Microsoft VivaのAgent metricsとは?Microsoft 365 Copilot管理者が確認すべき影響と準備

Microsoft 365 Copilotのエージェント活用が広がると、「どのエージェントが使われているのか」「部門別に定着しているのか」「既存のダッシュボードだけでは見えない傾向をどう分析するか」が課題になります。

2026年5月15日に公開・更新されたロードマップ項目「Microsoft Viva: Agent metrics for custom reporting in Insights analyst workbench」は、この課題に対して、Viva Insightsの分析担当者がエージェント利用メトリックをより柔軟に扱えるようにする更新です。結論から言うと、一般ユーザー向けの画面変更というより、Microsoft 365 Copilotのエージェント利用状況を、組織属性やエージェント属性と組み合わせて分析・出力したい管理者、分析担当者向けの機能強化です。

Microsoft 365 Roadmap上では、対象製品はMicrosoft VivaとMicrosoft Copilot(Microsoft 365)、プラットフォームはWeb、対象クラウドはWorldwide(Standard Multi-Tenant)、状態はIn developmentとされています。プレビューは2026年7月、一般提供は2026年9月の予定です。ただし、Microsoft 365 Roadmapの情報は変更される可能性があるため、展開前には最新のロードマップとMicrosoft 365管理センターのメッセージを確認してください。(Microsoft)

目次

Microsoft VivaのAgent metricsで何が変わるのか

今回の更新では、Viva InsightsのInsights analyst workbenchで、Copilotエージェントの利用状況をより細かく分析できるようになります。Microsoftの説明では、Insights global analystsとpartition analystsが、細かなエージェント利用メトリックを、エージェント属性や組織属性と組み合わせて利用できるようになるとされています。目的は、エージェント採用状況の傾向把握、レポートのエクスポート、カスタムレポート作成、意思決定の高度化です。(Microsoft)

従来のように、用意されたダッシュボードだけを見る運用では、「営業部門では特定のエージェントが使われているが、管理部門では使われていない」「公開済みエージェントの数は増えたが、実利用は一部に偏っている」といった細かな仮説検証が難しい場合があります。今回のAgent metricsは、こうした分析をセルフサービスで行いやすくする更新と考えると分かりやすいでしょう。

観点これまで課題になりやすかったこと今回の更新で期待できること
利用状況の把握ダッシュボードの集計単位では細かな比較がしにくいエージェント利用メトリックをより柔軟に分析できる
組織別の比較部門、職種、地域などの属性と結び付けにくい組織属性と組み合わせて採用傾向を確認しやすくなる
レポート作成定型ダッシュボードに依存しがちエクスポートやカスタムレポート作成に活用しやすい
意思決定「使われているか」止まりで改善策に落としにくい展開対象、教育施策、エージェント改善の判断材料にできる

対象になるユーザーと影響範囲

この更新の主な対象は、Microsoft 365 Copilotを利用する一般社員ではなく、Viva Insightsで分析や管理を担当するユーザーです。特に関係するのは、Insights Analyst、Insights Administrator、AI Administrator、Microsoft 365 Global Administrator、Copilotエージェントの展開・改善を担当するIT部門や業務部門です。

Microsoftのドキュメントでは、Viva InsightsのCopilot Analyticsにおいて、Advanced Reportingのカスタムクエリを実行できるのはInsights Analystロールを持つユーザーとされています。また、Viva InsightsではCopilot DashboardやAgent Dashboard、Advanced Reportingを通じてCopilot利用状況を分析できます。(Microsoft Learn)

一方で、一般ユーザーの操作画面に直接大きな変更が出るとは限りません。影響は主に、次のような管理・分析業務に現れます。

対象者想定される影響
一般ユーザー直接の操作変更は限定的。利用状況が集計・分析対象になる可能性がある
Insights Analystエージェント利用状況をカスタム分析しやすくなる
Insights Administratorロール、組織データ、プライバシー設定、パーティション設定の確認が重要になる
AI AdministratorViva Insights web appやCopilot Dashboard、Agent Dashboardへのアクセス制御を見直す必要がある
エージェント開発者・運用担当使われていないエージェントの改善、廃止、教育施策の判断に使える

