2026年6月11日に更新されたMicrosoft Learnでは、Microsoft FabricのCopilotとAgentに関する管理設定が整理されました。一般ユーザーがアプリを更新したり、データを移行したりする必要はありません。主に対応が必要なのはFabric管理者です。
特に確認すべきなのは、Copilotの利用許可、データの越境処理・保存、会話履歴、Fabric Copilot capacity、Power BIのスタンドアロンCopilotです。日本リージョンでは、Azure OpenAIによる処理場所の設定が利用可否に直結します。
今回の公式情報には、強制移行日や新しい課金開始日の記載はありません。ただし、Copilotの利用量はFabric Capacity Units(CU)を消費するため、設定を有効にするだけでなく、対象ユーザーと利用量を管理することが重要です。(Microsoft Learn)
Microsoft Learn「Copilot and Agent admin settings」の変更点
2026年6月11日版で注目すべきポイントは、単にCopilotをオン・オフする説明から、Agentを含むAI機能全体のガバナンスへと管理対象が広がったことです。
公式ドキュメントの公開履歴では、ページの名称が「Copilot and Azure OpenAI Service tenant settings」から「Copilot and agent admin settings」へ変更されています。一方、Fabric管理ポータル内の設定グループ名は、引き続き「Copilot and Azure OpenAI Service」です。管理画面で「Agent」という名前だけを探すと、対象設定を見つけられない可能性があります。(GitHub)
主な変更・明確化は次のとおりです。
| 変更・明確化された点 | 内容 | 管理者が行うこと |
|---|---|---|
| Agentを管理対象として明示 | Copilotだけでなく、Fabric data agentsなども管理対象に含まれる | Agentを含めたAI利用方針を決める |
| 外部サービス連携時の注意を追加 | Fabric外のサービスへ応答データが送られる可能性を明示 | 接続先サービスの規約とデータ処理場所を確認する |
| Power BIの用語を変更 | 「AI-prepped」から「Approved for Copilot」へ変更 | 手順書や社内資料の名称を更新する |
| Fabric Copilot capacityを整理 | Copilotの利用量と請求を特定の容量へ集約できる | 容量管理者と対象ユーザーを指定する |
| 保存と会話履歴を分離 | データ処理、データ保存、会話履歴が別設定であることを明確化 | 3項目を個別に審査する |
CopilotだけでなくFabric data agentsも確認対象になる
基本設定の「Users can use Copilot and other features powered by Azure OpenAI」を有効にすると、Copilotに加えてAzure OpenAIを利用するAgent機能も対象になります。
ここで注意したいのは、Fabric data agentを次のようなFabric外のサービスから利用する場合です。
- Microsoft Foundry
- Microsoft Copilot Studio
- Microsoft 365 Copilot
- MCPサーバー
これらのサービスへ接続すると、Fabric data agentが返す応答がFabricの地理的リージョンやコンプライアンス境界の外へ送られ、接続先サービスの規約に従って処理・保存される可能性があります。Fabric側の設定だけを確認しても、データガバナンスの確認は完了しません。(Microsoft Learn)
管理者は、外部サービスごとに次の項目を確認する必要があります。
- 応答データが処理されるリージョン
- データの保存有無と保存期間
- ログや会話履歴の取り扱い
- 接続に使用するユーザー権限
- 機密情報を含むデータの利用可否
「Approved for Copilot」への名称変更
Power BIの設定名は、以前の「Only show AI-prepped items」から、現在は「Only show approved items in the standalone Copilot in Power BI experience」に変更されています。
この設定を有効にすると、スタンドアロンのPower BI CopilotやPower BI agentが検索する対象を、原則として「Approved for Copilot」に設定されたコンテンツへ限定できます。
単なる名称変更に見えますが、実務では次の対応が必要です。
- 社内手順書の「AI-prepped」という表記を修正する
- Power BI管理者とセマンティックモデル作成者へ新名称を周知する
- Copilotで検索させるモデルの承認基準を決める
- 承認前にデータモデル、説明、AI向け指示をテストする
この設定は既定でワークスペース管理者へ委任されます。テナント管理者が検索範囲を制限しても、委任設定によってワークスペース側の判断が影響する可能性があるため、委任範囲も確認してください。(Microsoft Learn)
