SharePoint の eSignature for Microsoft 365 に追加される「Recipient groups」は、1つの署名者枠に最大10人を登録し、そのうち最初に署名した1人で署名要件を満たせる機能です。
2026年6月12日の更新では、一般提供予定が2026年6月から9月へ延期されました。展開は9月上旬に始まり、9月末までに完了する予定です。機能は既定で有効になり、管理者による必須の設定変更はありません。(Microsoft 365 Message Center Archive)
ただし、署名者を複数登録できることで、文書を閲覧できる人や実際に署名する人が変わります。管理者は、料金設定、外部共有、署名権限、監査方法を提供開始前に確認しておく必要があります。
2026年6月12日の変更点は提供スケジュールの延期
今回の更新で変わったのは、Recipient groupsの機能内容ではなく、主に提供時期です。
| 確認項目 | 最新情報 | 更新前 |
|---|---|---|
| ロードマップID | 560822 | 変更なし |
| メッセージセンターID | MC1290821 | 変更なし |
| 提供状態 | 開発中 | 変更なし |
| 一般提供月 | 2026年9月 | 2026年6月 |
| 展開開始 | 2026年9月上旬 | 2026年6月下旬 |
| 展開完了予定 | 2026年9月末 | 2026年7月下旬 |
| 管理者の必須対応 | なし | 変更なし |
Microsoft 365 Roadmapでは、GA予定月が2026年6月から9月へ変更されています。メッセージセンターでも、世界向けの展開期間が9月上旬から9月末へ更新されました。(Microsoft 365 Message Center Archive)
段階的に展開されるため、9月上旬になっても、すべてのテナントで同時に表示されるとは限りません。自社テナントに機能が届いたかどうかは、Wordの署名依頼画面とMicrosoft 365メッセージセンターで確認してください。
Recipient groupsで何ができるようになるのか
従来の署名依頼では、原則として1つの署名者枠に特定の1人を指定します。指定した担当者が不在の場合、その人が署名するまで処理が止まりやすいことが課題でした。
Recipient groupsでは、1つの署名者枠に最大10人を割り当てられます。その中で最初に署名した人が、グループ全体の署名要件を満たします。(Microsoft 365 Message Center Archive)
たとえば、「法務部の代表者1人による署名」が必要な契約書で、次の3人を同じ署名者枠に登録できます。
- 法務部長
- 法務部の副部長
- 契約審査チームの責任者
3人全員が署名する必要はありません。最初に対応した1人が署名すれば、その署名者枠は完了します。
複数の署名者枠との違い
Recipient groupsは、「複数人全員に署名してもらう機能」ではありません。
| 設定方法 | 完了条件 | 適した用途 |
|---|---|---|
| 3人を別々の署名者枠に設定 | 3人全員が署名 | 全員承認、複数部門による合議 |
| 3人を1つのRecipient groupに設定 | 最初の1人が署名 | 代理可能な承認、当番制、部署代表 |
全員の署名が必要な契約書では、Recipient groupsにまとめず、署名者ごとに別の署名者枠を作成する必要があります。
また、「Recipient groups」という名称でも、Microsoft 365グループや配布リストをそのまま指定できるとは公式情報に明記されていません。現時点では、1つの署名者枠へ複数人を登録する機能として捉えるのが安全です。
影響を受けるユーザーと管理者
Microsoftが明示している主な対象は、Microsoft WordからeSignatureの署名依頼を作成するユーザーと、eSignature for Microsoft 365を利用しているテナントです。(Microsoft 365 Message Center Archive)
| 対象 | 主な影響 |
|---|---|
| Word利用者 | 署名者枠へ複数人を登録できるようになる |
| SharePoint管理者 | 新しい設定作業は不要だが、既存の利用範囲や共有設定を確認する |
| セキュリティ・法務担当者 | 誰が署名してもよいかという完了条件を見直す |
| 外部署名者を利用する組織 | Entra B2B、ゲスト共有、条件付きアクセスの影響を確認する |
| 経理・Azure管理者 | eSignatureの従量課金と利用量を確認する |
ロードマップ上の対象はDesktopおよびCurrent Channelです。メッセージセンターではWordから署名依頼を作成するユーザーが対象として明記されています。SharePointのPDFビューアーでも同じタイミングでRecipient groupsを利用できるとは断定せず、実際の画面または更新後の公式ドキュメントで確認してください。(Microsoft 365 Message Center Archive)
管理者が提供開始前に確認する設定
Recipient groupsのための新しい管理者設定は不要です。一方で、eSignature自体が利用できる状態になっていなければ、新機能も利用できません。
eSignatureと従量課金が有効か確認する
Microsoft 365管理センターで、次の順に確認します。
- 「設定」を開く
- 「組織設定」を開く
- 「従量課金制サービス」を選択する
- 「設定」タブを開く
- 「Document & image services」から「eSignature」を選択する
- 組織内でeSignatureを使用する設定が有効か確認する
eSignatureの利用には、同じテナントのAzureサブスクリプションとリソースグループを従量課金用に接続する必要があります。設定を有効にしてからサービスが利用可能になるまで、最大24時間かかる場合があります。(Microsoft Learn)
Wordデスクトップ版の設定を確認する
Wordから署名依頼を作成するには、管理センター側でWordデスクトップ版の利用を許可するだけでなく、「Allow the use of eSignature for Microsoft Word」ポリシーの適用も必要です。
このポリシーが無効な場合、Wordの「挿入」リボンにeSignatureの操作が表示されません。Cloud Policy、Microsoft Intune、グループポリシーなどで適用状況を確認してください。(Microsoft Learn)