Agent Dashboardとの違いを理解しておく

この更新を理解するうえで重要なのは、Agent DashboardとInsights analyst workbenchの役割の違いです。

Agent Dashboardは、リーダーや分析担当者がCopilotエージェントの採用状況やCopilot Creditの利用状況を確認し、最適化の機会を見つけるためのダッシュボードです。対象には、Copilot Studio、SharePoint、Microsoft 365 Agents Toolkitで作成されたエージェント、エンドユーザーが作成したエージェント、組織で正式公開されたエージェント、Microsoftやパートナーが作成したエージェントなどが含まれると説明されています。(Microsoft Learn)

一方、今回のAgent metrics for custom reportingは、あらかじめ用意されたダッシュボードを見るだけでなく、分析担当者がメトリックや属性を組み合わせ、独自のレポートやエクスポートに活用できる点がポイントです。

機能主な用途向いている場面
Agent Dashboardエージェント採用状況や利用傾向を標準画面で確認経営層・部門責任者向けの概要把握
Insights analyst workbenchのAgent metricsメトリック、エージェント属性、組織属性を組み合わせた分析部門別、エージェント別、施策別の深掘り分析
Power BIレポートやエクスポート分析結果の共有、定例報告、独自KPI管理月次レビュー、導入効果測定、改善会議

たとえば、「営業部門で見積作成エージェントの利用が増えているか」「人事部門でFAQエージェントの利用が定着しているか」「一部のエージェントだけ利用が集中していないか」を確認したい場合、定型ダッシュボードだけでは足りないことがあります。今回の更新は、そうした実務的な問いに対して、より柔軟に答えるための基盤になります。

管理者が事前に確認すべき設定

今回の更新を有効に活用するには、機能が提供されるのを待つだけでは不十分です。特に、Viva Insightsのアクセス権、組織データ、プライバシー設定、除外設定を事前に確認しておく必要があります。

Viva Insights web appへのアクセス

Microsoftのドキュメントでは、Viva Insights web appは既定でオンになっており、AI AdministratorがMicrosoft 365管理センターのFeature Access Managementを使って、テナント、グループ、ユーザー単位で有効化・無効化できるとされています。これをオフにすると、Microsoft Copilot Dashboard、Copilot Analyticsレポート、Advanced analysis、管理ツール全体が無効になります。(Microsoft Learn)

つまり、Agent metricsを使いたい分析担当者がいても、Viva Insights web app自体が無効化されていると利用できません。過去にCopilot Dashboardへのアクセスを制限していた組織では、その設定がViva Insights web app全体に影響していないか確認してください。

Insights Analystロールの割り当て

カスタム分析を行うユーザーには、Insights Analystロールが必要です。ロールはMicrosoft 365管理センターのViva Insights設定、またはロール割り当て画面から確認・割り当てできます。大規模組織では、個人単位ではなくグループ単位で割り当てると、監査や棚卸しがしやすくなります。(Microsoft Learn)

実務では、次のような分担がおすすめです。

役割担当例
Microsoft 365 Global Administratorロール割り当て、全体設定の承認
AI AdministratorCopilot DashboardやViva Insights web appのアクセス管理
Insights Administrator組織データ、プライバシー設定、パーティション設定
Insights Analystクエリ作成、分析、レポート作成
業務部門の責任者分析結果をもとにした展開・改善判断

パーティション設定

Viva Insightsにはパーティションという考え方があります。グローバルパーティションにはViva Insightsに取り込んだ全データが含まれますが、給与、性別、役員層など、取り扱いに注意が必要な属性がある場合は、分析担当者ごとにアクセスできる範囲を制限できます。Microsoftは、グローバルパーティションは既定で作成される一方、誰を割り当てるかを選ぶ必要があると説明しています。(Microsoft Learn)

