Windows Server 2022 への移行や追加導入に合わせて RDS ユーザー CAL 2022 を買ったのに、「RD ライセンス マネージャー(Windows Server 2019)」でインストールしようとしても Windows Server 2022 の選択肢が出てこない──この状態は設定ミスではなく仕様です。本記事では、その理由と正しいライセンス設計、具体的な解決手順、将来の Server 2025 まで見据えた設計のポイントを詳しく解説します。
Windows Server 2019 の RD ライセンス サーバーに RDS ユーザー CAL 2022 が入らない理由
まずは、よくある現場の状況を整理します。
| 項目 | バージョン | 状態 |
|---|---|---|
| RD ライセンス サーバー OS | Windows Server 2019 | 既存環境で稼働中 |
| RD ライセンス マネージャー | 2019(OS と同じ) | 「ライセンスのインストール」ウィザード使用 |
| 購入した RDS CAL | RDS ユーザー CAL 2022 | ライセンス証書・プロダクトキーは手元にある |
| RD セッション ホスト | Windows Server 2022 | ユーザーを 2022 に集約したい |
この状態でライセンスのインストール ウィザードを開いても、Windows Server のバージョンとして「2022」が選べません。ここで多くの管理者が「2019 の画面から 2022 を選べるはず」と考えてしまいますが、実は 「選べないことが正しい挙動」 です。
その理由は、Remote Desktop Services(RDS)ライセンスの互換性ルールにあります。
基本ルール:ライセンス サーバー ≥ RDS CAL ≥ RD セッション ホスト
RDS ライセンスには次のようなバージョン互換の原則があります。Microsoft の公式ドキュメントや各種ガイドでも同様のルールが示されています。
- ライセンス サーバーのバージョン は、扱える RDS CAL のバージョン以上 である必要がある
- RDS CAL のバージョン は、アクセスする RD セッション ホストのバージョン以上 である必要がある
- まとめると:ライセンス サーバーのバージョン ≥ RDS CAL のバージョン ≥ RD セッション ホストのバージョン
これをもう少し具体的に表にすると次のようになります。
RD ライセンス サーバーと RDS CAL の互換性
| RD ライセンス サーバー | RDS CAL 2016 | RDS CAL 2019 | RDS CAL 2022 | RDS CAL 2025 |
|---|---|---|---|---|
| Windows Server 2016 | 〇 | × | × | × |
| Windows Server 2019 | 〇 | 〇 | × | × |
| Windows Server 2022 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
| Windows Server 2025 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
この表から分かる通り、Windows Server 2019 の RD ライセンス サーバーは、RDS CAL 2022 を扱えません。そのため、ウィザードに「Windows Server 2022」が表示されないのは仕様です。
RD セッション ホストと RDS CAL の互換性
次に、RD セッション ホスト側との互換性です。
| RD セッション ホスト | RDS CAL 2016 | RDS CAL 2019 | RDS CAL 2022 | RDS CAL 2025 |
|---|---|---|---|---|
| Windows Server 2016 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| Windows Server 2019 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
| Windows Server 2022 | × | × | 〇 | 〇 |
| Windows Server 2025 | × | × | × | 〇 |
重要なポイントは次の 2 つです。
- 前方互換なし: 古い CAL → 新しいサーバーには使えない(例:2019 CAL で 2022 ホストは NG)
- 後方互換あり: 新しい CAL → 古いサーバーには使える(例:2022 CAL で 2019 ホストは OK)
つまり今回のケースでは、
- 2022 ホストに接続するためには RDS CAL 2022 以上 が必須
- しかし、2019 の RD ライセンス サーバーは RDS CAL 2022 を管理できない
という二重の条件に挟まれている状態です。この矛盾を解消するには、ライセンス サーバーを 2022 以降にする以外の選択肢はありません。
推奨解決策:Windows Server 2022 以降で新しい RD ライセンス サーバーを構築する
最もシンプルで拡張性の高い解決策は、Windows Server 2022 以降を新たに用意し、そのサーバーを RD ライセンス サーバーとして構成する方法です。Microsoft のベストプラクティスでも、RDS インフラ(Connection Broker / Gateway / ライセンス サーバー)はできるだけ最新の Windows Server を使うことが推奨されています。
