AI in SharePointのpublic previewとは?自然言語でサイトやライブラリを作る新機能を解説

AI in SharePoint の public preview(パブリック プレビュー)が始まり、SharePoint は「テンプレートを選んで手で組む」道具から、「やりたい業務を自然言語で伝え、AI にたたき台を作らせる」情報基盤へ大きく変わり始めました。旧 Knowledge Agent は AI in SharePoint として再編され、サイト、ライブラリ、ページ、リストの計画と構築を自然言語で進められるようになっています。Microsoft は 2026年3月に public preview 入りを案内しており、より広いロールアウトは 5月に進むとしています。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)

重要なのは、AI in SharePoint が単なる文章生成ではないことです。サイト作成ではページ、ナビゲーション、リスト、ライブラリ、列、ビューまで含むビルド計画を提案し、ライブラリ作成ではメタデータ設計や自動タグ付けまで踏み込みます。一方で、利用には Microsoft 365 Copilot ライセンス、管理者による public preview の有効化、場合によっては Anthropic のサブプロセッサ設定などが必要です。(Microsoft Learn)

目次

AI in SharePoint の public previewで何が変わったか

AI in SharePoint の public previewで押さえるべき変化は、単に「SharePoint に AI が付いた」では済まない点です。Knowledge Agent という個別機能の印象から、SharePoint 全体の構築・整理・活用を担う AI 機能群へ位置づけが広がりました。Microsoft の公開情報でも、自然言語でサイト、ページ、リスト、ライブラリをまたいで構築・設定・活用していく方向が明確に示されています。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)

同時に、新しい SharePoint experience の preview も進んでいます。こちらは Discover、Publish、Build を前面に出した UI へ再設計されており、AI-first な操作導線が強化されています。つまり今後の SharePoint は、「画面を順番にたどって設定する」よりも、「やりたいことを入口で伝えて構成を組み立てる」方向へ寄っていくと見るのが自然です。(Microsoft Learn)

ただし、2026年4月時点では機能の見え方に差が出ます。AI in SharePoint 自体は 3月に public preview に入りましたが、Create site with AI は 2026年4月から段階的ロールアウト開始と案内されています。テナントによって「ライブラリの AI アイコンは見えるが、サイト作成はまだ出ない」という状態がありえます。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)

AI in SharePoint で自然言語から作れるもの

AI in SharePoint で本当に強いのは、ページ本文の下書きだけで終わらず、サイト設計、ドキュメント ライブラリ設計、FAQ、ビュー、ルール、運用改善までつながっていることです。公式ドキュメントを実務に引き寄せると、まず注目すべきは次の5領域です。(Microsoft Support)

サイト

Create site with AI は、作りたいサイトを自然言語で説明すると、AI が補足質問を返しながら、ページ、ナビゲーション、リスト、ライブラリ、列、ビューを含む計画を提案する仕組みです。大きいのは、承認するまで何も作成されないことです。従来のようにテンプレートを選んでから各パーツを手で足すのではなく、最初に“業務の形”を伝え、あとから計画を直す流れに変わります。(Microsoft Learn)

たとえば、ただ「プロジェクトサイトを作って」と書くよりも、「研究開発案件の進捗共有サイト。マイルストーン一覧、会議メモ用ライブラリ、FAQ ページ、担当者別ビューが必要」のように、対象ユーザー、置きたい情報、見たい切り口まで入れるほうが、実務向きの計画になりやすいです。

ドキュメント ライブラリ

ドキュメント ライブラリ作成は、AI in SharePoint の中でも特に成果が出やすい機能です。目的を自然言語で説明し、必要に応じてサンプルファイルを渡すと、AI がライブラリ名、説明、メタデータ スキーマ、AI 列を提案し、新しく入るファイルの自動タグ付けまで構成します。Microsoft Learn でも、請求書、契約書、オンボーディング資料のような文書群が代表例として挙げられています。(Microsoft Learn)

最初の1本としては、自由記述の多い雑多な共有フォルダより、書式がある程度そろう文書群から始めるのが得策です。たとえば経理なら請求書、法務なら契約書、人事なら入社書類です。AI に「何を自動抽出してほしいか」が比較的明確だからです。

ページ・セクション・FAQ

ページ作成も自然言語化が進んでいます。SharePoint のページでは、テンプレートからの作成に加え、open prompt で内容とレイアウト案を生成できます。さらに Section with AI では、ページ上の文脈や関連ファイルを使って、単なる本文ではなく“セクション単位”のまとまりを生成できます。FAQ web part は Word、PowerPoint、PDF、Loop、会議情報などを基にカテゴリ、質問、回答を作り、公開前に並び替えや修正もできます。(Microsoft Support)

