SharePoint や Microsoft Lists の「フォーム」を共有すると、冒頭に「回答者の名前とメールアドレスが所有者に表示される」という英語の案内が自動で出て驚くことがあります。この既定メッセージは消せるのか、何がトリガーなのか、運用で困らないための代替案までまとめます。
よくある症状:SharePoint / Microsoft Lists フォームの冒頭に出る「既定のウェルカムメッセージ」
SharePoint(リスト)や Microsoft Lists で作成したフォームを、共有リンクで配布したときに、フォームの最上部へ次のような英語メッセージが表示されるケースがあります。
Hi ○○, when you submit the form, the owner will see your name and email address.
このメッセージは「送信すると、フォーム(またはリスト)の所有者が、送信者の氏名・メールアドレスを確認できる」ことを明示するものです。見た目の問題だけでなく、アンケートや社内ヒアリングの場面では“匿名ではない”と強く印象づけてしまうため、削除や文言の変更を求められがちです。
このメッセージが“困る”理由
実際の現場で困りやすいのは、次のようなケースです。
- 匿名で集めたいのに、冒頭で「名前とメールが見える」と表示されてしまう(率直な意見が集まりにくい)
- 配布対象が社内ユーザーでも、「個人情報の扱い」が気になる(利用目的・閲覧範囲が曖昧だと問い合わせが増える)
- 英語の既定メッセージが社内ルール的にNG(日本語化・文言統一を求められる)
ここで重要なのは、単なる表示の問題ではなく「実際に個人情報が収集される(または収集されるように見える)」点です。まずは“匿名であるべきか/記名であるべきか”を要件として決め、その上でフォームの種類を選ぶのが最短ルートです。
結論:この既定メッセージは削除も編集もできない
結論から言うと、この既定のウェルカムメッセージは、標準機能では削除も編集もできません。テーマの変更、説明文の編集、フォームの項目編集を行っても、この一文だけを消す/日本語へ置き換える、といったスイッチは用意されていないのが現状です。
| やりたいこと | 標準フォームでの可否 | 現実的な落としどころ |
|---|---|---|
| 既定の挨拶文(Hi〜)だけを非表示にしたい | 不可 | 説明文で補足して誤解を減らす/カスタムフォーム化 |
| 文言を編集して日本語にしたい | 不可 | フォーム上部の説明文で日本語の案内を追加 |
| 回答者の氏名・メールを記録したい(記名式) | 可能(ただしメッセージは残る) | 用途・閲覧範囲・保管期間を明記する |
| 匿名で集めたい | 条件次第(Lists のフォーム共有では基本的に難しい) | Microsoft Forms で匿名設定/必要なら SharePoint リストへ連携 |
なぜ表示される?トリガーは「回答者を識別する設定」
このメッセージが出る背景はシンプルで、フォーム側が回答者の識別情報(氏名・メールアドレス)を記録する前提だからです。特に「組織内ユーザーだけに回答させる」設定にしていると、回答者は Microsoft 365 にサインインした状態でフォームを開くため、送信者を特定できる仕組みになります。
Microsoft 側は、誰の情報が収集されるのかを回答者に明示するために、この案内を自動表示しており、透明性・プライバシー・コンプライアンス上の理由から、フォーム作成者が文言を改変できない“組み込み表示”として扱われています。
Microsoft Forms の場合、「Only people in my organization can respond(組織内のみ)」を選ぶと、追加オプションとしてRecord name(回答者名の記録)をオンにできます。ここをオンにした状態が、メッセージ表示の典型パターンです。
| フォームの状態 | 回答者のサインイン | 識別情報の扱い | 既定メッセージ |
|---|---|---|---|
| Microsoft Forms:組織内限定+「Record name」オン | 必要 | 氏名・メールが記録される | 表示されやすい |
| Microsoft Forms:組織内限定+「Record name」オフ | 必要 | 原則、氏名は記録されない | 表示されない想定 |
| Microsoft Lists のフォーム共有(新しいフォーム体験) | 必要(組織内) | リストの「作成者」などで追跡可能 | 表示されることがある |
まず切り分け:あなたが使っているのはどの「フォーム」か
同じ「SharePoint フォーム」「Lists フォーム」と呼ばれていても、実体が違うと“できること/できないこと”が変わります。特に混同が多いのが次の3パターンです。
| 種類 | 作る場所の例 | 共有のしかた | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SharePoint リストの既定フォーム(New/Edit 画面) | リストの「新規」「編集」 | 原則、リストにアクセスできる人向け | 権限管理はリスト側。入力画面のカスタムは別機能で実施 |
