ | 検証環境を自走できるようにする | Hyper-V、VHDX、仮想スイッチ、共有/権限設計、DFS/FSRM | 小規模ラボ(ドメイン+メンバーサーバー+共有) |
| フェーズ3:ハイブリッド接続 | “後継資格”の核を作る | Azure Arc/更新管理/監視、ハイブリッドID(Entra 連携)を理解 | オンプレ資産をクラウド側から可視化できる状態 |
| フェーズ4:運用横断 | 事故を減らす力を付ける | セキュリティ、可用性、DR、移行、監視・トラブルシュートを体系化 | 運用設計メモ(ログ/監視/バックアップ/更新の方針) |
AZ-800/801 は “どれか1機能だけ詳しい”より、運用の流れを横断して説明できるかが効きます。特に AZ-801 は、セキュリティ、可用性、災害復旧、移行、監視・トラブルシュートが主要トピックとして示されています。
要注意:新しい認定資格は「更新」が前提になりやすい
旧MCSA系は、取得後に“更新試験で延命する”というより、実績としてトランスクリプトに残る運用でした。一方、近年のロールベース認定は、有効期限と更新がセットで設計されています。
Microsoft のポリシーでは、ロールベース(Associate/Expert)および Specialty の認定資格は、取得要件を満たした日から 1年間 有効とされています。Fundamentals は更新対象ではなく、Applied Skills は失効しない、といった区分もあります。
| 区分 | 有効期限 | 現場での扱いのイメージ |
|---|---|---|
| Role-based(Associate/Expert) | 1年 | 継続学習の証明。更新を含めて“現行スキル”を示しやすい |
| Specialty | 1年 | 特定領域の専門性を短サイクルで追従 |
| Fundamentals | 失効なし(更新対象外) | 入門の位置付け。次の資格の足場にしやすい |
| Applied Skills | 失効なし | ラボベースで“できる”を示す。実務寄りの証明として補助に使える |
「更新が面倒」と感じる場合でも、裏を返せば 学習の継続が評価される仕組みです。転職や社内評価で“いま通用する”を見せたい人ほど、ロールベース資格の更新設計は相性が良いです。
公式情報の確認手順:迷ったら「Browse」と「Support」に集約する
認定資格や試験は、名称変更・範囲更新・提供言語の追加などが起きやすい分野です。ブログやSNSの断片情報に振り回されないために、確認場所を固定しましょう。
- 現行の認定資格を探す:Microsoft Learn の「Browse Credentials」でロールやレベルから絞り込む
- 試験の申込み手順:認定資格ページから対象試験へ進み、「Schedule exam」から試験提供会社へ
- 個別のトラブルや例外対応:Credentials Support(試験・認定専用サポート)へ
特に「受験期限」「更新」「アカウント統合」などの個別事情は、一般フォーラムでは回答が限定されがちです。Microsoft Learn 側のサポート案内に沿って、試験・認定専用の窓口へ寄せた方が早く解決します。
よくある質問
いまから 70-740 / 70-741 / 70-742 を受験できますか?
できません。Microsoft の公式告知では、MCSA/MCSE/MCSD に関連する残りの試験は 2021年1月31日 にリタイアするとされ、70-740/741/742 もリタイア対象として明記されています。
すでに MCSA Windows Server 2016 を持っている場合、無効になりますか?
“失効してゼロになる”という扱いではなく、認定実績はトランスクリプトに残る旨が案内されています。ただし表示区分(Active/Inactive など)は変更され得るため、最新の表示は Microsoft Learn のダッシュボードで確認してください。
AZ-800 / AZ-801 の出題範囲はどこで確認すべきですか?
試験ページからリンクされている Study guide(技能範囲)を一次情報として扱うのが安全です。たとえば AZ-800 では AD DS、ハイブリッドID(Entra 連携)、DNS/DHCP、Hyper-V、ストレージとファイルなどが “Skills at a glance” として整理されています。
試験範囲は変わりますか?古い教材だと危ない?
変わります。たとえば AZ-801 のページには、英語版が 2025年10月6日 に更新された旨が記載されています。また Windows Server Hybrid Administrator の認定ページには、英語版認定が 2026年1月21日 に更新予定という注意書きもあります。学習開始前に必ず更新情報を確認し、古い教材は“基礎用”として割り切るのが安心です。
旧MCSA本をやり切ってから移行した方がいいですか?
資格が目的なら、やり切ること自体がゴールになってしまい、移行が遅れがちです。おすすめは「章ごとに目的を決める」やり方です。たとえば AD DS/DNS/DHCP/GPO は精読し、試験のためだけに覚える細かな数値やコマンド暗記は深追いしない、といった取捨選択をすると、学習が前に進みます。
まとめ:Windows Server 2016 の学習は“価値がある”。ただし資格ルートは更新しよう
MCSA Windows Server 2016(70-740/741/742)はすでにリタイアしているため、資格取得そのものを目的にするなら学習の主戦場を切り替えるのが正解です。一方で、あなたが今読んでいる本の中核(AD DS/DNS/DHCP/Hyper-V など)は、現場でも、そして Windows Server Hybrid Administrator(AZ-800/801)でも土台になります。
迷ったら、(1) 目的を切り分ける → (2) 現行の試験範囲を Study guide で確認する → (3) ラボで“運用の流れ”として再現する、の順で進めてください。資格は通過点ですが、通過点の選び方を間違えなければ、学習の積み上げは確実に資産になります。

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