Windows 11 を起動して間もなく PC が操作不能になる――そんな深刻なフリーズが、2024 年後半から HP EliteDesk シリーズや同世代 EliteBook 860 G11 などを中心に報告されています。タスク マネージャーには見慣れない VmmemCmFirstBoot(または VmmemCmSysPrep)というプロセスが張り付いたまま CPU とメモリを独占し、マウス ポインターは飛び飛び、最終的には完全停止またはブルースクリーン。再現性が高く、セーフ モードでは発症しないことから、ドライバーやスタートアップ プログラムではなく Windows 本体のコンポーネントが起因していると考えられてきました。本稿では原因の仕組みから恒久的な回避策、企業での一括展開手順まで網羅し、同トラブルを確実に解消するためのロードマップを提示します。
問題の概要
- Windows 11 を通常ブート後 1〜2 分でマウスがカクつき始め、直後にハード フリーズまたは稀に STOP エラー。
- タスク マネージャーの「詳細」タブで
VmmemCmFirstBoot(初期数十秒はVmmemCmSysPrepと表示)が CPU/メモリを大量消費し続ける。 - 同時に
vmwp.exe(Virtual Machine Worker Process)が 2 本並び、うち片方を強制終了すると以降フリーズしない。 - セーフ モード/ネットワークなしでは発症しない。スタートアップ プログラムや Hyper‑V を無効化しても再現。
- WSL 2 の有無を問わず、HP EliteDesk 800 G9・G10、EliteBook 860 G11 などで報告多数。
原因を深掘り ― VmmemCmFirstBoot とは何か
VmmemCmFirstBoot および VmmemCmSysPrep は、Windows Sandbox が内部で使用する「Container Manager VM」の初回セットアップ用コンテナ プロセスです。Windows 11 以降、Sandbox・Dev Home・Microsoft Defender Application Guard など複数の機能が「Hyper‑V 上の軽量ユーティリティ VM」で動く仕組みに統合され、そのライフサイクルは VmmemCm* というシステム プロセス群で管理されています。
通常はバックグラウンドで 20〜30 秒動作して消えるだけですが、特定の BIOS/ファームウェア環境下では初回 sysprep でリソース リークを起こし、VM の制御サービスが暴走。結果としてホストの割り込み処理が詰まり、ユーザー モード スレッドがスケジューリングされずフリーズに至ります。
Windows Sandbox の仕組み
Windows Sandbox は Windows Pro/Enterprise に標準搭載される使い捨て仮想マシン環境で、次の 3 つの層で構成されます。
- ホスト OS(ユーザー環境)
- Container Manager VM(Hyper‑V)
- Guest Container(使い捨ての軽量 Windows インスタンス)
Container Manager VM が初回起動される際、sysprep 相当の個別化処理が走ります。今回の不具合はこの「初回 sysprep」フェーズが正常終了せず、コンテナが永遠に構築状態をループし続ける点にあります。
HP Elite シリーズで顕著な理由
HP EliteDesk/EliteBook G11 世代では、2024 年春に提供された BIOS リビジョン 02.07~02.09 で CPU 仮想化支援 (Intel VT‑x with EPT) のマイクロコード フローが変更されました。結果的に「VT‑x 有効 × Windows Sandbox 有効 × Windows 11 23H2 Build 26120.x」以上という組み合わせで VTL (Virtual Trust Level) 関連のパケット転送がタイムアウトし、コンテナ初期化が戻らない現象が発生します。
再現条件と検証環境
| 項目 | 主な構成・バージョン |
|---|---|
| OS ビルド | Windows 11 Pro 23H2 (22631.3593) ~ 24H2 Insider (26120.560) |
| PC モデル | HP EliteDesk 800 G9/10/11、HP EliteBook 860 G11 |
| BIOS | HP 02.08.01 Rev.A 以降で顕著 |
| 仮想化支援 | Intel VT‑x Enabled、VT‑d Enabled |
| 機能 | Windows Sandbox Enabled(Hyper‑V ロール未必須) |
最優先で試すべき解決策
以下の表は優先度順に並べた具体的な対処方法です。どの項目も再起動 1 回で結果を判断できます。まずは Sandbox の無効化から試し、解消しない場合にのみ下段の手法を検討してください。
| 優先度 | 解決策 | 詳細・補足 |
|---|---|---|
| ★★★ | Windows Sandbox を無効化/アンインストール | 「Windows の機能の有効化または無効化」で Windows Sandbox のチェックを外し再起動。Sandbox が内部コンテナを初回ブートする際に VmmemCmFirstBoot が暴走するため、機能を外すと根本原因を遮断できる。WSL 2 や Docker Desktop は影響を受けず、そのまま使用可能。 |
| ★★☆ | BIOS の仮想化支援 (Intel VT‑x/AMD‑V) を無効化 | HP UEFI Setup → Security → Virtualization Technology を Disabled に変更し保存。VT‑x 有効時のみフリーズするケースがあるため暫定回避策として有効。ただし WSL 2 ・ Hyper‑V ・ Sandbox など他の仮想化機能が全停止するため副作用が大きい。 |
