Windows Update 画面に「お使いのシステムは最新の状態です」と表示されているのに、わざわざ別行で「Windows 11, version 24H2 が利用可能」と案内されると「今の 23H2 で問題ないのに更新して大丈夫か」「ビジネス用 PC だから慎重に判断したい」という不安が生まれます。本記事では安全に Windows 11 24H2 へアップグレードするための判断基準と具体的な準備手順、そして「今は見送りたい」場合のブロック方法までを余さず解説します。
Windows 11 24H2 は“年次のメジャー更新”
Windows 11 はリリース当初「年 1 回の機能更新」を掲げており、24H2 は 2024 年下半期(Half 2)に提供されたメジャーバージョンです。23H2 と比べカーネルバージョンが 10.0.26100.xxx 系列へ上がり、AI 関連機能の最適化やエネルギー効率向上、セキュリティ基盤強化など内部的に大幅な改良が行われています。
案内が届くタイミングは PC ごとに異なる
Microsoft は段階的ロールアウトを採用しており、ハードウェアや使用状況のテレメトリ分析結果をもとに互換性リスクが低い端末へ優先的に配信します。このため、同じ 23H2 でも A さんの PC には通知が来て B さんの PC には来ない、といった差異が生まれます。
アップグレード可否を即断できる診断フローチャート
以下の 3 つを満たせば基本的に 24H2 対応済みです。時間を取らずに判断したい方はチェックしてみてください。
- UEFI + Secure Boot が有効
BIOS 画面またはmsinfo32→「BIOS モード: UEFI」「セキュアブートの状態: 有効」 - TPM 2.0 が有効
tpm.msc→ 「TPM 製造バージョン = 2.0」 - 対応 CPU
Intel 第 8 世代以降 / AMD Ryzen 2000 以降 / Qualcomm Snapdragon 7c 以上
質問者の構成が Core i5‑12450H + Secure Boot 有効 であるなら 24H2 へのアップグレード要件は完全クリアです。
要点を 1 枚で把握 — 23H2 から 24H2 へ移行する際のチェックシート
| 観点 | 要点 | 補足 |
|---|---|---|
| 安全性 | Windows Update で正式提示=互換性テスト済み。そのまま「ダウンロードしてインストール」で問題なし | ハード/ドライバー検証をパスした PC のみに段階配信 |
| システム要件 | UEFI + Secure Boot、TPM 2.0、対応 CPU を満たす | 23H2 と同等。要件未満なら Update 画面に表示されない |
| 既に 24H2 済み? | OS ビルド 10.0.26100.xxx なら 24H2 | バージョン情報で確認。通知残留はキャッシュ起因 |
| 見送り方 | 23H2 は 2026/10 までサポート。 更新一時停止や対象バージョン固定で延長可 | 月例セキュリティは継続受信 |
| 事前準備 | バックアップ/BIOS・ドライバー更新/空き容量 20 GB 以上 | トラブル時は 10 日以内ロールバック可 |
24H2 にアップグレードする 5 つのメリット
1. AI フレームワークの統合強化
24H2 では Windows Copilot の常駐メモリ占有が最大 18 % 減少し、NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)搭載端末では GPU ではなく NPU オフロードが標準化されました。この結果、ChatGPT ベースのリアルタイム翻訳や画像生成プレビューがバッテリー駆動でも長時間利用可能になります。
2. 更新プログラムの最適化
「瞬時にインストール (Hotpatch)」がパーソナル Edition にも拡大。セキュリティパッチ適用後の再起動が 年 6 回 → 年 2 回 程度に減少し、作業中の中断が大幅に軽減されます。
3. Wi‑Fi 7 と Bluetooth LE Audio 標準サポート
最新チップを搭載するノート PC では追加ドライバー不要で Wi‑Fi 7 の 320 MHz チャネルへ接続可能。ゲーム・高解像度ストリーミングでレイテンシが下がります。また、Bluetooth LE Audio により会議中のマイク/スピーカークオリティが向上します。
4. Enhanced SFS 圧縮によるディスク節約
System File Compression v2(SFS‑v2)が導入され、未使用の OS コンポーネントを差分縮小。クリーンインストール時点で C ドライブの使用量が 4 GB 以上削減されるケースも報告されています。
5. セキュリティ強化
- Dev Drive が既定で BitLocker + Dev Mode に
- Rust 化された
advapi32.dllで権限昇格脆弱性を抑制 - SmartScreen for App Install が未知アプリのネットワーク動作を追跡
アップグレード前に必ず行うべきバックアップ手順
- ユーザープロファイルのフルコピー
OneDrive 同期設定を開き「デスクトップ / ドキュメント / 画像」フォルダーをクラウドに退避。 - システムイメージの作成
設定 → システム → ストレージ → バックアップ → 「ファイル履歴」→ 「システムイメージの作成」から外付け USB HDD に取得。 - BIOS & デバイスドライバー確認
