Wordで章を必ず偶数ページから開始するために「セクション区切り(偶数ページ)」を使うと、条件によっては空白ページが自動挿入されます。印刷やPDF化のときだけ、その空白ページに “This page has been left intentionally blank” を入れたい場合は、マクロ不要で安全に運用できる方法があります。
Wordの「セクション区切り(偶数ページ)」で空白ページが出る理由
Wordの「セクション区切り(偶数ページ)」は、次のセクション(=次章など)を必ず偶数ページから開始させる機能です。これ自体は便利ですが、章が偶数ページで終わると、次章を偶数ページ開始にするために1ページ分“飛ばす”必要が出てきます。その結果、Wordは見た目上「空白ページ」を挿入します。
| 章末のページ番号 | 次章を偶数ページ開始にする動き | 起きること |
|---|---|---|
| 奇数ページで終わる | 次のページが偶数なので、そのまま次章へ | 空白ページは発生しない |
| 偶数ページで終わる | 次のページが奇数なので、さらに次の偶数へ飛ばす必要がある | “空白ページ”が1枚挿入されやすい |
問題は、この「自動で挿入される空白ページ」が通常の本文として編集できない(カーソルが置けない、本文として文字を入れにくい)ことです。そこで、発想を転換します。
発想の転換:Wordに空白ページを“自動生成”させず、必要なときだけ自分で1ページ作る
ポイントはシンプルで、Wordが勝手に挿入する“空白ページ”に文字を入れるのではなく、空白ページが必要なタイミングだけ、文書の一部として1ページを自分で生成します。
そのために使うのが、Word標準機能のフィールド(IFフィールド)です。ページ番号の偶奇を判定して、条件に合うときだけ「改ページ+文言」を出力します。
- 章末が偶数ページのときだけ「意図的に空白」ページを出す(=次章の偶数ページ開始を崩さない)
- 章末が奇数ページなら何も出さない(=余計なページを増やさない)
- マクロ不要(セキュリティポリシーや環境差の影響を受けにくい)
仕組みの核心:MOD関数でページ番号の偶奇を判定する
偶数・奇数判定の定番は「2で割った余り」です。Wordフィールドでは、次の考え方を使います。
| 式 | 意味 | 結果 |
|---|---|---|
| MOD(ページ番号, 2) | ページ番号を2で割った余り | 偶数ページなら0、奇数ページなら1 |
Wordでは、これをフィールドコードで次のように書けます(\* Arabic はページ番号を算用数字として扱う意図です)。
{ =MOD({ PAGE \* Arabic },2) }
完成形のフィールドコード(偶数ページ開始に合わせた版)
今回の要件は「章を偶数ページ開始にしたい」「章末が偶数ページのときにだけ、間に入るページへ文言を出したい」です。つまり、章末が偶数(MOD=0)のときに“改ページ+文言”を出すのが正解です。
まずは完成形を提示します。Wordに貼り付けて動くのは“フィールド”なので、記事中の { } をキーボードで打つのではなくCtrl+F9で入れる必要があります(手順は後述)。
| 用途 | IFフィールドの例 | どのとき文言ページが出るか |
|---|---|---|
| 次章を偶数ページ開始(今回のケース) | { IF { =MOD({ PAGE \* Arabic },2) } = 0 "[手動改ページ]This page has been left intentionally blank." " " } | 章末が偶数ページのとき |
| 次章を奇数ページ開始(参考) | { IF { =MOD({ PAGE \* Arabic },2) } = 1 "[手動改ページ]This page has been left intentionally blank." " " } | 章末が奇数ページのとき |
ここでの [手動改ページ] は文字ではなく、フィールド結果の文字列の先頭にCtrl+Enter(手動改ページ)を実際に挿入します。これにより、文言が章末の本文に混ざらず、次ページに1ページ分だけ文言ページが生成されます。
挿入場所が最重要:章末の「セクション区切り(偶数ページ)」の直前に置く
この方法が安定して動くかどうかは、挿入位置でほぼ決まります。基本は次の位置です。
- 章末(次章のセクション区切りの直前)に置く
