「C# Dev Kit」を使った Microsoft Learn のチュートリアルをやろうとしたら、Visual Studio の拡張機能ギャラリーで検索しても出てこない……という相談を本当によく見かけます。この記事では、その原因と VS Code / Visual Studio の違い、チュートリアルをどう進めればよいか、そして両者の正しい“使い分け”までをまとめて解説します。
Visual Studio で「C# Dev Kit」が見つからない本当の理由
まず結論から整理します。
- 「C# Dev Kit」は Visual Studio Code 専用の拡張機能です。
- Visual Studio(フル IDE)にはインストールできませんし、拡張機能ギャラリーにも表示されません。
- Microsoft Learn などで「C# Dev Kit 前提」のレッスンは、VS Code を使って進めるのが前提設計です。
C# Dev Kit の公式ページ自体が「Visual Studio Code > Programming Languages > C# Dev Kit」として公開されており、VS Code 用の拡張機能として配布されています。 また、Microsoft Learn の記事でも「Visual Studio Code extension」として紹介されており、Visual Studio(IDE)とは別物であることが明示されています。
つまり、Visual Studio 側でいくら探しても出てこないのは不具合ではなく、「そもそも別製品だから」というのが答えです。
なぜこんなに混乱が起きるのか
日本語圏だと、次のような呼び方が混在しているのが混乱の原因になりがちです。
- Visual Studio = Visual Studio 2022(Windows のフル IDE)
- Visual Studio Code = VS Code(軽量エディタ)
- さらに略して「VS」とだけ書かれている場合もある
記事や講座によっては、「Visual Studio」と「Visual Studio Code」をきっちり書き分けていないケースもあり、「どっちのことを言っているのか」が分かりづらくなります。
まずはこの 2 つが別製品であり、拡張機能の仕組みもまったく違うという点を押さえておきましょう。
用語と役割の整理:Visual Studio と VS Code の違い
ここでいったん、Visual Studio と VS Code の特徴を表で整理しておきます。
| 項目 | Visual Studio Code(VS Code) | Visual Studio(IDE) |
|---|---|---|
| 公式な分類 | コードエディタ | 統合開発環境(IDE) |
| 対応 OS | Windows / macOS / Linux | 基本的に Windows 専用(Visual Studio for Mac は 2024 年にサポート終了) |
| C# サポートの入れ方 | 拡張機能(C# / C# Dev Kit など)を追加 | インストーラーの「ワークロード」で C# 関連機能を一括導入 |
| ビルド・デバッグ | .NET SDK など外部ツール必須。ターミナルやコマンドを組み合わせる | IDE 内で完結しやすい。テンプレートやデバッガ、発行機能が統合 |
| 得意分野 | 学習、軽量環境、クロスプラットフォーム開発 | Windows デスクトップ、Web、クラウド、企業開発など大規模ソリューション |
| 「C# Dev Kit」の有無 | あり(VS Code 専用拡張) | なし(インストール不可) |
このように、VS Code はエディタ+拡張機能で組み立てるスタイル、Visual Studio は最初から C# 開発に必要な機能をまとめて搭載した IDEというスタイルになっています。
Microsoft Learn の C# Dev Kit チュートリアルは VS Code で進める
Microsoft Learn やドキュメントのなかには、次のような前提で書かれているレッスンがあります。
- コマンドパレットから「.NET: New Project」を実行
- Solution Explorer(ソリューション エクスプローラー)が VS Code の左側に表示される
- 拡張機能として C# Dev Kit をインストールしている前提
これらはすべて VS Code の UI・機能です。Visual Studio には同名のコマンドも UI もないため、Visual Studio だけを使っていると必ず行き詰まります。
したがって、
- チュートリアルの手順に「C# Dev Kit」を明示的に使う記述がある
- 画面キャプチャが VS Code のデザインになっている
このような場合は、素直に VS Code をインストールして進めるのが正解です。「Visual Studio ではできないのか?」と悩むより、VS Code を併用してしまった方が学習もスムーズです。
VS Code で C# Dev Kit を使うセットアップ手順
ここからは「C# Dev Kit 前提のチュートリアルを VS Code で進める」ための具体的な準備手順を整理します。
1. Visual Studio Code をインストール