全体構成イメージ
| 役割 | OS バージョン | ポイント |
|---|---|---|
| RD ライセンス サーバー | Windows Server 2022 | RDS ユーザー CAL 2022 をインストール |
| RD セッション ホスト | Windows Server 2022 | ユーザー接続先。ライセンス サーバーは 2022 に指定 |
| 旧 RD ライセンス サーバー | Windows Server 2019 | 必要に応じて 2019 以前の CAL 管理専用として残す |
手順概要
- Windows Server 2022 以降のマシンを準備
- 「リモート デスクトップ ライセンス」役割を追加
- RD ライセンス サーバーの有効化
- RDS ユーザー CAL 2022 のインストール
- RD セッション ホスト(2022)を新ライセンス サーバーに向ける(GPO)
- RD ライセンス診断ツールでエラーがないか確認
以下で各ステップをもう少し詳しく見ていきます。
1. Windows Server 2022 以降のサーバーを準備
- 物理サーバーでも仮想マシンでも構いません。
- 既に RDS 関連の役割(RD セッション ホストなど)を持っていても動作はしますが、ライセンス サーバー専用サーバーにしておくとトラブルシュートが楽です。
2. RD ライセンス サーバー役割を追加
サーバー マネージャーから役割と機能の追加を実行します。
- 「役割ベースまたは機能ベースのインストール」を選択
- サーバーの選択 → 対象の Windows Server 2022 を指定
- 「サーバーの役割」で「リモート デスクトップ サービス」を展開
- 「リモート デスクトップ ライセンス」 にチェックを入れてインストール
3. RD ライセンス サーバーを有効化(アクティブ化)
インストール後、「リモート デスクトップ ライセンス マネージャー」 を開き、サーバー名を右クリックして「サーバーのアクティブ化」を実行します。
- 接続方法:インターネット / Web ブラウザー / 電話 から選択
- ボリューム ライセンスの場合は、Microsoft ボリューム ライセンス サービス センターの情報を手元に用意
4. RDS ユーザー CAL 2022 を新サーバーにインストール
アクティブ化が完了したら、同じく RD ライセンス マネージャーから 「ライセンスのインストール」 を実行します。
- プログラムの種類:ボリューム ライセンス / リテール / OEM など、購入形態に合わせて選択
- ライセンスの種類:「Windows Server 2022」 の「RDS Per User CAL」を選択
- プロダクトキー / 証書番号を入力してインストール
ここで初めて「Windows Server 2022」が選択できるようになります。2019 のライセンス サーバーではこの選択肢自体が出てこないため、インストールができません。
5. RD セッション ホスト(2022)を新ライセンス サーバーに向ける
RD セッション ホストとなる Windows Server 2022 には、GPO(グループ ポリシー)でライセンス サーバーとライセンス モードを指定します。
ドメイン環境であれば、グループ ポリシー管理コンソールから次のパスを開きます。
- コンピューターの構成 → 管理用テンプレート → Windows コンポーネント → リモート デスクトップ サービス → リモート デスクトップ セッション ホスト → ライセンス
ここで以下の 2 つのポリシーを設定します。
| ポリシー名 | 設定内容 |
|---|---|
| リモート デスクトップ ライセンス サーバーを指定する | 有効にして、新 RD ライセンス サーバーの FQDN(例: rdlic-2022.contoso.local)を指定 |
| リモート デスクトップ ライセンス モードの設定 | 「ユーザーごと」 を選択 |
ポリシー適用後、gpupdate /force またはサーバー再起動で反映させます。
6. RD ライセンス診断で確認
最後に、RD セッション ホスト(2022)のサーバー マネージャーから 「RD ライセンス診断ツール」 を開き、次の点を確認します。
- 「ライセンス サーバーは指定されていますか?」⇒ 新サーバー名が表示されている
- 「ライセンス モードは正しく構成されていますか?」⇒ 「ユーザーごと」になっている
- 「利用可能な RDS ライセンスはありますか?」⇒ CAL の数が表示され、警告やエラーが出ていない
PowerShell から状態を確認したい場合は、次のようなコマンドが利用できます。
Get-CimInstance -Namespace root\cimv2\TerminalServices -ClassName Win32_TSLicenseServer
Get-CimInstance -Namespace root\cimv2\TerminalServices -ClassName Win32_TSLicenseKeyPack
これで、2022 ホストに接続するユーザーを RDS ユーザー CAL 2022 で正しくライセンスする構成が整います。
代替案:既存の Windows Server 2019 を 2022 にインプレースアップグレードする
