Microsoft Teams通話ログの保持がPurview DLM対応へ|管理者が確認すべき影響と設定ポイント

Microsoft Teamsの通話ログ保持に関する今回の更新は、Microsoft Purview Data Lifecycle Management(DLM)でTeamsの通話ログ、特にCDR(Call Detail Record)を保持・削除ポリシーの対象にできるようにする変更です。結論から言うと、管理者は「通話ログを何日残すべきか」を法務・監査・業務要件で見直し、必要に応じてPowerShellでCDR向けの保持ポリシーを作成する必要があります。公式ロードマップID 559261は、Microsoft PurviewのWeb向け機能としてWorldwide環境に掲載され、2026年4月の一般提供、ステータスはLaunched、更新日時はUTCで2026年5月8日となっています。日本時間では2026年5月9日の更新として扱えます。(Microsoft)

目次

Microsoft Teamsの通話ログ保持で何が変わるのか

Microsoft Teamsは、通話ログを複数の永続的な場所に保存します。その代表例がCDRログです。これまでCDRを含むTeamsの通話関連ログは、歴史的に無期限保持される前提の領域がありました。一方で、国や業界によっては通話関連データに最大保持期間が定められることがあり、無期限保持のままではコンプライアンス上のギャップが生じる可能性があります。今回の更新により、Microsoft Purviewの保持ポリシーでTeams通話レコードの保持・削除を制御できるようになります。(Microsoft Learn)

観点これまで更新後管理者が見るべきポイント
Teams通話ログCDRなどが長期・無期限に残る前提になりやすいPurview DLMで保持・削除制御の対象にできる法令や社内規程に合わせて保持期間を決める
CDR専用ポリシーGUIだけでは管理しづらいPowerShellで作成し、Purviewポータルでは読み取り専用で表示作成・変更手順を運用手順書に入れる
監査・eDiscoveryログが残る前提で調査フローを組みがち保持期間後に削除される可能性がある調査に必要な期間と削除要件を調整する
開発・BI連携長期取得できると誤解しやすいAPIやレポートごとの保持期間も別途確認が必要ETL、Power BI、独自DBの保存期間も合わせる

重要なのは、この更新を「Teamsの通話機能の変更」としてではなく、通話に関する証跡データのライフサイクル管理が変わる更新として捉えることです。ユーザーが通話する画面や通話品質そのものよりも、管理者が後から確認するログ、監査証跡、レポート、外部連携データに影響が出やすい領域です。

影響範囲は「Teams利用者」よりも管理者・法務・開発者に大きい

今回のMicrosoft Purview DLM Retention support Microsoft Teams call logsは、エンドユーザーの通話操作よりも、Microsoft 365管理者、コンプライアンス管理者、セキュリティ担当、法務、データ連携担当者に関係します。

対象者想定される影響確認すべきこと
Microsoft 365コンプライアンス管理者Teams通話ログの保持・削除ポリシー設計が必要になるPurview DLMの既存ポリシー、ホールド、eDiscovery要件
Teams管理者通話品質調査や管理センターでの確認期間に影響する可能性Teams管理センター、CQD、Graph APIとの役割分担
法務・監査担当国・業界ごとの最大保持期間に合わせやすくなる「最低保持期間」と「最大保持期間」を混同しない
開発者・BI担当通話ログを取得・保存するアプリやレポートの保存期間見直しが必要Graph API取得期間、独自DB、Power BIデータセットの削除設計
ヘルプデスク過去ログを前提にした問い合わせ対応が変わる可能性何日以前の通話情報を参照できないかを明文化する

Microsoft Graphのcall records APIでは、TeamsやSkype for Businessの通話・オンライン会議に関する利用状況や診断情報を扱えますが、call recordは通話または会議の終了後に作成され、保持期間は30日とされています。古いcall recordはAPIで返らないため、Purviewの保持ポリシーとは別に、開発者側の取得タイミングや保管設計も見直す必要があります。(Microsoft Learn)

