Windows 11 をクリーンインストールしようとしたら、なぜか Home と Pro を選ぶ画面が出ない、毎回勝手に Home(または Pro)になってしまう――そんなときは、インストールメディア側でエディションとプロダクトキーの指定をコントロールしてあげる必要があります。本記事では、Media Creation Tool・Rufus・ei.cfg・PID.txt を組み合わせて、狙ったエディションを確実にインストールする実践的な方法を詳しく解説します。
Windows 11 インストーラでエディションを選べない理由
まず、「なぜエディション選択画面が出ないのか」を理解しておくと、ei.cfg や PID.txt の挙動がスッキリ整理できます。
インストーラがエディションを決める優先順位
Windows 11 セットアップは、次のような優先順位で「どのエディションをインストールするか」を判断します。
| 優先順位 | 情報源 | 内容 / 説明 |
|---|---|---|
| 1 | \sources\PID.txt | ここで指定したプロダクトキーに対応するエディションを最優先でインストール |
| 2 | UEFI/BIOS の MSDM(OEM 埋め込みキー) | メーカー製 PC の場合、工場出荷時の Home/Pro などの OEM キーが自動で読み取られる |
| 3 | ユーザーがインストール中に入力したプロダクトキー | インストール画面でキーを入力した場合、そのエディションが選択される |
| 4 | ei.cfg | 指定した EditionID と Channel に基づいてエディション候補が絞られる |
| 5 | インストールイメージの内容 | インストール WIM/ESD に複数エディションが含まれている場合のみ、最後に選択画面が出る |
つまり、OEM の埋め込みキー(MSDM)が存在する PC では、何も設定しないとそのキーに対応したエディションに自動的に固定されます。この場合、「Home / Pro を選ぶ画面を出したい」という要望は、原則として叶いません。
この制約を乗り越えるために使うのが PID.txt での上書き指定です。PID.txt があれば、OEM キーより優先してインストールエディションを決められます。
どんなときにエディション選択画面が出るのか
エディション選択画面が出るのは、ざっくり次の条件を満たすときだけです。
- PC に OEM キー(MSDM)が 存在しない
- 事前に
PID.txtや固定されるプロダクトキーを指定していない - インストールイメージ(
install.wim/install.esd)に複数エディションが含まれている
自作 PC や仮想マシンではこの条件を満たしやすいため、何も工夫しなくても Home / Pro を選ぶ画面が出ることが多いです。一方、メーカー製ノート PC などでは OEM キーが強く効いてしまうため、ほぼ確実に選択画面は出ません。
結論:MCT で USB を作成し、ei.cfg + PID.txt で「指定」する
以上を踏まえると、もっとも実務的で失敗しにくい方法は次の構成です。
- インストールメディア:Microsoft 公式の Media Creation Tool(MCT) で作った USB
\sourcesに置くファイル:ei.cfgとPID.txtの 2 つ- エディションの決め方:
PID.txtに汎用インストールキーを指定して「狙ったエディションで固定」
ポイントは、「エディションを手動で選ばせる」のではなく、インストールメディア側で最初からエディションを決めてしまうことです。特に OEM キーがある PC では、この方針でないと意図通りの結果になりません。
Media Creation Tool で Windows 11 インストール USB / ISO を作成する
MCT の正しい入手先と実行ファイル
まずは Microsoft 公式サイトから Windows 11 用の Media Creation Tool をダウンロードします。よくある混乱として、「Windows 11 Setup(セットアップウィザード)」と「MediaCreationTool.exe」が混ざってしまうケースがありますが、インストールメディア作成用は後者です。
ダウンロードしたら、次の流れで USB または ISO を作成します。
- MCT(
MediaCreationToolW11.exeなど)を管理者として実行 - 「この PC を今すぐアップグレード」ではなく、「別の PC のインストールメディアを作成する」を選択
- 言語・エディション・アーキテクチャ(64 ビット)を選択
※通常は「この PC におすすめのオプションを使う」にチェックでOK - 「使用するメディアを選んでください」で、USB フラッシュ ドライブ または ISO ファイル を選択
- 指示に従って処理を進める(毎回 8GB 前後のダウンロードが走る点に注意)
USB を直接作った場合は、そのままブート可能なインストールメディアになります。ISO を選んだ場合は、後から Rufus などで USB に書き込むか、仮想マシンでマウントして使います。
ISO から Rufus で USB を作る場合
Rufus を利用する場合も、基本的には問題ありません。Rufus は単に ISO の内容を USB に展開し、ブートセクタを設定してくれるツールに近いため、最終的に USB の中身が正しければ OK です。
Rufus 使用時の注意点は次の通りです。
| 項目 | 推奨設定 / ポイント |