FAQ は導入効果が見えやすいのも強みです。作成・編集には Microsoft 365 Copilot ライセンスが必要ですが、閲覧だけなら Copilot ライセンスは不要です。社内ポータル、IT ヘルプ、勤怠ルール、人事制度の案内のように、同じ質問が繰り返される領域で特に効きます。(Microsoft Support)

ビュー・メタデータ・ルール

AI in SharePoint は、作成後の整理まで自然言語で進められます。ライブラリやリストでは、ファイル内容や項目メタデータを基にビューを作成でき、ドキュメント ライブラリでは autofill columns によって AI が列候補と抽出プロンプトを提案します。さらに、ライブラリの右下の AI アイコンからルール設定を開けば、「承認済みの契約書が追加されたら通知」「確認済み請求書を特定フォルダへ移動」のような自動化も自然文で作れます。(Microsoft Support)

ここは「ノーコードでどこまで行けるか」が最も分かりやすい領域です。列、ビュー、ルールがつながると、SharePoint は単なる保存場所ではなく、分類・見える化・通知まで回る業務ハブに近づきます。

作成後の質問応答と改善

AI in SharePoint の価値は、作った後にも続きます。Q&A では、いま見ている場所に応じてスコープが変わり、サイトホームならサイト全体、ページならそのページ、ライブラリならそのライブラリ、選択中のファイルやリストならその対象に絞って質問できます。さらに Improve your site では、使われていないページの retire、コンテンツギャップの検出、壊れたリンクの修正提案まで行えます。(Microsoft Support)

つまり AI in SharePoint は「作る AI」だけではなく、「探す AI」「整える AI」「腐りにくくする AI」としても設計されています。

従来の SharePoint 管理と何が違うのか

作業の入口が「テンプレート選択」から「意図の記述」に変わる

従来の SharePoint では、まずサイト種別やテンプレートを選び、その後にページ、ライブラリ、列、ビューを個別に足していくのが基本でした。AI in SharePoint では逆です。先に「何をしたいか」を書き、AI が補足質問と計画を返し、人が承認してから構成物を作ります。作業の単位が UI 操作から要件記述に寄るぶん、非エンジニアや現場部門でも入口に立ちやすくなります。(Microsoft Learn)

構成づくりと運用設計が分断されにくい

従来は「サイトを作る作業」と「後から列やルールを足して運用を整える作業」が分かれがちでした。AI in SharePoint では、ライブラリ作成時点でメタデータ スキーマを提案し、autofill columns で列生成、views で見せ方、rules で通知や移動までつなげられます。最初の設計とその後の運用が連続しやすいのは、実務上かなり大きな違いです。(Microsoft Learn)

ノーコードで速くなるが、ガバナンスまでは自動化しない

一方で、AI が肩代わりするのは“土台づくり”までです。たとえばビューは表示方法を変えるだけで、権限は変えません。Improve your site で retire したページも URL 自体は残ります。つまり、情報設計、公開範囲、法務チェック、最終承認といったガバナンスは引き続き人が持つべき領域です。(Microsoft Support)

現場導入はしやすいが、前提条件は確認が必要

公開ドキュメントベースで、AI in SharePoint の public preview を試す前に確認したい条件を整理すると次の通りです。(Microsoft Learn)

確認項目実務で見るポイント
ライセンス基本は Microsoft 365 Copilot ライセンスが必要。FAQ は閲覧のみならライセンス不要
プレビュー有効化管理者が PowerShell で AI in SharePoint public preview を opt-in。旧 Knowledge Agent 参加テナントは再 opt-in 不要
AI プロバイダー設定Anthropic を Microsoft Admin Center で有効化しないと動作しない
サイト作成の可用性Create site with AI は All Sites または Exclude Selected Sites 構成が前提。エンドユーザーが作るなら self-service site creation も必要
サイト・ライブラリ権限ライブラリ作成にはドキュメント ライブラリ作成権限、エージェント作成には編集権限が必要
運用環境の癖マルチ geo は geo ごとに PowerShell 実行。設定名は preview 中も KnowledgeAgentScope など旧名称のまま

とくに引っかかりやすいのは、「プレビューは有効にしたのにサイト作成が出てこない」ケースです。これはサイト作成機能が段階的ロールアウト中であることに加え、設定が Selected Sites 側になっている、もしくは self-service site creation が無効、という組み合わせで起こりやすいです。PowerShell 上の設定名がいまだに KnowledgeAgent* 系なので、名称のズレで見落とさないようにしてください。(Microsoft Learn)

