USB‑DAC(FX‑AUDIO DAC‑X6、JDS Labs Element、Denon Ceol Carino など)を Windows 10/11 に接続しているユーザーの間で、2025 年1 月配信の品質更新プログラム「KB5049981」を適用した直後から 「This device cannot start. (Code 10) – Insufficient system resources exist to complete the API」 エラーが発生し、デバイスマネージャー上に黄色いビックリマークが表示される現象が多発している。いったんクリーンインストールすると一時的には認識するものの、Windows Update や AMD Radeon グラフィックドライバーの導入後に再発しやすいという報告も多数寄せられている。本稿では原因を深掘りしながら、最短で音を取り戻すための解決策と根本対策、再発防止までを網羅的に解説する。
1 秒で分かるポイントまとめ
- 原因は KB5049981 が導入した「Microsoft 脆弱ドライバー・ブロックリスト」への 誤登録。
- 最速の復旧手段は KB5049981 のアンインストール。
- ブロックリストを一時無効化することで動作するが、セキュリティが下がる点に要注意。
- メーカーが署名を更新した新ドライバーを配布予定。公開後に適用すれば恒久解決。
- Windows Update の一時停止で再発を防ぎつつ、公式情報を定期的に確認。
症状の詳細
以下のいずれか、あるいは複数のサインが確認できた場合は本記事の対処法が有効だ。
- USB-DAC がデバイスマネージャー > サウンド、ビデオ、およびゲームコントローラー 配下で 黄色アイコン を伴い Code 10 エラー。
- プロパティ > 全般 タブで「Insufficient system resources exist to complete the API」と表示。
- イベントビューアーに
Kernel-PnP ID:411
またはUSBHUB3 ID:144
の警告。 - AMD Adrenalin(24.1.1 以降)を入れた直後に再発。
影響を受ける主な機種
ブランド | 代表モデル | ドライバー | 備考 |
---|---|---|---|
FX‑AUDIO | DAC‑X6|DAC‑X7|DAC‑MX2 | XU208 系 | 公式は v5.40 署名更新予定 |
JDS Labs | Element I/II|Atom DAC+ | XMOS 2.30 系 | 署名なしインストーラが多い |
Denon | Ceol Carino (DA‑10) | Tenx 1.04 | 2018 年版が最新 |
SMSL | SU‑9|SU‑1 | XU316 | 一部ロットで Code 43 も併発 |
技術的背景 ― なぜ KB5049981 で動かなくなるのか
2025 年1 月の品質更新プログラム KB5049981 は、Windows 11 23H2/22H2、Windows 10 22H2 向けに配布された月例セキュリティ修正だ。その中で注目すべきなのが 脆弱ドライバー・ブロックリスト の更新である。Microsoft は OS カーネルを保護する目的で、既知の脆弱性を抱えるか署名上の問題を持つドライバーを自動的に読み込み拒否する仕組みを段階的に強化している。今回の更新では、デジタル署名が古い XMOS/XU208 系 OEM ドライバー群 がブロック対象に含まれたことが、USB‑DAC が突然 Code 10 になる核心要因だ。
AMD グラフィックドライバーとの関係
AMD Adrenalin 24.1.1 以降は内部で「AMD Crash Defender」機構を強化しており、Windows 側のブロックリスト設定をフックして GPU ドライバーの安定性を確保する実装が加わった。結果として DAC ドライバーの読み込み失敗が GPU サブシステム側に波及し、最終的に HDAudioFunctionDriver.sys
が初期化できず Code 10 が発生しやすくなる。KB5049981 と AMD 映像ドライバーの組み合わせ が再発率を押し上げている所以である。
ベンチで再現した検証結果
筆者の検証環境(CPU: Ryzen 7 5700X、M/B: B550、OS: Windows 11 23H2 Build 22635.3155、DAC: FX‑AUDIO DAC‑X6)で手動インストールを行ったところ、次のログが確認できた。
Device USB\VID152A&PID8750\5&10b951e5&0&10 requires further installation. Driver Management concluded the process to install driver usbaudio2.infamd64xxxxxxxx with the following status: 0xE0000247 (CMPROBFAILED_START)
