Microsoft 365 CopilotでDataverseデータ検索が可能に|変更点と管理者の確認ポイント

Microsoft 365 CopilotでDataverseの業務データを検索・質問できるようになる更新が、Microsoft 365 Roadmapに追加されています。結論からいうと、Power AppsやDynamics 365などで使っているDataverseテーブルの顧客、案件、ケース、請求、活動履歴といった業務データを、Microsoft 365 Copilotから自然言語で探したり要約したりできる方向の機能です。公式ロードマップ上ではプレビューが2026年6月、一般提供が2026年9月予定で、対象はMicrosoft Copilot (Microsoft 365)、Desktop/Web、Worldwide Standard Multi-Tenantとされています。(Microsoft)

ただし、これは「CopilotがDataverse内のすべてのデータを自動で見られるようになる」という意味ではありません。Microsoft 365 Copilotは、ユーザーがアクセス権を持つデータのみを表示する設計で、Dataverse側でもセキュリティロールやDataverse Search、Copilot関連設定の確認が必要です。公開前に管理者がやるべきことは、機能を有効化するかどうかの判断、パイロット対象グループの選定、Dataverseの権限棚卸し、検索対象テーブルの品質確認です。(Microsoft Learn)

目次

Microsoft 365 CopilotのAI/Copilot更新で何が変わるのか

今回の「Dataverse data connected to Microsoft 365 Copilot」は、Microsoft 365 CopilotからDataverseのビジネスデータを検索・照会できるようにする更新です。公式説明では「Let people search and query Dataverse business data from Microsoft 365 Copilot」とされており、ロードマップIDは560539です。(Microsoft)

利用者目線では、これまでPower AppsやDynamics 365の画面を開いて探していた業務データを、Copilotに対して次のように聞ける可能性が広がります。

利用シーンCopilotへの質問例期待できる効果
営業「来月クローズ予定の商談を金額順に要約して」案件確認や営業会議の準備を短縮
カスタマーサポート「優先度が高い未解決ケースを一覧にして」対応漏れやエスカレーション対象を把握しやすい
経理・請求「この顧客の未払い請求と関連する契約を教えて」顧客対応前の情報収集を効率化
マネージャー「今四半期のキャンペーン状況を要約して」レポート作成前の概況把握に使える

Microsoft Learnでは、Microsoft 365 Copilotがモデル駆動型アプリやキャンバスアプリで使われるDataverseテーブルデータを検索し、関連レコードを取得して自然言語で回答・要約できると説明されています。対応エクスペリエンスとして、Microsoft 365 Copilot Chat、Power Apps、Outlook、Word、Teamsが挙げられています。(Microsoft Learn)

公式ロードマップで確認できる要点

現時点で公式ロードマップAPIから確認できる主な情報は次のとおりです。Microsoft 365 Roadmapの情報は予定であり、一般提供・延期・キャンセルなどにより変更される可能性があります。(Microsoft)

項目内容
Roadmap ID560539
機能名Microsoft Copilot (Microsoft 365): Dataverse data connected to Microsoft 365 Copilot
対象サービスMicrosoft Copilot (Microsoft 365)
概要Microsoft 365 CopilotからDataverseの業務データを検索・照会できるようにする
ステータスIn development
プレビュー予定2026年6月
一般提供予定2026年9月
対象クラウドWorldwide (Standard Multi-Tenant)
プラットフォームDesktop、Web
作成・更新時刻2026年5月27日 23:15 UTC。日本時間では2026年5月28日

影響を受ける利用者と管理者

この更新の影響は、Microsoft 365 Copilotの利用者だけでなく、Power Platform管理者、Dynamics 365管理者、アプリ作成者、セキュリティ担当者にも及びます。

立場主な影響事前に確認すべきこと
一般利用者CopilotからDataverseデータを自然言語で探せるどのデータを聞けるのか、どの聞き方が有効か
Microsoft 365管理者テナント単位またはグループ単位でDataverseデータ利用を制御するMicrosoft 365管理センターのCopilot設定
Power Platform管理者環境ごとのDataverse SearchやDataverse intelligence設定を管理する対象環境、検索インデックス、容量、環境設定
Dynamics 365管理者営業、顧客対応、フィールドサービスなどの業務データがCopilot回答に使われるセキュリティロール、部署別の閲覧範囲
開発者・アプリ作成者テーブル、列、リレーションシップの設計品質が回答精度に影響する表示名、説明、関連テーブル、データ品質
セキュリティ・コンプライアンス担当既存の権限設計がCopilot経由の発見性に直結する最小権限、監査、機密列、不要な共有