Copilot and Agent admin settingsの設定一覧
Microsoft Learnで整理されている設定は次の7項目です。ここで示す既定値は公式ドキュメント上の値であり、実際のテナント設定とは異なる場合があります。(Microsoft Learn)
| 設定 | 公式ドキュメント上の既定値 | 主な影響 |
|---|---|---|
| Users can use Copilot and other features powered by Azure OpenAI | 有効 | CopilotやAgentを利用できる |
| Data sent to Azure OpenAI can be processed outside your capacity’s geographic region… | 無効 | 容量の地域外でデータを処理できる |
| Data sent to Azure OpenAI can be stored outside your capacity’s geographic region… | 無効 | Notebookやdata agentのデータを地域外に保存できる |
| Conversation history stored outside your capacity’s geographic region… | 無効 | セッションをまたぐ会話履歴を地域外に保存できる |
| Capacities can be designated as Fabric Copilot capacities | 有効 | Copilotの利用量と請求を特定の容量へ集約できる |
| Users can access a standalone, cross-item Power BI Copilot experience | 無効 | Power BIの左側ナビゲーションからスタンドアロンCopilotを利用できる |
| Only show approved items in the standalone Copilot in Power BI experience | 無効 | Copilot検索を承認済みコンテンツへ制限できる |
既定で有効でも、すぐに全員が利用できるとは限らない
「Users can use Copilot」と「Capacities can be designated as Fabric Copilot capacities」は、公式ページでは既定で有効とされています。
ただし、設定が有効であることと、すべてのユーザーがCopilotを利用できることは同じではありません。実際には、容量、リージョン、ユーザーグループ、ワークスペース権限などの条件も満たす必要があります。
Fabric Copilot capacityも、設定を有効にしただけでは自動的に作成・割り当てされません。Fabric管理者が容量管理者による指定を許可し、その後、容量管理者が利用ユーザーを割り当てる必要があります。(Microsoft Learn)
スタンドアロンCopilotの既定値は実環境で確認する
2026年6月11日版の管理者設定ページでは、スタンドアロンPower BI Copilotの既定値は「無効」と記載されています。
一方、Power BIの有効化手順では、2025年9月以降、すでにCopilotが有効なテナントではスタンドアロンCopilotが既定で有効になったと説明されています。公式ページ間で前提が異なるため、ドキュメントの既定値だけで判断せず、実際の管理ポータルを確認してください。(Microsoft Learn)
日本リージョンでは越境データ処理の確認が重要
Microsoftのリージョン対応表では、日本にあるFabric capacityからCopilotを利用する場合、Azure OpenAIの処理先として米国が示されています。そのため、「Data sent to Azure OpenAI can be processed outside your capacity’s geographic region…」を有効にする必要があります。(GitHub)
この設定は、単なる機能スイッチではありません。組織のデータ所在地ポリシーや契約条件に関わるため、Fabric管理者だけで判断せず、セキュリティ、法務、コンプライアンス部門と確認してください。
また、次の3項目は別々の設定です。
| 項目 | 制御する内容 |
|---|---|
| データ処理 | プロンプトや応答を地域外のAzure OpenAIで処理できるか |
| データ保存 | Notebookやdata agentに関するデータを地域外に保存できるか |
| 会話履歴 | セッションをまたぐ会話履歴を地域外に保持できるか |
「データ処理」を有効にしても、「データ保存」や「会話履歴」が自動的に有効になるわけではありません。反対に、Notebookやdata agentを利用しない組織では、保存関連の設定が必要かを個別に判断できます。
Copilotで処理される情報には、ユーザーのプロンプト、システム側の指示、データ構造やスキーマ、会話履歴などが含まれる可能性があります。テーブル内のデータは、ユーザーが明示的に処理対象としない限り送信されないとMicrosoftは説明しています。(GitHub)
会話履歴は削除しなければ28日間保存される