また、Call Quality Dashboard(CQD)は通話終了後おおむね30分以内にデータが利用可能になり、CQD内では通話レコードが12か月保持されます。ただし、EUIIと呼ばれるエンドユーザー識別情報は28日後に削除されます。つまり「Teams通話ログ」「Graph call records」「CQD」は、同じ通話に関するデータでも保持期間や用途が同じではありません。(Microsoft Learn)

管理者が最初に確認すべき設定と判断基準

保持期間は「法令」「業務」「調査」の3軸で決める

Teams通話ログの保持期間を決めるときは、単に「長く残せば安心」と考えないことが重要です。通話ログには、発信者、参加者、時刻、通話種別、診断情報など、個人や業務行動に関わる情報が含まれます。長期保存は調査や分析には便利ですが、不要なデータを持ち続けるリスクも増えます。

実務では、次のように整理すると判断しやすくなります。

判断軸確認する内容例
法令・規制国や業界で最大保持期間が定められていないか特定地域の通話関連データは180日以内に削除する
業務要件問い合わせ、請求、通話品質調査に何日分必要かヘルプデスク調査に90日分、監査に1年分必要
セキュリティ・調査インシデント対応や内部調査に必要な期間はどれくらいか不正通話やなりすまし調査に180日分必要
データ最小化保存しても使わない期間はないか2年以上前の通話ログは実務で参照されない

おすすめは、いきなり全社一律で決めるのではなく、まず「規制上の上限がある地域」「Teams Phoneを多用する部門」「通話品質分析を行う部門」を分けて棚卸しすることです。

既存の保持ポリシーとホールドを棚卸しする

Microsoft Purviewでは、複数の保持ポリシーやeDiscoveryホールドが同じデータに関係することがあります。Teams保持ポリシーでは、保持と削除が競合する場合は保持が優先され、保持期間が異なる場合は長い期間が優先されます。また、訴訟ホールドやeDiscoveryホールドの対象になっている場合、完全削除が保留されます。(Microsoft Learn)

そのため、Teams通話ログの保持ポリシーを追加する前に、少なくとも以下を確認してください。

  • Teamsチャット、チャネルメッセージ、プライベートチャネルメッセージ向けの既存保持ポリシー
  • Exchange、SharePoint、OneDrive、Microsoft 365グループに対する保持ポリシー
  • eDiscoveryケース、訴訟ホールド、遅延ホールドの有無
  • 通話ログを参照する監査・セキュリティ運用の手順
  • 外部BI、SIEM、データウェアハウスに転送している通話関連データ

ここを省略すると、「Purviewでは削除したつもりなのに別の保持設定で残る」「逆に調査に必要なデータが想定より早く消える」といったトラブルにつながります。

CDR専用ポリシーはPowerShellで作成する

CDRに特化した保持ポリシーは、Microsoft Purviewポータルの画面操作だけで新規作成するのではなく、PowerShellコマンドレットで作成します。作成後は、Microsoft Purviewポータルの「Data lifecycle management > Policies」に表示されますが、読み取り専用として扱われます。(Microsoft Learn)

New-AppRetentionCompliancePolicyでは、アプリ保持ポリシーを作成でき、-Applicationsパラメーターの例としてUser:MicrosoftTeamsCallLogが示されています。また、New-AppRetentionComplianceRuleでは、保持アクション、保持日数、作成日基準か変更日基準かを指定できます。(Microsoft Learn) (Microsoft Learn)

構成イメージは次のとおりです。実運用では、テナントの要件、対象範囲、ロール、既存ポリシーを確認したうえで実行してください。

# 例:組織全体のTeams通話ログを180日後に削除対象にする構成イメージ

New-AppRetentionCompliancePolicy `
  -Name "Teams Call Logs - 180 Days" `
  -Applications "User:MicrosoftTeamsCallLog" `
  -ExchangeLocation All

New-AppRetentionComplianceRule `
  -Name "Teams Call Logs - Delete after 180 days" `
  -Policy "Teams Call Logs - 180 Days" `
  -RetentionComplianceAction Delete `
  -RetentionDuration 180 `
  -ExpirationDateOption CreationAgeInDays

ここで注意したいのは、PowerShellで作ったポリシーを後からPurviewポータルで自由に編集できるとは限らない点です。読み取り専用で表示される前提なら、作成前にポリシー名、保持期間、対象範囲、コメントを慎重に決めておくべきです。