- 公式サイトから VS Code をダウンロードしてインストールします。
- Windows / macOS / Linux のどれでも利用できます(企業 PC の制限などは要確認)。
2. VS Code に C# Dev Kit をインストール
- 左側の「拡張機能」アイコン(四つの四角形)をクリック
- 検索ボックスに
C# Dev Kitと入力 - 発行元が「Microsoft」のものを選び「インストール」
C# Dev Kit をインストールすると、依存関係として公式の C# 拡張機能や .NET Install Tool も自動で導入されます。
3. .NET SDK のインストールと確認
VS Code はあくまでエディタなので、ビルドや実行のために .NET SDK が別途必要です。
- .NET 公式サイトから .NET 6 / 7 / 8 などの SDK をインストール
- インストール後、ターミナルや PowerShell で次のコマンドを実行
dotnet --version
dotnet --list-sdks
このコマンドでバージョンが表示されれば、.NET SDK のインストールは完了です。
4. C# Dev Kit で新しいプロジェクトを作る
- VS Code で
F1またはCtrl+Shift+Pを押してコマンドパレットを開く - 「
.NET: New Project」と入力して選択 - コンソールアプリなど、目的に応じたテンプレートを選ぶ
- フォルダーを選び、プロジェクト名を入力して作成
Program.csを開き、F5または「Run and Debug」から実行
ここまでできれば、C# Dev Kit 前提のチュートリアルを問題なく進められます。
VS Code でよくあるハマりどころ
| 症状 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 「C# Dev Kit」が検索しても出てこない | Visual Studio の拡張機能画面を見ている | VS Code を起動し、そちらの「拡張機能」で検索する |
| ビルドや実行が始まらない | .NET SDK 未インストール / PATH 設定が反映されていない | dotnet --version で確認し、必要なら PC の再起動や SDK の入れ直し |
| C# Dev Kit の機能が有効にならない | プロジェクトが .NET Framework 形式など、サポート外形式 | できるだけ .NET(SDK スタイル)プロジェクトを使用する |
Visual Studio(IDE)で C# 開発をしたい場合の設定
「学習は VS Code で進めるとしても、本番の開発は Visual Studio でやりたい」というケースは多いはずです。ここでは、Visual Studio 側で C# 開発環境を整える方法を整理します。
Visual Studio インストーラーでワークロードを選ぶ
Visual Studio では、拡張機能ではなく「ワークロード」単位で機能を追加します。Visual Studio インストーラーを開き、次のようなワークロードをチェックします。
- .NET デスクトップ開発(Windows フォーム / WPF、コンソールアプリなど)
- ASP.NET と Web 開発(Web API / MVC / Razor Pages 等)
- .NET マルチプラットフォーム開発(MAUI など。OS やバージョン要件あり)
ワークロードを選ぶと、関連するテンプレートやツール、デバッガなどがまとめてインストールされる仕組みです。
.NET SDK のバージョンも合わせて確認
Visual Studio 2022 以降では、インストールされている .NET SDK に応じて .NET 6 / 7 / 8 など最新の .NET でプロジェクトを作成できます。インストーラーのオプションコンポーネントや、.NET 単体のインストーラーで SDK を追加しておきましょう。
Visual Studio でのプロジェクト作成フロー
- Visual Studio を起動し「新しいプロジェクトの作成」をクリック
- 「コンソール アプリ」「ASP.NET Core Web API」など目的に合ったテンプレートを選択
- プロジェクト名・保存先を入力
- ターゲット フレームワーク(例:.NET 8)を選択
- 作成後は
F5で実行、Ctrl+F5でデバッグなし実行
Visual Studio の場合、発行(Publish)ウィザードやデザイナなどが一体化しているため、GUI で完結させたい開発には Visual Studio の方が圧倒的に楽です。
ワークロードのイメージまとめ
| ワークロード名 | 主な用途 | 代表的なテンプレート |
|---|---|---|
| .NET デスクトップ開発 | Windows アプリ(業務アプリなど) | Windows フォームアプリ、WPF アプリ、コンソールアプリ |
| ASP.NET と Web 開発 | Web サイト / Web API / サーバーサイド | ASP.NET Core Web API、MVC、Razor Pages |
| .NET マルチプラットフォーム開発 | MAUI によるクロスプラットフォームアプリ | .NET MAUI アプリ |