会話履歴の設定は、主にCopilot in NotebooksとFabric data agentsを対象としています。
セッションをまたいで文脈を維持するには、Agentが過去の会話を保存する必要があります。ユーザーはチャットをクリアすることで会話履歴を削除できますが、削除しなかった場合は28日間保存されます。(Microsoft Learn)
管理者は、次の点を利用者へ明示しておくとよいでしょう。
- 会話履歴が保存される機能
- 保存期間
- ユーザー自身による削除方法
- プロンプトへ入力してよい情報の範囲
- インシデント発生時の問い合わせ先
なお、この28日という保存期間を、すべてのFabric Copilot機能に一律で適用されるルールと解釈しないでください。公式ページでは、NotebookとFabric data agentsの会話履歴について説明されています。
誰に影響するのか
| 対象者 | 主な影響 |
|---|---|
| 一般ユーザー | Copilotの表示有無、利用可能なAgent、検索できるPower BIコンテンツが変わる |
| Fabric管理者 | テナント設定、対象グループ、越境処理、Copilot capacityの許可を管理する |
| 容量管理者 | Fabric Copilot capacityへユーザーを割り当て、利用量を監視する |
| ワークスペース管理者 | Copilot検索で利用できるコンテンツの範囲を管理する |
| Power BI作成者 | セマンティックモデルをAI向けに整備し、Approved for Copilotを設定する |
| セキュリティ・法務担当者 | 越境処理、保存期間、外部サービス連携の条件を確認する |
| コスト管理担当者 | CopilotによるCU消費と容量のスロットリングを監視する |
一般ユーザーにソフトウェア更新は必要ありません。ただし、管理者が設定を変更すると、Copilotのアイコンが表示されなくなったり、以前検索できたPower BIコンテンツが表示されなくなったりする可能性があります。
Fabric管理者が設定を確認する手順
管理ポータルを開く
- Microsoft Fabricポータル右上の歯車アイコンを選択します。
- 「Governance and insights」にある「Admin portal」を開きます。
- 「Tenant settings」を選択します。
- 「Copilot and Azure OpenAI Service」設定グループを検索します。(Microsoft Learn)
現在の設定値と対象グループを記録する
変更前に、各設定について次の情報を記録してください。
- 有効または無効
- 組織全体が対象か
- 特定のセキュリティグループだけが対象か
- 除外グループが設定されているか
- 容量レベルへ委任されているか
- 変更者と変更理由
ユーザーが許可グループと除外グループの両方に所属している場合、より制限の強い設定が適用されます。設定変更後に一部のユーザーだけ利用できない場合は、グループの重複を確認してください。(Microsoft Learn)
日本リージョン向けの3設定を個別に審査する
次の順番で判断すると、設定を混同しにくくなります。
- Azure OpenAIによる地域外処理を許可できるか
- Notebookやdata agentのデータを地域外へ保存できるか
- セッションをまたぐ会話履歴を保存できるか
最初から組織全体へ有効化せず、検証用セキュリティグループだけを対象にする方法が安全です。
Fabric Copilot capacityを確認する
Copilotの費用を特定の容量へ集約する場合は、次の3段階を確認します。
- Fabric管理者がCopilotの利用を許可する
- Fabric管理者が、容量管理者によるCopilot capacityの指定を許可する
- 容量管理者が、Copilot capacityを利用するユーザーを割り当てる
「Capacities can be designated as Fabric Copilot capacities」が有効でも、3番目のユーザー割り当てがなければ運用は完了しません。(Microsoft Learn)
Power BIの2設定をセットで確認する
スタンドアロンPower BI Copilotを利用するには、基礎となる「Users can use Copilot and other features powered by Azure OpenAI」をテナントレベルで有効にする必要があります。容量レベルだけで有効にしても、スタンドアロンCopilotは利用できません。(Microsoft Learn)
そのうえで、次の設定を確認します。
- Users can access a standalone, cross-item Power BI Copilot experience
- Only show approved items in the standalone Copilot in Power BI experience
承認済みコンテンツだけを検索対象にする場合は、検索対象となるセマンティックモデルが「Approved for Copilot」に設定されているかも確認してください。
設定変更が反映されない場合の確認ポイント
