Microsoft Edgeの更新後に、社内システムが動かない、拡張機能が停止する、印刷やPDF表示に不具合が出る場合、Microsoft Edge rollback for enterprisesを使うと、企業管理者がEdgeを一時的に以前のバージョンへ戻せます。
2026年6月15日時点で確認できる公式情報では、一般ユーザー向けの「元のバージョンに戻す」ボタンが追加されたわけではありません。従来どおり、MSIまたはMicrosoft Edge Updateの管理ポリシーを利用する企業向けの障害回避策です。
なお、指定されたMicrosoft Learnページ上の最終更新日は2024年3月27日です。2026年6月15日付の新料金や終了期限、操作方法の大幅な変更は同ページに記載されていません。本記事では、2026年6月15日時点の関連ポリシーやリリース情報も含めて、現在確認すべきポイントを整理します。(Microsoft Learn)
Windows / Edgeの新機能・変更点:Microsoft Edge rollback for enterprisesの要点
Microsoft Edge rollback for enterprisesは、新機能を試すためのダウングレード手段ではありません。Edgeの更新によって業務影響の大きい不具合が発生したときに、修正版が提供されるまで旧バージョンへ一時退避するための機能です。
| 確認項目 | 2026年6月15日時点の内容 |
|---|---|
| 何ができるか | Microsoft Edgeを指定した以前のバージョンへ戻す |
| 主な対象 | Edgeを組織管理しているIT管理者と管理対象Windows端末 |
| 一般ユーザーへの影響 | 管理者がポリシーを適用した端末だけが影響を受ける |
| 実行方法 | MSIによる手動インストール、またはEdge Updateと管理ポリシー |
| データ保護 | Edge Syncとユーザーデータのスナップショットを利用 |
| 追加料金 | 公式ロールバックガイド内に個別料金の記載はない |
| 終了期限 | 機能の終了期限は明記されていないが、旧バージョンの常用は非推奨 |
| 復旧後の対応 | ロールバック設定を解除し、修正版または最新版へ戻す |
以前のEdgeには既知の脆弱性が残っている可能性があります。そのため、Microsoftもロールバックを一時的な対処として位置付けています。(Microsoft Learn)
Microsoft Edgeのロールバックが必要になるケース
次のように、Edgeのバージョン更新と業務障害の因果関係を確認できる場合は、ロールバックを検討できます。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 更新直後から複数端末で同じ社内システムが動かない | ロールバック候補 |
| 旧バージョンの検証端末では正常に動く | ロールバック候補 |
| 特定のユーザープロファイルだけで発生する | プロファイルやキャッシュを先に確認 |
| ネットワーク全体でWebサイトに接続できない | DNS、プロキシ、ファイアウォールを先に確認 |
| セキュリティ更新を避けることだけが目的 | ロールバックすべきではない |
| WebView2を組み込んだアプリだけで問題が起きる | EdgeブラウザーではなくWebView2の対処を検討 |
「更新後に不具合が出た」という情報だけで全端末を戻すのは危険です。まず少数の検証端末で、現在のバージョン、問題が発生しない旧バージョン、再現手順を記録してください。
誰に影響するのか
もっとも影響を受けるのは、Active Directory、Microsoft Intune、Configuration ManagerなどでEdgeを管理している組織です。
Microsoftのポリシーリファレンスでは、RollbackToTargetVersionはMicrosoft Edge 86以降、Microsoft Edge Update 1.3.133.3以降が対象とされています。ポリシーリファレンス上は、WindowsのActive Directoryドメイン参加端末で利用できる設定として案内されています。(Microsoft Learn)
一方、2026年のMicrosoft Intune公式手順では、登録済みWindows端末のSettings Catalogに次の設定が掲載されています。
- Rollback to Target version
- Target version override
- Update policy override
- Auto-update check period override
Intune管理環境でも設定を配布できますが、公式ページに掲載されているバージョン番号は構成例です。そのままコピーせず、自社で動作確認したバージョンを指定してください。設定後はedge://policyを開き、ポリシーが「Error」ではなく有効な状態で表示されることを確認します。(Microsoft Learn)
個人所有のパソコンや、会社からポリシーを配布されていない一般ユーザーには、通常は直接的な変更はありません。
ロールバック前に確認すべき設定
現在と移行先のバージョンを記録する
現在のEdgeバージョンは、アドレスバーに次のいずれかを入力して確認できます。
edge://settings/help
edge://version