新サーバーを増設したくない場合、既存の 2019 サーバーを Windows Server 2022 にインプレースアップグレードしてから RDS CAL 2022 を入れるという選択肢もあります。
ただし、次の点に注意が必要です。
- アップグレード中はライセンス サーバーが一時停止する(RDS 接続に影響する可能性があります)。
- 事前に システム状態バックアップ を取得しておくことが必須です。
- 古い CAL を引き継ぐ場合、ライセンスの再インストールや再認証が必要になるケースがあります。
新サーバーを用意できるのであれば、インプレースアップグレードよりも 新規構築+切り替え の方が安全かつロールバックもしやすいため、一般的にはそちらが推奨です。
既存の 2019 ライセンス サーバーを残す場合の役割分担
既に Windows Server 2016 / 2019 向けの RDS CAL を 2019 ライセンス サーバーで運用している場合、2019 サーバーを捨てる必要はありません。次のように役割分担することで、スムーズに移行できます。
| ライセンス サーバー | 保持する CAL | 主な利用用途 |
|---|---|---|
| Windows Server 2019 RD ライセンス サーバー | RDS CAL 2016 / 2019 | 既存の 2016 / 2019 RD セッション ホスト用 |
| Windows Server 2022 RD ライセンス サーバー | RDS CAL 2022(および将来の 2025 など) | 新しい 2022 / 2025 RD セッション ホスト用 |
RD セッション ホストごとに「どのライセンス サーバーを使うか」を GPO で明示的に切り替えれば、混在環境でも安定して運用できます。
「Per User」モードの落とし穴とコンプライアンス上の注意
RDS の「ユーザーごと(Per User)」ライセンス モードは、多くのバージョンにおいて 技術的な強制が緩く、ライセンス サーバーがなくても接続自体はできてしまうことがあります。
しかし、これはあくまで「技術的に接続できているだけ」であり、ライセンス条項を満たしていることとは別問題です。
- Per User モードでは、ライセンス サーバーが Over-Used(過剰使用)扱いになっても接続できてしまうケースがある
- コンプライアンス上は、接続ユーザー数分の正しいバージョンの RDS CAL を保有している必要がある
- 監査やライセンス調査の際には「技術的に接続できていたかどうか」ではなく、「契約上のライセンスが足りていたか」が問われる
そのため、
- Windows Server 2022 への接続には、必ず RDS CAL 2022 以上を準備する
- CAL のバージョン管理(いつ、何を、何本買ったか)を一覧表にしておく
- 不明点があれば、Microsoft のライセンス窓口またはリセラーに相談する
といった運用が非常に重要になります。
将来の Windows Server 2025 を見据えたライセンス設計
既に RDS CAL 2025 の販売も始まっており、「2025 CAL を買ったけど 2022 のライセンス サーバーに入らない」という相談も増えています。
この場合も考え方は同じで、
- 2025 の CAL を扱わせるには、ライセンス サーバーも 2025 世代が必要
- ただし購入した 2025 CAL に対して ダウングレード権 を利用し、2022 としてインストールできるケースもある
- ダウングレードの可否や手続きは、購入元や Microsoft ライセンスセンターでの確認が必須
という構造になっています。
中長期的には、次のような方針でライセンス サーバーを設計すると管理が楽になります。
- 常に 最も新しい OS(例:Windows Server 2025)に RD ライセンス サーバーを一つ用意
- そこに最新の RDS CAL(2025)をインストールし、必要に応じて古いバージョンとして扱う(ダウングレード権)
- 古いライセンス サーバーは段階的に縮小・廃止していく
トラブルシュートのチェックリスト
実際に構成を変えたのに「ライセンスがない」「猶予期間が切れる」というメッセージが出る場合は、次のチェックリストを順に確認してみてください。
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| ライセンス サーバーの OS バージョン | 2022 以降になっているか |
| インストールした RDS CAL のバージョン | 2022(または 2025)になっているか |
| RD セッション ホストのライセンス モード | 「ユーザーごと」になっているか |
| RD セッション ホストのライセンス サーバー指定 | 新しいライセンス サーバーの FQDN が GPO またはローカルポリシーで正しく指定されているか |
| ライセンス サーバーのアクティブ化状態 | RD ライセンス マネージャー上で「アクティブ化済み」になっているか |
| ファイアウォール | TCP 135 / 3389 / RPC 関連ポート等がブロックされていないか |
| 名前解決 | RD セッション ホストからライセンス サーバーの FQDN に ping / nslookup できるか |
PowerShell でよく使う確認コマンド集
管理台数が多い環境では、PowerShell でまとめて状態を確認できるようにしておくと便利です。