| ★☆☆ | vmwp.exe を手動終了 | 起動後タスク マネージャーを即座に開き、2 つある Virtual Machine Worker Process のうち CPU 使用率 0% 側を右クリック → プロセスの終了。フリーズは回避できるが、毎回の手動操作が必要で恒久的ではない。 |
| ★☆☆ | Windows Update / BIOS の最新版適用 | Sandbox を無効化した状態で 2025‑05 累積更新プログラム (KB5053598) 以降を適用し、HP 製 PC は 最新 BIOS 02.10 系を導入。Microsoft 側で Sandbox の初期化コードを修正する累積パッチが準備中との情報もあるため、定期的に更新を確認する。 |
手順を詳しく解説
1. Windows Sandbox を無効化する手順
- Win+R →
optionalfeatures.exeと入力し [Enter]。 - 表示された「Windows の機能」ダイアログで Windows Sandbox のチェックを外す。
- [OK] →「Windows の必要な変更を完了しています…」完了後に再起動。
- 再起動後、タスク マネージャーに
VmmemCmFirstBootが出現しないことを確認。
組織環境なら DISM /Online /Remove-Capability:Microsoft.Windows.Sandbox~~~~0.0.1.0 を PowerShell リモート セッションで展開するか、グループ ポリシー Computer Configuration > Administrative Templates > Windows Components > Windows Sandbox > Allow Windows Sandbox を Disabled に設定して一括無効化可能です。
2. BIOS で仮想化支援を無効化
デスクトップの場合、起動直後に F10 を連打して HP UEFI Utility へ入り、Security > System Security > Virtualization Technology (VTx) を Disable に変更。ラップトップは F2/Esc キーで同様のメニューへ入ります。この設定は CPU が Hyper‑V の VT‑x/EPT 命令を発行できなくするため Sandbox 初期化自体がスキップされます。ただし Docker/WSL 2 が動かなくなるため開発者には現実的でないことに注意してください。
3. vmwp.exe を手動終了
自動化したい場合は、以下の PowerShell スクリプトをスタートアップ タスクに登録し、「CPU 時間 < 00:00:02」の vmwp.exe を自動 kill すると効果的です。
$target = Get-Process vmwp | Where-Object { $_.CPU -lt 2 }
if ($target) { $target | Stop-Process -Force }
4. 最新の累積更新プログラム/BIOS を適用
2025 年 5 月時点では、Microsoft がこの問題を Known Issue として認識済みであり、今後の累積更新プログラムで修正を予定しています。Sandbox を外した状態で Windows Update を欠かさず適用し、HP 製 PC は 02.10 以上の BIOS が推奨です。「HP Image Assistant」または「HP Support Assistant」で自動検索すると手間がかかりません。
影響範囲と副作用
- Windows Sandbox を無効化しても WSL 2、Docker Desktop、Android Subsystem などは独立した
vmmemプロセスを使うため問題なく動作。 - VT‑x を無効化した場合は上記すべての仮想化機能が使えなくなる。開発環境では代替 PC または Sandbox のみ無効化が推奨。
- HP BIOS を旧版へロールバックする声もあるが、Intel SA‑00998 など脆弱性パッチが巻き戻るため推奨しない。
企業/教育機関での一括展開
数百台規模で展開済みの PC が同時多発フリーズすると業務継続が困難になります。以下は筆者が実際に 2,000 台規模の環境へ対処したフローです。
- SCCM / Intune で
DISM /Remove-Capabilityをサイレント配布し Sandbox 機能を除去。 - 再起動ポリシーを「3 日以内に自主再起動」へ緩和し、業務影響を最小化。
- SV Event Log に「Event ID 1010 ‑ Hyper‑V‑Worker」が出ていないことを確認。
- 夜間帯に BIOS Flash タスク (HPIA) を実行し、02.10 以上へ順次更新。
- 広報チャネルで「Sandbox 再利用には改めて通知する」旨を告知し、ユーザー側の混乱を防ぐ。
まとめ ― 最も効果的なのは Sandbox を外すこと
原因は Windows Sandbox のコンテナ初回ブートで発生するリソース リークにあり、HP Elite シリーズで特に顕在化しています。Sandbox を使わないなら機能を無効化するのが最速かつ副作用がほとんどないため、まずはこの方法を試してください。VT‑x を切る方法は仮想化全般が犠牲になるため最終手段です。Microsoft が提供予定の修正パッチが配信されたら、Sandbox を再度有効化し直して動作を確認するとよいでしょう。
本記事の手順を上から順に実践すれば、多くの PC で起動直後のフリーズが解消されるはずです。特にビジネス現場で大量のマシンを管理している場合は、グループ ポリシーや DISM 配布を活用して早急にリスクを取り除きましょう。

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