Microsoft CopilotのWork IQ APIs Pay-As-You-Go usageとは?料金・影響・管理者対応

2026年6月11日に更新されたMicrosoft 365 Roadmap ID 559017の要点は、Work IQ APIsをユーザー単位の専用ライセンスではなく、Copilot Creditsによる従量課金で利用できるようにすることです。対象は、Work IQ APIを呼び出す自社開発エージェント、Copilot StudioやMicrosoft Foundryで構築したエージェント、サードパーティ製アプリなどです。

普段のMicrosoft 365 Copilot Chatや、Word・Excel・PowerPoint内の標準Copilotが一律で従量課金に変わるわけではありません。管理者が利用ベースの課金を有効にし、対象ユーザーやサービス、上限額を設定した場合に、実際のAPI利用量に応じて費用が発生します。(Microsoft)

目次

Work IQ APIsのPay-As-You-Go usageで何が変わるか

今回の変更により、開発者は事前にWork IQ API用のユーザーライセンスを割り当てなくても、エージェントやアプリからWork IQエンドポイントを呼び出せるようになります。料金は、呼び出したエージェント、AIモデル、処理内容、APIリクエストなどに応じてCopilot Creditsで計算されます。

公式ロードマップの情報は次のとおりです。

確認項目内容
Roadmap ID559017
更新日2026年6月11日
リリース時期2026年6月
リリース段階一般提供
ロードマップ上の状態In development
対象クラウドWorldwide(Standard Multi-Tenant)、DoD
プラットフォームタグDesktop、Linux、Mac、Web
主な変更Work IQエンドポイントを従量課金で利用可能にし、リクエストごとの利用内容に応じて請求

ロードマップ上のリリース月は2026年6月ですが、Microsoftの関連発表では一般提供日を2026年6月16日としています。ロードマップの日時や状態は変更される可能性があるため、実際の利用可否はMicrosoft 365管理センターでも確認してください。(Microsoft)

Work IQ APIsとは

Work IQは、Microsoft 365内のメール、予定表、会議、チャット、ファイル、ユーザー、組織構造などを、エージェントが扱いやすい形で提供するインテリジェンス層です。

Work IQ APIsには、主に次の領域があります。

  • Chat:Microsoft 365 Copilot相当の回答をプログラムから取得する
  • Context:回答を生成する前の業務コンテキストや根拠データを取得する
  • Tools:メール送信、予定作成、ファイル操作などを実行する
  • Workspaces:長時間動作するエージェントの中間データや進捗を保存する

たとえば、「上司から依頼されたタスクをメールや会議から抽出する」「顧客インタビューを分析して優先施策を提案する」「内容を確認して会議を設定する」といった処理を、自社エージェントや業務アプリへ組み込めます。処理はユーザーの権限範囲で実行され、ユーザーがアクセスできないデータを自由に参照できる仕組みではありません。(Microsoft)

誰に影響するのか

対象主な影響
一般ユーザー標準のMicrosoft 365 Copilotだけを使う場合、原則として追加対応は不要
カスタムエージェントの利用者Work IQ APIを呼び出した処理量に応じて、組織側にCopilot Creditsの費用が発生
開発者API呼び出し回数だけでなく、モデルや処理の複雑さを含めたコスト設計が必要
Microsoft 365管理者課金方法、対象グループ、利用上限、アラートの設定が必要
経理・FinOps担当者Azureサブスクリプション、部門別予算、月次利用量の確認が必要
プレビュー版の利用組織一般提供後も利用する場合、従量課金とアクセス方針の確認が必要

Microsoft 365 Copilotの標準チャットやアプリ内機能、標準提供されるエージェントは、Work IQを内部で使用していても追加のWork IQ API料金は発生しません。一方、カスタムエージェントやサードパーティ製エージェントからWork IQ APIを呼び出す場合は、Microsoft 365 Copilotライセンスの有無にかかわらず従量課金の対象です。(Microsoft Learn)