移行先には、問題発生前に正常動作を確認できた完全なバージョン番号を指定します。
TargetVersionPrefixというポリシー名には「Prefix」と含まれますが、現在の公式ポリシー文書では、具体的なEdgeバージョンを指定するよう案内されています。存在しない番号や書式が誤った番号を入力すると、ロールバックだけでなく、その後の自動更新も正しく動かない場合があります。(Microsoft Learn)
Edge Syncを確認する
ロールバックでは、閲覧データが失われる可能性があります。Microsoftは、実行前に組織のユーザーに対してEdge Syncを有効にすることを推奨しています。
ForceSyncを使う場合は、次の依存設定にも注意が必要です。
BrowserSigninを無効にしないSyncDisabledを有効にしない- 同期対象から除外しているデータの種類を確認する
ForceSyncだけを有効にしても、サインインや同期そのものを禁止するポリシーが残っていると同期されません。(Microsoft Learn)
ユーザーデータのスナップショットを確認する
Edgeはメジャーバージョンの更新後、緊急ロールバックに備えてユーザーの閲覧データの一部をスナップショットとして保存します。
UserDataSnapshotRetentionLimitの既定値は3です。0に設定するとスナップショットが作成されません。スナップショットは完全なバックアップではないため、業務上重要なお気に入りなどは別途保全しておくと安全です。(Microsoft Learn)
管理用テンプレートを更新する
管理画面にロールバック関連の設定が表示されない場合は、次の管理用テンプレートが古い可能性があります。
MSEdge.admxmsedgeupdate.admx
新しいポリシーを配布する前に、中央ストアや管理端末のテンプレートを更新してください。
MSIでMicrosoft Edgeを手動ロールバックする手順
MSI方式は、対象端末が少ない場合や、更新チェックを待たずに緊急対応したい場合に向いています。
手順
- Edgeの「更新ポリシーのオーバーライド」を有効にする
- MSIによる作業中は「更新を無効にする」を選択する
- 公式のEdge for Business配布ページから対象バージョンのMSIを入手する
- 管理者としてコマンドプロンプトを起動する
- 次の形式でインストールする
msiexec /I "C:\Path\FileName.msi" /qn ALLOWDOWNGRADE=1
- Edgeを閉じて再度起動する
edge://settings/helpでバージョンを確認する
MSIのパスに空白が含まれる場合は、上記のようにパス全体を二重引用符で囲みます。ALLOWDOWNGRADE=1を付け忘れると、現在より古いMSIを指定してもロールバックされません。(Microsoft Learn)
MSI方式の注意点
MSI方式では、作業中にEdge Updateが再び最新版をインストールしないよう、更新を一時的に無効化します。ただし、更新を無効にしたまま放置してはいけません。
問題の修正版を確認したら、更新ポリシーを元に戻し、最新のセキュリティ更新を適用してください。
グループポリシーやIntuneでロールバックする手順
複数の端末へ一括展開する場合は、Edge Updateのポリシーを使います。
グループポリシーでは、次の場所を開きます。
コンピューターの構成
> 管理用テンプレート
> Microsoft Edge Update
> Applications
> Microsoft Edge
次の順番で設定します。
- 「ターゲットバージョンへのロールバック」を有効にする
- 「ターゲットバージョンのオーバーライド」に完全なバージョン番号を入力する
- 「更新ポリシーのオーバーライド」を有効にする
- 「常に更新を許可する」または「自動サイレント更新のみ」を選択する
- 必要に応じて
gpupdate /forceを実行する edge://policyで設定が反映されたことを確認するedge://settings/helpで実際のバージョンを確認する
gpupdate /force
ここで重要なのは、ポリシー方式ではEdge Updateを無効にしないことです。「更新を無効にする」を選ぶと、Edge Updateが対象バージョンを取得できず、ロールバックが実行されません。
現在のポリシーリファレンスでは「手動更新のみ」も有効状態として扱われますが、ユーザーによる更新確認が必要になります。緊急時に多数の端末へ配布する場合は、「常に更新を許可する」または「自動サイレント更新のみ」のほうが管理しやすいでしょう。(Microsoft Learn)
すぐにバージョンが戻らない理由
gpupdate /forceはポリシーを更新するコマンドであり、Edge Updateによるバージョン変更を直ちに完了させるコマンドではありません。
公式ロールバックガイドでは、既定の自動更新チェックは10時間ごとと説明されています。急ぐ場合はAutoUpdateCheckPeriodMinutesで確認間隔を調整できますが、0を指定すると定期的なネットワーク通信自体が無効になるため推奨されません。(Microsoft Learn)
ロールバックに失敗しやすいポイント
| 症状 | 確認するポイント |
|---|---|
| バージョンが変わらない | RollbackToTargetVersionが有効か |