VS Code + C# Dev Kit と Visual Studio の使い分け
「結局どっちをメインに使えばいいの?」という悩みに対して、ざっくりとした目安をまとめておきます。
| こんな人 / ケース | おすすめ環境 | 理由 |
|---|---|---|
| C# をこれから学び始める | VS Code + C# Dev Kit | 環境が軽く、クロスプラットフォームで使え、Microsoft Learn の教材と相性が良い |
| ターミナルや Git を日常的に使う | VS Code + C# Dev Kit | エディタ主導のワークフローとの相性が良い |
| Windows デスクトップアプリを GUI でガッツリ作りたい | Visual Studio(.NET デスクトップ開発) | デザイナや発行機能が強力で、業務アプリ開発と相性抜群 |
| ASP.NET Core で Web/API を作り、IIS / Azure にデプロイしたい | Visual Studio(ASP.NET と Web 開発) | テンプレートと発行ウィザードが充実している |
| 企業の大規模ソリューションを扱う | Visual Studio メイン + 必要に応じて VS Code | ソリューション単位での管理やデバッグ、プロファイリングなどが強力 |
ざっくり言うと、
- 学習・軽量・クロスプラットフォーム → VS Code + C# Dev Kit
- Windows 本格開発・発行までガッツリ → Visual Studio
というイメージで考えると迷いにくくなります。
シナリオ別:どの環境で進めるべきか
Microsoft Learn の C# Dev Kit 前提チュートリアルをやりたい
- 必ず VS Code + C# Dev Kit で進める
- Visual Studio のみで同じ画面・手順を再現することはできません。
Windows デスクトップアプリ(社内ツールなど)を作りたい
- Visual Studio で「.NET デスクトップ開発」ワークロードを導入するのが王道です。
- 設計やプロトタイプ確認をサクッとやる部分だけ VS Code で書く、という併用も可能です。
Web API やバックエンドを主に書きたい
- 小規模・学習なら VS Code + C# Dev Kit で十分。
- 本番運用を前提とした大規模システムや、IIS / Azure への発行に慣れたいなら Visual Studio を使うと便利です。
すでに Visual Studio で .NET Framework アプリを持っている
- C# Dev Kit は主に .NET(SDK スタイル)プロジェクト向けの拡張です。
- .NET Framework の古いプロジェクトを VS Code + C# Dev Kit で完全に同じように扱うのは難しいことが多く、Visual Studio 継続利用が現実的です。
Visual Studio と VS Code を両方入れておくメリット
実務では、VS Code と Visual Studio を併用するケースがかなり多いです。両方入れておくメリットをいくつか挙げてみます。
- コードのクイックな修正・レビューは VS Code(軽くて起動が速い)
- Windows 特有の機能や GUI デザイン、発行設定は Visual Studio
- Git 操作やターミナル作業は VS Code の統合ターミナルで快適
- ソリューション全体のリファクタリングや高度なデバッグは Visual Studio
どちらかを「選ばないといけない」という発想ではなく、用途に応じて使い分ける“ツールボックス”として両方使えるようになっておくのがおすすめです。
いま Visual Studio だけ入っている人がやるべきこと
すでに Visual Studio をインストール済みで、「C# Dev Kit どこ?」となっている人向けに、チェックリストを用意しました。
| 確認項目 | 見る場所 | OK の状態 |
|---|---|---|
| 使っているのは VS Code か? Visual Studio か? | ウィンドウタイトル、アイコン | チュートリアルが C# Dev Kit 前提なら VS Code で開く |
| VS Code はインストール済みか? | スタートメニュー / アプリ一覧 | VS Code が存在し、起動できる |
| C# Dev Kit 拡張は入っているか? | VS Code の「拡張機能」ビュー | 「C# Dev Kit」がインストール済み表示 |
| .NET SDK は入っているか? | ターミナル / PowerShell | dotnet --version でバージョンが表示される |
| Visual Studio 側のワークロードは十分か? | Visual Studio インストーラー | 目的に応じたワークロード(.NET デスクトップ開発など)が選択されている |
このチェックを一通り済ませておくと、「VS Code 用の説明なのに Visual Studio 側をひたすらいじってしまう」といったミスマッチを避けられます。
よくある質問と誤解(Q&A 形式)
