Microsoft Teams callingの通話委任を利用している組織は、2026年8月の展開に備えて、役員・管理職と秘書・アシスタント間の通話運用を見直す必要があります。
日本時間2026年7月9日に実質更新されたMicrosoft 365 Roadmap ID 567306では、Teamsの委任通話に、委任元が進行中の通話をロックして代理人の参加・再開を防ぐ機能と、代理人が参加・再開した際に警告音で知らせる機能が追加される予定です。一般提供は2026年8月が予定され、対象としてWindows向けデスクトップとMac、Worldwide、GCC、GCC High、DoDが記載されています。(Microsoft)
通話委任を利用していない組織では、現時点で緊急の対応はありません。一方、役員と秘書、管理職とアシスタントなどが電話回線を共有している場合は、委任関係の棚卸し、Windows・Macでの動作確認、ロックを使う場面の明文化まで準備しておくと安全です。
Microsoft Teams callingの委任通話で何が変わるのか
Microsoft Teamsの通話委任とは、委任元が代理人を設定し、自分の代わりに発着信を処理してもらう機能です。Teams Phoneの「共有回線の外観(Shared Line Appearance)」として説明されることもあります。
たとえば、部長が秘書を代理人に設定すると、秘書は部長に代わって電話を受けたり、部長の回線を使って発信したりできます。
現在のTeamsでは、適切な権限を持つ代理人が進行中の通話に参加できます。また、代理人に「保留中の通話を再開する権限」が与えられている場合は、委任元または代理人が保留中の通話を再開できます。(マイクロソフトサポート)
今回の変更点を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 現在の主な動作 | 追加予定の制御 |
|---|---|---|
| 進行中の通話への参加 | 権限を持つ代理人が参加できる | 委任元が通話をロックし、代理人の参加を防げる |
| 保留中の通話の再開 | 権限を持つ代理人が再開できる | ロック中は代理人による再開を防げる |
| 代理人が参加した際の通知 | 権限と画面表示を前提に運用 | 参加者に警告音を鳴らせる |
| プライバシー制御の単位 | 委任関係や代理人権限を事前設定 | 進行中の通話に対して追加制御できる |
ロードマップの説明では、委任元が進行中の通話をロックすると、代理人がその通話へ参加したり、保留状態から再開したりできなくなります。警告音は任意で有効化でき、代理人が参加または再開したことを通話参加者に知らせます。(Microsoft)
進行中の通話をロックして代理人の参加を制限できる
今回の中心となる変更は、委任元が進行中の通話をロックできることです。
従来の代理人権限は、発信、着信、設定変更、保留中の通話の再開などを、委任関係ごとに設定する仕組みでした。今回のロック機能は、それらの権限を削除するのではなく、特定の進行中通話に対してプライバシーを確保するための制御と考えると分かりやすいでしょう。
具体的には、次のような場面で役立ちます。
- 役員が人事異動や報酬について話す場合
- 上司が部下の健康情報や家庭事情について相談を受ける場合
- 法務部門と訴訟、契約、内部調査について話す場合
- 顧客の個人情報や金融情報を扱う場合
- M&A、事業売却、組織再編などの未公開情報を扱う場合
- 秘書が取り次いだ後、本人同士だけで話す必要が生じた場合
たとえば、秘書が役員宛ての電話を受けて本人へ引き継いだ後、相手が未公開の人事案件について話し始めたとします。役員がその通話をロックすれば、権限を持つ秘書であっても、進行中の通話へ追加参加したり、保留中の通話を再開したりすることを防げます。
ただし、ロードマップが明記している制限対象は、代理人による「参加」と「再開」です。次の点は、2026年7月9日時点のロードマップだけでは確認できません。
- ロック前から参加している代理人がどう扱われるか
- ロック解除の操作方法と権限
- 複数の代理人がいる場合に個別指定できるか
- ロック操作が監査ログに記録されるか
- コンプライアンス記録や通話録音に影響するか
したがって、ロックを「通話内容を完全に秘匿する機能」と捉えるのは適切ではありません。あくまで、代理人による参加・再開を制御する機能として評価し、正式な管理ドキュメントやテナントのメッセージセンター情報を確認する必要があります。(Microsoft)
代理人が参加・再開した際に警告音を鳴らせる
もう一つの変更は、代理人が通話に参加したとき、または保留中の通話を再開したときに、参加者へ警告音を鳴らす機能です。
警告音が有効であれば、委任元は画面を見ていなくても、代理人が通話に加わったことを把握しやすくなります。特に、ヘッドセットを使用している場合や、複数の代理人が同じ委任元を支援している場合に有効です。