|---|---|
| パーティション構成 | UEFI マシンのみなら GPT/UEFI、古い PC も考えるなら MBR/BIOS+UEFI を選択 |
| ファイルシステム | 通常は FAT32 で問題なし(大容量 install.wim の場合は Rufus が自動で調整) |
| Windows イメージ | 公式 ISO(MCT で作成 or Microsoft サイトからダウンロード)を指定する |
| 書き込み後 | USB 内の \sources フォルダに ei.cfg と PID.txt をコピーする |
要するに、MCT USB でも Rufus USB でも、最終的に (USB のルート)\sources に目的のファイルがあるかどうかがすべてです。
\sources に置く 2 つのファイル:ei.cfg と PID.txt
役割の違いを整理する
| ファイル名 | 役割 | 補足 |
|---|---|---|
ei.cfg | エディションとチャネルの「候補」を指定する | インストールイメージの中から、どのエディションを使うかを絞り込むフィルタのようなイメージ |
PID.txt | セットアップ時に使用するプロダクトキーを強制的に指定する | 指定したキーに対応したエディションが自動選択され、OEM キーを上書きできる |
ほとんどのケースで重要なのは PID.txt です。PID.txt があれば、OEM キーを無視して狙ったエディションでインストールできます。ei.cfg は補助的な位置付けと考えて構いません。
ei.cfg の書き方と主な EditionID
ei.cfg は UTF-8 / ANSI どちらでも問題なく動作します(BOM なし推奨)。内容はとてもシンプルです。
[EditionID]
Core
[Channel]
Retail
この例では、インストール対象のエディションとして「Home(Core)」を指定し、チャネルを Retail にしています。主な EditionID の対応表は次の通りです。
| 入れたいエディション | EditionID の値 | 補足 |
|---|---|---|
| Windows 11 Home | Core | 一般的な家庭向け PC |
| Windows 11 Home Single Language | CoreSingleLanguage | 言語固定版(海外 OEM など) |
| Windows 11 Pro | Professional | 最もよく使われるビジネス向けエディション |
| Windows 11 Pro Education | ProfessionalEducation | 教育機関向け |
| Windows 11 Pro for Workstations | ProfessionalWorkstation | ワークステーション向け |
| Windows 11 Education | Education | 学生・教育機関向けライセンス |
| Windows 11 Enterprise | Enterprise | 大規模企業向け(通常はボリュームライセンス) |
チャネル([Channel])には、通常のリテール/OEM イメージなら Retail を指定します。ボリュームライセンスメディアを使う場合は Volume を指定します。
イメージに含まれる EditionID を確認する方法(上級者向け)
ISO の中の install.wim / install.esd にどのエディションが含まれているか気になる場合は、以下のようなコマンドで確認できます(管理者権限のコマンドプロンプト)。
dism /Get-WimInfo /WimFile:D:\sources\install.wim
install.esd の場合は /WimFile:D:\sources\install.esd に読み替えてください。ここに表示される Edition や EditionID をそのまま ei.cfg に書くと安全です。
PID.txt の書き方と「汎用インストールキー」
PID.txt の内容もシンプルです。
[PID]
Value=XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX
ここに書くキーとしてよく使われるのが、Microsoft が公式に公開している 「汎用インストールキー(Generic Product Key)」 です。これらのキーは
- インストールを先に進めるためのキー
- ライセンス認証(アクティベーション)は通らない
という性質を持っており、正規ライセンスを別途持っている前提で、セットアップ作業を合理化するのに使われます。具体的なキーは Microsoft の公式ドキュメントなどで確認し、必ず正規の情報源を参照してください。
PID.txt を置いておくと、インストーラはそのキーに対応したエディションを自動で選択し、OEM キーや既存のデジタルライセンスよりも優先してインストールを進めます。これにより、
- 本来は Home の OEM キーが埋め込まれている PC でも、Pro の汎用キーを指定して Pro をインストール
- 逆に Pro の OEM キーを持つ PC に Home を入れたい場合に、Home の汎用キーを指定して上書き
といった柔軟な運用が可能になります。
OEM キーやデジタルライセンスとどう付き合うか
よくある症状と原因の整理
