長年稼働していたDell PowerEdge R730(Windows Server 2012 R2/RAID 5)が、ディスク差し替え後に「No boot device available」で起動不能になった場合は、OSが壊れたとは限りません。本記事ではPERC/BIOS(UEFI)の起動設定を正しいRAID仮想ディスクへ戻す手順を、確認ポイント付きで解説します。
症状の整理:「No boot device available」が示す“故障範囲”
PowerEdge R730 の起動直後に No boot device available(起動デバイスが見つかりません) と表示される場合、Windows が起動する前段階(BIOS/UEFI がブートローダーを探す段階)で止まっています。つまり「Windows が壊れた」よりも先に、サーバーが“どのデバイスから起動するか”を見失っている可能性が高い状態です。
今回のように、既存の RAID 5 を長年運用していたところへ、検証や一時的な復旧目的で別の新ディスクを入れて OS をインストールし、その後で元の RAID 5 ディスクを同じスロット位置に戻したケースでは、起動順(Boot Sequence)や RAID 仮想ディスク(Virtual Disk: VD)の扱いが切り替わってしまうことがよくあります。ハードディスク自体が壊れていなくても起動できなくなるため、慌てて初期化操作をしないことが重要です。
| 画面に出る代表的な症状 | 起きている場所(層) | 優先して見るべきポイント |
|---|---|---|
| No boot device available / No bootable devices found | BIOS/UEFI(OSの前) | Boot Sequence、UEFIのブートエントリ、PERCのVDがBoot対象になっているか |
| Windowsロゴが出るが再起動を繰り返す | Windows Boot Manager〜OS起動 | BCD(ブート構成)、システム予約領域/EFI領域、回復環境でのスタートアップ修復 |
| INACCESSIBLE_BOOT_DEVICE(0x7B など) | OS起動中(ストレージドライバ) | コントローラー設定変更(RAID/AHCI切替等)、ストレージドライバ、更新適用直後の差分 |
なぜ「元の RAID 5 ディスクを戻したのに」起動しないのか
RAID 5 を構成していたディスクを同じスロットへ戻しても、次のような理由で「起動先」として見つからなくなることがあります。ここを理解しておくと、復旧作業の迷いが減ります。
- 起動順(Boot Sequence)が“新ディスクに入れたOS”側へ書き換わった
OS インストール時、UEFI のブートエントリ(Windows Boot Manager)が新しく登録され、既存のエントリより優先されることがあります。元の RAID を戻しても、BIOS/UEFI が別のエントリを見にいってしまうと「起動デバイスなし」になります。 - PERC が元の RAID 構成を Foreign(外部構成)扱いにした
RAID ディスクを一度抜いた状態で別構成が存在したため、元のディスクを戻したときに「外から持ち込まれた構成」とみなされ、Import(取り込み)しないと VD として扱われない場合があります。 - VD が見えていても “Bootable” になっていない
コントローラーや設定によっては、複数 VD があると起動対象を明示しない限り、BIOS/UEFI が正しい VD をブート対象として扱いません。 - UEFI/Legacy(BIOS)モードの不一致
元の Windows が UEFI で入っていたのに、作業中に Legacy に切り替えてしまう(またはその逆)と、ブートエントリの見え方が変わり「起動デバイスなし」に見えます。
作業前の注意(PACSサーバー運用では必須)
PACS サーバーのように業務影響が大きい機器では、「とりあえず触ってみる」が最悪の結果になりがちです。特に RAID コントローラー画面では、押し間違いがデータ消失に直結します。以下を押さえてから進めてください。
| 必ずやること | 理由 | おすすめのやり方 |
|---|---|---|
| 現状の画面を記録する | 復旧できない場合に戻れない/支援依頼時に情報が必要 | スマホで BIOS/UEFI、PERC の画面を撮影(VD名、状態、Boot設定が分かるように) |
| 不要な起動メディアを外す | USBやDVDが優先されると誤診しやすい | USBメモリ、外付けストレージ、ISOマウント(iDRAC)を外してから起動 |
| 「初期化」「Clear」「Create」を慎重に扱う | RAIDメタデータ破壊=復旧難易度が跳ね上がる | Foreign は基本 Import を検討。意味が分からない操作は実行しない |
特に次の操作は、状況を悪化させやすい代表例です。
| 避けたい操作 | なぜ危険か | 代替(まずやること) |
|---|---|---|
| Foreign Configuration の Clear | 元の RAID 構成情報を消し、VD が組めなくなることがある | まずは View / Import を検討し、VD が復活するか確認 |
| Virtual Disk の Initialize(Fast/Full) | 書き込みが走り、データ領域の整合性が崩れる | VD の状態が Optimal/Degraded か、Foreign かを正しく判断 |