Work IQ APIsの料金とCopilot Creditsの計算方法

公式のCopilot Credits Guideでは、Pay-As-You-Goの価格は1 Copilot Creditあたり0.01米ドルとされています。前払い契約は不要で、利用したCreditsが月末に後払いで請求されます。価格は米ドル表記であり、今後変更される可能性があります。

Work IQ APIの課金は、固定部分と変動部分に分かれます。

API・処理Creditsの考え方
Work IQ Chat API、Context APIモデル、実行時間、コンテキスト、ツールなどに応じて変動
Work IQ Tools APIアクションやツールの1 API呼び出しにつき0.1 Credit

Tools APIだけを単純計算すると、1回あたり約0.001米ドルです。ただし、実際のエージェントではChat、Context、複数のTools呼び出しが組み合わされるため、「ユーザーが1回実行したら必ず0.001米ドル」という意味ではありません。

公式ガイドに掲載された参考値を米ドルへ換算すると、次のようになります。

処理の規模1クエリの参考Credits単純換算した参考額
軽い処理20~40 Credits0.20~0.40米ドル
中程度の処理30~75 Credits0.30~0.75米ドル
重い処理50~150 Credits0.50~1.50米ドル

これらは固定料金ではなく、計画用の概算です。実際の費用はプロンプト、対象データ、利用モデル、エージェントの処理ステップによって変わります。

月額費用は、次の式で概算できます。

対象ユーザー数 × 1人あたり月間実行回数 × 1回あたり平均Credits × 0.01米ドル

たとえば、20人が月100回、平均50 Creditsの処理を実行する場合、単純計算では月額1,000米ドルです。まず小規模なグループで実測し、平均Creditsを把握してから全社展開するのが安全です。

利用量が多く安定している場合は、年間前払いのCopilot Credit Pre-Purchase Plan(P3)も選べます。ただし、P3の残高を使い切るとPay-As-You-Goへ自動的に移行します。前払いCreditsの購入だけでは費用上限にならないため、別途ハード上限を設定する必要があります。(Microsoft Learn)

管理者が確認する設定手順

必要な管理者ロール

操作対応できる主なロール
課金方法の追加・変更グローバル管理者、課金管理者
支出ポリシー、上限、アラートの管理AI管理者、ライセンス管理者
利用状況の確認AI管理者、ライセンス管理者など
ユーザーへの表示設定グローバル管理者、AI管理者

グローバル管理者を常用せず、必要最小限の権限を持つロールに分担することが推奨されています。(Microsoft Learn)

Pay-As-You-Goを有効にする流れ

  1. Work IQ APIを使用しているアプリやエージェントを洗い出します。Copilot Studio、Microsoft Foundry、自社開発、外部サービスを確認してください。
  2. Microsoft 365管理センターで「Copilot」から「Cost Management」を開きます。
  3. 「Get Started」を選択し、既定の支出ポリシーを設定します。
  4. Pay-As-You-Goに使用するAzureサブスクリプションや課金方法を選びます。
  5. 月間のポリシー上限と、必要に応じてユーザー単位の上限を設定します。
  6. 利用量が一定割合に達したときのメール通知先としきい値を設定します。
  7. 対象を全ユーザーではなく、検証用セキュリティグループに限定します。
  8. 対象サービスとしてWork IQ APIを選択し、設定内容を確認して有効化します。
  9. 「Overview」と「Consumption」で、ユーザー、グループ、エージェント、サービス別のCredits消費量を確認します。

初期設定では全ユーザーが対象になります。個人を直接指定するのではなく、現時点ではセキュリティグループを使って対象者を絞り込みます。上限に達したユーザーは、Creditsが翌月にリセットされるまで対象サービスを利用できなくなります。(Microsoft Learn)

表示設定と課金設定は別に管理する

「Copilot > Settings > AI experiences enabled by usage-based billing」は、従量課金型AI機能をユーザーに表示するかを制御する設定です。

この設定を有効にしただけでは、課金方法や利用上限は完成しません。実際のアクセスと支出は「Copilot > Cost Management」で管理します。請求やガバナンスの準備が終わるまでは、表示設定をオフにしておく運用も可能です。(Microsoft Learn)