今回のロードマップでは、Insights global analystsとpartition analystsが対象として言及されています。したがって、機能提供後に「分析担当者なのにデータが見えない」「想定した組織属性が使えない」とならないよう、パーティションごとのデータ範囲と割り当てを事前に確認しておきましょう。

組織データの整備が分析精度を左右する

Agent metricsの価値は、単にエージェント利用回数を見ることではありません。部門、職種、拠点、マネージャー階層などの組織属性と組み合わせることで、初めて実務に使える分析になります。

Microsoftのドキュメントでは、Copilot DashboardとAgent Dashboardは既定でMicrosoft Entra IDデータ、ユーザー設定、SMTPアドレスを使用し、PersonId、ManagerId、Organization、Domain、TimeZoneなどの属性を自動的に取り込むとされています。追加属性を使いたい場合は、Viva Insights web app、APIベースのインポート、Azure Blobインポート、Microsoft 365管理センターから組織データを取り込む方法があります。(Microsoft Learn)

実務で特に確認したいのは、次の項目です。

確認項目なぜ重要か
ManagerIdが正しいか組織階層別の分析や上長単位の傾向把握に影響する
Organizationが最新か部門別の利用率比較に影響する
職種・職務属性があるか営業、開発、管理部門などの利用傾向を比較しやすくなる
退職者・異動者データが更新されているか古い組織情報で誤った分析をしないため
属性名がMicrosoft指定の形式に合っているかダッシュボードやレポートに反映されないトラブルを防ぐため

ありがちな失敗は、Copilotエージェントのログやメトリックだけに注目し、組織データの品質を後回しにすることです。分析結果が現場感覚と合わない場合、機能の問題ではなく、部門マスタや上長情報が古いことが原因になっていることがあります。

プライバシーと最小集計単位の確認は必須

エージェント利用状況は、業務改善に役立つ一方で、個人の行動監視と受け取られやすい領域でもあります。導入時には、分析の目的、閲覧できる人、利用するデータ、レポート共有範囲を明確にしておく必要があります。

Microsoftの設定ドキュメントでは、Copilot DashboardとAgent Dashboardのグループレベル指標は、設定された最小グループサイズ以上のグループに対して提供され、既定値は10人、設定可能な最小値は5人とされています。また、除外リストを使うことで、法務、コンプライアンス、倫理上の理由から、特定ユーザーを集計対象から除外できます。(Microsoft Learn)

おすすめは、展開前に次のルールを決めることです。

ルール推奨される考え方
分析目的「個人評価」ではなく「展開改善」「教育施策」「エージェント品質改善」に限定する
閲覧者Insights Analystや関係部門責任者など、必要最小限にする
レポート共有部門別・チーム別の共有範囲を明確にする
最小グループサイズ小規模チームで個人が推測されない値にする
除外対象法務、役員、人事機密を扱うユーザーなどを必要に応じて検討する

この点を曖昧にしたまま展開すると、現場から「Copilot利用が監視されている」と受け止められ、エージェント活用そのものが進みにくくなります。

開発者・エージェント運用担当が見るべきポイント

Copilot StudioやSharePoint、Microsoft 365 Agents Toolkitなどでエージェントを作成・展開している担当者にとって、今回の更新は改善サイクルを回しやすくする材料になります。

見るべき指標は、単純な利用回数だけではありません。次のような観点で分析すると、エージェントを継続すべきか、改善すべきか、廃止すべきかを判断しやすくなります。

分析観点判断に使える例
利用部門想定部門で使われているか、別部門で意外な需要があるか
利用の継続性初回利用だけで終わっていないか
エージェント別比較同じ目的のエージェントが重複していないか
公開後の伸び展開メールや研修後に利用が増えたか
組織属性との関係職種や地域によって利用差が出ていないか

たとえば、FAQエージェントの利用が公開直後だけ伸び、その後落ち込んでいる場合は、回答精度、検索対象、導線、利用者教育のいずれかに課題がある可能性があります。一方、特定部門だけで利用が伸びている場合は、その部門の業務プロセスに合っているため、横展開の候補になります。