| 対象バージョンにならない | バージョン番号の存在、書式、配布状況 |
| ポリシー方式で動かない | Update policyを「更新無効」にしていないか |
| MSI方式で動かない | ALLOWDOWNGRADE=1を付けたか |
| 一部の端末だけ戻らない | ポリシーの割り当て、同期、端末のオンライン状態 |
| ロールバック後すぐ最新版に戻る | MSI方式で更新停止が適用されているか |
| お気に入りなどが消えた | Syncとスナップショットが利用できたか |
| 設定項目が見つからない | ADMXテンプレートが最新か |
| Intuneでエラーになる | 設定の競合、割り当て先、edge://policyの状態 |
特に間違えやすいのが、MSI方式とポリシー方式で更新設定が逆になる点です。
| 方法 | 作業中の更新ポリシー |
|---|---|
| MSIによる手動ロールバック | 一時的に更新を無効化する |
| Edge Updateによるポリシーロールバック | 更新を有効な状態にする |
WebView2のダウングレードとは別の機能
2026年6月時点では、Edgeブラウザーのロールバックとは別に、WebView2 Evergreen Runtimeをアプリ単位で以前のバージョンへ戻すDowngradeVersionポリシーも提供されています。
Edge 149で追加されたWebView2の仕組みは、アプリの実行ファイルと対象ランタイムを対応付け、N-1またはN-2のWebView2 Runtimeを一時的に使用する機能です。対象バージョンはサイドバイサイドでインストールされ、後続リリースに応じてダウングレードが自動的に失効します。(Microsoft Learn)
違いは次のとおりです。
| 項目 | Edgeブラウザーのロールバック | WebView2のダウングレード |
|---|---|---|
| 対象 | Microsoft Edgeブラウザー | WebView2を組み込んだアプリ |
| 適用単位 | Edgeのチャネル、端末 | アプリの実行ファイル単位 |
| 対象バージョン | 管理者が指定した利用可能なEdge版 | 原則としてN-1またはN-2 |
| 主なポリシー | RollbackToTargetVersion | DowngradeVersion |
| 自動失効 | 管理者が解除するまで残り得る | 新しいリリースに応じて自動失効 |
業務アプリの画面だけが崩れる場合は、そのアプリが通常のEdgeを起動しているのか、WebView2を組み込んでいるのかを先に確認してください。
料金・期限・移行で確認すべきこと
追加料金
Microsoft Edgeのロールバック機能単体について、公式ガイド内に追加料金の案内はありません。
ただし、Microsoft IntuneやConfiguration Managerなどを使って一括配布する場合は、それぞれの管理サービスやライセンス条件が別途適用されます。
適用期限
ロールバック機能自体の終了期限は明記されていません。一方、旧バージョンを使い続ける期間は、できる限り短くする必要があります。
ロールバックを実施するときは、あらかじめ次の解除条件を決めてください。
- Microsoftから修正版が公開された
- 社内システム側の修正が完了した
- 検証端末で最新版の正常動作を確認できた
- 関係部門が最新版への復帰を承認した
最新版へ戻す手順
問題が解決したら、次の順番で復旧します。
- 少数の検証端末で修正版をテストする
RollbackToTargetVersionを無効または未構成へ戻すTargetVersionPrefixを解除する- 更新ポリシーを通常の設定へ戻す
- Edge Updateを実行する
edge://settings/helpで修正版への更新を確認する- 管理画面で古いEdgeが残っていないか確認する
ロールバック設定だけを解除し、TargetVersionPrefixを残すと、意図せず特定バージョンへ固定される可能性があります。関連する設定を一組として管理してください。
繰り返しロールバックする場合は更新チャネルも見直す
Microsoftは、Edge 152のStableリリースが予定されている2026年8月27日から、Stableチャネルを2週間周期へ変更すると案内しています。Extended Stableは、従来どおり8週間周期を維持します。(Windows Blog)
新しいEdgeを毎回十分に検証できず、ロールバックを繰り返す可能性がある組織は、次の運用を検討してください。
- BetaまたはEnterprise Previewを少数端末へ先行展開する
- Stableの更新前に業務システムを検証する
- 変更頻度を抑えたい端末ではExtended Stableを検討する
- ロールバック手順と最新版へ戻す手順を社内手順書にする
Microsoft Edge rollback for enterprisesは、障害発生時の有効なセーフティネットです。ただし、成功の鍵はロールバックコマンドそのものではなく、対象バージョンの事前検証、Syncとスナップショットの確認、方式に合った更新ポリシー、最新版へ戻す解除計画にあります。
まずは検証端末で現在のバージョンと不具合を記録し、業務影響を再現できるか確認してください。そのうえでMSI方式かポリシー方式を選び、全社展開前に少数端末でデータと動作を確認するのが安全です。

コメント