Windows 11 で「メモリ整合性(コア分離/HVCI)」を有効にした途端、Realtek や AMD のオーディオデバイスが消えて無音になる――Geekom A6 を含む一部のミニPCでよく報告されているトラブルです。この記事では、セキュリティ機能を切らずに音を出すことを前提に、原因の仕組みと、安全性を維持しながらできる現実的な対処法を、具体的な操作手順付きで整理します。
Windows 11 の「メモリ整合性(HVCI)」とは何か
まずは問題の発端である「メモリ整合性」について整理します。
メモリ整合性(Core Isolation / HVCI: Hypervisor-protected Code Integrity) は、Windows 11 のセキュリティ機能の一つで、次のような役割を持ちます。
- 仮想化技術(Hyper-V)を使い、カーネルモードドライバーの署名や整合性を厳しくチェックする
- 危険な挙動や古い仕様のドライバーをロード前にブロックする
- 結果として、カーネルレベルのマルウェアや脆弱なドライバー悪用攻撃を防ぐ
その代償として、HVCI に対応していない古いドライバーや、脆弱性リストに載ったドライバーは読み込まれなくなる場合があります。今回の「音が出ない」問題は、まさにこの仕様に引っかかったケースと考えられます。
症状の概要:メモリ整合性を ON にすると音が消える
今回想定している環境は以下のようなものです。
- OS:Windows 11 Pro 64bit
- PC:Geekom A6(ミニPC)
- オーディオ:Realtek オンボード音源/AMD HDMI オーディオ
- 状況:Windows Update 実行後に、メモリ整合性を有効化
典型的な症状は次のようになります。
| 状況 | オーディオの状態 | デバイス マネージャーでの表示 |
|---|---|---|
| メモリ整合性 OFF | Realtek や AMD の出力デバイスが見える/音が出る | 「サウンド、ビデオ、およびゲーム コントローラー」に各デバイスが表示 |
| メモリ整合性 ON | 出力デバイスが突然消える/音が出ない | 該当ドライバーが読み込まれず、デバイス自体が消えて見える場合がある |
この挙動から分かるのは、ドライバーそのものは存在するが、HVCI によってロードを拒否されているということです。
なぜ Realtek/AMD オーディオドライバーが読み込まれないのか
根本原因はシンプルで、次のいずれか、または両方だと考えられます。
- 使用中の Realtek/AMD オーディオドライバーが HVCI 非対応の古い形式である
- ドライバーに既知の 脆弱性や互換性問題があり、Microsoft によりブロック対象になっている
メモリ整合性を ON にすると、Windows はカーネルドライバーの署名や動作を厳しくチェックし、条件を満たさないものを読み込みません。そのため、該当ドライバーに依存するオーディオデバイスは、OS から存在しないように見えてしまいます。
実際、コミュニティでは次のような趣旨の回答が「正解」として受け入れられることがあります。
メーカーが HVCI 対応の正しいドライバーを提供していない以上、完全な解決は難しい。セキュリティを重視するなら、対応ドライバーを出している別機種に乗り換えるか、製品を返品するのも選択肢。
とはいえ、すぐに買い替えは現実的でない場合が多いので、できる限りセキュリティを維持したまま音を出す「現実解」を探ることになります。
セキュリティを落とさずに音を出す方針
この記事では次の方針を取ります。
- メモリ整合性を常時 OFF にすることは推奨しない
- 可能な限り、HVCI 対応のドライバーや構成に置き換えることを目標にする
- どうしてもダメな場合の一時的な回避策や、最終手段(返品・機種変更)も整理する
代表的な選択肢を比較すると、次のようになります。
| 対策 | セキュリティ | 音質・機能 | 難易度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| HVCI 対応ドライバーに更新 | 高 | 純正機能を維持しやすい | 中 | 最優先の理想解 |
| Microsoft 汎用ドライバーに変更 | 高 | 最低限の機能のみ | 低〜中 | 簡単だが機能は削られる |