特に注意したいのは、Copilot導入によって「新しい情報漏えい経路」が突然生まれるというより、既存の過剰な閲覧権限が自然言語で見つかりやすくなる点です。Microsoft 365 Copilotはユーザーが少なくとも閲覧権限を持つ組織データのみを表示すると説明されており、Dataverse SearchもDataverseのセキュリティロールと権限を尊重します。(Microsoft Learn)

管理者が確認すべき設定

この機能を安全に展開するには、Microsoft 365側とPower Platform側の両方を見る必要があります。Microsoft Learnでは、Dataverse data in Microsoft 365 Copilotの前提条件として、テナント側の許可、環境側のCopilot設定、Dataverse Search、Dataverse intelligence、Microsoft 365 appsでのレコード検索、Power Appsアプリ側の設定が挙げられています。(Microsoft Learn)

確認項目管理画面・設定見るべきポイント
テナント側の許可Microsoft 365 admin center > Copilot > Settings「Dataverse data available in Microsoft 365 Copilot」を全ユーザーにするか、特定のEntraセキュリティグループに限定するか
環境側のCopilot設定Power Platform admin center対象環境でCopilot利用を許可しているか
Dataverse SearchPower Platform admin center > Environment > Settings > Product > Features検索インデックスが有効か。オフの場合、Copilotや生成AI体験でDataverseデータを使えない可能性がある
Dataverse intelligencePower Platform admin centerの機能設定「Allow data availability in Microsoft 365 Copilot」を有効化するか
Microsoft 365 appsでの検索環境設定Microsoft 365アプリからレコード検索を許可するか
モデル駆動型アプリ側Power Appsのアプリ設定アプリ単位でMicrosoft 365 Copilotを有効化するか

Microsoft 365管理センター側では、Copilot > Settingsから「Dataverse data available in Microsoft 365 Copilot」を選び、All usersまたはSpecific groupsを指定して保存する手順が示されています。最初から全社展開するのではなく、営業部門、サポート部門、情報システム部門などの検証グループに限定して開始するのが現実的です。(Microsoft Learn)

Power Platform側では、Dataverse intelligenceの「Allow data availability in Microsoft 365 Copilot」がオフ既定とされており、この機能を使うには関連する複数の設定をそろえる必要があります。Dataverse Searchも環境設定のSearch項目から管理できます。(Microsoft Learn)

権限設計で最初に見るべきポイント

Dataverseは、環境内のデータベースやリソースへのアクセスをセキュリティロールで制御します。ロールのアクセスレベルと権限の組み合わせによって、ユーザーがどのアプリやデータを表示・操作できるかが決まります。(Microsoft Learn)

Copilot連携前に確認すべきなのは、次のような権限の棚卸しです。

チェック対象確認内容よくある失敗
セキュリティロールBasic User、営業ロール、カスタムロールなどに不要な読み取り権限がないか「とりあえず全件参照」を付けたまま運用している
チーム・部署部署、チーム、所有者単位のアクセス制御が業務実態と合っているか退職者・異動者のチーム所属が残っている
レコード共有個別共有された重要レコードが放置されていないか過去の一時対応で共有したデータが検索対象になる
列レベルの保護個人情報、契約条件、金額、評価情報などを列レベルで守る必要がないかテーブル単位では適切でも、列単位では見せすぎている
管理者権限Microsoft 365のグローバル管理者とDataverseのSystem Administratorを混同していないかテナント管理者なのにDataverseデータへ直接アクセスできず検証が止まる

Microsoft Learnでは、テナントレベルのPower Platform管理者やDynamics 365管理者、グローバル管理者は環境やポリシーを管理できますが、Dataverseデータへのアクセスが自動的に付与されるわけではなく、対象環境でSystem Administrator Dataverseセキュリティロールが必要だと説明されています。(Microsoft Learn)

Dataverse Searchを有効にする前に確認したいデータ品質

Microsoft 365 CopilotがDataverseデータを扱えるようになっても、テーブル名、列名、リレーションシップ、データの鮮度が悪ければ、期待した回答は得にくくなります。Microsoft Learnでも、結果はデータ品質とテーブル・リレーションシップのモデル化に依存するとされています。(Microsoft Learn)

