Microsoft Tech CommunityのMicrosoft Teams Blogで2026年6月17日に公開された「Engage customers with Teams Phone Agent and custom voice agents built in Copilot Studio」では、Teams PhoneにAI音声エージェントを組み込み、顧客からの電話を自然な会話で処理できる新機能が発表されました。公式記事は6月18日にVersion 2.0へ更新されています。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)
今回のポイントは、通常のTeams利用者に新しい操作が追加されることではありません。電話窓口を運用する企業が、問い合わせ対応、予約受付、担当部署への転送、業務固有の手続きをAIで自動化できるようになることです。
ただし、現時点では一般提供ではなく、Frontier Public Previewです。導入を検討する管理者は、ライセンスやリソースアカウントだけでなく、2026年7月初旬に予定されている課金開始への準備も必要です。
Microsoft Teams TechCommunityで発表された主な変更点
今回発表された変更を整理すると、次のとおりです。
| 変更項目 | 内容 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| Teams Phone Agentの提供 | Frontierプログラムで利用可能 | 顧客向け電話窓口をAIで自動化できる |
| 問い合わせへの自動回答 | ファイルやURLを知識ソースとして自然な会話で回答 | 営業時間や手続きなどの定型問い合わせを削減 |
| 予約対応 | 予約の新規登録、変更、キャンセル、確認に対応 | 予約受付業務を電話だけで完結しやすくなる |
| 会話型ルーティング | 利用者や内線、コールキューなどへ会話内容に応じて転送 | 従来の番号選択式メニューを簡略化できる |
| 会話コンテキストの引き継ぎ | AIとの会話内容を引き継いで担当者へ転送 | 顧客が同じ説明を繰り返す負担を減らせる |
| 多言語対応 | 60以上の対応言語で会話可能 | 海外顧客向け窓口にも活用できる |
| Copilot Studio連携 | 業務固有のカスタム音声エージェントへ転送可能 | 請求確認や注文状況など独自処理を実装できる |
| 直接着信 | Copilot Studio音声エージェントに電話番号を割り当て可能 | Teams Phone Agentを経由しない専用窓口も作成できる |
Teams Phone Agentは、単に音声をテキストへ変換する機能ではありません。質問の意図を判断し、回答、予約、転送などの処理を会話の中で進める点が従来の自動応答との大きな違いです。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)
Teams Phone AgentとCopilot Studio音声エージェントの違い
両者は似ていますが、担当する範囲が異なります。
| 項目 | Teams Phone Agent | Copilot Studioカスタム音声エージェント |
|---|---|---|
| 主な目的 | 一般的な電話受付の自動化 | 企業固有の業務処理の自動化 |
| 主な機能 | Q&A、予約、会話型転送、多言語対応 | 請求確認、注文照会、申請受付など |
| 作成方法 | Teams管理センターを中心に設定 | Copilot Studioで会話や処理を設計 |
| 電話の受け方 | Teams Phoneの受付として応答 | Teams Phone Agentから転送、または直接着信 |
| 外部システム連携 | 標準機能が中心 | CRMや社内システムなどとの連携を設計可能 |
| 適した用途 | 代表電話、店舗窓口、予約窓口 | 業務専用ダイヤル、夜間受付、自動手続き |
例えば、営業時間や店舗所在地の案内はTeams Phone Agentに任せ、注文状況の確認が必要になった場合だけCopilot Studioのカスタム音声エージェントへ引き継ぐ構成が考えられます。
すべてを一つの大規模なAIエージェントに任せるより、一般的な受付と業務固有の処理を分ける方が、誤回答の防止や運用管理を行いやすくなります。
誰に影響する変更なのか
通常のTeamsユーザー
チャットや会議を利用しているだけのユーザーに、直ちに必要な操作はありません。本発表は、顧客向け電話対応を行う組織を対象としたプレビュー機能です。
通話が転送された従業員には、それまでの会話内容が引き継がれるため、問い合わせ理由を把握しやすくなる可能性があります。
電話窓口の担当者
定型的な問い合わせや予約変更をAIに任せられるため、人が対応すべき複雑な相談へ集中しやすくなります。
一方、AIで処理できない問い合わせの転送先、営業時間外の処理、誤認識時の案内などを事前に決めておく必要があります。
Teams管理者