Fabricのテナント設定は、組織全体へ反映されるまで最大15分かかる場合があります。Power BI Copilotの検索対象に関する変更は、最大24時間かかることがあります。変更直後にテストして「反映されていない」と判断しないようにしてください。(Microsoft Learn)
反映されない場合は、次の順で確認します。
- ユーザーが許可対象グループに所属しているか
- 除外グループにも所属していないか
- テナントレベルと容量レベルの両方を確認したか
- 対象ワークスペースが対応する有料容量にあるか
- 越境データ処理設定が必要なリージョンではないか
- Power BIコンテンツがApproved for Copilotになっているか
- 設定変更後、十分な反映時間を置いたか
更新・移行・料金・期限で確認すべきこと
| 項目 | 2026年6月11日版の結論 |
|---|---|
| 更新 | クライアントアプリの更新やバージョン指定は記載されていない |
| 移行 | 強制的なデータ移行や設定移行は案内されていない |
| 名称変更 | 「AI-prepped」を使用した手順書は「Approved for Copilot」へ修正する |
| 料金 | 新料金の発表ではないが、Copilot利用はCUを消費する |
| 期限 | 強制切替日、廃止日、対応期限の記載はない |
| 運用 | 対象グループを限定し、利用量を測定してから展開する |
「バックグラウンドジョブが無料」はCopilot全体が無料という意味ではない
管理者設定ページには、一部のエンドユーザー体験を支えるサービス側のバックグラウンドジョブが、テナント容量への課金なしで実行される場合があると記載されています。
ただし、通常のCopilotリクエストはFabric Capacity Unitsを消費します。2026年6月11日時点の公式情報では、1,000トークン当たりの消費率は次のとおりです。
| 処理 | 消費率 |
|---|---|
| 入力プロンプト | 100 CU秒/1,000トークン |
| 出力結果 | 400 CU秒/1,000トークン |
出力側の消費率が高いため、長い回答を大量のユーザーが繰り返し生成すると、想定以上に容量を消費する可能性があります。Microsoftは、まず少人数のパイロットグループで利用量を測定し、その結果から全社展開時の消費量を見積もる方法を案内しています。(Microsoft Learn)
料金表だけを見るのではなく、Fabric Capacity Metricsアプリで「Copilot in Fabric」の操作を確認してください。容量を使い切ると、Copilotだけでなく同じ容量上のほかの処理にも影響が及ぶ可能性があります。
よくある失敗と注意点
基本設定だけ有効にして利用できると思い込む
日本リージョンでは、地域外でのデータ処理を許可しなければ利用できない場合があります。基本設定、リージョン設定、容量、ユーザー割り当てをセットで確認してください。
越境処理とデータ保存を同じ設定だと考える
処理、保存、会話履歴は別々の設定です。必要な設定だけを個別に有効化し、承認記録を残します。
Fabric Copilot capacityを有効にすれば自動で集約されると思う
容量管理者による容量の指定とユーザー割り当てが必要です。テナント設定の有効化だけでは、請求先の集約は完了しません。
「Approved for Copilot」をアクセス権限として使う
Approved for Copilotは、Copilot検索の品質や検索対象を管理するための設定です。ユーザーのアクセス権限を置き換えるものではありません。
Microsoftも、テナント設定はガバナンスには役立つものの、それ自体をセキュリティ対策として扱うべきではないと説明しています。ワークスペースやセマンティックモデルの権限管理も別途行ってください。(Microsoft Learn)
外部Agent連携をFabric内の処理だと考える
Fabric data agentをMicrosoft 365 CopilotやCopilot Studio、MCPサーバーから利用する場合、接続先サービスのデータ処理条件が適用されます。外部公開前に、利用規約とデータフローを確認してください。
管理者が今すぐ行うべきこと
まずFabric管理ポータルを開き、「Copilot and Azure OpenAI Service」配下の7設定を一覧化してください。その後、日本リージョンでの越境処理を許可できるか、セキュリティ・法務部門と確認します。
全社へ一度に展開するのではなく、検証用グループだけを対象にCopilotを有効化し、Fabric Capacity MetricsアプリでCU消費を測定する方法が現実的です。Power BIを利用している場合は、「Approved for Copilot」の承認基準を決め、旧名称の「AI-prepped」が残っている手順書も更新します。
今回の変更で重要なのは、新しい機能をすぐ有効にすることではありません。誰が使えるのか、どこで処理・保存されるのか、どの容量へ課金されるのかを分けて管理することが、Microsoft FabricのCopilotとAgentを安全に運用するポイントです。

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