| USB-DAC など外付けクラス準拠デバイス | 高 | 機種によっては高音質 | 低 | PC本体のドライバー問題を回避 |
| メモリ整合性を常時 OFF | 低 | 元の音質・機能を維持 | 低 | 攻撃リスク増大、常用は非推奨 |
| 返品・機種変更 | 高 | 新機種次第 | 手間は高い | 長期的には最もスッキリした解決 |
ステップ別:セキュリティを維持したままの具体的な対処法
最新の HVCI 対応ドライバーに総入れ替えする
最も優先すべきは、Realtek/AMD オーディオドライバーを、HVCI 対応の最新版に入れ替えることです。
1. Windows Update のオプション更新まで適用
- 設定 → Windows Update を開く
- 「詳細オプション」→「オプションの更新プログラム」を確認
- ドライバー更新(Realtek、AMD、システムデバイスなど)があればすべて適用
オプション更新には、HVCI 対応版ドライバーが紛れていることがあります。
2. デバイスマネージャーから既存ドライバーをクリーン削除
Win + X→「デバイス マネージャー」- 「サウンド、ビデオ、およびゲーム コントローラー」を開く
- 対象の Realtek/AMD オーディオデバイスを右クリック →「デバイスのアンインストール」
- 「このデバイスのドライバーソフトウェアを削除する」にチェックを入れて実行
- PC を再起動
これにより、問題のある古いドライバーを一掃できます。
3. メーカー配布の DCH/UAD 版ドライバーをインストール
再起動後、以下を行います。
- Geekom が公式サイトで提供している チップセット/オーディオドライバー をインストール
- あるいは、マザーボード/SoC メーカー(例:AMD)公式の DCH/UAD 版 Realtek ドライバー や AMD HDMI オーディオドライバー を導入
- 可能であれば BIOS/UEFI とチップセットドライバーも最新化 しておく
DCH(Declarative, Componentized, Hardware Support Apps)版や UAD(Universal Audio Driver)版は、Windows 10/11 の最新仕様に合わせたモダンドライバーであり、HVCI との相性が良い傾向があります。
互換性のないドライバーを特定して削除する
どのドライバーが HVCI に嫌われているのか分からない場合、「不適合なドライバー」一覧やイベントビューアーを確認します。
1. Windows セキュリティから確認
- 「Windows セキュリティ」アプリを開く
- 「デバイス セキュリティ」→「コア分離の詳細」
- 「不適合なドライバー」欄をチェック
ここに表示される ドライバー名(例:◯◯◯.sys)とバージョン を控えておきましょう。オーディオ関連のファイル名(realtek、rtkvhd64、amd、audio などを含むもの)があれば、それが犯人の可能性が高いです。
2. イベント ビューアーで CodeIntegrity のログを確認
Win + X→「コンピューターの管理」または「イベント ビューアー」- 「アプリケーションとサービス ログ」→「Microsoft」→「Windows」→「CodeIntegrity」→「Operational」
- メモリ整合性を ON にしたタイミングで発生したエラーイベントを確認
代表的な確認ポイントを表にまとめます。
| 項目 | 見るポイント |
|---|---|
| イベント ID | ドライバー ブロック関連の ID(例:3075 など) |
| メッセージ | どの .sys ファイルがブロックされたか、理由(互換性/脆弱性) |
| パス | C:\Windows\System32\drivers\ 配下か、サードパーティのフォルダか |
特定した .sys ファイルに対応するドライバーを、アンインストール → 最新版に更新 → HVCI 上でも読み込めるか確認していきます。
Microsoft の汎用ドライバーに切り替える(暫定策)
どうしても純正ドライバーで HVCI が通らない場合、Microsoft の汎用オーディオドライバーに切り替えると、機能は最低限ながら音を出せることがあります。
汎用ドライバーに変更する手順
- 「デバイス マネージャー」を開く
- 該当のオーディオデバイスを右クリック →「ドライバーの更新」