なお Microsoft は、AI in SharePoint で処理された顧客データを自社の生成 AI 基盤モデルの学習に使わないと案内する一方、生成結果は不完全・不正確・古い可能性があるため、独立した検証が必要だと明記しています。導入しやすさと、人手レビューの必要性はセットで理解すべきです。(Microsoft Support)

まず試すなら、この3パターンが失敗しにくい

請求書・契約書ライブラリ

請求書や契約書のような定型文書は、AI ライブラリ作成と autofill columns の相性が良い典型例です。Microsoft Learn でも invoice repository や contract libraries などが代表ユースケースに挙げられています。(Microsoft Learn)

試すときは、最初から完璧を狙わないことが大切です。
「取引先名」「請求日」「金額」「支払状況」など、まずは 3〜5 列に絞って自動抽出させます。さらに「承認済みなら経理担当へ通知」のようなルールを 1 本だけ足すと、AI in SharePoint の価値が短時間で見えます。

IT・人事 FAQ ページ

FAQ web part は、Word、PowerPoint、PDF、Loop、Meeting などの複数ソースから質問と回答を作れ、閲覧者に Copilot ライセンスが不要なのが強みです。IT ヘルプ、勤怠、入社手続きのように、同じ質問が繰り返される領域から始めると効果が見えやすいです。(Microsoft Support)

おすすめは、「対象読者」と「FAQ の目的」を明示して作ることです。
たとえば「新入社員向け。初日準備、PC セットアップ、Teams 利用開始、問い合わせ先を FAQ にして」といった形です。元になる資料が古いと回答も古くなりやすいので、参照ファイルは最新版だけに絞るほうが安全です。

小規模プロジェクトサイト

サイト作成 AI は、ページ、ナビゲーション、リスト、ライブラリをまとめて計画できるので、1部門・1テーマの小さなプロジェクトサイトから試すのが向いています。Create site with AI 自体は段階的ロールアウト中なので、テナントで表示されたらすぐ試せるよう、先に要件だけ具体化しておくと動きやすいです。(Microsoft Learn)

コツは、最初のスコープを絞ることです。
トップページ、進捗一覧、成果物ライブラリ、FAQ の 4 要素くらいに留めると、AI が提案した構成もレビューしやすく、現場の受け入れも進みやすくなります。

失敗しやすいポイント

  • 要件が抽象的すぎる
    「営業向けサイトを作って」だけでは、情報構造の解像度が足りません。対象ユーザー、よく使う資料、欲しい一覧、通知条件まで入れると精度が上がります。
  • 代表性のない元データを使う
    ライブラリも FAQ も、AI はサンプルファイルや grounding source の質に引っ張られます。古い資料や例外フォーマットを混ぜると、列設計も FAQ もぶれやすくなります。(Microsoft Learn)
  • AI 生成列を本番投入前に試さない
    autofill columns は候補を出してくれますが、列名や抽出指示は人が調整できます。編集後は最大 10 ファイルでテストできるので、そこで精度を見てから本番に載せるべきです。(Microsoft Learn)
  • ビューで機密性を担保したつもりになる
    ビューは表示方法を変えるだけで、アクセス権は変えません。「見え方を分けたから安全」は誤解です。権限設計は従来どおり別で管理する必要があります。(Microsoft Support)
  • AI 文面をそのまま公開する
    Microsoft は、AI in SharePoint の生成結果が不完全、不正確、古い可能性があると明記しています。医療、法務、財務など高リスク用途の判断材料としてそのまま使うべきではありません。FAQ やポータル本文でも、公開前の人手レビューは必須です。(Microsoft Support)
  • 日本語の仕上がりを過信する
    Copilot は複数言語をサポートしていますが、Microsoft は品質が最も高いのは英語で、他言語は改善中だと案内しています。日本語で十分使える可能性はありますが、公開品質の文面は最終調整を前提にしたほうが安全です。(Microsoft Support)

次にやるべきこと

AI in SharePoint の public preview を追うなら、現実的な順番ははっきりしています。まず管理者が Copilot ライセンス、preview の opt-in 状態、Anthropic 設定を確認すること。次に、請求書ライブラリか FAQ ページのように成果が見えやすい対象を 1 つだけ選ぶこと。そのうえで、生成した列、ビュー、ルール、本文を人が検証し、使えたプロンプトをチーム内で残すことです。サイト作成がテナントに見えた段階で、小規模サイトの生成まで広げれば十分です。(Microsoft Learn)

AI in SharePoint の本当の価値は、「文章を書く手間を減らすこと」より、「SharePoint の構造づくりを現場に近づけること」にあります。まずは 1 つのライブラリ、1 つの FAQ、1 つの小規模サイトから始めて、どこまでノーコードで業務設計に踏み込めるかを確かめるのが、いま最も実用的な試し方です。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

コメント

コメントする

目次