移行・展開時の注意点

今回の更新は、既存のエージェントやCopilot環境を作り直すような移行案件ではありません。ただし、分析基盤として使うには、展開前の準備が重要です。

既存レポートとの指標差に注意する

Agent Dashboard、Copilot Studio agents report、カスタムクエリ、Power BIレポートでは、集計単位や対象期間、対象エージェント、利用する属性が異なる可能性があります。数字が完全に一致しない場合でも、すぐに不具合と判断せず、対象範囲と集計条件を確認してください。

Viva Insightsのメトリックでは、定義や計算条件が組織の設定により変わる場合があります。また、Copilot関連メトリックでは、利用できるデータのタイミングやNULL値、0値の意味にも注意が必要です。(Microsoft Learn)

プレビュー段階では本番KPIに直結させすぎない

プレビュー提供予定は2026年7月です。プレビュー段階では、項目名、利用できるメトリック、エクスポート形式、画面導線が変わる可能性があります。最初から経営KPIや人事評価指標に組み込むのではなく、まずはIT部門、データ分析部門、Copilot推進チームで検証用のレポートを作るのが安全です。

データ削除の影響を理解する

Copilot Studioエージェントのデータについては、Viva Insights側で削除に関する管理手順も用意されています。ただし、Microsoftのドキュメントでは、Copilot Studio agents dataを削除すると復元できず、そのデータを使う新しいレポートを実行できなくなり、過去に実行したクエリも分析担当者が利用できなくなるとされています。(Microsoft Learn)

データ削除は、検証目的で気軽に実行する操作ではありません。法務・コンプライアンス上の理由がある場合も、影響範囲を確認してから実施してください。

導入前チェックリスト

機能提供に備えて、管理者は次の順番で確認すると効率的です。

チェック項目確認する内容
ロードマップ確認対象テナント、プレビュー時期、一般提供時期が変わっていないか
ライセンス確認Microsoft 365 Copilot、Viva Insights、Agent Dashboard利用条件を満たしているか
アクセス確認Viva Insights web appが必要なユーザーに有効化されているか
ロール確認Insights Analyst、Insights Administrator、AI Administratorの割り当てが適切か
パーティション確認global analystとpartition analystのデータ範囲が適切か
組織データ確認部門、上長、職種、拠点などの属性が最新か
プライバシー確認最小グループサイズ、除外リスト、共有範囲が決まっているか
レポート設計誰が、何を、どの頻度で見るかを決めているか
開発者連携利用状況をエージェント改善に反映する運用があるか

どのような企業にメリットが大きいか

この更新のメリットが大きいのは、すでに複数のCopilotエージェントを展開している、または今後本格的に展開する企業です。

特に、以下のような組織では早めに準備する価値があります。

  • Copilot Studioで部門別エージェントを複数作成している
  • SharePointや業務データを使った社内FAQエージェントを展開している
  • Copilotの利用促進を部門単位で進めている
  • エージェントの効果測定をPower BIや定例レポートで行いたい
  • 経営層に対してAI活用の定着状況を説明する必要がある

逆に、まだCopilotエージェントをほとんど使っていない組織では、まずAgent Dashboardや標準レポートで全体傾向を確認し、分析したい問いが増えてからカスタムレポートへ進むとよいでしょう。

まず何をすべきか

今回の「Microsoft Viva: Agent metrics for custom reporting in Insights analyst workbench」は、Microsoft 365 Copilotのエージェント活用を、感覚ではなくデータで改善するための更新です。ポイントは、エージェント利用メトリックを組織属性やエージェント属性と組み合わせ、定型ダッシュボードに依存しない分析を行えるようにすることです。

管理者はまず、Viva Insights web appの有効化状況、Insights Analystロール、パーティション、組織データ、プライバシー設定を確認してください。開発者やエージェント運用担当は、利用状況を「成功・失敗の判定」ではなく、改善するための材料として扱うことが重要です。

プレビュー開始前の段階では、エージェントごとのKPIを急いで固定するよりも、「どの部門で、どの業務エージェントを、どの指標で見るか」を整理しておくと、機能提供後にスムーズに活用できます。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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