SharePoint Online のモダンページで新入社員向けの案内ページを作り、Quick Links(クイック リンク)から PDF を開かせたら、右上の「×(閉じる)」で閉じた瞬間にドキュメント ライブラリへ飛んでしまう――この挙動は、導線が崩れて利用者が迷子になりやすい代表例です。原因を整理しつつ、“迷わせない戻り方”を実現する現実的な回避策をまとめます。
起きていること:PDFの右上に「×(閉じる)」が出て、閉じるとライブラリへ遷移する
SharePoint Online のサイト(モダンページ)上で、Quick Links などから PDF を開くと、ブラウザの通常表示とは違う「SharePointのプレビュー表示(ビューア)」として PDF が開くことがあります。このとき画面右上に「×(閉じる)」が表示され、閉じる操作をすると次のような遷移になりがちです。
- ユーザーは「案内ページに戻った」と思って×を押す
- 実際には、元の案内ページではなく「ドキュメント ライブラリ(一覧画面)」へ移動する
- 新入社員やゲストは、ナビゲーションや画面の意味が分からず迷う
- 本来期待した「戻る」導線(ブラウザの戻るで案内ページへ戻って読み進める)が崩れる
この現象は、PDFそのものが悪いのではなく、「どのURLで開いたか」「どのWebパーツがどうリンクを解釈したか」に強く依存します。
結論:標準機能で「×(閉じる)」を非表示にする設定はない
SharePoint Online の標準機能だけで、PDFプレビュー画面の「×(閉じる)」を消す設定は用意されていません。
この「×」は SharePoint 側が提供する共通のビューア(プレビュー体験)のUI要素で、サイトの設定やページ編集だけで「×を非表示」「閉じる先をホーム固定」にするようなカスタマイズはできません。ここで無理に“消す”ことを目指すと、遠回りになりやすいです。
現実的な落としどころは次のどちらか(または併用)です。
- そもそも「×付きプレビュー」で開かないURLでリンクする(=ブラウザの戻るで案内ページへ戻れる)
- 新しいタブで開く運用にして、タブを閉じれば案内ページが残るようにする
なぜ「×」が出るのか:リンクの種類で“開き方”が変わる
SharePoint のファイルURLにはいくつか系統があります。特に、Quick Links などで貼り付けるURLが「共有リンク(共有用URL)」になっていると、プレビュー体験に誘導されやすく、結果として「×(閉じる)」が出やすくなります。
| リンクの作り方 | URLの見分け方(例) | 開き方の傾向 | 閉じたときの戻り先 | 案内用途のおすすめ |
|---|---|---|---|---|
| 共有リンク(リンクをコピー) | https://tenant.sharepoint.com/:b:/r/sites/...?web=1 や e= などが付くことが多い | SharePointのプレビュー(×が出やすい) | ドキュメント ライブラリに飛ぶことがある | 非推奨(迷子が出やすい) |
| ファイルのパス(直接URL) | https://tenant.sharepoint.com/sites/サイト名/Shared%20Documents/... | ブラウザの通常表示になりやすい(×が出にくい) | ブラウザの「戻る」で案内ページに戻りやすい | 推奨(安定しやすい) |
| 新しいタブで開く設定 | URL自体は何でもOK(共有リンクでも事故りにくい) | 別タブで開く | タブを閉じれば案内ページが残る | 強く推奨(運用で事故を潰せる) |
| ページ内埋め込み(File Viewer) | ページ上にPDFを表示(リンクで遷移しない) | 案内ページの中で読める | そもそも移動が起きない | 最も迷いにくい(条件が合えば最適) |
ポイントは、「同じPDFでも、URLの種類と貼り付け場所で体験が変わる」という点です。だからこそ、回避策は“URLを変える”“開き方を変える”のが効きます。
回避策:共有リンクではなく「ファイルのパス(直接URL)」でリンクする
まず試す価値が高いのが、Quick Links でよく使いがちな「リンクをコピー(共有リンク)」ではなく、ファイルのPATH(パス)=直接URLを使う方法です。直接URLで開けるようになると、SharePointのプレビューUIに寄りにくくなり、結果として「×で閉じてライブラリへ」問題が落ち着くケースがあります。
手順(PATHをコピーして案内ページに貼る)
- ドキュメント ライブラリで対象のPDFを探す
- 対象PDFの…(その他)を開き、詳細(Details)を表示する
- 右側に出る詳細ペインの下部付近にあるPATH(パス)をコピーする(「リンクをコピー」ではない)
- 案内ページ側では、テキストWebパーツ(またはボタンWebパーツ)でリンクを作り、コピーしたURLを貼り付ける
ここで重要なのは、Quick Links に貼ると効かない/効きにくいことがある点です。Quick Links は入力されたURLを、内部的にプレビュー用URLに解釈し直すことがあり、結果として「×付きプレビュー」に戻ってしまうことがあります。