Q. そのうち Visual Studio でも C# Dev Kit が使えるようになりますか?
A. 現時点では C# Dev Kit は VS Code 専用拡張として設計されており、Visual Studio とはエコシステムが分かれています。将来どうなるかは公式の発表次第ですが、少なくとも「Visual Studio に C# Dev Kit をインストールする」という発想は捨てた方がスッキリします。
Q. VS Code で作った C# プロジェクトを Visual Studio で開けますか?
A. 多くの .NET(SDK スタイル)プロジェクトであれば、VS Code と Visual Studio のどちらでも開けます。同じ .csproj / .sln を、エディタとして VS Code で軽く触ったり、IDE として Visual Studio でがっつりデバッグしたり、といった併用が可能です。
Q. 逆に Visual Studio で作った古い .NET Framework アプリは?
A. WinForms(.NET Framework)などの古いプロジェクト形式だと、C# Dev Kit 側でサポート外になることがあります。 その場合は 引き続き Visual Studio でメンテナンスするのが現実的です。将来的に .NET(Core / 6+)への移行を検討する場合は、Microsoft の移行ガイドやツールを活用するとよいでしょう。
Q. Visual Studio Community / Professional のどれを選べばいいですか?
A. 個人開発や小規模な利用であれば、多くのケースで Visual Studio Community が候補になりますが、利用条件が細かく決められているため、実際の利用前に公式サイトで最新のライセンス条件を必ず確認してください。組織規模や利用目的によっては Professional / Enterprise が必要になる場合があります。
まとめ:C# Dev Kit と Visual Studio の関係を正しく理解しよう
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 「C# Dev Kit」は Visual Studio Code 専用の拡張機能であり、Visual Studio(IDE)にはインストールできません。
- そのため、Visual Studio の拡張機能ギャラリーで「C# Dev Kit」が出てこないのは正常動作です。
- Microsoft Learn などで C# Dev Kit を前提にしたレッスンは、VS Code + C# Dev Kit + .NET SDK という構成で進めるのが正解です。
- Visual Studio で C# 開発をする場合は、Visual Studio インストーラーの「ワークロード」から .NET 関連機能を導入します。
- 学習や軽量な開発には VS Code、本格的な Windows / Web 開発や発行まで見据えた開発には Visual Studio、といった形で用途に応じて使い分けると効率的です。
- VS Code と Visual Studio を両方インストールしておき、場面に応じて使い分けるスタイルが、今後の .NET / C# 開発では非常に強力な選択肢になります。
「C# Dev Kit が Visual Studio に見つからない」という状況は、多くの場合“トラブル”ではなく“設計上正しい挙動”です。製品の役割の違いさえ理解してしまえば、チュートリアルの読み方も、開発環境の組み立て方も、一気にクリアになります。この記事をきっかけに、VS Code と Visual Studio の両方を味方につけて、快適な C# 開発環境を構築してみてください。

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