Teams Phoneのリソースアカウント、電話番号、コールフロー、転送先、ライセンスを設定します。
特に直接着信させる場合は、AI Agentタイプのリソースアカウントを作成し、Teams Phone Resource Accountライセンスと電話番号を割り当てる作業が必要です。(Microsoft Learn)
Copilot Studioの管理者・作成者
音声エージェントの会話、ナレッジ、アクション、外部システム連携を設計します。また、Copilot Studioのライセンス、利用量、課金設定も管理対象になります。
管理者が確認すべき設定手順
Frontierとプレビュー利用権限を確認する
Teams Phone AgentとCopilot Studio連携は、Frontier Public Previewで提供されています。さらに、Copilot StudioとTeams Phone Agentの連携は、Microsoft Supportによるテナント単位の明示的な有効化が必要です。
Copilot Studioに「Teams Phone Agent」チャネルが表示されない場合は、設定ミスではなく、テナントが有効化されていない可能性があります。(Microsoft Learn)
必要なライセンスを確認する
主に確認する項目は次のとおりです。
- テナント内に少なくとも1つのTeams Phoneライセンスがあるか
- リソースアカウントごとにTeams Phone Resource Accountライセンスがあるか
- Copilot Studioのテナントライセンスまたは利用可能な課金設定があるか
- 作成担当者にCopilot Studioユーザーライセンスまたは必要な権限があるか
- Copilot Studioの利用量を支払うためのFundingが設定されているか
Frontier Public Preview期間中、Teams Phone Agentの基本機能に追加のTeams Phoneライセンスは必要ないと案内されています。ただし、Teams Phoneを利用するための基本ライセンスやリソースアカウントは引き続き必要です。(Microsoft Learn)
Copilot Studio環境のリージョンを確認する
Copilot StudioのTeams Phone Agent連携では、サポート対象リージョンに環境を作成する必要があります。
日本リージョンのCopilot Studio音声エージェントはサポート対象外とされていますが、日本にあるテナント自体が利用できないという意味ではありません。日本企業が検証する場合は、サポート対象リージョンに環境を作成できるかを確認し、データ処理場所や社内のデータ管理基準も併せて検討してください。
対象環境では、Dataverseデータストアを有効にし、「Get new features early」は無効にする必要があります。(Microsoft Learn)
Copilot Studioで音声エージェントを作成する
現在のTeams Phone Agent連携でサポートされるのは、基本音声エージェントとクラシックオーケストレーションです。リアルタイム音声エージェントはサポートされていません。
設定時は次の点を確認します。
- Copilot Studioで音声エージェントを作成する
- 「Settings」からオーケストレーションをクラシックに設定する
- 認証を「No authentication」に設定する
- 「Channels」から「Teams Phone Agent」を追加する
- エージェントを公開する
生成型オーケストレーションは現時点でサポートされておらず、選択すると5~6秒程度の遅延が発生する可能性があると案内されています。(Microsoft Learn)
Teams管理センターでエージェントを関連付ける
公開後は、Teams管理センターの以下の場所でエージェントを確認します。
Voice > Templates & Resources > Agents and Queues
Teams Phone Agentのコールフローから利用する場合は、「Agents and Queues」を転送先として選択し、作成したCopilot Studioエージェントを指定します。(Microsoft Learn)
直接電話を受ける構成では、次の手順を使用します。
Voice > Resource accountsを開く- リソースアカウントの種類に「AI Agent」を選択する
- Teams Phone Resource Accountライセンスを割り当てる
- 必要に応じて電話番号を割り当てる
- Agent SourceからCopilot Studioエージェントを選択する
- 保存後、実際の電話で動作確認する
電話番号を割り当てない場合、原則としてテナント内のTeamsユーザーからVoIP経由で呼び出す構成になります。(Microsoft Learn)
料金はいつから発生するのか
Copilot Studioのカスタム音声エージェントは、利用量に応じた従量課金です。