次のような事故の防止が期待できます。
- 代理人が参加したことに気付かず機密情報を話し続ける
- 保留中の通話を代理人が再開したことに委任元が気付かない
- 複数の秘書やアシスタントのうち、誰が参加したか確認しないまま会話を進める
- 通話相手が、別の参加者が加わったことを認識しない
ただし、この警告音は、録音や文字起こしに対する同意取得を目的とした機能ではありません。法律、社内規程、契約などで録音や第三者参加の説明が必要な場合は、警告音だけに依存せず、口頭で参加者を紹介するなどの運用を継続する必要があります。
対象プラットフォームと展開時期
2026年7月9日時点のロードマップ情報は、次のように整理できます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| Roadmap ID | 567306 |
| 機能名 | Enhanced delegated calling with delegate call access restrictions and join notifications |
| 製品 | Microsoft Teams |
| 状態 | In development |
| 対象プラットフォーム | Desktop、Mac |
| 対象クラウド | Worldwide、GCC、GCC High、DoD |
| リリースリング | Targeted Release、General Availability |
| 一般提供予定 | 2026年8月 |
Web、モバイル、Teams電話は明示されていない
Roadmap ID 567306の対象プラットフォーム欄に記載されているのは、DesktopとMacです。Web版、iOS・Android版、Teams IP電話は、このロードマップ項目の対象として明記されていません。
これは、Web版やモバイル版で通話委任そのものが利用できないという意味ではありません。Microsoft Learnの現行情報では、通話委任の基本機能はデスクトップ、Mac、Web、モバイル、Teams IP電話でサポートされています。ただし、機能ごとに対応状況が異なります。(Microsoft Learn)
とくにMacについては注意が必要です。現行のMicrosoft Learnの対応表では、Macは保留・再開に対応している一方、「アクティブな呼び出しに参加する」は非対応とされています。それにもかかわらず、今回のロードマップではMacも対象プラットフォームに含まれています。(Microsoft Learn)
このため、新機能を検証するときは、Windows版とMac版を同じテスト結果で扱わないことが重要です。Macでは、少なくとも保留中通話の再開制御や警告音を個別に確認し、正式展開後のクライアント別仕様も再確認してください。
2026年8月は確定日ではない
Microsoft 365 Roadmapに記載される日付は予定であり、変更される可能性があります。Microsoftも、ロードマップ上のリリース日と説明は推定情報であり、すべて変更対象になると明記しています。
また、Roadmap ID 567306にはTargeted Releaseが含まれていますが、2026年7月9日時点の項目には、Targeted Releaseの具体的な開始日までは記載されていません。対象リリースを利用しているテナントでは標準リリースより先に表示される可能性があるため、一般提供予定の2026年8月まで待たずに確認を始める必要があります。(Microsoft)
対象者と対応要否を判断するポイント
今回の変更が直接影響するのは、Teams Phoneの通話委任を設定しているユーザーです。
通常の通話転送、同時呼び出し、コールグループ、コールキューだけを利用し、代理人との委任関係を設定していない場合は、直接的な影響は限定的です。
| 利用状況 | 対応優先度 | 推奨する対応 |
|---|---|---|
| 通話委任を利用していない | 低 | ロードマップとメッセージセンターを監視する |
| 役員と秘書で通話委任を利用 | 高 | 委任関係の棚卸しと先行テストを行う |
| 人事、法務、財務部門で利用 | 高 | ロックを使う場面を規程・手順に反映する |
| 顧客の個人情報を電話で扱う | 高 | 警告音だけに依存しない参加確認ルールを作る |
| 一人の委任元に複数の代理人がいる | 高 | 複数代理人で参加・再開・通知を検証する |
| 主にWeb版やモバイル版を使用 | 中 | 対象クライアントの追加情報を確認する |
| Macを利用する委任元・代理人がいる | 高 | Windowsと分けて動作確認する |
| 通話転送だけを利用している | 低 | 通話委任との設定上の違いを確認する |
