Office LTSCではMicrosoft 365 Copilotは使えない?永続版Officeからの移行判断ガイド

既存の Office LTSC や買い切り版 Office をそのまま使いながら Microsoft 365 Copilot だけを追加できるのか。結論から言うと、Copilot を本格展開するには、永続版 Office ではなく、クラウドに接続された Microsoft 365 Apps を前提に設計する必要があります。2026年4月20日の Microsoft Partner Center の更新でも、Microsoft 365 Copilot は Microsoft 365 スイートに含まれるクラウドバックのアプリでのみサポートされ、オンプレミス版 Office は対象外であることが改めて示されました。(Microsoft Learn)

これは単なるライセンスの違いではありません。Copilot は Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams などのアプリ、Microsoft Graph、Exchange Online、Entra ID、ネットワーク接続、更新チャネルが組み合わさって動く仕組みです。Office LTSC を「安定していて長く使える Office」として評価している企業ほど、Copilot 導入時にこの前提を見落としやすくなります。

目次

Microsoft 365 Copilot / Office の最新動向:2026年4月20日に何が再確認されたか

2026年4月20日の Microsoft Partner Center のアナウンスでは、Office LTSC 2021、Project LTSC 2021、Visio LTSC 2021 のサポート終了が近づいていることが案内されました。サポート終了日は2026年10月13日で、それ以降は更新プログラム、セキュリティ修正、技術サポートが提供されないと説明されています。(Microsoft Learn)

同じアナウンスで重要なのは、単なるサポート終了告知にとどまらず、Copilot 時代の Office 選定方針が明確に書かれている点です。Microsoft は、多くの顧客には Microsoft 365 への移行を推奨し、Microsoft 365 スイートへ移行すると Word、Excel、PowerPoint などのクラウドバックのデスクトップアプリに加え、Web とモバイルのアクセスも利用できると説明しています。さらに、Microsoft 365 Copilot はクラウドバックのアプリでのみサポートされ、オンプレミス版 Office は対象外であると明記しています。(Microsoft Learn)

つまり、CIO やライセンス担当者が確認すべき論点は「今の Office はまだ動くか」ではありません。Copilot を業務に組み込むなら、「対象ユーザーの Office クライアント、メールボックス、ID、データ保管先、更新管理が Copilot 前提になっているか」を見直す必要があります。

The LTSC trap:Copilotだけを足す計画が失敗する理由

「LTSC trap」とは、Office LTSC を標準環境として維持したまま、AI 活用だけを後から追加しようとして行き詰まる状態を指します。Office LTSC は、長期固定の業務端末やネットワーク制約の強い環境には有効です。一方で、Microsoft 365 Copilot の価値は、クラウドサービスと継続更新される Microsoft 365 Apps の上で発揮されます。

Microsoft 365 Copilot は、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams などの Microsoft 365 アプリと連携し、ユーザーがアクセス権を持つメール、チャット、ドキュメント、会議などの情報を Microsoft Graph 経由で参照して回答や生成を行います。Microsoft 公式ドキュメントでも、Copilot は Microsoft 365 アプリ、Microsoft Graph、検索、チャット機能などの組み合わせとして説明されています。(Microsoft Learn)

このため、永続版 Office に「Copilot ボタンだけを追加する」という発想は実務上成り立ちません。ライセンスを購入しても、利用端末の Office が Copilot の対象外であれば、ユーザーは期待した体験を得られません。

Office LTSC と Microsoft 365 Apps の違いを Copilot 目線で整理する

Office LTSC と Microsoft 365 Apps の違いは、単に「買い切りかサブスクリプションか」ではありません。Copilot 導入では、更新モデル、クラウド連携、セキュリティ運用、データ活用の違いがそのまま導入可否に影響します。

観点Office LTSC・永続版 OfficeMicrosoft 365 Apps
主な位置づけ長期固定・特殊用途向けの Office継続更新される Microsoft 365 の Office アプリ
機能更新リリース後の新機能追加は基本的にない更新チャネルに応じて新機能や改善が提供される
Copilot 利用Microsoft 365 Copilot の対象外対象ライセンス・構成を満たすことで利用可能
向いている環境閉域網、規制上クラウド利用が難しい端末、専用端末情報共有、共同編集、AI活用、ハイブリッドワーク
移行判断例外端末として残すかを検討Copilot 対象ユーザーの標準環境にする