適用後すぐに結果が出るとは考えない

保持ポリシーは、作成して保存した直後にすべての対象へ即時反映されるわけではありません。Microsoftのドキュメントでは、保持ポリシーの適用には最大7日かかる場合があると説明されています。配布状況はPurviewポータルの保持ポリシー画面で確認でき、エラーがある場合はPowerShellで再配布を試す手順も示されています。(Microsoft Learn)

運用では、次のようなスケジュールを組むと安全です。

フェーズやること目安
設計保持期間、対象、例外、ホールドとの関係を決める本番適用前
検証限定スコープでポリシーを作成し、配布状況を確認数日〜1週間
本番展開全社または対象部門へ適用変更管理プロセスに沿って実施
確認eDiscovery、レポート、Graph連携、ヘルプデスク手順を確認適用後1〜2週間
定期見直し法令・監査要件・業務要件の変更を確認四半期または半期ごと

移行・展開で失敗しやすいポイント

Teamsの「通話ログ」と「チャット・ファイル・録画」を同じポリシーで考えてしまう

Teamsの保持管理では、チャット、チャネルメッセージ、ファイル、会議録画、トランスクリプト、通話ログを同じものとして扱うと失敗しやすくなります。

Teamsで使われるメールやファイルは、Teams用の保持ポリシーだけでは対象にならない場合があります。たとえば、チャットで共有されたファイルは共有者のOneDrive、チャネルにアップロードされたファイルはチームのSharePointサイトに保存されます。Teams会議の録画やトランスクリプトも、保存場所に応じてOneDriveやSharePoint側の保持ポリシーを考える必要があります。(Microsoft Learn)

つまり、Teams通話ログの保持ポリシーを整えても、Teamsに関連するすべてのデータライフサイクル管理が完了するわけではありません。Teams全体のコンプライアンス設計として、少なくとも次の保存先を分けて確認してください。

データ種別主な管理場所確認ポイント
Teams通話ログ/CDRMicrosoft Purview DLM、PowerShellCDR専用ポリシーの作成と保持期間
TeamsチャットTeams chatsの保持ポリシーユーザー単位、組織全体の適用範囲
チャネルメッセージTeams channel messagesの保持ポリシーチーム単位の適用、共有チャネル
チャット添付ファイルOneDrive共有者のOneDrive保持ポリシー
チャネル添付ファイルSharePointチームのSharePointサイト保持ポリシー
会議録画・トランスクリプトOneDriveまたはSharePoint録画・文字起こしの保持要件

プライベートチャネルの保存場所変更を見落とす

Teamsでは、2025年末に向けてプライベートチャネルメッセージの保存場所が変更される説明があります。移行前はユーザーメールボックスに保存され、専用のTeams private channel messagesロケーションが必要でしたが、移行後は標準チャネルや共有チャネルと同様にグループメールボックスへ保存され、Teams channel messagesの保持設定が適用される形になります。(Microsoft Learn)

これは今回のTeams通話ログ更新そのものではありませんが、Teams全体の保持ポリシーを見直すタイミングでは必ず確認すべき点です。通話ログだけを整えても、チャネルメッセージ側の移行を考慮していないと、保持期間の不整合が残ります。

Graph APIやCQDの保持期間とPurview DLMを混同する

開発者やBI担当者が特に注意すべきなのは、Microsoft Graphのcall records API、CQD、Purview DLMが同じ保持期間で動くわけではないことです。

GraphのGet callRecord APIでは、call recordは通話または会議終了後に作成され、30日間利用可能です。30日を超えたcall recordは返されず、リクエストは404 Not Foundになります。(Microsoft Learn)

一方、CQDでは通話レコードが12か月保持されますが、エンドユーザー識別情報は28日後に削除されます。通話品質分析、監査調査、利用状況レポートは、どのデータソースを使うかによって見える情報と保持期間が異なります。(Microsoft Learn)

