Microsoft 365 Copilotのメトリックエクスポートとは?Copilot Dashboard更新の影響と管理者の確認事項

結論から言うと、Microsoft 365 Copilot の Copilot Dashboard に、Copilot の利用メトリックを行レベルでエクスポートできる機能が追加されます。これにより、管理者や分析担当者は、画面上の集計グラフを見るだけでなく、週次のユーザー単位データを使って、部門別の定着状況、アプリ別の利用傾向、継続利用の有無などをより深く分析できるようになります。

Microsoft 365 Roadmap ID 500872 では、この機能は Preview が 2025 年 12 月、一般提供が 2026 年 7 月予定とされています。公式ロードマップ上の更新日時は UTC で 2026 年 5 月 6 日のため、日本時間では 2026 年 5 月 7 日の更新として確認できます。ただし、Microsoft 365 Roadmap の日付は予定であり、提供時期や内容は変更される可能性があります。(Microsoft)

目次

Microsoft 365 CopilotのAI/Copilot更新で何が変わるのか

今回の更新は、Microsoft 365 Copilot の機能そのものを直接変えるというより、Copilot の利用状況を把握・分析する方法を大きく広げる更新です。

これまで Copilot Dashboard は、組織全体やグループ単位で Copilot の導入状況や利用傾向を確認するための画面として使われてきました。今回の「Export Copilot metrics in the Copilot Dashboard」により、対象条件を満たすユーザーは Copilot Dashboard からデータをエクスポートし、Power BI などの BI ツールや社内レポートで再利用しやすくなります。

重要なのは、エクスポートされるのが「プロンプト本文」や「個人名そのもの」ではなく、個人識別子が削除・匿名化されたユーザー単位の週次メトリックである点です。Microsoft Learn では、過去 6 か月分の Microsoft 365 Copilot メトリックを、個人識別子を匿名 ID に置き換えた形でダウンロードできると説明されています。(Microsoft Learn)

項目内容
対象機能Copilot Dashboard からの Copilot メトリックエクスポート
Roadmap ID500872
対象サービスMicrosoft Copilot (Microsoft 365)、Microsoft Viva
対象プラットフォームWeb
対象クラウドWorldwide Standard Multi-Tenant
ステータスIn development
Preview2025 年 12 月予定
GA2026 年 7 月予定
主な用途レポート作成、利用定着分析、部門別・アプリ別の深掘り分析

この更新によって、IT 管理者だけでなく、DX 推進部門、人事、業務改善チーム、データ分析担当者も Copilot の導入効果をより具体的に追えるようになります。

エクスポート機能でできること

Copilot Dashboard のエクスポート機能では、過去 6 か月分の週次 Copilot メトリックを取得できます。Microsoft Learn によると、エクスポートには Copilot Dashboard の adoption ページと impact ページに関連する、ユーザー単位の週次集計メトリックが含まれます。ただし、エクスポート内容を利用者側でカスタマイズすることはできません。(Microsoft Learn)

実務上は、次のような分析に使いやすくなります。

活用シーン見られること次のアクション例
Copilot の定着状況を確認する週ごとのアクティブ日数、継続利用の有無利用が止まっている部門に再トレーニングを実施する
アプリ別の利用傾向を見るTeams、Outlook、Word、Excel、PowerPoint などの利用状況よく使われていないアプリ向けに具体的な業務シナリオを提示する
Copilot Chat の利用を把握するCopilot ライセンスあり・なしの利用傾向Copilot Chat から Microsoft 365 Copilot への展開候補を見つける
導入効果を説明する会議要約、メール作成、文書作成などのアクション数経営層向けの利用実績レポートを作成する
部門別のばらつきを把握するOrganization や FunctionType などの属性別傾向部門ごとの成功事例や課題を洗い出す

たとえば、Teams の会議要約はよく使われている一方で、Excel の分析支援がほとんど使われていない場合、利用者が「Excel で何を頼めばよいか分からない」状態かもしれません。この場合は、単にライセンスを増やすのではなく、「売上表の傾向分析」「ピボットテーブル作成」「数式作成」など、Excel 業務に直結するプロンプト例を配布するほうが効果的です。