| 既存ディスクで新しい VD を Create | RAIDメタデータ上書きのリスク | 「既存 RAID を復旧させる」が目的なら作成しない |
iDRAC が使えるなら、先に“見える化”して判断を早める
現地でキーボード・モニター操作が難しい、あるいは夜間対応で作業を急ぎたい場合、iDRAC(リモート管理)が使える環境だと切り分けが一気に楽になります。特に「ディスクは生きているのか」「PERC がどう見えているのか」を先に把握できると、不要な操作を減らせます。
| iDRACで見られる情報 | 分かること | 今回のトラブルでの使いどころ |
|---|---|---|
| ストレージ/物理ディスク/仮想ディスクの状態 | Degraded、Foreign、予兆(Predictive failure)など | 「RAIDが崩れているのか」「起動設定の問題なのか」を早期に切り分け |
| System Event Log(SEL) | ディスク抜き差しやコントローラー関連のイベント | いつ何が起きたかの裏取り(作業履歴の再確認にも有効) |
| Virtual Console / 画面キャプチャ | BIOS/UEFI・PERC画面の確認 | 現状記録を残しながら安全に操作できる(支援依頼時にも強い) |
ただし、iDRAC の仮想メディア(ISO マウント)が有効なままだと、意図せずそちらを優先して起動し、症状を複雑に見せることがあります。トラブルシュート中は、不要な ISO マウントや USB パススルーを外しておくのが無難です。
結論:原因は“起動設定の切り替わり”が最有力。まずは Dell(BIOS/RAID)側を直す
今回の事例では、提示された Dell の対処手順に沿って起動ディスクの再認識と起動順修正を行うことで、短時間で復旧したとのことです。再インストールや Windows 修復より前に、BIOS/UEFI と PERC の「どこから起動するか」を元に戻すのが最短ルートになります。
復旧手順:PowerEdge R730 で “起動対象の RAID 仮想ディスク” を戻す
以下は「No boot device available」からの復旧で、現場で再現性が高い流れです。画面表記は PERC の型番(例:H730/H730P など)や UEFI/Legacy で多少異なりますが、考え方は共通です。
まずは一回だけ正しく起動できるか(One-time Boot)で確認する
恒久設定をいじる前に、「一時的な起動メニュー」で正しい起動先が選べるかを見ると、原因が起動順の問題かどうかを短時間で判断できます。
- 起動時に表示される案内に従い、One-time Boot Menu(例:F11)を開きます。
- UEFI 環境なら Windows Boot Manager(または PERC/RAID を示す項目)を選んで起動を試します。
- ここで起動できるなら、恒久設定(Boot Sequence)を直せば解決できる可能性が高いです。
UEFI/Legacy(BIOS)モードを確認する
元の OS がどちらでインストールされていたかと、現在の Boot Mode が一致していないと、起動デバイスが「無い」ように見えることがあります。
| 項目 | UEFI | Legacy(BIOS) |
|---|---|---|
| 起動先の表示 | Windows Boot Manager など“ブートエントリ”中心 | HDD/RAID/NIC など“デバイス”中心 |
| 今回の罠 | 新ディスクで OS を入れると Boot Manager が差し替わる | ディスク優先度(Hard Drive Sequence)が変わる |
| 判断のヒント | 起動先に「Windows Boot Manager」が見えるならUEFIの可能性大 | 起動先が「Hard Drive」「CD/DVD」「NIC」中心ならLegacyの可能性 |
System Setup(例:F2)に入り、System BIOS → Boot Settings 配下の Boot Mode を確認します。元の構成が分からない場合は、まず現状を記録してから、起動できていた時期の設定(運用記録や写真)と突き合わせるのが安全です。
Boot Sequence(起動順)を“PERC配下のVD”へ戻す
ここが最も多い原因です。新ディスクへ OS を入れた時点で、ブートの優先順位が新しいエントリへ切り替わっていることがあります。
- System Setup(F2)へ入り、Boot Settings → UEFI Boot Sequence(または Legacy Boot Sequence) を開きます。
- UEFI の場合は、Windows Boot Manager の参照先が “PERC/RAID の仮想ディスク” になっている項目を上位へ移動します(同名が複数ある場合は要注意)。
- Legacy の場合は、Hard Drive Sequence や Boot Sequence で PERC/RAID が最優先になっているか確認します。
- 設定を保存して再起動します。
ポイントは「RAID 5 の物理ディスクを戻した」だけではなく、“RAID仮想ディスク(VD)を起動対象として認識させ、かつ最優先にする”ことです。
PERC(RAIDコントローラー)で VD の状態を確認する