Microsoft の Office LTSC 2024 の説明では、Office LTSC 2024 は Microsoft 365 Apps とは異なり、リリース後に機能更新を受け取らないとされています。また、Microsoft 365 Apps で利用できる最新のクラウドバック機能、AI による自動化、ハイブリッドワーク向けの高度なセキュリティ・コンプライアンス機能は含まれないと説明されています。(Microsoft Learn)

したがって、Office LTSC 2024 は「Office LTSC 2021 の後継としてサポートされたオンプレミス選択肢」ではありますが、「Copilot 対応のためのアップグレード先」ではありません。ここを混同すると、調達後に再移行が必要になります。

Copilot採用で最初に確認すべきライセンスと構成

Microsoft 365 Copilot はアドオンライセンスとして提供されますが、追加先となる Microsoft 365 または Office 365 の対象サブスクリプションが必要です。Microsoft のライセンスページでは、Microsoft 365 E3/E5、Microsoft 365 Apps for enterprise、Microsoft 365 Business Standard、Business Premium、Microsoft 365 Apps for business、Office 365 E3/E5 など、複数の対象プランが示されています。(Microsoft Learn)

ただし、対象ライセンスがあるだけで十分とは考えない方が安全です。Copilot を業務で使うには、少なくとも次の観点を確認します。

確認項目実務で見るべきポイント
Office クライアント対象ユーザーが Office LTSC ではなく Microsoft 365 Apps を使っているか
ライセンスCopilot アドオンを追加できる Microsoft 365 / Office 365 の対象プランか
メールボックスOutlook や予定表の要約に必要なメールボックスが Exchange Online にあるか
IDユーザーが Microsoft Entra ID の職場または学校アカウントでサインインしているか
ネットワークCopilot と Microsoft 365 Apps に必要なエンドポイントをブロックしていないか
データ権限SharePoint、OneDrive、Teams の権限が過剰共有になっていないか
更新管理Current Channel や Monthly Enterprise Channel など、運用に合う更新チャネルを設計しているか

Microsoft の最小要件では、Microsoft 365 Copilot の利用には Microsoft Entra ID アカウントが必要であり、メールの要約や返信作成などのメールボックスグラウンディングは Exchange Online 上のプライマリメールボックスでサポートされると説明されています。オンプレミスやハイブリッドのメールボックスでは、このグラウンディングはサポートされません。(Microsoft Learn)

CIO・ライセンス担当が誤解しやすいポイント

Office LTSC 2024ならCopilotに対応する、という誤解

Office LTSC 2024 は新しい Office ですが、Microsoft 365 Copilot の対象環境とは別物です。クラウド利用が難しい端末向けのサポートされた選択肢としては意味がありますが、AI 活用を進める標準端末に採用すると、Copilot 展開の妨げになります。

Copilot を使うユーザーには Microsoft 365 Apps を割り当て、閉域網や規制上の理由でクラウド接続できない端末だけ LTSC を例外として残す。この分離が現実的です。

Copilotライセンスを買えば現在のOfficeで動く、という誤解

Microsoft 365 Copilot は、単独のアプリケーションではありません。アドオンライセンス、対象となる Microsoft 365 サブスクリプション、クラウドバックのアプリ、Exchange Online、Microsoft Graph、テナント構成がそろって初めて価値を発揮します。

ライセンス見積もりの段階では、次のように質問を変えると失敗を避けやすくなります。

よくある質問置き換えるべき質問
今の Office に Copilot を追加できますかCopilot 対象ユーザーは Microsoft 365 Apps に移行済みですか
Office LTSC 2024 にすれば十分ですかAI 活用ユーザーと長期固定端末を分けていますか
何ライセンス買えばよいですかどの業務シナリオで何人が Copilot を使う予定ですか
全社展開できますかデータ権限、Exchange Online、更新チャネルの準備はできていますか

すべての端末を一気にクラウド化しなければならない、という誤解

Copilot 導入は、全端末の一括移行である必要はありません。むしろ、CIO やモダナイゼーション責任者は端末とユーザーを分けて考えるべきです。

たとえば、経営企画、営業、法務、人事、カスタマーサポートなど、文書作成・会議・メール・情報検索の比重が高い部門は Copilot の効果を検証しやすい領域です。一方、工場の制御端末、医療機器に接続された専用端末、ネットワーク分離された監査端末などは、LTSC を維持する合理性があります。