- できれば、章末に1行空行(段落)を作り、その段落にフィールドだけを置く
- その直後に「セクション区切り(偶数ページ)」がある状態にする
逆に、次章側(セクション区切りの後)に置くと、参照されるページ番号の考え方が変わり、意図とずれやすくなります。
実装手順(Ctrl+F9/Alt+F9を使って確実に作る)
ここからは、Wordの操作として「失敗しない作り方」を手順化します。慣れると1章あたり30秒程度で入れられます。
事前準備:記号を見える化して事故を防ぐ
- ホームタブの「¶(編集記号の表示/非表示)」をオンにする
- 章末にある「セクション区切り(偶数ページ)」が見える状態にする
手順:IFフィールドを入れて入れ子を作る
- 章末のセクション区切り(偶数ページ)の直前にカーソルを置く(可能なら、空行の段落を作ってそこに置く)
- Ctrl+F9を押してフィールド波括弧を作り、
IFと入力する IFの後ろにスペースを入れ、Ctrl+F9で入れ子用の波括弧を作り、数式フィールドとして次を入力する=MOD(- 続けて Ctrl+F9でさらに入れ子を作り、その中に
PAGE \* Arabicを入力する - 数式フィールドに戻って
,2)を入力し、数式全体を{ =MOD({ PAGE \* Arabic },2) }の形にする - 外側のIFフィールドに戻り、比較条件を作る(今回の偶数ページ開始なら
= 0) - 真の場合の結果として、引用符
" "ではなく文言を出したい側に、次を入れる:
引用符の中の先頭でCtrl+Enter(手動改ページ)→続けて文言"[ここでCtrl+Enter]This page has been left intentionally blank." - 反対側の結果には、何も出さないために
" "(半角スペース1つ)を入れる - Alt+F9でフィールドコード表示を切り替え、全体が崩れていないか確認する
- フィールドを右クリックして「フィールドの更新」またはF9で更新し、動作確認する
完成後は、章末が偶数ページの章だけ「意図的に空白」ページが現れ、次章が偶数ページ開始のまま維持されます。
文言ページを“それっぽく”見せるレイアウト調整(オリジナルの実務テク)
“This page has been left intentionally blank” は、ただ入れるだけだとページ上部に寄ってしまい、印刷物っぽさが出ません。テンプレとして見栄えと安全性を両立するなら、次の調整が扱いやすいです。
| やりたいこと | おすすめ設定 | 理由 |
|---|---|---|
| 中央寄せにする | 段落の配置を「中央揃え」 | 最小の変更で見た目が整う |
| 縦方向も“なんとなく”中央に寄せる | 段落前の間隔を大きめにする(例:100pt〜200pt) | セクション分割など大掛かりな構成変更が不要 |
| フォントを控えめにする | サイズを1段階小さくする(例:本文10.5ptなら9ptなど) | 本文より目立ちすぎない |
| 日本語も併記する | 2行にして併記(後述の例) | 日本語圏の提出先で意図が伝わりやすい |
さらに安定運用したい場合は、この文言用に段落スタイルを作っておくと、章ごとに貼り付けても見た目が揺れにくくなります。
- スタイル名例:「IntentionalBlank」
- 設定例:中央揃え/段落前 150pt/段落後 0pt/フォント9pt
- このスタイルを、フィールドを置いた段落に適用する
印刷・PDF化でズレないための運用ポイント(フィールド更新がカギ)
この方法は、編集でページ数が変わると「偶数/奇数」の判定結果も変わります。つまり、本文を追記した後に、文言ページの出方が変わるのは自然です。重要なのは、印刷やPDF化の直前にフィールドを確実に更新して、最終状態を反映させることです。
おすすめの更新方法
| 方法 | 手順 | おすすめ度 |
|---|---|---|
| 一括更新 | Ctrl+A(全選択)→ F9(フィールド更新) | 高(確実) |
| 印刷前に自動更新(Windows) | ファイル → オプション → 表示 →(印刷オプション)→「印刷前にフィールドを更新」ON | 高(運用向き) |
| 対象箇所だけ更新 | フィールドを右クリック →「フィールドの更新」 | 中(最終確認向き) |