判断に迷う場合は、Teams管理センターまたはPowerShellで、対象ユーザーに代理人が登録されているかを確認してください。
管理者が展開前に準備すべきこと
委任元と代理人を棚卸しする
最初に行うべきことは、新しいポリシーを探すことではなく、現在の委任関係を把握することです。
Teams Phoneの通話委任を利用するには、原則として委任元と代理人の双方にTeams Phoneライセンスが必要です。また、Microsoft Learnでは、この機能はTeams Onlyの展開モードで利用すると説明されています。(Microsoft Learn)
Teams管理センターでは、次の場所を確認します。
ユーザー > ユーザーを管理- 対象ユーザーを選択
音声(Voice)タブを確認- 通話委任、同時呼び出し、代理人の登録状況を確認
ユーザー画面に音声タブが表示されない場合は、Teams Phoneライセンスが割り当てられていない可能性があります。(Microsoft Learn)
PowerShellでは、次のコマンドでユーザーの通話転送、代理人、委任元の情報を確認できます。
Get-CsUserCallingSettings -Identity [email protected]
出力結果では、DelegatesやDelegatorsに加え、代理人のMakeCalls、ReceiveCalls、ManageSettingsなどを確認できます。Microsoftは、代理人の追加・変更・削除に、それぞれNew-CsUserCallingDelegate、Set-CsUserCallingDelegate、Remove-CsUserCallingDelegateを用意しています。(Microsoft Learn)
全ユーザーを一度に確認するのが難しい場合は、次の順序で対象を絞ると効率的です。
- 役員、部長、事業責任者
- 秘書、管理アシスタント
- 人事、法務、財務、内部監査
- 顧客相談や医療・福祉情報を扱う部署
- 複数の代理人が設定されているユーザー
- 退職、異動、長期休職後も委任関係が残っているユーザー
Calling Policyと代理人権限を確認する
通話委任は、TeamsCallingPolicyのAllowDelegationで制御され、既定では有効です。Teams管理センターでは、音声(Voice)> 通話ポリシー(Calling policies)から、受信・送信通話の委任を確認できます。(Microsoft Learn)
今回のロードマップ項目には、新しい管理者ポリシー名や既定値は記載されていません。そのため、正式展開前に推測でグローバルポリシーを変更するのではなく、まず既存の次の設定を確認してください。
- 委任機能が必要なユーザーだけに有効になっているか
- 代理人に発信権限が必要か
- 代理人に着信権限が必要か
- 保留中の通話を再開する必要があるか
- 他の代理人設定を変更する権限が必要か
- 退職者や異動者が代理人として残っていないか
委任元と代理人に異なるCalling Policyが割り当てられている場合、代理人は自身のポリシーに従います。委任元のポリシー権限が代理人へそのまま引き継がれるわけではないため、Microsoftは両者に同じCalling Policyを割り当てることを推奨しています。(Microsoft Learn)
新しい通話ロックは、過剰な代理人権限を放置してよい理由にはなりません。恒常的に不要な権限は削除し、一時的に機密性が高まる通話をロックで補完する、という使い分けが適切です。
ロックを使用する場面を決める
機能が提供されても、利用者が「いつロックすべきか」を理解していなければ効果は限定的です。
最低限、次のような運用ルールを作成しておきましょう。
| 状況 | 委任元の対応 | 代理人の対応 |
|---|---|---|
| 機密性の高い話題へ移る | 話し始める前に通話ロックを使用する | 参加できなくても繰り返し操作しない |
| 代理人の参加が必要 | 誰が参加するか確認してから会話を続ける | 参加時に氏名と参加理由を伝える |
| 警告音が聞こえた | 機密情報の説明を一度止める | 自分が参加・再開したことを伝える |
| 通話が保留された | 再開する担当者を事前に決める | ロック中の再開失敗を障害と判断しない |
| 委任が不要になった | 管理者へ委任解除を依頼する | 共有履歴や設定へのアクセスを継続しない |
利用者向けの説明では、次の一文を明記すると混乱を減らせます。
通話に参加できない場合は、Teamsの障害ではなく、委任元がプライバシー保護のため通話をロックしている可能性があります。
WindowsとMacでパイロットテストを行う
パイロットテストは、委任元と代理人を各一人だけ用意するのではなく、実際の運用に近い構成で実施します。