重要なのは、Office LTSC を全社標準のまま残さないことです。LTSC は例外管理にし、Copilot 対象ユーザーの標準を Microsoft 365 Apps に寄せることで、調達・運用・教育の整合性が取れます。

Copilot採用に向けた実務的な移行ステップ

Copilot 導入は、ライセンス購入より前に棚卸しを行うべきです。特に大企業やグローバル企業では、Office のバージョン、更新チャネル、メールボックスの場所、ネットワーク制約が地域や部門ごとに異なります。

フェーズ実施内容成果物
現状把握Office LTSC、Office 2019/2021/2024、Microsoft 365 Apps の利用状況を棚卸しするOffice クライアント別の端末一覧
対象者選定Copilot を使う業務、部門、優先ユーザーを決めるパイロット対象者リスト
ライセンス確認既存の Microsoft 365 / Office 365 プランで Copilot 追加が可能か確認する必要ライセンス数と不足SKU
技術前提確認Exchange Online、Entra ID、SharePoint/OneDrive、Teams、ネットワーク要件を確認するCopilot readiness チェック結果
アプリ移行Copilot 対象ユーザーの Office LTSC を Microsoft 365 Apps に置き換える移行済み端末一覧
更新管理Current Channel、Monthly Enterprise Channel などを選ぶ更新チャネル設計書
定着化部門別のプロンプト例、禁止事項、データ取り扱いルールを整備する利用ガイドと教育資料

Microsoft は、古い Office クライアントからのアップグレード先として Microsoft 365 Apps for enterprise を推奨し、それが難しい場合の選択肢として Office LTSC 2024 を挙げています。つまり、Copilot を狙うユーザーと、クラウド移行できない例外ユーザーを分けて設計するのが自然です。(Microsoft Learn)

更新チャネルは「新機能優先」ではなく「業務リスク」で選ぶ

Copilot 対応のために Microsoft 365 Apps へ移行する場合、更新チャネルの設計も重要です。Current Channel は新機能を早く受け取るのに向いています。Monthly Enterprise Channel は月1回の予測しやすい更新で運用したい企業に向いています。Semi-Annual Enterprise Channel は、広範な事前検証が必要な特殊・重要業務の端末向けとされています。(Microsoft Learn)

多くの企業では、次のように分けると現実的です。

ユーザー群推奨しやすい更新方針理由
Copilot パイロットユーザーCurrent Channel または検証用の先行グループ新機能を早期に確認し、業務シナリオを作りやすい
一般的な情報ワーカーMonthly Enterprise Channel月次の予測可能な更新で展開しやすい
業務アプリ依存が強いユーザーMonthly Enterprise Channel + 事前検証アドインやマクロの影響を抑えやすい
特殊端末・自動処理端末Semi-Annual Enterprise Channel または LTSC の例外検討変更頻度を抑える必要がある

注意したいのは、更新を止めることが安定運用ではないという点です。Copilot は進化が速いサービスです。更新を極端に遅らせると、機能差、サポート差、ユーザー体験のばらつきが生じます。Microsoft 365 Apps の更新チャネルは、変化をなくすためではなく、変化を管理するために使うものです。

グローバル展開で失敗しやすいポイント

グローバル企業では、国や地域ごとの規制、ネットワーク品質、データ保管方針、既存契約が異なります。そのため、本社が Copilot ライセンスを一括購入しても、現地法人の Office クライアントやメール基盤が要件を満たしていないことがあります。

特に確認すべきポイントは次の4つです。

確認ポイント失敗例対策
地域ごとの Office 標準ある国だけ Office LTSC が標準のままCopilot 対象国から順に Microsoft 365 Apps へ移行
メール基盤一部拠点のメールボックスがオンプレミスに残っているCopilot 対象ユーザーから Exchange Online 化を優先
ネットワークMicrosoft 365 関連エンドポイントがプロキシで遮断される事前に通信要件を確認し、例外設定を整備
権限管理SharePoint の過剰共有により、Copilot が意図しない情報を参照し得るCopilot 前にサイト権限、外部共有、機密ラベルを見直す

