長期的に使うライセンスをどう選ぶかは、サーバー環境の安定運用やコストにも大きく影響します。Windows Server 2025ではStandard/Datacenter/Essentialsの3エディションがあり、それぞれに特徴や費用面での違いがあります。この記事ではライセンス形態の要点を分かりやすく解説します。
Windows Server 2025 エディション別のライセンス体系
Windows Server 2025には「Standard」「Datacenter」「Essentials」の3種類の主要エディションが用意され、導入環境や目的によって選択の基準が異なります。以下では各エディションの概要とライセンスの特徴を見ていきましょう。
Standardエディション
Standardエディションは、物理コア単位でライセンスを購入する方式です。1サーバーあたり最低16コア分が必要で、ライセンス1つ(=16コア分)につき最大2台までの仮想マシン(VM)を稼働できます。
Standardを物理OSとして稼働させる場合は、Hyper-Vホスト用途で使う以外にもOSを利用すると「仮想マシン2台分」の権利のうち1台分が消費される点に注意しましょう。アクセスには別途クライアントアクセスライセンス(CAL)が必要です。
Datacenterエディション
DatacenterエディションもStandardと同じくコアライセンス+CALモデルですが、大きく異なるのは無制限の仮想マシンを稼働できる点です。1台の物理サーバーで多数のVMを集約する大規模環境や高密度仮想化を行う企業向けです。
StandardとDatacenterで「最低16コア分」「1CPUあたり最低8コア分」という基本ルールは共通です。また両エディションともCALが必須で、ユーザーまたはデバイスごとに購入する形となります。
Essentialsエディション
Essentialsエディションは、小規模事業所向けの製品です。25ユーザー・50デバイスまで利用可能で、CAL不要という特徴があります。ハードウェア上は1物理CPU・10コアまでが利用範囲で、仮想化権利は付与されていません。
購入形態別のライセンス提供方式
Windows Serverのライセンスは、どのルートで購入するかによっても費用や運用の自由度が変わります。ここでは代表的な3つの購入形態を解説します。
1. ボリュームライセンス (Open Value / EAなど)
企業向けに複数のライセンスを一括調達できる形態です。旧バージョンへのダウングレード権や、ソフトウェアアシュアランス(SA)の追加などが可能で、将来のアップグレードを見据えたい場合に最適です。

執筆者のコメント:Open Valueのように少数ライセンスから契約できるプログラムは、中堅企業や急成長企業にとって拡張性を確保しやすいのが利点ですね。
2. OEMライセンス (プレインストール / ROK)
サーバーメーカーからハードウェアと同時購入する方式です。割安ですが、ライセンスがハードウェアに紐づき、他のサーバーへ移行できないという制限があります。ハードの寿命とともにライセンス買い替えが必要になるケースが多いです。
3. クラウドでの利用 (Azureなど)
Azure VMを立ち上げる際に、OSライセンス込みの料金を支払う「従量課金 (Pay-as-you-go)」モデルです。オンプレミスにサーバーを設置する場合でもAzure Arcを活用すれば従量課金で使うことが可能になりました。
クラウド移行を本格化するなら、ボリュームライセンスのソフトウェアアシュアランスを付けておき、Azure Hybrid Benefitでライセンスを持ち込む方法も検討できます。
ライセンス費用の比較表
下表に主なエディションのライセンス費用目安をまとめます(16コア分)。実際の価格は為替レートやリセラーの割引率で変わるため、あくまでも参考値となります。
エディション | 公式参考価格 (16コア) | OEM版参考価格 (16コア) | Azure従量課金 (クラウド利用) |
---|---|---|---|
Standard | USD $1,176 (約¥170,000前後) 参照:Windows Server 2025 ライセンス & 料金 |
約¥164,000 (HPE参考) 参照:HPE DirectPlus オンラインストア |
約\$0.046/コア/時 (CAL不要) 参照:従量課金ライセンスの実際の価格 |
Datacenter | USD $6,771 (約¥780,000前後) 参照:Windows Server 2025 ライセンス & 料金 |
約¥817,000 (HPE参考) 参照:HPE DirectPlus オンラインストア |
Standardと同一料金 約\$0.046/コア/時 (CAL不要) |
Essentials | 公式サイトに価格掲載なし | 約¥62,000 (10コア版) 参照:HPE DirectPlus オンラインストア |
クラウド利用対象外 |
Standard/Datacenterのライセンス価格にはCAL費用が含まれていないので、アクセスするユーザーやデバイス分のCALを別途購入する必要がある点も要注意です(EssentialsはCAL不要)。
シナリオ別:ライセンス選択ガイド
1. 小規模オフィス (~25ユーザー程度)
ユーザー数が25人以下、デバイスも50台以下で完結するならEssentialsエディションがおすすめです。CAL不要で初期コストを抑えられ、ファイル共有やActive Directoryなど基本機能は標準搭載。
2. 中堅企業 (数十~数百ユーザー)
CAL費用を含め、総合的に費用対効果を検討する必要があります。仮想マシンを少数運用するならStandardで十分です。サーバー台数が複数ある場合はボリュームライセンス(Open Valueなど)でまとめて購入するほうがライセンス管理も容易になります。



執筆者のコメント:ボリュームライセンスでは、ソフトウェアアシュアランスを付けておけば新バージョンへのアップグレードも追加費用なしで行えるので、長期的なIT投資計画に合いやすいです。
3. 大企業・データセンター (数百~数千ユーザー)
サーバー上で多数のVMを集約するならDatacenterエディションがおすすめ。VM台数無制限で運用できるため、ある程度以上の仮想サーバー台数を立てるほど割安になります。Enterprise Agreement (EA)契約を結ぶことでライセンスを一括管理しやすくなり、大規模環境に適しています。
4. クラウド活用・ハイブリッドシナリオ
オンプレミスを最小限にしつつクラウド(Azureなど)を活用する場合、ライセンス込みの従量課金か、SA付きライセンスをAzureへ持ち込む「Azure ハイブリッド特典」かを選択できます。短期稼働や季節変動があるシステムは従量課金が有効で、常時稼働の基幹系システムはオンプレ×Datacenterやハイブリッド特典を利用したほうが安価な傾向にあります。
まとめ
Windows Server 2025のライセンスは大きく分けてStandard・Datacenter・Essentialsの3エディションがあり、さらに購入形態(ボリュームライセンス/OEM/クラウド)によって費用構造が変わります。小規模で人数が少ないならEssentials、中規模で仮想化が限定的ならStandard、大規模で仮想化集約するならDatacenterが基本の考え方です。
OEM版はサーバー本体との同時購入で割安ですが、ハードに紐づく制約があるため将来の移行や再利用を考えるとボリュームライセンスが好まれる場合も少なくありません。クラウドを積極活用するならAzureやPAYGライセンスも選択肢に入り、短期的なサーバー稼働やアクセス数が多いウェブサービスに適しています。
ライセンス費用だけでなく、CALの追加コストやソフトウェアアシュアランスの有無、オンプレとクラウドをどう組み合わせるかまで含めた総合的な検討が重要です。自社のIT戦略や将来的なスケールアウト・スケールインを見越しつつ、最適なライセンス体系を導入しましょう。
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