Preservation Lockを早い段階で有効化しない

New-AppRetentionCompliancePolicyには、Preservation Lockに関係するRestrictiveRetentionパラメーターがあります。ポリシーをロックすると、管理者を含めてポリシーを無効化したり、保持条件を緩めたりできなくなります。期間を延ばすことはできても、短縮や無効化はできません。(Microsoft Learn)

コンプライアンス要件が明確で、法務・監査・情報システム部門の合意が取れている場合を除き、初期展開でいきなりロックするのは避けるべきです。まずはロックなしで設計を検証し、影響範囲を確認してから判断しましょう。

開発者・データ連携担当者が確認すべきこと

Teams通話ログをアプリ、BI、SIEM、データウェアハウスへ連携している場合、今回の更新は運用ルールの見直し対象です。Microsoft Graphのcall records APIでは、変更通知を使ってcall recordを継続的に受け取ることができ、通話・オンライン会議の利用状況や診断情報をカスタムレポートや通話品質トラブルシューティングに活用できます。(Microsoft Learn)

確認すべきポイントは次のとおりです。

確認項目理由対応例
API取得タイミングcall recordは30日を超えると取得できない日次または数時間単位で取得処理を走らせる
独自DBの保存期間Purviewで削除しても外部DBに残ると意味がないDB側にも削除ジョブやTTLを設定する
エラー処理古いcall recordは404になる404を障害扱いせず、期限切れとして処理する
権限CallRecords.Read.Allは強い権限最小権限、管理者同意、アクセスレビューを行う
データ分類通話メタデータは個人情報に該当し得るデータ台帳、プライバシー通知、DPIAを更新する
レポート粒度PSTN/Direct Routingログは全体像の一部にすぎないCQD、Teams管理センター、Graphの差を明記する

Microsoft Graphのドキュメントでは、PSTNやDirect Routingのログ行は通話製品の利用状況把握に役立つ一方、より大きな通話・会議体験の一部だけを反映する場合があると説明されています。ログ行IDからcallRecordオブジェクトを取得できるわけでもありません。(Microsoft Learn)

そのため、開発者は「Teams通話ログを取っている」と一括りにせず、どのAPI、どのレポート、どのデータ項目を保存しているのかを明確にする必要があります。

導入前の実務チェックリスト

チェック項目担当完了基準
Microsoft 365 Roadmap ID 559261の状態確認Microsoft 365管理者対象テナントで機能提供状況を確認した
通話ログの保持要件を整理法務・監査・情シス最小保持期間、最大保持期間、例外条件が文書化された
Teams通話ログを使う業務を棚卸しTeams管理者ヘルプデスク、通話品質調査、監査利用を整理した
外部連携先を確認開発・BI担当Graph、CQD、SIEM、DWH、Power BIの保存期間を確認した
既存Purviewポリシーを確認コンプライアンス管理者Teams、Exchange、SharePoint、OneDrive、ホールドを一覧化した
CDR保持ポリシーを設計コンプライアンス管理者PowerShellで作成するポリシー名、期間、対象を決めた
検証環境または限定範囲でテスト情シス配布状態、eDiscovery、レポート影響を確認した
運用手順書を更新情シス・ヘルプデスク「いつまで通話ログを参照できるか」を明記した
定期レビューを設定情シス・法務半期または年次の見直し予定を決めた

今回の更新で取るべき次のアクション

Microsoft Teamsの通話ログ保持は、これまで見落とされやすい領域でした。今回のMicrosoft Purview Data Lifecycle Management対応により、Teams call logsを組織の保持・削除ルールに合わせて管理しやすくなります。

まず行うべきことは、PowerShellを実行することではありません。先に、どの通話ログを、誰が、何のために、何日必要としているのかを棚卸ししてください。そのうえで、法令上の最大保持期間、業務上の必要期間、eDiscoveryやインシデント対応の要件をすり合わせ、CDR専用ポリシーを設計します。

特に、Graph APIやCQD、外部BIに通話データを保存している組織では、Purviewだけを変更してもデータライフサイクル管理は完了しません。Teams通話ログを「Microsoft 365内のログ」だけでなく、「外部に複製されたデータ」まで含めて管理することが、今回の更新を安全に活用するための実務上のポイントです。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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