PDF化は「エクスポート」や「印刷」経由など経路が複数ありますが、どの経路でも最終的にフィールドが最新になっていることが重要です。社内テンプレで回す場合は、「印刷前にフィールドを更新」をONにしておくと事故率が下がります。
よくある失敗と対処法(ここだけ読めば詰まりやすいポイントを回避できる)
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 波括弧 { } を打ったのに動かない | キーボード入力の括弧は“フィールド”ではない | Ctrl+F9でフィールド括弧を入れ直す |
| 文言が章末の本文と同じページに出てしまう | 手動改ページが入っていない/引用符の外に入っている | 文言側の引用符の先頭にCtrl+Enterを入れる |
| 必要なときに出ない/不要なときに出る | 比較値(0/1)が逆/挿入位置がセクション区切りの後 | 今回の偶数開始ならMOD=0のとき文言。章末のセクション区切り直前へ移動 |
| 編集後に表示が変わらない | フィールド更新されていない | Ctrl+A → F9、または印刷前自動更新をON |
| 文言ページが2枚出たり、余計な空白が残る | 手動改ページが二重/セクション区切りが意図せず増えている | 編集記号(¶)を表示して、改ページと区切りの数を整理する |
実務でさらに便利にする:章末セットをテンプレ化する
この仕組みは「章の数が多いほど恩恵が大きい」一方、毎回フィールドを手作業で組むのは面倒です。運用をラクにするなら、次のどれかがおすすめです。
- テンプレ(.dotx)に組み込む:章末にあらかじめIFフィールドを置いた状態で配布すると、チーム全体で再現性が上がる
- クイックパーツ(定型句)に登録:章末段落(IntentionalBlankスタイル+IFフィールド)を選択して登録しておくと、章追加が早い
- 章末の段落スタイルを固定:文言の見た目が統一され、印刷物としての品質が上がる
特に、複数人で共同編集するドキュメントでは、マクロよりもフィールド運用のほうが環境差が少なく、レビューフローにも乗せやすいのが利点です。
文言カスタマイズ例(英語・日本語・提出先別)
“This page has been left intentionally blank” は定番ですが、提出先や社内規定で表記が決まっていることもあります。IFフィールド内のテキストは自由に変えられます。
| 目的 | 文言例 | メモ |
|---|---|---|
| 英語のみ | This page has been left intentionally blank. | 海外提出・英語文書で定番 |
| 日本語のみ | このページは意図的に空白にしています。 | 国内向けで分かりやすい |
| 日英併記 | このページは意図的に空白にしています。 This page has been left intentionally blank. | 監査・契約関連などで誤解を避けたいときに有効 |
日英併記する場合は、行間を詰めすぎると読みにくくなるので、スタイルで行間(固定値/倍数)を軽く調整すると見栄えが整います。
補足:この方法が「マクロより安全」と言える理由
マクロで空白ページに文字を入れようとすると、次のような副作用が起こりがちです。
- 環境(Wordのバージョン、既定プリンタ、フォント差)で改ページ位置が変わり、意図しないレイアウト崩れが起きやすい
- 編集者のマクロ有効設定やセキュリティポリシーに左右される
- 実行タイミングによっては「章末の空白ページ」を誤って本文として確定させてしまう
一方、IFフィールドはWordの標準機能で、ページ番号という“結果”に基づいて条件分岐するため、章の増減や編集にも追従しやすいのが強みです。「印刷前にフィールド更新」を運用に組み込めば、最終成果物の再現性も上がります。
まとめ:空白ページに文字を“入れる”のではなく、必要なときだけ“作る”
「セクション区切り(偶数ページ)」が作る空白ページは、仕組み上“そこに入力する”発想だとつまずきやすいポイントです。章末にIFフィールドを置き、ページ番号の偶奇で「改ページ+文言」を出し分けることで、マクロなしで安全に “This page has been left intentionally blank” を自動化できます。テンプレ化とフィールド更新の運用まで整えると、長文ドキュメントでも安定して回せます。

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