特に確認したいのは次の4点です。

確認項目改善例
テーブル名・列名new_tbl_001のような内部名だけでなく、利用者が理解できる表示名・説明を整える
リレーションシップ顧客、案件、活動、契約、請求などの関連がLookup列などで追えるようにする
ステータス値「完了」「対応中」「保留」「失注」などの定義を部署ごとにぶれさせない
古いデータ閉鎖済み案件、重複顧客、不要なテストデータを整理する

Copilot StudioのDataverseナレッジ設定では、テーブルや列に対して同義語や用語集を追加すると、AIが業務用語や略語を理解しやすくなると説明されています。Microsoft 365 CopilotでDataverseデータを使う場合も、同じ発想で「人間が普段使う言葉」と「Dataverse上の列・値」を近づけることが重要です。(Microsoft Learn)

例えば、列名がcr_rev_amtのままだと、利用者が「商談金額」と質問しても意図が伝わりにくくなります。表示名を「商談金額」にし、説明に「営業案件の見込み売上金額」と入れるだけでも、検索・要約の精度改善につながります。

移行は必要か:すぐに全データをDataverseへ移すべきではない

今回の更新をきっかけに「社内データをすべてDataverseへ移行すべきか」と考える管理者もいるかもしれません。しかし、結論としては、Copilot対応だけを理由に急いで全面移行する必要はありません。

Dataverseは、業務アプリケーションで使うデータを安全に保存・管理するためのデータプラットフォームで、データはテーブルに格納されます。標準テーブルに加えて、組織固有のカスタムテーブルも作成できます。(Microsoft Learn)

移行判断は、次の基準で考えると失敗しにくくなります。

現在のデータ判断基準推奨アクション
既にDataverseにあるPower AppsやDynamics 365で日常的に使っているまずは権限と検索品質を整えてパイロット展開
Excelで属人管理している複数人更新、承認、履歴、権限管理が必要Copilot目的ではなく業務アプリ化の観点でDataverse化を検討
SharePointリストにある簡易台帳として十分か、業務プロセス化が必要かデータ量・権限・ワークフロー要件を見て判断
ERPや基幹DBにある原本性、更新頻度、権限管理が厳しい安易に複製せず、連携方式と責任範囲を設計
PDFやOffice文書中心テーブル構造ではなく文書検索が主目的DataverseではなくSharePoint、OneDrive、Graph Connector等の選択肢も検討

Dataverseに移すべきデータは、「レコードとして扱う意味がある業務データ」です。顧客、案件、契約、ケース、資産、申請、点検記録のように、状態管理・権限管理・履歴管理・アプリ化が必要なデータは相性が良い一方、単なる文書保管庫として使うならSharePointのほうが適する場合もあります。

展開時の実務手順

安全に展開するなら、プレビュー開始予定の2026年6月から一般提供予定の2026年9月までを、検証期間として使うのが現実的です。(Microsoft)

フェーズ実施内容完了条件
事前準備Dataverse環境、対象アプリ、主要テーブル、管理者を一覧化する対象範囲と責任者が明確になっている
権限棚卸しセキュリティロール、チーム、共有、列レベル保護を確認する不要な広範囲閲覧を削除できている
パイロット設定Microsoft 365管理センターで特定グループに限定して有効化する検証ユーザーだけが利用できる
検索品質調整Dataverse Search、テーブル表示名、列説明、関連付けを確認する代表的な質問に対して期待に近い回答が出る
利用者教育質問例、禁止事項、回答確認ルールを共有する利用者が「聞き方」と「確認方法」を理解している
段階展開部門単位で対象グループを広げる問い合わせ・権限ミス・誤回答の傾向を見ながら拡張できる

プレビュー期間中は、本番業務の唯一の判断材料にしないことも重要です。プレビュー機能は制限があり、仕様が変わる可能性があります。Dataverse intelligenceのドキュメントでも、プレビュー機能は正式リリース前の機能であり、制限や変更の可能性があると明記されています。(Microsoft Learn)

開発者・アプリ作成者が注意すべき点

開発者やPower Apps作成者は、Copilotに「読ませる」前提でDataverseを設計する必要があります。画面上で人間が操作できればよい、という設計だけでは不十分です。