Quick Linksが効きにくいときの“現場的な”割り切り
- Quick Links は「入口」には便利だが、PDF誘導では体験が不安定になりやすい
- オンボーディング用途は「迷わせない」が最優先なので、テキストリンク/ボタンリンクへ寄せるのが堅い
直接URLに切り替えるメリット(案内ページ視点)
| 観点 | 共有リンク(リンクをコピー) | 直接URL(PATH) |
|---|---|---|
| 戻りやすさ | ×でライブラリへ飛ぶことがある | ブラウザの戻るでページに戻りやすい |
| URLの安定性 | パラメータが多く、期限・共有設定の影響を受けやすい | シンプルで運用変更の影響を受けにくい |
| ユーザーの安心感 | SharePoint特有の画面に飛びがち | ブラウザでPDFを開いた感覚に近い |
ただし、直接URLが万能というわけでもありません。ファイルの移動やリネームを頻繁にするとURLが変わるため、運用ルール(「案内用PDFは所定のフォルダに固定」「リネーム時は案内ページも更新」など)を合わせると安定します。
回避策:PDFは「新しいタブで開く」運用に切り替える
最も事故が少なく、現場で効くのが新しいタブで開く方式です。これなら、SharePointのプレビューで「×」が出ても、ユーザーはブラウザのタブを閉じるだけで元の案内ページへ戻れます。新入社員向けの案内は「次へ進む」が重要なので、戻り導線を“技術”ではなく“運用”で担保するイメージです。
Quick Linksで新しいタブを指定できる場合
- ページを編集モードにする
- Quick Links Webパーツを選択し、各リンクの編集(鉛筆アイコンなど)から「新しいタブで開く」を有効化する
- 公開して、クリック時に別タブで開くか確認する
Quick Links のUIや設定項目はレイアウトによって表示が違うことがあります。見当たらない場合は、次の「テキストリンク/ボタンリンク」で確実に実現するのが安全です。
テキストリンク/ボタンリンクで確実に新しいタブにする
SharePointページ側で「ボタン」や「テキストリンク」を使う場合、基本は設定で新しいタブを選べます。もしHTMLを扱える環境(WordPress側など)で同等の案内を作るなら、次のように target="_blank" を付けるだけで同じ運用にできます。
<a href="https://tenant.sharepoint.com/sites/サイト名/Shared%20Documents/Onboarding/guide.pdf" target="_blank" rel="noopener">
PDFを開く(新しいタブ)
</a>
SharePointページ上でも、新しいタブ運用を徹底すると、利用者の迷いが一気に減ります。特に以下の条件に当てはまるなら、新しいタブを第一候補にすると良いです。
- 新入社員/派遣/ゲストなど、SharePointに慣れていない人が読む
- 「ライブラリを見せたくない」「フォルダ構造を悟らせたくない」
- 案内ページを読み進めてほしい(次の手順へ進ませたい)
回避策:Quick Linksをやめて、テキストリンク/ボタンリンクへ寄せる
Quick Links は見栄えも良く、入口を作るには便利です。一方で、PDFのような“ファイル”への誘導では、リンクがプレビュー体験へ寄ってしまい、今回のような「×で閉じるとライブラリへ」現象に巻き込まれやすい面があります。
オンボーディングの導線を安定させたいなら、次のような構成が実務では強いです。
| 目的 | おすすめの作り | 理由 |
|---|---|---|
| 「必ず読んでほしいPDF」へ誘導 | ボタンWebパーツ(新しいタブ) | 迷わず押せる、戻りも確実 |
| 補足資料や参考リンク | テキストWebパーツ(直接URL) | プレビューに寄りにくく、挙動が読みやすい |
| ページ内に表示して読ませる | File Viewer Webパーツ | ページ遷移が起きず、導線が切れない |
Quick Links は「サイトの入口」「部署別ページへの誘導」など、“ページ遷移”には向きます。PDFのような“ファイル閲覧”は、別のパーツへ寄せた方がトラブルが減りやすいです。
回避策:ページ内にPDFを埋め込んで「そもそも移動しない」ようにする
もし案内ページの目的が「PDFを読ませること」なら、リンクで別画面へ飛ばすより、PDFをページ内に埋め込むほうが導線として強い場合があります。SharePointのモダンページには、PDFを表示できるFile Viewer(ファイル ビューアー)Webパーツがあります。
File Viewerが向いているケース
- 就業規則、入社手続き、社内ルールなど「読み進める資料」を案内ページに統合したい
- 「戻る」「閉じる」をユーザーに委ねたくない(迷子をゼロに寄せたい)
- 1ページにまとめて“次にやること”へ誘導したい
注意点
- PDFが長大だと、ページ内スクロールが重く感じることがある(分割や軽量化も検討)
- モバイル端末では表示体験がPCと異なることがある(社内の標準端末に合わせて検証)