| Microsoft Lists のフォーム共有(新しいフォーム体験) | リスト上部の「Forms」 | リンクで配布(組織内) | 回答者はリスト本体を見ずに入力でき、回答はリストに項目として入る |
| Microsoft Forms(forms.office.com) | Microsoft Forms アプリ | リンク・QR・埋め込み等 | 匿名/記名の切替が可能。必要なら Power Automate でリストへ転記 |
特に Microsoft Lists の「新しいフォーム体験」は、リンクを受け取った回答者がMicrosoft 365 にサインインして入力する前提で、回答はリストの新規アイテムとして保存されます。回答者はリスト全体を閲覧できず、入力専用にできるのが強みです。
一方で「匿名の外部ユーザーに配布する」「表示文言を完全にコントロールする」といった要件には向きません。要件がズレていると、今回の既定メッセージ問題が“地雷”になりやすいです。
要件整理チェックリスト:どの方向で解くべきか
同じ「メッセージを消したい」でも、最適解は要件で変わります。次の表で、まず方向性を決めてください。
| 確認したいこと | YES の場合 | NO の場合 |
|---|---|---|
| 誰が回答したか追跡できる必要がある | 記名運用。メッセージは残る前提で説明文を整える | 匿名運用へ。Microsoft Forms で Record name をオフ |
| 組織外(社外)にも配布したい | Microsoft Forms の「Anyone can respond」を検討 | 組織内限定のままでOK |
| 入力画面の作り込み(条件分岐、複雑な検証)が必要 | Power Apps を検討 | 標準フォームで十分 |
対処の基本方針:消すのではなく「誤解を減らす」設計にする
既定メッセージ自体は消せないため、現場で効くのは回答者が不安にならない情報を、フォーム作成者側が先回りして提示することです。具体的には、フォームの説明文・配布メール・Teams 投稿に、次の3点を短く入れるだけでも反応が変わります。
- なぜ氏名・メールが必要なのか(用途)
- 誰が見られるのか(閲覧範囲)
- いつまで保管するのか(保管期間の目安)
フォームの説明欄にそのまま貼れる例文です(必要に応じて調整してください)。
記名式(本人確認が必要な申請・問い合わせ向け)
送信者の氏名・メールアドレスは自動的に記録されます。回答内容は担当部署のみが確認し、問い合わせ対応/申請処理の目的以外には利用しません。“匿名ではない”ことを先に明示したい場合
本フォームは記名式です。匿名でのご意見が必要な場合は、別途ご案内する匿名フォームをご利用ください。「なぜ英語が出るの?」への回答テンプレ
フォームが送信者を識別できる場合に、個人情報の取り扱いを明示するため自動表示されます(表示は変更できません)。
どうしても匿名にしたい場合:Microsoft Forms へ切り替える
「満足度調査」「社内の率直な意見募集」など、匿名性が重要なケースでは、Microsoft Lists のフォーム共有よりもMicrosoft Forms を使うほうが設計上安全です。Microsoft Forms には、回答者名を記録しないための設定(Record name のオフ)が用意されています。
組織内ユーザー限定のまま匿名にする手順
- Microsoft Forms で対象フォームを開きます。
- 設定(Settings)を開き、「Only people in my organization can respond」または「Specific people in my organization can respond」を選びます。
- その下にある「Record name」のチェックを外します。
社外(匿名)に配布したい場合の考え方
社外向けに匿名で配布するなら、Microsoft Forms の「Anyone can respond」を使うのが基本です。この場合、原則として回答は名前が記録されない形で入ります。ただし、組織のセキュリティ方針によって外部共有が制限されていることもあるため、テナントのルールや情報管理ポリシーも合わせて確認してください。
また、匿名設定でも質問内容や配布範囲によっては、回答から個人が推測できてしまうことがあります。例えば「少人数部署にだけ配布した」「自由記述に固有情報が含まれた」などは典型例です。匿名性が必要なテーマほど、質問設計と配布設計もセットで見直すのが安全です。
回答を最終的に SharePoint / Microsoft Lists に溜めたいときの考え方
匿名で集めた回答を、後工程で SharePoint リストで管理したい場合は、Microsoft Forms の回答を Power Automate 等でリストへ登録する構成がよく採られます。ポイントは、転記の段階でも「氏名・メールなどの個人情報を持ち込まない」設計にしておくことです。
| 方式 | 匿名性 | 実装コスト | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| Microsoft Lists のフォーム共有のみ | 低め(記名前提になりやすい) | 低 | 申請・受付・担当者が必要な業務フォーム |