ライセンス サーバーの情報を確認
# ライセンス サーバーの基本情報
Get-CimInstance -Namespace root\cimv2\TerminalServices -ClassName Win32_TSLicenseServer |
Select-Object LicenseServerName, Version, ActivationStatus
インストール済みライセンス パックの一覧
# インストールされているライセンスパックを確認
Get-CimInstance -Namespace root\cimv2\TerminalServices -ClassName Win32_TSLicenseKeyPack |
Select-Object ProductVersion, TypeAndModel, TotalLicenses, AvailableLicenses
複数セッション ホストの GPO 設定を一括確認
# セッションホストのライセンス関連レジストリ値を取得(例)
$servers = @("rdsh01","rdsh02","rdsh2022-01")
foreach ($s in $servers) {
Write-Host "=== $s ==="
Invoke-Command -ComputerName $s -ScriptBlock {
Get-ItemProperty "HKLM:\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Terminal Server\RCM\Licensing Core" |
Select-Object LicensingMode, KeyPackType
}
}
これらを組み合わせることで、「どのサーバーがどのライセンス サーバーを参照しているのか」「どのバージョンの CAL がどのくらい残っているのか」を一覧化しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. Windows Server 2019 の RDS CAL で Windows Server 2022 の RD セッション ホストに接続しても大丈夫?
A. ライセンス上 NG です。古い RDS CAL で新しい Windows Server にアクセスすることはサポートされていません。CAL は常に セッション ホストと同じかそれ以上のバージョンでなければなりません。
Q. RDS ユーザー CAL 2022 を買ったのに、2019 のライセンス サーバーに入らないのは不具合?
A. 不具合ではなく仕様です。Windows Server 2019 の RD ライセンス サーバーは 2022 CAL を扱えません。Windows Server 2022 以降のライセンス サーバーを用意してください。
Q. 2022 CAL で 2019 の RD セッション ホストに接続することはできますか?
A. 可能です。新しい CAL から古いサーバーへの接続は後方互換性によりサポートされています。ただし、ライセンス サーバー側がその CAL バージョンに対応していることが前提です。
Q. 2025 CAL を購入した場合、2022 へのアクセスにも使えますか?
一般的には 後方互換があるため利用可能ですが、2025 CAL を 2022 のライセンス サーバーにそのままインストールできない場合があります。その際は、購入時に付与される ダウングレード権 を利用し、Microsoft または販売店に問い合わせて「2022 として認識させる」ための手続きを行う必要があります。
Q. CAL の移行や再発行はどうすれば良い?
RDS CAL を別のライセンス サーバーへ移行する場合は、保有している ライセンス証書(プロダクト キー パック / エンタイトルメント情報) を用意し、Microsoft ライセンス センターや電話サポート経由で再インストール/再認証を行います。必要に応じて清算機関(Clearinghouse)への電話が必要になる場合もあります。
まとめ:ライセンス サーバーを最新世代にするのが最も確実
本記事で解説してきたように、
- Windows Server 2019 の RD ライセンス サーバーに RDS ユーザー CAL 2022 はインストールできない(仕様)
- RDS ライセンスの原則は 「ライセンス サーバー ≥ CAL ≥ セッション ホスト」
- 2022 セッション ホストには 2022 以上の CAL が必須
- したがって、ライセンス サーバーも 2022 以降にする必要がある
というのがポイントです。
実務的には、
- Windows Server 2022 以降で新しい RD ライセンス サーバーを構築し、RDS ユーザー CAL 2022 をインストール
- RD セッション ホスト(2022)を GPO で新ライセンス サーバーに向ける
- 旧 2019 ライセンス サーバーは 2016/2019 CAL 用として必要に応じて残す
という構成にすることで、
- ライセンス違反のリスクを避けつつ
- 将来の Windows Server 2025 への移行も見据えたスケーラブルな設計
が実現できます。RDS ライセンスは一度迷子になると整理が大変なので、今回を機に「バージョン/本数/用途」を一覧にして棚卸ししておくことを強くおすすめします。

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