- 「コンピューターを参照してドライバーを検索」を選択
- 「コンピューター上の利用可能なドライバーの一覧から選択」をクリック
- 一覧から「High Definition Audio デバイス(Microsoft)」を選び、次へ
この方法の特徴は次の通りです。
- メリット:HVCI でブロックされにくく、シンプルで安定しやすい
- デメリット:Dolby 等の メーカー固有機能やサウンドエフェクトが失われる 可能性がある
高音質機能よりも「とりあえず安全に音が出ればよい」という場合におすすめの暫定策です。
外付けクラス準拠オーディオデバイスを使う(安定策)
PC 本体のドライバー問題に巻き込まれたくない場合、USB-DAC や USB ヘッドセット、Bluetooth ドングルなどの「クラス準拠デバイス」に切り替えるのは非常に有効です。
クラス準拠(Class-compliant)とは、OS が標準で用意している USB Audio Class ドライバーだけで動作し、メーカー独自ドライバーを必要としない機器のことです。
- メリット:
- Windows 標準ドライバーで動作するため、HVCI との相性が良い
- 別PCでも挿すだけで使えることが多い
- 安価なものから高音質モデルまで選択肢が広い
- デメリット:
- USB ポートを 1 つ消費する
- 持ち運び用途だと、やや荷物が増える
「PC 本体側のオーディオドライバー問題は一旦あきらめて、外付け側で完結させる」という割り切りは、セキュリティも音質も両立しやすい現実的な解決策です。
メーカー(Geekom/Realtek/AMD)にエスカレーションする
根本的な解決は、やはりメーカーが HVCI 対応の正式ドライバーを提供することです。Geekom や Realtek、AMD のサポートに問い合わせる際は、次の情報を添えると話が通りやすくなります。
- ブロックされている .sys ドライバー名とバージョン
- Windows ビルド番号(
winverコマンドで確認) - BIOS バージョン と機種名(例:Geekom A6)
- 再現手順:
- メモリ整合性を ON にする
- 再起動すると、Realtek/AMD オーディオデバイスが消えて音が出ない
問い合わせのポイントは、次のようなメッセージです。
- メモリ整合性を無効にすれば音は出るが、セキュリティを落としたくない
- HVCI でブロックされない最新版ドライバーの提供、または提供予定の有無を知りたい
返答次第では、返品や機種変更の判断材料にもなります。
どうしてもダメな場合の選択肢:返品・機種変更
残念ながら、メーカーが HVCI 対応ドライバーを出す予定もなく、自力での回避策も限界がある場合、返品や機種変更が最も確実な解決策になります。
- ビジネス用途で セキュリティ要件が厳しい環境(HVCI 必須など)の場合は特に、
- 「メモリ整合性 ON で正常に動くこと」が要件を満たしていない製品と見なされる
- 次に購入する機種では、
- 企業向けモデルや、Windows 11 対応を前面に出している機種
- 実際に HVCI ON で運用しているレビューや情報
やむを得ない一時的回避:メモリ整合性を OFF にする場合の注意
どうしても今すぐ音が必要だが、他の方法が間に合わない場合、メモリ整合性を一時的に無効化することは可能です。ただし、これはあくまで緊急避難的な措置と考えてください。
メモリ整合性をオフにする手順(概要)
- 「Windows セキュリティ」を開く
- 「デバイス セキュリティ」→「コア分離の詳細」
- 「メモリ整合性」を オフ にする
- 再起動
この状態では、
- Realtek/AMD オーディオドライバーが再びロードされ、音が出るようになる
- 同時に、カーネルモードドライバーの保護が弱まり、脆弱なドライバーを悪用する攻撃に対して脆くなる
したがって、
- 作業が終わったら 必ずメモリ整合性を ON に戻す
- 恒常的に OFF のまま運用することはできる限り避ける
ことを強く推奨します。
安定動作のための追加チェックリスト
オーディオドライバーだけでなく、システム全体の状態もトラブルに影響します。次のチェックポイントも合わせて確認しておきましょう。
| 項目 | 確認内容 | 目的 |
|---|---|---|