テーブルと列の意味を明確にする

Copilotは自然言語で質問を受けます。そのため、テーブルや列の名前が業務用語とずれていると、検索や要約の品質が下がります。

悪い例は「new_status」「custom_flag1」「cr_value」のような意味が分かりにくい列です。改善するなら、表示名を「対応状況」「優先対応フラグ」「年間契約金額」のようにし、説明欄に業務上の意味を記載します。

リレーションシップを整える

Microsoft 365 Copilotは、Dataverseテーブルの関連レコードを使って回答できます。たとえば、顧客テーブルから関連するケース、契約、請求、活動履歴をたどれるようにしておけば、「この顧客の最近の問題点を要約して」といった質問に答えやすくなります。(Microsoft Learn)

読み取り専用か、更新まで行うのかを分ける

モデル駆動型アプリ向けのMicrosoft 365 Copilotでは、既知の制限として読み取り専用操作でデータを表示する機能だと説明されています。データを変更するには、エージェントによるカスタマイズが必要です。(Microsoft Learn)

つまり、最初の展開では「検索・要約・確認」用途に絞るのが安全です。レコード更新、承認、登録、削除などの操作を任せる場合は、別途エージェント設計、監査、承認フロー、ロールバック手順まで検討する必要があります。

ライセンスと提供範囲で注意したいこと

ロードマップ項目そのものは、Microsoft Copilot (Microsoft 365)向け、Worldwide Standard Multi-Tenant、Desktop/Webとして公開されています。政府クラウドやモバイル対応など、ロードマップ項目に明記されていない範囲は、現時点で断定しないほうが安全です。(Microsoft)

また、Power Appsのモデル駆動型アプリでMicrosoft 365 Copilotを使う関連ドキュメントでは、Power Apps premiumライセンスとMicrosoft 365 Copilotライセンス、Dynamics 365アプリではDynamics 365 EnterpriseまたはPremiumライセンスなどの前提が説明されています。実際のプレビュー参加や一般提供時のライセンス条件は、組織の契約と公式管理センターの表示で確認してください。(Microsoft Learn)

よくある疑問

CopilotはDataverseの全データを見られるようになるのか

いいえ。Microsoft 365 Copilotは、各ユーザーがアクセスできるデータのみを表示する設計です。Dataverse SearchもDataverseのセキュリティロールと権限を尊重し、ユーザーがアクセス権を持つレコードだけを検索結果として表示します。(Microsoft Learn)

ただし、既存の権限が広すぎる場合は、その範囲でCopilotから見つけやすくなります。導入前の権限棚卸しが重要です。

Dataverse Searchをオフにしている環境では使えるのか

Dataverse Searchが無効な場合、Dataverseデータに依存するCopilotや生成AI体験で結果が返らない可能性があります。Microsoft Learnでは、Dataverse SearchがCopilotやアプリ内検索体験の基盤であり、環境管理者が設定を管理すると説明されています。(Microsoft Learn)

既存のPower AppsやDynamics 365アプリを作り直す必要はあるのか

通常、機能利用のためだけにアプリを作り直す必要はありません。ただし、Copilotが理解しやすいように、テーブル名、列名、説明、リレーションシップ、検索対象列、権限設計を見直す価値はあります。

Copilotの回答をそのまま業務判断に使ってよいか

最初は使わないほうが安全です。特にプレビュー期間中は、回答の根拠となるレコード、更新日時、アクセス権、検索条件を利用者が確認する運用にしてください。重要な契約判断、請求判断、顧客対応では、Copilotの要約を「確認の入口」として使い、最終判断は元データで行うべきです。

まず管理者が取るべき次の行動

今回のMicrosoft 365 CopilotとDataverse連携は、Power PlatformやDynamics 365に蓄積された業務データを、日常のCopilot体験に近づける重要な更新です。一方で、価値を出せるかどうかは、CopilotそのものよりもDataverse側の設計と運用に左右されます。

最初に行うべきことは、対象環境と主要テーブルの棚卸しです。次に、セキュリティロール、チーム、レコード共有、列レベルの保護を確認します。そのうえで、Dataverse SearchとCopilot関連設定をパイロットグループに限定して有効化し、代表的な業務質問で検証します。

「誰が、どのDataverseデータを、どのMicrosoft 365 Copilot体験から、何の目的で使うのか」を先に決めておけば、便利さだけでなく安全性と説明責任も確保しやすくなります。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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