取得できる主なメトリック

エクスポート対象には、Microsoft 365 Copilot のアプリ別利用、Copilot Chat の利用、利用頻度、継続利用に関するメトリックが含まれます。Microsoft Learn では、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams、Copilot Chat などに関するアクション数やアクティブ日数が例示されています。(Microsoft Learn)

代表的なメトリックは次のとおりです。

分類メトリック例読み取り方
アプリ別利用Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams での Copilot アクションどの業務アプリで Copilot が使われているかを確認する
Copilot ChatCopilot Chat work / web のプロンプト送信数チャット型の利用が定着しているかを見る
会議関連Teams の会議要約、Intelligent Recap、要約された会議時間会議削減・情報共有の改善余地を探る
文書作成Word の下書き、要約、書き換え、表化文書作成業務での利用度を確認する
メール業務Outlook のメール下書き、スレッド要約、コーチングメール作成・確認業務の効率化を評価する
利用継続直近 7 日・28 日での returning user、アクティブ週数一時的な利用か、継続利用かを判断する

注意したいのは、メトリックの数値を単純に「多いほど良い」と見ないことです。たとえば Teams の会議要約が多い部門は、Copilot の活用が進んでいるとも言えますが、会議が多すぎる組織課題を示している可能性もあります。Copilot の利用データは、単なる利用率レポートではなく、業務プロセスの見直し材料として扱うと価値が高まります。

対象となるユーザーと前提条件

このエクスポート機能は、すべてのユーザーが使えるものではありません。Microsoft Learn では、前提条件として、テナントに少なくとも 50 の Copilot または Viva Insights ライセンスが割り当てられていること、さらに Copilot Dashboard へのグローバルアクセス権が必要とされています。(Microsoft Learn)

エクスポート機能を利用できる主なユーザーは次のとおりです。

利用者エクスポート可否の考え方
Microsoft 365 グローバル管理者条件を満たす場合、利用対象に含まれる
Copilot Dashboard のグローバルアクセスを持つリーダー利用対象に含まれる
管理者が手動でグローバルアクセスを付与したユーザー利用対象に含まれる
グローバルアクセスを持つユーザーから委任された代理ユーザーポリシーで無効化されていなければ利用対象
Viva Insights Analyst のグローバルアクセスユーザー利用対象に含まれる
チームレベル表示のみのマネージャーエクスポート不可

特に注意すべきなのは、Copilot Dashboard を見られるユーザー全員がエクスポートできるわけではないことです。チームレベルのビューだけを持つマネージャーや、その代理ユーザーは、グローバルアクセスがない限りデータエクスポートの対象外です。(Microsoft Learn)

管理者が確認すべき設定

Viva Insights web app のアクセス管理

Copilot Dashboard は Viva Insights web app から利用します。管理者は、Microsoft 365 管理センターの Viva Insights 関連設定で、ユーザーやグループ単位のアクセスを管理できます。

Microsoft Learn では、以前の Copilot Dashboard 専用コントロールや PowerShell による一部のアクセス管理は利用できなくなり、現在は Viva Insights web app の有効化・無効化で管理する形になっていると説明されています。Viva Insights web app を無効にすると、Copilot Dashboard、Copilot Analytics reports、advanced analysis、管理ツールも無効になります。(Microsoft Learn)

管理者は、次の点を事前に確認しておくべきです。

確認項目なぜ重要か
Viva Insights web app が有効か無効化されていると Copilot Dashboard 自体にアクセスできない
グローバルアクセス付与の対象者エクスポート可能なユーザーを必要最小限にできる
自動有効化の扱いシニアリーダーなどが意図せずアクセスを持つ可能性がある
委任アクセスの運用役員補佐や分析担当者がデータを扱う場合の責任範囲を明確にする
変更反映時間アクセス変更はすぐ反映されない場合がある

VFAMでエクスポート機能を制御する

エクスポート機能は、対象条件を満たすテナントとユーザーでは既定で有効です。グローバル管理者は、Microsoft 365 管理センターの Viva Feature Access Management、つまり VFAM を使って、テナントまたは特定グループに対して機能を無効化・再有効化できます。変更が Web アプリに反映されるまで最大 24 時間かかる場合があります。(Microsoft Learn)