更新・移行・期限で確認すべきこと

今回のロードマップ項目には、WindowsやMacアプリの必須更新バージョン、データ移行、既存エンドポイントの廃止期限は記載されていません。主な対応は、クライアント更新ではなく、Work IQ APIを利用する組織での課金・アクセス設定です。

プレビュー版からWork IQ APIを利用していた場合や、カスタム・サードパーティ製エージェントを本番利用する場合は、2026年6月16日の一般提供に合わせて利用ベースの課金を設定する必要があります。Work IQ APIを使っていない組織には、全社共通の強制対応期限はありません。(Microsoft Learn)

なお、従来のRetrieval APIやChat APIのライセンス体系は、公式ガイドでは「現時点では変更しない」とされています。今回の変更を理由に、既存APIがすべて自動的にWork IQ APIの従量課金へ移行するわけではありません。(Microsoft CDN)

設定時に失敗しやすいポイント

  • 初期設定のまま全ユーザーを対象にしない
  • 「Unlimited monthly budget」を検証環境で選ばない
  • ユーザー単位の上限とポリシー全体の上限を両方設定する
  • 「新しいサービスとエージェントを自動的に追加する」設定を確認する
  • P3の残高がなくなった後もPay-As-You-Goが継続することを理解する
  • 支出ポリシー作成後は、そのポリシーの課金方法を変更できない点に注意する
  • 支出ポリシーだけでなく、アプリのアクセス許可や管理者同意も別途確認する

特に注意したいのが、新しいサービスやエージェントを自動的にポリシーへ追加する設定です。既定では有効になっているため、予期しないサービスがCreditsを消費しないよう、厳格な予算管理が必要な組織ではオフを検討してください。また、作成済みポリシーの課金方法を変える場合は、ポリシーの削除と再作成が必要です。(Microsoft Learn)

よくある疑問

Microsoft 365 CopilotライセンスがあればWork IQ APIは無料ですか

無料にはなりません。Microsoft 365 Copilotライセンスには、Work IQ APIの利用Creditsは含まれていません。カスタムエージェントや外部アプリからWork IQ APIを使う場合は従量課金です。

一方、Microsoft 365 Copilotの標準機能として提供されるチャットやアプリ内AI、標準エージェントには、追加のWork IQ API料金は発生しません。(Microsoft CDN)

Microsoft 365 Copilotライセンスがないユーザーも利用できますか

Work IQ API自体はMicrosoft 365 Copilotライセンスとは独立した従量課金モデルで、Microsoft 365ユーザーの代理として呼び出せます。ただし、Copilot Studioなど利用する開発・実行基盤によっては、別のライセンス要件が設定される場合があります。たとえばCopilot StudioのWork IQ MCP接続手順では、Microsoft 365 Copilotライセンスが前提条件として案内されています。(Microsoft for Developers)

設定を有効にしただけで費用は発生しますか

Pay-As-You-Goは実際に消費したCopilot Creditsに対して請求されるため、前払いの最低利用額はありません。ただし、有効化後に対象ユーザーやアプリがAPIを呼び出せば課金が始まります。検証グループ、月間上限、アラートを同時に設定してください。

まず実施すべき対応

Work IQ APIを使っていない組織は、直ちに設定を変更する必要はありません。利用中または導入予定の組織は、次の順序で対応します。

  1. Work IQ APIを呼び出すエージェントとアプリを特定する
  2. 検証用セキュリティグループと月間ハード上限を設定する
  3. 1~2週間の実測から、1回あたりの平均Creditsと月額を算出する
  4. 本番展開前に、課金先、アラート通知先、サービスの自動追加設定を確認する
  5. 「Consumption」で高利用ユーザーや処理コストの大きいエージェントを継続監視する

今回の変更で重要なのは、ライセンス数ではなく、エージェントが何回、どのモデルとツールを使って処理するかが費用を左右する点です。まず小さく有効化し、Creditsの実測値を基準に予算と利用範囲を広げる運用が適しています。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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