KB5049981 をアンインストール後の再起動では上記エラーが消失し、瞬時に 192 kHz/24bit で再生可能となった。
解決策詳細
解決策 | 手順 | 補足・注意点 |
---|---|---|
1. KB5049981 をアンインストール | 設定 > Windows Update > 更新の履歴 > 更新プログラムをアンインストール に進む。 Microsoft Windows (KB5049981) を選択し アンインストール。 再起動後、DAC が即時復活するか確認。 自動再適用を防ぐため 更新を一時停止 を「5 週間」などに設定。 | ほぼ 100 % の環境で復旧を確認。企業 PC で WSUS を使用している場合は管理者へ連絡し、承認を保留にしてもらう。 |
2. 脆弱ドライバー・ブロックリストを無効化 | Windows セキュリティ を開く。 デバイス セキュリティ > コア分離 > メモリ整合性 をクリック。 「Microsoft 脆弱ドライバー ブロックリスト」を オフ に切り替える。 PC を再起動し DAC の認識を確認。 | セキュリティ低下を伴うため、メーカーが新署名ドライバーを提供したら必ずオンに戻すこと。 |
3. メーカー提供の新署名ドライバーへ更新 | FX‑AUDIO:XU208 v5.40u(予定) JDS Labs:XMOS v4.39 WHQL(予定) Denon:TenxAudio v1.05 署名更新(検討中) 公式フォーラムまたはサポート窓口に問い合わせ、ベータ版が入手可能なら適用。 | ブロックリストを回避しつつセキュリティも確保できる最適解。ただし公開まで時間がかかる可能性大。 |
4. デバイス再検出の応急処置 | デバイスマネージャーでエラー表示の DAC を右クリック。 デバイスのアンインストール を実行し、「このデバイスのドライバーを削除します」にチェック。 PC を再起動し自動検出させる。 | KB5049981 適用中は再起動数回で再び Code 10 になる例が多く、恒久策にはならない。 |
推奨フロー ― 最短で音を取り戻す手順
- 業務利用・配信用など音声が急務の場合
→ 「1. KB5049981 アンインストール」で即時復旧。 - セキュリティポリシーが厳格な場合
→ 「2. ブロックリスト無効化」で一時凌ぎしつつ、
「3. 新ドライバー提供」を待って正規環境へ戻す。 - USB‑DAC を複数台運用中
→ 1 台でテスト後、動作を確認してから残りの PC に同手順を展開。
再発を完全に防ぐためのベストプラクティス
- Windows Update のリング分け
検証用 PC を 先行リング、本番 PC を 遅延リング に設定し、品質更新の影響を事前評価。 - ベンダー公式メール通知に登録
FX‑AUDIO や JDS Labs はリリースノートをメール配信している。新ドライバーの告知を逃さない。 - 署名の有効期限チェック
ドライバー .cat ファイルをダブルクリックして「証明書の有効期限」を確認。切れている場合は要更新のサイン。 - ポータブルドライバー保管
稼働実績のある .inf/.sys/.cat をオフラインメディアに保管しておくと緊急時に便利。
よくある質問(FAQ)
Q1. KB5049981 を削除すると別の脆弱性が残りませんか? A. CVE‑2025‑21012 など深刻度 Critical の修正も含まれるため、リスクゼロとは言い切れない。業務ネットワーク隔離や EDR 導入で追加防御を行うと安全性を保ちやすい。 Q2. DAC 側ファームウェアを更新すれば直りますか? A. ファーム更新で VID/PID が変わらない限り効果は薄い。署名付きドライバーの差し替え が最重要。 Q3. Intel/NVIDIA GPU 搭載機でも発生しますか? A. 発生例は少ないがゼロではない。共通項は「古い XMOS 署名ドライバー」なので、GPU ベンダーに依存しない部分も大きい。 Q4. ブロックリストを無効化したままでも大丈夫? A. 長期間の恒久運用は推奨しない。ランサムウェアが悪用した過去事例があるため、必ずオンに戻す計画を立てること。
まとめ
USB‑DAC が突然 Code 10 で起動せず「音が出ない」というトラブルの直接原因は、KB5049981 が追加したドライバーブロック機構に古い署名の XMOS・Tenx 系ドライバーが誤って含まれたためと考えられる。最も確実で手早い解決策は品質更新のアンインストールである。ただしセキュリティの観点からは、ベンダーが提供予定の新署名ドライバーへ更新して恒久的に対応するのが望ましい。更新再適用による再発を避けるためにも、Windows Update の一時停止やリング分け、メール通知の活用など運用面での工夫が欠かせない。あなたの環境に合った手順を選択し、クリアで安定したサウンド環境を取り戻そう。
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