機密性の高い組織では、最初から全対象者にエクスポートを許可するのではなく、次のような段階展開が現実的です。

フェーズ対象目的
検証IT 管理者、データ分析担当者出力内容、ファイルサイズ、メトリック定義を確認する
限定展開DX 推進部門、人事分析チームレポート作成や部門別分析の運用を試す
本番展開経営企画、部門責任者の代理ユーザーなど定例レポートや改善施策に組み込む

この順序にすると、不要なデータ共有を避けながら、レポートの品質と運用ルールを固めやすくなります。

プライバシーとデータ管理の注意点

エクスポートデータでは個人識別子が削除され、匿名化 ID に置き換えられます。ただし、Organization や FunctionType などの HR 属性が含まれる場合があります。Microsoft Learn では、Organization は Entra ID または管理者がアップロードした組織データから決まり、FunctionType は組織データに含まれていない場合は空欄になると説明されています。(Microsoft Learn)

つまり、「氏名やメールアドレスが出ないから安全」と単純に考えるのは危険です。小規模な部門、特殊な職種、人数の少ない拠点などでは、属性の組み合わせから個人が推測される可能性があります。

管理者は、次のルールを決めてから展開することをおすすめします。

ルール具体例
保存場所を限定するSharePoint の専用サイトや管理された Power BI ワークスペースに限定する
再配布を制限するメール添付や個人 OneDrive への保存を避ける
閲覧者を絞る経営層向け、部門長向け、分析担当者向けでレポートを分ける
小規模グループを扱う基準を決める人数が少ない部署は統合して表示する
エクスポートログや運用記録を残す誰が、いつ、何の目的で取得したかを管理する

また、Microsoft Learn では、このプレビュー機能は personal data processing を許可する機能であり、一般提供前に変更される可能性があるとされています。プレビュー段階で本番業務に組み込む場合は、社内のプライバシー担当、法務、情報セキュリティ部門と確認しておくべきです。(Microsoft Learn)

既存レポートやPower BI運用への影響

すでに Microsoft 365 管理センターの Copilot 使用状況レポートや、Viva Insights の Power BI テンプレートを使っている組織では、今回のエクスポート機能を「既存レポートの置き換え」と考えるより、分析粒度を補完するデータソースとして扱うほうが安全です。

Microsoft Learn では、Copilot Dashboard と Microsoft 365 管理センターの使用状況レポートは同じ基盤データを利用している一方、対象読者、前提条件、期間、データ遅延が異なるため、数値に差が出る可能性があると説明されています。Copilot Dashboard は過去 28 日のデータを表示し、最大 6 日の遅延がある一方、管理センターのレポートは 7 日、30 日、90 日、180 日などのローリング期間を使います。(Microsoft Learn)

そのため、社内レポートでは次のように使い分けると混乱を避けられます。

レポート向いている用途
Microsoft 365 管理センターの使用状況レポートIT 管理者がライセンス利用状況や全体傾向を確認する
Copilot Dashboardリーダーやマネージャーが導入・定着・影響を把握する
Copilot Dashboard のエクスポートデータ部門別、職種別、週次推移、継続利用などを深掘りする
Power BI レポート経営層向け、部門別、施策別に可視化して共有する

失敗しやすいのは、管理センターの数値と Copilot Dashboard の数値を横並びにして「なぜ一致しないのか」と議論してしまうケースです。期間、更新タイミング、対象ユーザー、フィルター条件が異なるため、完全一致を前提にしないほうが現実的です。

開発者・データ担当者が準備すべきこと

開発者やデータ分析担当者にとって、今回の更新は「API 連携が必要な新機能」というより、Copilot の利用データを BI・データ基盤に取り込む運用設計のテーマです。