Boot Sequence を直しても起動先が見当たらない場合、RAID コントローラー側が VD を正しく扱えていない可能性があります。PERC の設定画面は、起動時の案内に従って入る方法(例:Ctrl+R)と、UEFI では System Setup 内の Device Settings から入る方法があります。
- PERC の画面で Virtual Disks を開き、元の RAID 5 が VD として見えているか確認します。
- ステータスが Optimal(または Degraded でも一旦認識されている)なら、次に Bootable 設定を確認します。
- 「Foreign configuration present」などの表示がある場合は、Foreign を View して内容が元の構成に一致するか確認し、問題なければ Import を検討します。
| PERCでの表示例 | 意味 | 最初に取る行動 |
|---|---|---|
| Virtual Disk: Optimal | VDとして正常に成立 | Boot Sequence / Bootable 設定を重点確認 |
| Virtual Disk: Degraded | 冗長性が落ちている(ディスク欠損等) | 起動優先の上で、復旧後にリビルド計画。作業中の電源断は避ける |
| Foreign configuration present | コントローラーが“外部の構成”として検知 | Clearは最後。まず View →一致確認→ Import |
| VDが存在しない/物理ディスクがUnconfigured | 構成情報が認識されていない可能性 | 差し戻し順・スロット・ケーブルを再確認。安易にCreateしない |
VD を Bootable(起動対象)に設定する
VD が見えていても、起動対象に指定されていないと BIOS/UEFI がブートデバイスとして扱わないことがあります。PERC のメニュー内に「Set Bootable」「Make Bootable」「Boot VD」などに類する項目がある場合は、OS が入っている VD(通常は VD0)を Bootable にします。
複数 VD がある環境(OS用とデータ用を分けている等)では、誤ってデータ用 VD を Bootable にしないよう注意してください。VD 名称、サイズ、作成日時(表示される場合)から OS VD を推定します。
UEFI で Windows Boot Manager が消えている/参照先が違うとき
UEFI 構成では、ブートエントリが「Windows Boot Manager」として登録されます。しかし新ディスクに OS を入れた影響で、Windows Boot Manager の参照先が新ディスク側へ向いたままになっていると、元の RAID を戻しても起動に失敗します。
- Boot Sequence に「Windows Boot Manager」が複数ある場合は、PERC/RAID を示す方を優先します。
- Boot Sequence 自体に該当項目が無い場合は、BIOS/UEFI の「Add Boot Option」機能で、EFI領域内のブートローダー(例:
\\EFI\\Microsoft\\Boot\\bootmgfw.efi)を手動登録できることがあります。
手動登録は有効ですが、ディスクの見え方(EFI領域の割り当て)を誤ると混乱しやすい作業です。PERC と Boot Sequence を整えても解決しない場合の「次の一手」として位置付け、実施前に現状画面の記録を残してください。
それでも起動しないときの切り分け(ハード設定が正しい前提)
Boot Sequence と PERC 側が正しいのに起動しない場合、次は「ブートローダー/Windows 側の問題」を疑います。ここから先は、表示が「No boot device available」から変化することも多く、症状に応じて手を打ちます。
| 状況 | 見え方 | 次のアクション例 |
|---|---|---|
| 起動デバイスは認識したがOSが上がらない | Windowsロゴ→修復→再起動 | インストールメディア/回復ドライブで「スタートアップ修復」 |
| ブート領域(BCD/EFI)が壊れている | Bootmgr is missing など | 回復環境で bcdboot や bootrec を検討 |
| ストレージドライバ問題(0x7Bなど) | 青画面:INACCESSIBLE_BOOT_DEVICE | コントローラー設定差分、ドライバ、更新履歴の確認 |
Windows Server 2012 R2 の回復環境でできる代表的な修復
あくまで「PERC と Boot Sequence が正しい」「VD が見えている」前提で、Windows 側の修復を行います。PACS サーバーの運用では、作業前にバックアップ取得や停止手順の確認が望ましい点は変わりません。
- インストールメディア(DVD/ISO)から起動し、「コンピューターを修復する」→「トラブルシューティング」→「スタートアップ修復」を試す
- コマンドプロンプトで BCD を再構築する(実行前にディスク/パーティションを誤認していないか要確認)
コマンド例(環境により異なるため、実行する場合は十分に確認してください)。
bootrec /scanos
bootrec /rebuildbcd
bcdboot C:\Windows /l ja-JP
UEFI 環境では EFI システムパーティションへの割り当てが必要になる場合があります。手順の誤りが長期化につながるため、ここまで来たら「Dell 側で起動できる状態か」「OSの修復でやるべきか」を切り分け、必要に応じて保守契約・専門業者の支援も検討してください。