公式ブログでは、Teams PhoneにおけるCopilot Studio音声エージェントの課金機能を2026年7月初旬までに展開する予定としています。課金機能の展開前は利用料金が発生しませんが、展開後も利用を続けるには、Frontier利用者も課金設定が必要です。(TECHCOMMUNITY.MICROSOFT.COM)
Copilot Studio全体で公表されている音声利用の消費レートは次のとおりです。
| 音声タイプ | 1分当たりの消費量 |
|---|---|
| Classic Voice/Classic orchestration | 10 Copilot Credits |
| GenAI Voice | 35 Copilot Credits |
| Premium GenAI Voice | 75 Copilot Credits |
例えば、Classic Voiceで月1,000分利用した場合、音声部分だけで10,000 Copilot Creditsが目安になります。実際の消費量は、会話内で実行するアクションやAIツールなどによって増える可能性があります。(Microsoft Learn)
ただし、現在のTeams Phone Agent連携では基本音声エージェントとクラシックオーケストレーションのみがサポートされています。料金を試算する際は、Copilot Studio全体の料金表だけでなく、利用するTeams Phoneチャネルの対応範囲も確認してください。
日本円での契約価格は契約形態や購入方法によって異なるため、固定金額で判断せず、Microsoft 365管理センター、Azure課金設定、最新のCopilot Studio Licensing Guideで確認するのが確実です。
既存の自動応答から移行する必要はあるか
今回の発表では、既存の自動応答やコールキューからの強制移行は案内されていません。一般提供日や移行期限も公表されていません。
既存環境を一度に置き換えるのではなく、次の順序で段階的に導入する方法が現実的です。
- 営業時間や所在地など、回答が明確な問い合わせから試す
- AIが回答できない場合は既存のコールキューへ転送する
- 予約変更など、限定された業務を追加する
- Copilot Studioで注文照会などの専用処理を作成する
- 精度と利用量を確認して対象範囲を広げる
AI音声エージェントを既存の電話窓口の前段に配置すれば、現在の電話番号やコールキューを残しながら検証できます。
導入時に失敗しやすいポイント
| 症状 | 確認する項目 |
|---|---|
| Teams Phone Agentチャネルが表示されない | Microsoft Supportによるテナント有効化、対象環境、リージョン |
| エージェントを公開できない | Copilot Studioテナントライセンス、ユーザーライセンス、権限 |
| 応答が大きく遅れる | 生成型オーケストレーションを選択していないか |
| Teams管理センターにエージェントが出ない | チャネルの追加と再公開が完了しているか |
| 外部の電話から着信できない | リソースアカウントへの電話番号割り当て |
| 転送先が正しく選ばれない | Tag Template、コールキュー、転送先の関連付け |
| 7月以降に利用を継続できない | Copilot Studioの課金またはFunding設定 |
| 日本の環境で作成できない | サポート対象リージョンに環境を作成しているか |
また、Teams Phone Agentチャネルでは、外部の発信者が利用できるように認証を「No authentication」に設定します。顧客情報や支払いに関する処理を実装する場合は、電話番号だけで本人と判断せず、別の本人確認手順、処理上限、人への転送、監査方法を設計してください。
プレビュー機能は仕様や制限が変更される可能性があります。最初から代表電話全体へ適用せず、検証用番号や限定したコールフローで、誤回答、無音、割り込み、転送失敗、営業時間外の動作を確認することが重要です。(Microsoft Learn)
今すぐ確認すべきこと
Teams Phone AgentとCopilot Studio音声エージェントの連携により、Teams Phoneは従来の番号選択式の電話受付から、会話によって回答や手続きを進める仕組みへ拡張されます。
導入を検討する管理者は、まず次の3点を確認してください。
- Frontierへの参加とテナントのプレビュー有効化が可能か
- Teams Phone、リソースアカウント、Copilot Studioのライセンスがそろっているか
- 2026年7月初旬の課金展開に備えて、Copilot Creditsまたは従量課金を設定できるか
条件を満たしている場合でも、現段階ではプレビューです。問い合わせ件数が多く、回答内容を限定しやすい業務を一つ選び、既存のコールキューへ戻せる構成で検証を始めるのが安全です。

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