特に確認すべきポイントは次のとおりです。

確認項目実務での見方
出力データの粒度ユーザー単位、週次、過去 6 か月という前提で分析設計する
スキーマ変更の可能性プレビュー段階では列名やメトリックが変わる可能性を考慮する
匿名 ID の扱い個人名に戻す前提の設計にしない
組織属性の品質Entra ID や組織データの Organization、Manager、Job function を整備する
大容量ファイルへの対応Excel で開く前提ではなく、Power BI などの BI ツール利用を検討する
定例レポート化手動ダウンロード、格納、更新、共有の責任者を明確にする

Microsoft Learn でも、大規模な組織ではエクスポートファイルが大きくなる可能性があり、小規模データは Excel で扱える一方、大規模データは Power BI などの BI ツールでインポート・分析するほうが適していると説明されています。(Microsoft Learn)

開発者視点では、まず次のような簡易ダッシュボードから始めると効果が出やすいです。

  • 週別の Copilot アクティブユーザー推移
  • 部門別の Copilot アクション数
  • Word、Excel、PowerPoint、Teams、Outlook のアプリ別利用割合
  • 直近 28 日で継続利用しているユーザー比率
  • Copilot Chat から Microsoft 365 Copilot への利用拡大候補

最初から複雑なスコアリングを作るより、現場が理解しやすい指標に絞るほうが、改善アクションにつながります。

展開前に確認したいチェックリスト

Preview から GA に向けて、管理者は次の項目を確認しておくと安全です。

チェック項目確認済み
Microsoft 365 Roadmap ID 500872 の提供時期を確認した□
テナントに必要な Copilot または Viva Insights ライセンス数がある□
Copilot Dashboard のグローバルアクセス保有者を把握した□
VFAM でエクスポート機能を有効・無効にする方針を決めた□
委任アクセスを許可する範囲を決めた□
エクスポートデータの保存場所を決めた□
Power BI などの分析先を決めた□
小規模部門の再識別リスクを確認した□
社内のプライバシー・セキュリティ担当と合意した□
既存の管理センターレポートとの違いを説明できる□

このチェックリストを満たしてから展開すれば、「データは取れるが、誰が何に使うのか分からない」という状態を避けられます。

よくある誤解と注意点

行レベルエクスポートはプロンプト内容の取得ではない

今回の機能は、Copilot のプロンプト本文や回答内容を監視する機能ではありません。取得できるのは、利用回数、アクティブ日数、アプリ別アクションなどのメトリックです。利用者の入力内容を直接分析する前提で設計しないようにしましょう。

匿名化されていても取り扱いは慎重にする

個人名やメールアドレスが含まれないとしても、組織属性や利用パターンから特定の個人が推測される可能性はあります。特に少人数部門や役職が限定される部署では、レポートの粒度を上げすぎないことが大切です。

プレビュー段階で運用を固定しない

この機能は Preview が 2025 年 12 月、GA が 2026 年 7 月予定です。Preview 段階の機能は、仕様や提供条件が変わる可能性があります。自動化や社内レポートのテンプレートを作る場合は、列追加や名称変更に対応できる余地を残しておきましょう。

既存レポートとの数値差を前提にする

Copilot Dashboard、Microsoft 365 管理センター、Power BI テンプレートは、目的や期間、フィルター条件が異なります。数値差が出た場合は、まず対象期間、対象ユーザー、更新タイミング、ライセンス状態を確認してください。

まず管理者が取るべき次のアクション

この更新は、Microsoft 365 Copilot の導入効果を「感覚」ではなく「データ」で説明しやすくする機能です。ただし、データを取れるようになるほど、アクセス権、保存場所、再配布、プライバシーへの配慮が重要になります。

まずは、次の 3 つから始めるのが現実的です。

  1. Copilot Dashboard のグローバルアクセスを持つユーザーを棚卸しする
  2. VFAM でエクスポート機能を誰に許可するか決める
  3. Power BI などで可視化する指標を「定着」「継続利用」「アプリ別活用」に絞って設計する

Microsoft 365 Copilot は、導入しただけでは業務改善につながりません。今回の Copilot metrics エクスポート機能を使えば、どの部門で活用が進み、どこに支援が必要かを具体的に見つけやすくなります。GA 前の段階から権限・データ管理・レポート設計を整えておけば、正式提供後にスムーズに社内展開できます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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