復旧後にやっておきたい再発防止(“同じ事故”を繰り返さない)
今回のトラブルは、ディスクを差し替えて OS を入れたことで、起動対象の参照が書き換わったことが根本です。復旧したら、次のような「運用の型」を作っておくと再発が激減します。
- ディスク差し替え時は One-time Boot を優先し、恒久の Boot Sequence を不用意に変えない
- OS 用 VD とデータ用 VD がある場合は、VD 名称に用途を入れる(例:OS_RAID5、DATA_RAID5)
- 保守作業前に、BIOS/UEFI の Boot 設定・PERC の VD 情報をスクリーンショットとして残す
- 不要なブートデバイス(PXE/NIC起動など)を無効化または優先度を下げ、起動の迷子を防ぐ
- 交換・増設の履歴(いつ、どのスロットに、何を入れたか)を台帳化する
| 再発防止項目 | 狙い | 具体策 |
|---|---|---|
| 起動順の固定 | “新ディスクに引っ張られる”事故を防ぐ | Boot Sequence で PERC/Windows Boot Manager を最上位、PXE を下位へ |
| 構成情報の見える化 | 緊急時の判断速度を上げる | VD一覧(RAIDレベル、容量、ディスク本数、スロット)を運用資料に保存 |
| 保守手順の標準化 | 人が変わっても同じ品質で作業 | 「追加OSは別サーバーで検証」「本番はOne-time Bootのみ」などルール化 |
| 障害時の判断基準 | “触りすぎ”による二次障害を防ぐ | ForeignはImport優先、Clear/Initializeは承認制などにする |
現場向けチェックリスト(R730/Windows Server 2012 R2/RAID 5)
最後に、今回のパターンで役立つ「見る場所」を一枚にまとめます。障害対応のたびに検索する手間が減り、復旧が早くなります。
| チェック項目 | 見る場所 | OKの目安 | NGなら次にすること |
|---|---|---|---|
| 不要な起動メディアが刺さっていないか | 物理/仮想メディア | USB/DVD/ISOなし | 外して再起動 |
| Boot Mode(UEFI/Legacy)が想定通りか | System Setup(F2) | 以前と同じモード | 記録を取り、運用時のモードに合わせる |
| 起動順がPERC/Windows Boot Manager優先か | Boot Sequence | RAID(VD)が最上位 | 順番を入れ替え、保存して再起動 |
| VD が認識されているか | PERC(Device Settings/Ctrl+R等) | VDが存在し、状態がOptimal/Degraded | Foreign有無を確認し、必要ならImport |
| Foreign 構成が出ていないか | PERC | Foreignなし | Viewで一致確認→Import。Clearは慎重に |
| Bootable VD が正しく設定されているか | PERC | OS VD が Bootable | Set Bootable を実施 |
| 起動が進むがWindowsで止まるか | 起動ログ/画面 | Windowsが通常起動 | 回復環境でスタートアップ修復を検討 |
よくある質問
Foreign が出たとき、Import と Clear はどちらが正解?
目的が「元の RAID 5 を復旧して起動したい」であれば、基本は Import を検討します。Clear は構成情報を捨てる方向の操作になりやすく、状況によっては復旧の選択肢を狭めます。少なくとも、View(内容確認)なしの Clear は避けるのが安全です。
VD が Optimal なのに「No boot device available」が出る
この場合は起動順(Boot Sequence)とBootable VD、そして UEFI ならWindows Boot Manager の参照先が主原因になりがちです。PERC が正常でも、BIOS/UEFI が別のデバイスを見に行っていれば起動しません。
新ディスクに入れた OS は残したままでも良い?
残しても運用はできますが、今回のように起動順が揺れる要因になります。緊急時の混乱を避けるなら、本番復旧後は「検証用ディスクは抜く」「Boot Sequence で完全に下位へ落とす」「One-time Boot だけで使う」など、ルールを決めておくと安全です。
まとめ
Dell PowerEdge R730(Windows Server 2012 R2 / RAID 5)で「No boot device available」が出た場合、まず疑うべきは RAID コントローラー(PERC)と BIOS/UEFI の起動設定です。特に「一度別ディスクで OS を入れた」「元の RAID ディスクを戻した」という履歴があるなら、Boot Sequence と Foreign/Bootable の見直しで短時間に復旧できることがあります。
逆に、焦って Initialize や Create などの操作に進むと、復旧が難しくなることがあります。PACS サーバーのように停止が許されない機器ほど、“まず起動対象の再認識”→“次にWindows修復”の順で、確実に切り分けていくのが安全です。

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