| 症状 | 想定される原因 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| Home を入れたいのに Pro になってしまう | UEFI に Pro の OEM キーが埋め込まれている / 以前 Pro で認証されていた | PID.txt に Home の汎用キーを指定してインストール |
| Pro を選びたいのに Home に固定される | Home の OEM キーが存在し、選択画面が出ない | Pro の汎用キーを PID.txt に指定、または Pro の正規キーをインストール時に入力 |
| エディション選択画面そのものが一度も出ない | OEM キーまたは PID.txt により自動決定されている | 選択ではなく「指定する」方針に切り替える(PID.txt を利用) |
| 同じ USB なのに PC ごとに入るエディションが違う | 各 PC の OEM キーやライセンス状態が異なる | USB 側に PID.txt を置き、すべて同じエディションになるよう制御 |
特に、「Home にしたいのに Pro になる」「毎回 Pro になる」といった現象は、その PC がすでに Pro の OEM キーやデジタルライセンスを持っているサインです。この場合は、インストーラの自動判断に逆らおうとせず、PID.txt の指定で上から押さえ込むのが一番スムーズです。
仮想マシンや自作 PC の場合
OEM キーが存在しない仮想マシンや自作 PC の場合は、
PID.txtを置かなければ、複数エディションを含む ISO では選択画面が出るPID.txtを置けば、そのエディションで固定される
というシンプルな挙動になります。検証環境が多い場合は、目的ごとに複数の USB を作るか、PID.txt の中身だけ差し替える運用も便利です。
実践的な手順:Home / Pro を確実にインストールする
手順の全体像
- Media Creation Tool で Windows 11 の USB または ISO を作る
- USB の
\sourcesフォルダを開く ei.cfgファイルを作成し、インストールしたいエディションを指定PID.txtファイルを作成し、対象エディションの汎用インストールキーを指定- その USB からブートしてインストールを開始
- セットアップ中にエディション選択画面は出ないが、狙ったエディションでインストールされることを確認
Home を必ずインストールしたいときの例
例として、「どの PC に挿しても Home をインストールする USB」を作る場合の構成です。
ei.cfg:
[EditionID]
Core
[Channel]
Retail
PID.txt:
[PID]
Value=XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX
ここで指定するのは Home 用の汎用インストールキーです。実際のキー文字列は Microsoft 公式情報から確認してください。
この USB を使うと、
- Pro の OEM キーを持つ PC でも Home としてインストール
- Home の OEM キーを持つ PC では、通常通り Home としてインストール
という動作になります。インストール後は、正規の Home ライセンスキーまたは Microsoft アカウントに紐づいたデジタルライセンスで認証を行ってください。
Pro を必ずインストールしたいときの例
逆に、「検証用 PC はすべて Pro で揃えたい」といった用途の USB を作る例です。
ei.cfg:
[EditionID]
Professional
[Channel]
Retail
PID.txt:
[PID]
Value=XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX
ここでは Pro 向けの汎用インストールキーを指定します。Home OEM マシンに対しても Pro としてインストールされるため、インストール後に正規の Pro ライセンスで認証する前提で利用してください。
インストール後のライセンス認証とエディション変更
ライセンス認証の確認方法
Windows 11 のインストールが完了したら、まずはライセンス認証の状態を確認します。
- 設定 を開く
- システム → ライセンス認証 を選択
- 「Windows はライセンス認証されています」と表示されているか確認
ここで認証されていない場合は、
- 正規のプロダクトキーを入力する
- Microsoft アカウントに紐づいたデジタルライセンスがある場合は、該当アカウントでサインインする
などの方法でライセンスを有効化します。
インストールしたエディションとライセンスの種類が違う場合
例えば、
- PC 自体は Home の OEM ライセンスを持っているが、今回 Pro としてインストールした
- 過去に Pro のデジタルライセンスを取得している PC に Home を入れた
といったケースでは、期待している方のライセンスで自動認証されない場合があります。この場合、
- 手元のライセンスが Home しかないのに Pro をインストールしてしまった → Home でクリーンインストールし直す or 正規の Pro を購入
- Pro のライセンスを持っているのに Home を入れてしまった → 設定から Pro にエディションアップグレードする
といった対応が必要になります。
インストール後に Home → Pro にアップグレードする場合