| Windows 更新 | 機能更新・累積更新ともに最新か | 古いビルドに起因する不具合を避ける |
| セキュア ブート | UEFI で Secure Boot 有効になっているか | Windows 11 の想定するセキュリティ構成に揃える |
| 常駐ソフト | クリーンブートで再現するか | サードパーティ製セキュリティソフトやチューニングツールの干渉切り分け |
| サービス | Windows Audio と Windows Audio Endpoint Builder が「実行中」か | 音声関連サービス停止によるトラブルを除外 |
| システム整合性 | sfc /scannow や DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth の実行 | 破損したシステムファイルの修復 |
| 復元ポイント | 大きな変更の前に復元ポイント作成 | 万一のときにロールバックできるようにする |
特に、Geekom A6 のようなミニPCは初期状態でさまざまなユーティリティがプリインストールされていることがあり、それらがドライバーと干渉している可能性もゼロではありません。クリーンブート状態で再現するかどうかを確認しておくと、切り分けがスムーズになります。
Geekom A6 ユーザー向けの補足とよくある疑問
これは Geekom A6 固有の問題なのか?
同様の「メモリ整合性 ON でオーディオが消える」事例は、Geekom A6 に限らず、Realtek オーディオを搭載したさまざまな PC で報告されています。ただし、
- どのバージョンのドライバーがプリインストールされているか
- メーカーがどこまで HVCI を想定して検証しているか
によって、影響の出やすさには差があります。Geekom A6 を使っている場合も、まずは本記事で紹介したドライバーの入れ替えや汎用ドライバーへの変更を試し、それでも改善しなければサポートへエスカレーションする流れがおすすめです。
BIOS 更新だけで直ることはある?
BIOS 更新によって、
- デバイスの初期化順序や ACPI の挙動が改善される
- オンボードデバイスの互換性が向上する
といったメリットはありますが、HVCI によるドライバーのブロックそのものを BIOS だけで解決できるケースは多くありません。あくまで、
- HVCI 対応ドライバーへの更新
- 汎用ドライバー/外付けデバイスの活用
と組み合わせて考えるとよいでしょう。
サードパーティ製の「ドライバー更新ツール」は使っても良い?
いわゆる「ドライバー自動更新ツール」は便利そうに見えますが、
- 誤ったドライバーをインストールして不安定になる
- 公式にサポートされていない組み合わせを作ってしまう
といったリスクもあります。特に HVCI のような セキュリティ機能との相性が絡む場合、
- Geekom 公式サイト
- Realtek/AMD 公式サイト
- Windows Update(オプション更新含む)
など、信頼できる公式ルートから入手したドライバーのみを使用する方が安全です。
まとめ:セキュリティと快適な音環境を両立させるポイント
最後に、本記事のポイントを整理します。
- Windows 11 の「メモリ整合性(HVCI)」は、古い・脆弱なドライバーをロード前にブロックする強力な防御機能であり、Realtek/AMD オーディオドライバーが引っかかる場合がある
- セキュリティを維持したいなら、
- HVCI 対応版ドライバーへの更新・総入れ替え
- Microsoft 汎用オーディオドライバーの活用
- USB-DAC 等のクラス準拠外付けデバイスへの切り替え
- メモリ整合性を一時的に OFF にすることは可能だが、常用は非推奨。作業後は必ず ON に戻すべき
- メーカーが対応ドライバーを提供していない場合、サポートへのエスカレーションや、場合によっては返品・機種変更も選択肢として検討する価値がある
Geekom A6 を含むミニPCはコストパフォーマンスに優れた魅力的な製品ですが、Windows 11 の最新セキュリティ機能をフルに活かすにはドライバー側の追随が不可欠です。メモリ整合性を犠牲にせず、安全で快適な音環境を手に入れるために、まずは本記事の手順から順に試してみてください。

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