| テスト項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| ロックしていない通話 | 権限を持つ代理人が参加できるか |
| ロックした通話 | 代理人による参加が拒否されるか |
| 保留中の通話 | ロック中に代理人が再開できないか |
| 警告音を有効化した通話 | 参加・再開時に誰へ音が聞こえるか |
| 複数代理人 | 一人が参加した場合の他代理人の表示と操作 |
| WindowsとMac | 操作項目、通知、参加・再開の違い |
| Teams間通話 | 組織内ユーザー同士で期待どおり動くか |
| PSTN通話 | 外線着信・外線発信でも同じ制御になるか |
| ヘッドセット利用 | 小さな警告音を聞き逃さないか |
| 通話の転送後 | 転送前後でロック状態がどう扱われるか |
ロードマップから確認できるのは、ロックによって代理人の参加・再開を防げることと、警告音を任意で有効化できることまでです。警告音の既定値、音量、通知対象、詳細な画面操作は、実環境で確認する必要があります。(Microsoft)
ヘルプデスク向けの切り分け手順を用意する
展開後は、「代理人が通話に入れない」という問い合わせが増える可能性があります。すぐに障害として扱わず、次の順序で確認します。
- 委任元が通話をロックしていないか
- 代理人に必要な権限があるか
- 委任関係が削除されていないか
AllowDelegationが有効か- 委任元と代理人にTeams Phoneライセンスがあるか
- 使用しているクライアントが対象か
- Targeted Releaseまたは標準リリースの展開対象になっているか
- Teamsクライアントが組織の推奨バージョンへ更新されているか
新機能が表示されない場合も、すぐに設定不備と判断してはいけません。段階的展開では、同じテナント内でも利用可能になる時期がずれる可能性があります。
導入時に注意したい失敗しやすいポイント
通話ロックを代理人の削除と同じだと考える
通話ロックは、委任関係そのものを削除する機能ではありません。異動や退職で代理人が不要になった場合は、既存の委任設定から削除する必要があります。
不要な代理人を残したまま「必要なときだけロックする」という運用にすると、ロックを忘れた通話へ参加されるリスクが残ります。
警告音を法的な同意取得として扱う
今回の警告音は、代理人の参加・再開を知らせるためのものです。録音、文字起こし、コンプライアンス記録、第三者への情報提供に関する同意を代替するものではありません。
法令や社内規程に基づく説明が必要な場合は、従来どおり口頭説明や規定された通知を行ってください。
一般提供予定日を固定日として社内周知する
2026年8月という情報は予定です。「8月1日から全社員が使える」といった周知は避け、「2026年8月から段階的に提供される予定」と表現するのが安全です。ロードマップ情報は変更される可能性があります。(Microsoft)
Windowsだけを確認して全社展開する
Roadmap ID 567306にはDesktopとMacが記載されていますが、現行の通話委任機能にはクライアントごとの差があります。
Windowsで期待どおり動作しても、Macで同じ操作や表示になるとは限りません。Mac利用者が少数でも、役員や秘書が使用している場合は個別テストが必要です。
正式仕様が出る前に大規模なポリシー変更を行う
ロードマップ項目には、今回の機能専用となる管理者設定、PowerShellパラメーター、監査ログなどの詳細が記載されていません。(Microsoft)
既存のCalling Policyを大きく変更すると、通話転送や代理発信など別の運用へ影響する可能性があります。まず限定ユーザーで確認し、必要な設定だけを変更してください。
管理者が今すぐ行うべき対応
Microsoft Teams callingの委任通話を利用している組織では、次の順番で準備を進めると効率的です。
Get-CsUserCallingSettingsで役員・秘書などの委任関係を確認する- 不要な代理人や過剰な権限を削除する
- 委任元と代理人のTeams Phoneライセンス、Calling Policyを確認する
- WindowsとMacを分けてパイロット対象者を選ぶ
- 通話ロックを使用する情報区分や業務場面を決める
- 警告音が鳴った際の確認手順を利用者へ周知する
- 2026年8月に向けてMicrosoft 365メッセージセンターとRoadmap ID 567306を継続確認する
通話委任を利用していない場合は、急いで設定を変更する必要はありません。利用している場合は、最初の一歩として、機密性の高い通話を扱うユーザー一組を選び、委任設定と代理人権限の棚卸しから始めてください。

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