SharePointやOneDriveに古いファイルが増え、「消すほどではないが、日常利用やCopilotの対象にはしたくない」という悩みは多くの組織で起きます。結論から言うと、SharePoint: Microsoft 365 Archive file-level archivingは、Microsoft 365 Archiveをサイト単位だけでなく、ファイル単位・フォルダー配下のファイル単位で使いやすくする変更です。ただし、OneDriveそのものを管理者が任意にファイル単位アーカイブできる機能ではなく、主な対象はSharePointサイト上のファイルです。
Microsoft 365 Roadmap ID 477371では、この機能は「Microsoft 365 Archiveにファイルレベルのアーカイブを導入する」ものとして登録され、プレビューはMarch CY2026、一般提供はJune CY2026、対象はSharePoint、Web、Worldwide Standard Multi-Tenantとされています。更新日時はUTCで2026年5月22日22:15:37のため、日本時間では2026年5月23日の更新として扱えます。なお、Microsoft 365 Roadmapの公開日や提供時期は変更される可能性があるため、展開前には必ず最新のロードマップとMessage centerを確認してください。(Microsoft)
SharePoint: Microsoft 365 Archive file-level archivingで変わること
これまでMicrosoft 365 Archiveは、主にSharePointサイト全体を低コストのアーカイブ層へ移す使い方が中心でした。今回のfile-level archivingでは、サイト全体を止めるのではなく、サイト内の個別ファイルをアーカイブ対象にできる点が大きな違いです。ユーザーは、ファイルレベルアーカイブが有効なSharePointサイトで、自分に編集権限があるファイルを手動でアーカイブできます。アーカイブ後のファイルは、読み取り前に再アクティブ化が必要です。(Microsoft Learn)
| 観点 | これまでの主な使い方 | file-level archiving後の考え方 |
|---|---|---|
| アーカイブ単位 | SharePointサイト単位 | SharePointサイト内のファイル単位。フォルダー操作では配下ファイルに再帰的に適用 |
| 操作する人 | 主にSharePoint管理者 | 管理者が許可したサイトで、編集権限を持つユーザーがファイルをアーカイブ可能 |
| アクセス | アーカイブされたサイトやファイルは直接利用できない | 必要時に再アクティブ化して利用 |
| 検索 | Purviewやエンドユーザー検索で検出可能 | OneDriveやSharePointのWeb検索でアーカイブ済みコンテンツを見つけられる |
| Copilot | アーカイブ済みコンテンツは利用対象外 | Copilotに参照させたい資料はアーカイブ対象から外す判断が必要 |
| 容量・課金 | アクティブストレージからアーカイブストレージへ再分類 | サイト単位の容量表示やクォータ削減とは分けて考える必要あり |
フォルダー単位の操作も用意されていますが、フォルダー自体に「アーカイブ済み」という状態が付くわけではありません。選択したフォルダー配下のファイルに対して、アーカイブまたは再アクティブ化が再帰的に実行されます。フォルダー操作には、1サイトあたり1日最大500,000アクション、フォルダー内最大20,000アイテムなどの制限があり、大きなフォルダーではスケジュールと完了を含めて最大48時間かかる場合があります。(Microsoft Learn)
OneDriveは「直接の対象」ではなく、検索・同期・移動時の影響に注意
今回の機能名にSharePointが含まれている通り、ファイルレベルアーカイブはSharePointサイトで利用する機能です。Microsoft Learnでも、file-level archiveはSharePointサイトでのみ利用可能と説明されています。アーカイブ済みファイルをOneDriveへコピーまたは移動した場合、アーカイブ状態は保持されますが、OneDriveの画面上で必ず分かりやすく表示されるとは限りません。(Microsoft Learn)
OneDriveとの関係で重要なのは、OneDrive上での検索・表示・同期クライアントの挙動です。OneDrive Web検索では「Archived」フィルターを使って、アーカイブ済みサイトやファイルレベルでアーカイブされたコンテンツを検索できます。一方で、Teams、OneDrive、SharePointのモバイルアプリ、macOSのOneDrive同期クライアント、Windows 10以前のOneDrive同期クライアント、更新されていないOfficeデスクトップアプリなどは、プレビュー期間中の制限として注意が必要です。(Microsoft Learn)