| Microsoft Forms(Record name オフ)+リストへ転記 | 高め(設計次第) | 中 | 率直な意見募集、匿名アンケート、相談窓口 |
| Power Apps でカスタムフォーム+リスト保存 | 要設計(サインイン次第) | 高 | 入力チェック、条件分岐、複雑な業務ロジックが必要 |
文言を自由に作り込みたいなら:Power Apps などでカスタムフォーム化
「英語が混ざるのが嫌」「説明や注意事項を自社向けの表現に統一したい」「入力チェックや条件分岐を入れたい」という場合、既定フォームの延長では限界が来ます。表示や導線を作り込みたいなら、Power Apps などでカスタムフォームを作るのが現実的です。
ただし、カスタムフォームにしても、サインイン前提の運用なら回答者情報が追跡可能になるのは変わりません。匿名性まで必要か、記名のまま表現だけ整えたいのかを先に決めるのが失敗しないコツです。
| 観点 | 標準フォーム(Lists/Forms) | Power Apps カスタムフォーム |
|---|---|---|
| 文言の自由度 | 低(既定表示は変えられない) | 高(画面・文言を自由に設計可能) |
| 入力チェック | 基本的な必須・型程度 | 複雑な検証、条件分岐、画面遷移が可能 |
| 運用・保守 | 軽い | 作成者の引き継ぎ、更新、ライセンス管理が必要 |
よくある勘違い:メッセージでは「所有者は名前とメールが見える」のに、リストで見当たらない
Microsoft Lists / SharePoint のリストには、既定で「作成者(Created by)」「作成日時(Created)」といった列が存在します。ただし、ビューによっては非表示になっていることがあり、その場合は列を表示するだけで解決します。
作成者(Created by)を表示する手順
- リスト画面で「列の追加」→「列の表示/非表示(Show or hide columns)」を開きます。
- 「Created」「Created by」にチェックを入れて表示します。
なお、「作成者」に表示されるのは多くのケースで表示名です。メールアドレスが必ず一覧に出るわけではありません。メールアドレスを業務上必須にしたい場合は、別途「ユーザー/グループ」列を用意して入力させる、または自動処理でメールを補完する、といった設計が必要になります。
| 確認ポイント | よくある原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 作成者が表示されない | ビューで列が非表示 | Show/Hide columns で Created by を表示 |
| メールアドレスが一覧に出ない | 列の表示が「名前のみ」 | 必要なら別列で保持(設計変更) |
| 匿名のつもりなのに特定できそう | 配布範囲が狭い/質問が個人特定につながる | 質問設計・配布設計を見直す |
プライバシー・コンプライアンスでつまずかないための実務チェック
「既定メッセージを消したい」という要望の裏には、だいたい次のどれかがあります。どれに当てはまるかを先に整理すると、最短で着地できます。
| 要望の本音 | 実務上のリスク | おすすめの対応 |
|---|---|---|
| 匿名で安心して書いてほしい | “実は記名”だと信頼が崩れる | 匿名設計に切替(Forms+Record name オフ) |
| 英語表示が社内ルール的にNG | 運用上の問い合わせが増える | 説明文を日本語で先に提示(用途・閲覧範囲・保管期間) |
| 個人情報を扱うので監査が怖い | アクセス権・保管・目的外利用 | 閲覧者を最小化し、保存先(リスト)の権限と保持方針を明確化 |
最後に、実務でよくある“落とし穴”をもう一つ。匿名フォームを作っても、回答結果を共有する Excel やリストの閲覧権限が広いと、結局トラブルになります。匿名性が必要な案件ほど、フォーム単体ではなく「保存先・共有先・運用手順」まで一続きで設計しておくのが安全です。
機能として必要なら:Feedback / Ideas から要望を出す
既定メッセージの編集/非表示がどうしても必要な場合、現時点では “できないものはできない” で終わってしまいます。実装される可能性を上げるには、Microsoft のフィードバック導線(Feedback や Ideas)から要望を送るのが現実的です。
まとめ
- SharePoint / Microsoft Lists のフォームに出る「Hi〜」の既定メッセージは、標準機能では削除・編集できない。
- 表示の背景は、回答者の識別情報(氏名・メール)を記録できる設定になっていることを明示するため。
- 匿名が必要なら、Microsoft Forms の匿名設定(Record name オフ)へ切り替えるのが安全。
- Lists に「回答者が見えない」場合は、Created by 列を表示して確認する。

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