- 権限は元ファイルの権限に依存するため、閲覧者が見られる場所に置く運用が必要
リンクで別画面へ飛ばす設計は、どうしても「戻り先問題」が付きまといます。ページ内埋め込みは、それ自体が“戻り先問題の根本回避”になります。
それでもライブラリに飛ぶときに見るべきチェックポイント
回避策を試しても挙動が変わらない場合、だいたい次のどれかが原因です。原因ごとに確認していくと、短時間で切り分けできます。
| 症状 | よくある原因 | 対処 |
|---|---|---|
| どのリンクでも「×」が出る | 共有リンク(/:%3Ab:/r/ のような形式)を貼っている | リンク元を見直し、PATH(直接URL)へ切り替える |
| テキストリンクだと戻れるが、Quick Linksだと戻れない | Quick Linksがプレビュー用URLに変換している | PDF誘導はテキスト/ボタンへ寄せる、または新しいタブ運用にする |
| リンクは直接URLのはずなのにプレビューになる | URLに web=1 等のパラメータが付いている/コピー元がプレビュー画面 | ドキュメント詳細のPATHから取り直す(貼り直す) |
| たまに404やアクセス不可になる | 共有リンクの期限切れ/共有設定変更/ファイル移動 | 直接URLに統一し、案内用フォルダ運用を固定する |
| フォルダ構造を見せたくない | ×でライブラリへ飛ぶ導線が残っている | 新しいタブ運用、またはFile Viewerでページ内表示にする |
“新入社員向け案内ページ”で迷子を出さない設計のコツ
この問題は、SharePointの機能仕様というより「案内ページの設計」に近いテーマです。新入社員が迷うポイントは、内容ではなく“画面の切り替わり”で起きます。次の考え方に寄せると、事故が減ります。
案内を「ページ中心」にして、ファイルは補助資料にする
最初に案内ページで「やること」を短く提示し、PDFは「読む」「確認する」単位でボタン化するのが強いです。ページに次アクションがあり続ける状態を作ると、離脱が減ります。
リンクの統一ルールを決める(作る側の迷いも消す)
運用ルールを1枚にまとめ、作る側のバラつきを抑えるだけで安定します。
| 項目 | 推奨ルール例 | 狙い |
|---|---|---|
| PDFリンク | 原則「新しいタブで開く」 | 戻り先を常に案内ページへ固定 |
| URLの種別 | 原則「PATH(直接URL)」 | プレビュー誘導・期限切れのリスク低減 |
| Webパーツ | PDF誘導はボタン/テキスト、Quick Linksはページ誘導 | Webパーツの癖を踏まえた安定運用 |
| ファイル置き場 | 案内用フォルダを固定、移動・リネームは手順化 | リンク切れ予防 |
「戻る」前提にしない導線も用意する
ブラウザの戻るは慣れていない人ほど使いません。案内ページ側に「次へ」「前へ」「ホームへ戻る」ボタンを置くと、心理的な迷いが減ります。SharePointページの下部に、次の案内ページへ進むボタンを置く運用も効果的です。
よくある質問
「×(閉じる)」をCSSなどで消せませんか?
標準機能だけでは消せません。開発(SPFx拡張など)で見た目を変える発想もありますが、Microsoft 365 のUIは更新されることがあり、DOMやクラス名に依存した非公式な変更は壊れやすいです。オンボーディングのように“止めたくない導線”ほど、URLと運用で回避する方が安全です。
「ライブラリを見せたくない」場合、どれが一番いいですか?
最優先でおすすめは新しいタブで開くです。次点で、案内ページ内に埋め込めるならFile Viewerでページ内表示が最も迷わせません。直接URLへの切り替えも効きますが、ユーザーの操作次第で別の遷移が起きる余地が残るため、運用で固める方が堅いです。
Quick Linksは使ってはいけないのですか?
使えます。向いているのは「部署別ページ」「申請フォームのページ」「研修ポータル」など、ページへ遷移するリンクです。今回のように「PDFを開かせる」用途は、挙動が不安定になりやすいので、ボタン/テキストに寄せるほうがトラブルが減ります。
結局、最短で直すなら何から手を付ければいいですか?
- PDFリンクを新しいタブで開くに統一する
- URLは共有リンクではなくPATH(直接URL)へ統一する
- Quick Links に貼っているPDFは、テキスト/ボタンリンクへ移す
この3点だけで、多くの環境で“迷子問題”は実務レベルで解消します。
まとめ:消すのではなく「×を押さなくても済む導線」に変える
SharePoint Online のPDFプレビューに出る「×(閉じる)」は、標準設定では非表示にできません。だからこそ、対策は「UIを消す」ではなく、プレビューで開かないリンクにする/新しいタブで開く/ページ内に埋め込むのいずれかで、ユーザーが迷わない戻り方を用意するのが現実解です。
新入社員向けの案内ページは、内容よりも“導線のストレス”で評価が決まります。リンクの統一と開き方の設計を整えて、案内ページから外に迷い込まない体験に仕上げていきましょう。

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