また、管理者がOneDriveアカウントを通常のSharePointサイトと同じようにサイトアーカイブすることはできません。OneDriveアカウントのアーカイブは、未ライセンスのOneDriveアカウント管理など別の文脈で扱われます。SharePointのファイルアーカイブとOneDriveアカウントのアーカイブを同じものとして設計しないことが重要です。(Microsoft Learn)
影響を受ける対象者と確認ポイント
この変更は、単に「古いファイルを安く保管できる」機能ではありません。ユーザー操作、検索、Copilot、同期クライアント、PowerShell設定、運用ルールに関わるため、管理者だけでなくサイト所有者や開発者も確認が必要です。
| 対象者 | 確認すべきこと | 実務上の判断ポイント |
|---|---|---|
| SharePoint管理者 | Microsoft 365 Archiveの有効化、テナント・サイト単位の許可設定 | 全社で既定有効にする前に、部門・サイト単位で段階展開する |
| OneDrive運用担当 | OneDrive検索、同期クライアント、移動・コピー時の表示差異 | 「OneDriveに移せば分かりやすく管理できる」と考えない |
| サイト所有者 | どのファイルをアーカイブ対象にするか | 完了案件、監査用資料、参照頻度の低い成果物から始める |
| セキュリティ・コンプライアンス担当 | Purview、保持、eDiscovery、法的保持への影響 | アーカイブ後も保持・検索・監査の要件を満たすか確認する |
| 開発者・自動化担当 | ファイル取得、プレビュー、インポート処理の失敗ハンドリング | アーカイブ済みファイルを「存在するが直接開けない」状態として扱う |
Microsoft Purviewの保持やeDiscoveryなどは、アーカイブ済みコンテンツにも引き続き適用されます。アーカイブ済みデータはアクティブなSharePointデータと同等のセキュリティ水準を維持し、geo compliance boundary内に保持されると説明されています。(Microsoft Learn)
管理者が最初に確認すべき設定
file-level archivingを使うには、前提としてMicrosoft 365 Archiveのセットアップが必要です。Microsoft 365 Archiveは従量課金モデルで、Microsoft 365管理センターから構成します。利用前にAzureサブスクリプションのリンク、Microsoft 365管理センターでの従量課金設定、Microsoft 365 Archiveの有効化、SharePoint管理センターでの管理が必要です。(Microsoft Learn)
プレビュー期間中は、管理者がPowerShellでファイルレベルアーカイブを明示的に有効化する必要があります。一方、一般提供後は、Microsoft 365 Archiveが有効な場合にSharePointサイトでfile-level archivingが既定で有効になると説明されています。つまり、全社で勝手に使われることを避けたい組織では、GA前にテナント全体・サイト単位・新規サイトの既定値を確認しておくべきです。(Microsoft Learn)
# テナント全体の状態確認
Get-SPOTenant | Select AllowFileArchive, AllowFileArchiveOnNewSitesByDefault
# テナント全体でファイルレベルアーカイブを許可
Set-SPOTenant -AllowFileArchive $true
# 新規作成サイトでの既定値を制御
Set-SPOTenant -AllowFileArchiveOnNewSitesByDefault $false
# 特定サイトの状態確認
Get-SPOSite -Identity "https://contoso.sharepoint.com/sites/project-a" |
Select Url, AllowFileArchive, ArchivedFileDiskUsed
# 特定サイトでファイルレベルアーカイブを許可
Set-SPOSite -Identity "https://contoso.sharepoint.com/sites/project-a" -AllowFileArchive $true
# 特定サイトで新規アーカイブ操作を止める
Set-SPOSite -Identity "https://contoso.sharepoint.com/sites/project-a" -AllowFileArchive $false