Copilot の効果測定は、単純な利用率だけでは不十分です。営業提案書の作成時間、会議後のアクション整理、メール返信の初稿作成、社内ナレッジ検索など、業務別に測る指標を決めると、CIO や経営層への説明がしやすくなります。

Office LTSCを残すべきケースと残してはいけないケース

Office LTSC は悪い選択肢ではありません。ただし、Copilot の標準端末として使うべきではありません。残すべきケースと、移行すべきケースを明確に分けることが大切です。

ケース判断
インターネット接続が禁止された端末LTSC を例外として残す余地がある
工場・医療・研究設備など、構成変更が厳しく制限される端末LTSC や専用環境を検討する
文書作成、メール、会議、検索を日常的に行う情報ワーカーMicrosoft 365 Apps へ移行すべき
Copilot を使う予定の管理職・営業・企画・法務・人事LTSC ではなく Microsoft 365 Apps を標準にする
マクロやアドイン互換性を理由に全社で LTSC を維持している対象アドインを棚卸しし、段階移行を検討する

判断の軸は、「その端末で AI とクラウド共同作業の価値を得たいか」です。得たいなら Microsoft 365 Apps 側へ寄せる。得ない端末だけ LTSC を例外として残す。この割り切りが、Copilot 導入のコストと混乱を抑えます。

よくある質問

既存のOffice LTSC 2021にMicrosoft 365 Copilotを追加できますか

Microsoft 365 Copilot の対象として考えるべきではありません。2026年4月20日の Microsoft Partner Center の更新では、Copilot はクラウドバックのアプリでのみサポートされ、オンプレミス版 Office は対象外であることが再確認されています。(Microsoft Learn)

Office LTSC 2024へ移行すればCopilotを使えますか

いいえ。Office LTSC 2024 はサポートされた永続版 Office の選択肢ですが、Copilot を使うための移行先ではありません。Copilot 対象ユーザーには Microsoft 365 Apps を用意し、LTSC はクラウド利用が難しい特殊端末向けに限定して考えるべきです。

Microsoft 365 AppsにすればすぐCopilotが使えますか

Microsoft 365 Apps だけでは十分ではありません。対象となる Microsoft 365 / Office 365 のサブスクリプション、Microsoft 365 Copilot ライセンス、Exchange Online、Entra ID、ネットワーク要件、テナント設定、データ権限の確認が必要です。

Office 365 E3やMicrosoft 365 E3があれば十分ですか

多くの企業では有力な土台になりますが、契約内容やテナント構成によって確認が必要です。Microsoft 365 Copilot は対象サブスクリプションに対するアドオンとして提供されるため、既存契約で追加できるか、必要なアプリやサービスが含まれているかを管理センターや契約情報で確認してください。(Microsoft Learn)

Copilotを使わないユーザーもMicrosoft 365 Appsへ移行すべきですか

必ずしも全員を同時に移行する必要はありません。ただし、情報ワーカーの標準環境を Office LTSC のまま固定すると、将来の AI 活用、共同編集、セキュリティ機能、更新管理で制約が増えます。Copilot 対象者から優先的に移行し、例外端末だけ LTSC として管理する方が現実的です。

まとめ:次にやるべきこと

Microsoft 365 Copilot 導入で最も避けるべきなのは、「Office は既存の LTSC のままで、AI だけ追加する」という計画です。Microsoft 365 Copilot は、クラウドバックの Microsoft 365 Apps、Microsoft Graph、Exchange Online、Entra ID、適切な更新管理を前提にしたサービスです。

まず実施すべきことは、ライセンス購入ではなく棚卸しです。Office LTSC を使っている端末、Copilot 対象ユーザー、Exchange Online 化されていないメールボックス、クラウド接続に制約がある拠点、マクロやアドイン依存の強い業務を洗い出してください。

そのうえで、Copilot を使う情報ワーカーは Microsoft 365 Apps へ移行し、クラウド利用が難しい特殊端末だけ Office LTSC を例外として残します。この分離ができれば、CIO は投資対効果を説明しやすくなり、ライセンス担当者は無駄な二重投資を避けられ、モダナイゼーション担当者は Copilot 展開を現実的なロードマップに落とし込めます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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