eSignatureを許可しているSharePointサイトを確認する
eSignatureは、管理者が許可したSharePointサイトで利用します。
契約書や申請書を保存しているサイトが対象外になっていると、Recipient groupsが展開されても署名依頼を作成できません。検証用サイトを用意し、対象サイト、文書ライブラリ、依頼作成者の編集・共有権限を確認しておくと安全です。
外部署名者の設定を確認する
社外の人をRecipient groupに含める場合は、既存の外部共有設定が引き続き適用されます。
新しい外部署名者へ依頼を送るには、SharePointとOneDriveのMicrosoft Entra B2B統合やゲスト共有が必要です。また、サイトの秘密度ラベルや条件付きアクセスポリシーによって、文書を開けない、または署名時に失敗することがあります。(Microsoft Learn)
特に機密文書では、グループに登録する候補者全員へ文書を見せても問題がないか確認してください。「最終的に署名するのは1人」であっても、候補者として登録された人のアクセス範囲が広がる可能性があります。
更新・移行・料金・期限の確認ポイント
| 項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 更新 | SharePoint Online側から段階的に展開される。サーバー更新作業は不要 |
| 設定 | Recipient groupsは既定で有効。新しい管理者設定は案内されていない |
| 移行 | 既存の署名依頼をRecipient groupへ変換する手順は案内されていない |
| 料金 | eSignature本体はAzure経由の従量課金 |
| 期限 | 管理者の対応期限はないが、2026年9月上旬までに運用ルールを決めておく |
| 展開完了 | 2026年9月末予定。テナントごとに反映時期が異なる可能性がある |
進行中の署名依頼が自動的にRecipient groupへ変更されるとは案内されていません。既存の依頼は従来の条件で完了させ、新しい依頼からRecipient groupsを使い始める運用が分かりやすいでしょう。
Recipient groupsに追加料金はかかるのか
2026年6月1日更新のMicrosoft公式料金表では、Microsoft 365 eSignatureは、作成した署名依頼1件あたり2米ドルです。現行の料金表では、1件の依頼に最大10人の受信者を含められるとされています。(Microsoft Learn)
Recipient groups自体に別料金を追加するとの発表はありません。ただし、今回のロードマップでは「1つの署名者枠に最大10人」と説明されており、グループのメンバーが既存の受信者数上限や課金計算でどのように数えられるかは明記されていません。
本番利用前に、次の点をMicrosoftの最新料金表と自社テナントで確認してください。
- グループメンバーが受信者数の上限に含まれるか
- 1件の依頼に複数のRecipient groupを設定できるか
- グループの人数によって課金額が変わらないか
- キャンセルや再作成時に新しい依頼として課金されるか
なお、公式情報では2026年6月まで、従量課金設定済みの組織はeSignatureを最大5件まで無償で試せるとされています。Recipient groupsの一般提供は9月予定のため、現在案内されている無償試用期間内に新機能を検証するのは難しい見込みです。(Microsoft Learn)
Recipient groupsが向いている業務
Recipient groupsは、署名者個人ではなく、役割や部署として1人の署名が必要な業務に向いています。
具体的には、次のようなケースです。
- 複数の部長のうち、対応可能な1人が署名する
- 当番制の担当者が申請書を処理する
- 法務部や購買部の代表者1人が確認する
- 拠点責任者と代理責任者のどちらかが署名する
- 担当者の休暇や出張で契約処理を止めたくない
一方、次のような文書では慎重な判断が必要です。
- 代表取締役など、署名者が明確に指定されている文書
- 全員の合意や署名が必要な契約書
- 職務権限規程で代理署名が認められていない申請
- 候補者全員への文書開示が許可されていない機密文書
- 特定の本人確認方法や署名方式が必要な手続き
Microsoft 365 eSignatureは、適用法令上の単純電子署名として提供されています。文書の種類によっては、特定の署名者、証明書、本人確認方法が求められるため、法務・コンプライアンス部門で適用可否を判断してください。(Microsoft Learn)
提供後に行う確認手順
機能が表示されたら、重要度の低い社内文書を使って次の順にテストします。
- eSignatureが有効なSharePointサイトへ検証用Word文書を保存する
- Wordデスクトップ版から署名依頼を開始する
- 1つの署名者枠へ2~3人の社内ユーザーを登録する
- グループ内の1人が署名する
- その署名者枠が完了扱いになることを確認する
- 署名済みPDFの保存場所と実際の署名者を確認する
- 通知メールと監査ログを確認する
- Azure Cost Managementで利用量と課金を確認する
Purview Auditでは、eSignature依頼の作成、送信、閲覧、署名、完了などの操作を検索できます。Recipient groupsを使う場合は、「誰が候補者だったか」だけでなく、「実際に誰が署名したか」を後から確認できる運用にしてください。(Microsoft Learn)
社外ユーザーを含むテストは、社内ユーザーで基本動作を確認した後に実施します。外部共有、条件付きアクセス、秘密度ラベルが関係するため、社内テストと社外テストを分けた方が、問題の原因を特定しやすくなります。
まとめ
SharePointのeSignatureに追加されるRecipient groupsでは、1つの署名者枠へ最大10人を登録し、最初に署名した1人で要件を満たせるようになります。
2026年6月12日の更新では、提供時期が2026年9月へ延期されました。管理者の必須設定はありませんが、署名権限、外部共有、監査、従量課金の確認は必要です。
まずは「特定の個人でなくても署名できる業務」を洗い出してください。9月の展開後に検証用サイトで動作と課金を確認し、問題がなければ契約・申請ワークフローへ段階的に導入するのが安全です。

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