Home としてインストールしてしまったが、後から Pro に切り替えたい場合は、
- 設定 → システム → ライセンス認証 を開く
- 「エディションのアップグレード」 を選択
- Pro の正規プロダクトキーを入力してアップグレードを実行
これにより、再インストールなしで Home から Pro に切り替えが可能です。ただし、ライセンス条件的には「Pro ライセンスを持っていること」が前提になる点に注意してください。
よくあるつまずきパターンと具体的な解決策
MCT を起動しても「ISO を選ぶ画面」が出ない
よくあるのが、ダウンロードしたファイルが Media Creation Tool ではなく、通常の Windows 11 セットアップだったパターンです。この場合、画面には「今すぐアップグレード」などの選択肢しか出ません。
対処方法:
- Microsoft の Windows 11 ダウンロードページから「インストールメディアを作成する」項目を探す
- そこから Media Creation Tool をダウンロードし、ファイル名が
MediaCreationToolから始まっていることを確認 - 実行後、「別の PC のインストールメディアを作成する」を必ず選ぶ
毎回 8GB 以上ダウンロードが走ってつらい
MCT は原則として「最新ビルド」をダウンロードし直す仕様です。そのため、USB 作成のたびに約 8GB のダウンロードが発生します。
ダウンロード量を節約したい場合は、
- 一度 MCT で ISO ファイル を作成して保存
- 以降はその ISO を Rufus や他のツールで USB 化
- 必要に応じて、最新ビルドが必要になったタイミングでだけ新しい ISO を取得
という運用にすると、同じ ISO を何度も使い回せるので効率的です。
ei.cfg を置いても期待通りに動かない
ei.cfg だけを置いても、OEM キーや PID.txt の方が優先されるため、期待通り動かないことがあります。特に OEM マシンでは、
ei.cfg:Core を指定- OEM キー:Pro
という組み合わせだと、最終的には Pro が優先される可能性が高いです。
このような場合は、
ei.cfgだけでなく、必ずPID.txtを併用する- OEM キーの有無に関わらず USB 側で完結する構成にする
ことをおすすめします。
「このプロダクトキーでは Windows をインストールできません」と表示される
汎用インストールキーやボリュームライセンス用キーを使った際に、セットアップ画面でこのエラーが表示されることがあります。考えられる原因は、
- 指定したキーが Windows 11 ではなく Windows 10 用である
- エディション(Home / Pro / Enterprise など)が ISO に含まれていない
- 入力ミス(1 と I、0 と O などの誤読)
対処としては、
- 公式情報から Windows 11 用のキーを再確認する
dism /Get-WimInfoで ISO の中身にそのエディションが含まれているか確認する- 一旦
PID.txtを削除し、インストール画面で手動入力してみる
といったアプローチが有効です。
複数 PC・検証環境での運用 Tips
用途別に複数の USB を用意する
管理する PC が多い場合や、検証用にさまざまなエディションを使い分けたい場合は、
- Home 専用 USB(Home の汎用キー)
- Pro 専用 USB(Pro の汎用キー)
- 評価用 Enterprise USB(評価版 ISO などを利用)
といった形で USB を分けておくと、現場で迷わずにすみます。USB のラベルやケースに「Windows 11 Pro 固定」などと大きく書いておくのも効果的です。
同じ USB でエディションを切り替えたい場合
USB を増やしたくない場合は、PID.txt だけ差し替える方法もあります。
PID.txtを Home 版・Pro 版など、いくつか用意しておく(例:PID_Home.txt・PID_Pro.txt)- 使う直前に目的のファイル名を
PID.txtにリネームして\sourcesに配置 - 不要な方の
PID_*.txtは別フォルダに退避しておく
この方法なら USB は 1 本で済みますが、運用ミスを防ぐためにも、どのファイルがどのエディション用か分かるようにメモを残しておくと安心です。
まとめ:Windows 11 のエディションは「選ぶ」より「指定」してしまう
ここまでの内容をまとめると、次のようになります。
- OEM キーがある PC では、エディション選択画面は基本的に出ない
- 「画面で選ぶ」のではなく、
PID.txt+ei.cfgで狙ったエディションを指定してしまう方が確実 - Media Creation Tool で作った USB でも、Rufus で書き込んだ USB でも、
\sourcesに正しい 2 ファイルがあれば OK - インストール後は、必ず正規ライセンスで認証し、エディションとライセンスの組み合わせを確認する
「Home を入れたいのに Pro になる」「Pro を選びたいのに Home に固定される」といったトラブルは、ほとんどが OEM キーや既存ライセンスの自動判定が原因です。今回紹介したように、インストールメディアの側でエディションとキーをしっかり指定してあげれば、Windows 11 のクリーンインストールを安定して再現できるようになります。

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