PC メーカー公式サイトで BIOS 更新ファイルと 24H2 対応ドライバーの有無をチェック。 - 空き容量 20 GB 以上
Windows.old 退避用に C ドライブ残量 20 GB を確保。不要アプリ削除やストレージセンサーで整理。 - 重要アプリのライセンス解除
Adobe 系や DAW などアクティベーション数制限のあるソフトは一旦ライセンス返却。
「やっぱり今は 23H2 維持」派のためのブロック術
Windows Update 画面で 35 日間停止
設定 → Windows Update → 「更新を一時停止」から最大 5 週間延期。臨時対応なら最も簡単です。
グループポリシーで対象バージョンを固定
コンピューターの構成 > 管理用テンプレート > Windows Update >
Windows Update for Business > “対象とする機能更新プログラムのバージョン” = 23H2
Pro / Enterprise 版限定ですが 2026 年 10 月まで 23H2 のまま月例パッチだけ受信できます。
レジストリ手動編集(Home 版向け)
[HKEYLOCALMACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsUpdate]
"TargetReleaseVersion"=dword:00000001
"TargetReleaseVersionInfo"="23H2"
操作ミス防止のため、必ずレジストリバックアップを取得してから編集してください。
アップグレード後トラブルを 10 分で解決する Tips
| 症状 | 対処法 | 備考 |
|---|---|---|
| ゲームがカクつく / FPS 低下 | GPU ドライバーを DDU でクリーン削除し最新版を再インストール | NVIDIA 555.xx 以降 / AMD 24.10 以降が 24H2 推奨 |
| Wi‑Fi が切れる | ネットワークドライバーをロールバック → Windows Update カタログの 24H2 対応版へ更新 | Intel Wi‑Fi 22.240 以上で改善 |
| サウンドが無音 | 設定 → システム → サウンド → 「トラブルシューティング」で自動修復 | Realtek ドライバーの署名更新が原因の例多し |
| アプリが起動しない | 互換モードで Windows 8/7 を選択、または Microsoft Store 版に切替 | 32 bit アプリの一部 DLL 仕様変更が影響 |
万一のロールバック方法
アップグレードから 10 日以内であれば 設定 → システム → 回復 → 「前のバージョンに戻す」 で自動的に Windows.old が復元されます。業務 PC では 10 日を過ぎる前に動作検証を済ませておくと安心です。
企業環境での 24H2 導入ポリシー策定ポイント
- パイロット導入期間を 45 日確保
サービスデスクが把握しきれない周辺機器の互換性検証に十分な時間を取る。 - Intune / WSUS でリング分割
役員・開発・一般部門といったグループで更新タイミングをずらし、障害発生時の影響を極小化。 - PowerShell で一括ロールアウト
Start-WUFullScanやUpdateStackPackageを組み込み、実行ログを Log Analytics に送信して可視化。 - LAPS & BitLocker 自動再暗号化
機能更新後に再起動が発生すると BitLocker 回復キー入力を求められるケースがあるため、LAPS 管理対象 PC はポリシーテンプレートの自動適用を確認。
よくある質問 (FAQ)
Q. Windows 10 22H2 から直接 24H2 へ飛び級できる? A. 可能です。Microsoft は Windows 10 → Windows 11 の年次版をまたいだ直接アップグレードを公式サポートしています。 Q. アップグレードでライセンス再認証は必要? A. 不要。デジタルライセンスはマザーボード内部の HWID で紐づくため、機能更新ではライセンス状態は保持されます。 Q. ノート PC のバッテリー寿命に影響は? A. 24H2 ではバックグラウンドタスクの電源管理が改良され、測定環境で平均 8 % 程度稼働時間が伸びた例があります。 Q. Copilot を無効化して軽量化したい A. グループポリシー「設定 > 管理用テンプレート > Windows コンポーネント > Windows Copilot」を無効に。
まとめ
Windows Update 経由で案内される Windows 11 24H2 は互換性チェック済みかつサポート期間も 2026 年後半まであるため、通常利用はもちろん業務用途でも基本的にアップグレード推奨です。とはいえシステム開発や旧バージョン依存アプリを抱える企業では検証フェーズを設けることが重要です。
- 個人利用…バックアップ+要件チェック後、通知どおりインストールして問題なし
- 業務利用…パイロット導入→段階展開で影響最小化、必要に応じて 23H2 固定も可
24H2 の新機能を活かしつつ、計画的なアップグレードで安全・快適な Windows 環境を維持しましょう。

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