管理用プロパティとして、テナント単位の-AllowFileArchive、サイト単位の-AllowFileArchive、新規サイトの既定を制御する-AllowFileArchiveOnNewSitesByDefaultが用意されています。Get-SPOSiteのArchivedFileDiskUsedでは、そのサイトでファイルレベルアーカイブが消費しているストレージ量をバイト単位で確認できます。(Microsoft Learn)
アーカイブ対象に向いているファイル、向いていないファイル
file-level archivingは、すべての古いファイルに機械的に適用する機能ではありません。特に、CopilotやPower BI、外部連携、同期クライアントから参照されるファイルは、業務影響を確認してから対象にする必要があります。
| ファイルの種類・状態 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 終了済み案件の提案書、納品物、契約前資料 | 向いている | 参照頻度は低いが、証跡として保持したい |
| 年に数回だけ確認する監査・証跡ファイル | 向いている | 必要時に再アクティブ化する運用と相性がよい |
| Copilotに参照させたいナレッジ文書 | 向いていない | アーカイブ済みコンテンツはMicrosoft 365 Copilotのクエリに使われない |
| Power BIやClipchampなどに取り込むファイル | 慎重に判断 | 一部アプリではアーカイブ済みコンテンツの読み込みに失敗する可能性がある |
| OneNote、SharePointページ、SharePointエージェント | 対象外 | アーカイブできないファイル種別として示されている |
| サイト容量クォータをすぐ下げたい大容量ファイル | 目的次第 | サイト単位のストレージ使用量やクォータ計算は変わらない |
ファイルレベルアーカイブでは、アーカイブ済みファイルもサイトストレージ上はアクティブファイルと同じように扱われます。そのため、サイトの使用量表示を減らしたり、サイトクォータを超えて保存したりする目的には向きません。一方、テナント全体では、アーカイブ済みデータはアクティブSharePointストレージからアーカイブストレージへ再分類され、アクティブストレージ使用量が減り、アーカイブストレージ使用量が同量増えます。(Microsoft Learn)
展開時に失敗しやすいポイント
サイト容量削減とテナント課金最適化を混同しない
最も起きやすい誤解は、「ファイルをアーカイブすればサイトの容量不足が解消する」と考えることです。公式FAQでは、file-level archiveはサイトストレージ使用量やクォータ動作を変更しないと説明されています。サイト単位の容量制限に困っている場合は、バージョン履歴、不要ファイル、サイト設計、ライブラリ分割なども別途見直す必要があります。(Microsoft Learn)
ユーザーに再アクティブ化の手順を周知しないまま始めない
アーカイブ済みファイルは、必要になった時点で再アクティブ化してから利用します。ユーザーは、ファイルがホストされているSharePointサイトまたはOneDriveアカウントに移動し、読み取り権限があればreactivateアクションを実行できます。再アクティブ化は最大24時間かかる場合があり、完了時には開始したユーザーへメール通知されます。(Microsoft Learn)
ユーザー向けには、次のような短い案内を事前に用意しておくと混乱を減らせます。
| 状況 | ユーザーへの案内 |
|---|---|
| ファイルが開けない | SharePointまたはOneDriveのWeb画面でアーカイブ状態を確認する |
| すぐ必要な資料だった | Reactivateを実行し、完了メールを待つ |
| フォルダー配下をまとめて戻したい | Reactivate all filesを使う。ただし大容量フォルダーでは時間がかかる |
| アプリ側でエラーになる | 直接アプリから開かず、Web画面で状態確認と再アクティブ化を行う |
プレビューとGA後の既定動作の違いを見落とさない
プレビュー中はPowerShellで明示的に有効化する前提ですが、一般提供後はMicrosoft 365 Archiveが有効なSharePointサイトでfile-level archivingが既定有効になる説明です。特に、編集権限を持つユーザーが多いサイトでは、意図しないアーカイブ操作が起きないよう、対象サイトを限定してから展開するのが安全です。(Microsoft Learn)
実務では、最初から全社展開せず、次の順で進めると失敗しにくくなります。
| フェーズ | 実施内容 | 完了条件 |
|---|---|---|
| 棚卸し | 古いファイルが多いSharePointサイトを抽出 | 所有者、用途、保存理由が分かる |
| パイロット | 1〜3サイトで有効化 | アーカイブ、検索、再アクティブ化、同期の動作を確認 |
| ルール化 | アーカイブ対象・除外対象を定義 | Copilot対象資料、Power BI連携資料などの除外基準がある |
| 展開 | サイト単位で順次有効化 | ユーザー通知と問い合わせ先が整っている |
| 監視 | ArchivedFileDiskUsedや問い合わせ内容を確認 | 想定外の業務影響が出ていない |
開発者・自動化担当が確認すべきポイント
アプリや自動化処理がSharePointファイルを扱っている場合、アーカイブ済みファイルを「削除済み」や「権限なし」と同じ扱いにしないことが重要です。アーカイブ済みファイルは存在しますが、読み取りには再アクティブ化が必要です。Web版のSharePointまたはOneDriveから、読み取り権限を持つユーザーが再アクティブ化できます。(Microsoft Learn)
特に、次の処理は事前テストが必要です。
| 処理 | 確認ポイント |
|---|---|
| ファイルプレビュー | アーカイブ済みファイルでエラー表示になる場合の案内文を用意する |
| バッチ取り込み | アーカイブ済みファイルをスキップするか、再アクティブ化依頼に回す |
| Power BI連携 | アーカイブ済みコンテンツのインポート失敗を想定する |
| 独自検索・社内ポータル | 検索結果に出す場合、アーカイブ状態と再アクティブ化手順を表示する |
| AI・RAG連携 | Copilot同様、アーカイブ済み資料を回答根拠に使う前提にしない |
Microsoft Learnでは、サイトアーカイブについてはPowerShellのSet-SPOSiteArchiveStateやMicrosoft Graph betaのsite: archive、site: unarchiveが説明されています。一方、file-level archiveの管理制御として示されているのは、テナント・サイト・新規サイト既定値を制御するPowerShell設定です。ファイル単位のアーカイブ操作を独自アプリから直接制御する設計は、公式APIの対応状況を確認してから進めるべきです。(Microsoft Learn)
管理者が展開前に作るべき運用ルール
file-level archivingは、設定をオンにするだけでは運用が安定しません。最低限、次のルールを決めてから展開することをおすすめします。
| ルール | 決める内容 | 例 |
|---|---|---|
| アーカイブ対象 | どの条件でアーカイブしてよいか | 最終更新から18か月以上、案件終了済み、所有者承認済み |
| 除外対象 | アーカイブしてはいけないファイル | 現行マニュアル、Copilot用ナレッジ、Power BI参照元 |
| 権限 | 誰がアーカイブ操作をしてよいか | 編集権限者全員ではなく、サイト所有者に限定する運用も検討 |
| 復旧SLA | 再アクティブ化にどれくらい待てるか | 当日必要な資料はアーカイブしない |
| 問い合わせ | 開けない時の連絡先 | サイト所有者、情報システム部、ヘルプデスク |
| 棚卸し頻度 | アーカイブ済みファイルを見直す周期 | 四半期ごと、年度末、案件終了時 |
アーカイブの目的は、「古いファイルを見えなくすること」ではなく、業務で使うデータと、保持すべきだが日常的には使わないデータを分けることです。サイト所有者が判断できないファイルを機械的にアーカイブすると、後から再アクティブ化依頼が集中し、かえって運用負荷が増えます。
まず取るべきアクション
SharePoint / OneDrive環境でこの変更に備えるなら、最初にやるべきことは3つです。
まず、Microsoft 365 Archiveの有効化状況と従量課金設定を確認します。次に、PowerShellでAllowFileArchive関連の設定を確認し、GA後に既定有効になっても問題ないサイトと、明示的に無効化すべきサイトを分けます。最後に、OneDrive同期、モバイル、Officeアプリ、Power BIなど、ファイルを直接開く業務フローでパイロット検証を行います。
この機能は、SharePointの情報ライフサイクル管理を細かくできる有用な変更です。ただし、サイト容量削減、OneDrive整理、Copilot対象外化、監査対応、ユーザー操作を一つの機能に詰め込むと失敗します。「どのファイルを、誰が、どの条件で、どれくらいの復旧時間を許容してアーカイブするか」を決めたうえで、サイト単位の段階展開から始めるのが現実的です。

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