Windows 11 Proでマウス・キーボードが反応しない/UACダイアログが連発する原因と解決策【Ryzen環境にも対応】

Windows 11 Pro で、ある日突然「キーボードが一切入力できない」「マウスは動くがホイールが効かない」「アプリを開くたびに UAC(ユーザーアカウント制御)のダイアログが連発する」といった複合トラブルに遭遇すると、OS や設定を疑いがちです。しかし今回は Linux のライブ起動でも同様の入力不調が再現しているのが重要な手掛かり。この記事では、Ryzen 5 7500F/Radeon RX 6700 XT/DDR5 32GB といった実機想定を踏まえ、最短で原因を特定し復旧させるための実践的な手順をまとめます。

目次

事象の全体像と環境

  • 発生状況: 数日前からランダムに発生。アプリを開くたび UAC の確認が表示され続ける。
  • 症状の内訳:
    • キーボード: 完全に入力不能(NumLock/CapsLock の LED 反応が遅い・消える場合あり)。
    • マウス: ポインタ移動・左クリックは可、ホイールのみ無反応。
    • UAC: Discord などを開くたびに「update.exe を許可しますか」等が繰り返し表示。
  • 試した対処: Windows 設定/レジストリで UAC を無効化(効果なし)、Linux ライブ起動でも同様の入力不調、BIOS アップデート実施(変化なし)。
  • ハード構成: Ryzen 5 7500F/Radeon RX 6700 XT/DDR5 32GB。

先に結論:OS を跨いで再現=高確度でハードウェア起因

Windows と Linux の両方で同じ種類の入力不具合が出ている時点で、OS やドライバーだけが原因である可能性は低いと断言できます。
UAC ダイアログの連発は、副次的に発生している アプリの自己更新(update.exe など)が正常に完了できないことや、入力エラーでダイアログを閉じきれないことによる見かけ上の現象で、根本原因は「入力経路(キーボード/マウス/USB/電源/マザーボード)」側と見るのが合理的です。

最短で判断するための優先診断(クイック版)

手順内容期待できる判定結果
① 代替マウス/キーボードを接続できれば新品の有線モデルを直接 PC 背面ポートへ。Bluetooth/2.4GHz 無線は除外。トラブル解消 → 旧デバイス故障。継続 → 次へ。
② USB ポートを変更前面/背面、USB 2.0/3.x、A/C すべて試す。ハブを介さない。特定ポートのみ不具合 → ポート側の障害や給電不足の疑い。継続 → 次へ。
③ 別 PC で現行デバイスを検証職場・友人 PC 等で同じデバイスをそのまま試す。別 PC でも不具合 → デバイス故障確定。正常 → PC 側(USB コントローラ/電源/干渉)を疑う。

ポイント:最初の 10〜15 分で「デバイス側」か「PC 側」かを切り分けます。USB バスパワーのハブは給電不足や相性の温床になりやすいため、診断中は必ず直挿し。再現性確認は背面 I/O(マザーボード直結)を優先します。

ハードウェア起因で疑うべき領域と深掘りチェック

入力デバイス(マウス/キーボード)側の観点

  • 物理故障の典型: マウスホイールのエンコーダ不良(スクロールだけ効かない)、ケーブル付け根の断線、無線ドングルの接触不良。
  • 高ポーリングレート由来: 一部環境で 1000Hz 以上のレポートレートが不安定要因になる例があります。
    ゲーミングマウスの設定ユーティリティで 125〜500Hz に一旦落として挙動を確認。
  • 無線干渉: 2.4GHz ドングルを USB 3.0 ポート直近に挿すと、USB 3.0 が発するノイズで感度が落ちることがあります。
    USB 2.0 延長ケーブルで離す、または背面の USB 2.0 ポートに変更。
  • ファーム更新: 一部デバイスはファームウェア更新で安定度が変わることがあります(ただし診断段階ではまずドライバレス(HID 標準)で確認)。

USB ポート/ケーブル/配線の観点

  • 前面パネル vs 背面 I/O: ケース前面は内部ヘッダー~前面基板~ケーブルと経路が長く、ノイズ・物理負荷の影響を受けやすい。
    背面 I/O 直挿しで改善するなら前面ヘッダーや配線の不具合が濃厚。
  • USB 2.0 での検証: HID は帯域要件が低いため、3.x でダメでも 2.0 なら安定することがあります。
    スクロールだけ死ぬ場合はエンコーダ故障のほか、3.x 特有のノイズ影響も視野に。
  • ケーブル品質: マウス/キーボード付属のケーブルが長すぎる、折れ癖が強いなどで信号マージンが低下している場合あり。
    有線延長は避け、短く良質なケーブルで直結。
  • ハブの使用可否: 診断中は原則不使用。常用時はセルフパワーの品質の良いハブを。

マザーボード/BIOS 設定の観点(Ryzen 7000 世代の勘所)

  • CMOS クリア: BIOS アップデート後の設定残骸が挙動不審の原因になることがあります。ジャンパ/ボタンで完全初期化。
  • USB Legacy Support/XHCI Hand-off: 値を切り替えて挙動変化を確認(古い OS 用互換のオン/オフで USB の初期化順序が変わる)。
  • IOMMU/ACS: 有効/無効でデバイスの割り当てが変化。仮想化やデバイス分離を使っていなくてもテスト価値あり。
  • Global C-state Control/Power Supply Idle Control: 省電力状態遷移時の相性で USB が瞬断する例があります。
    Power Supply Idle Control を「Typical Current Idle」に、C-state を適度に制限して試験。
  • ErP/USB 給電: S5 での給電カット設定は、再起動直後の初期化タイミングに影響。テスト中は無効化して様子見。

電源(PSU)とグラフィックボードの観点

  • +5V ラインのゆらぎ: USB は 5V 系統の安定度に左右されます。高負荷(RX 6700 XT のブーストや 2 画面出力など)時に 12V の変動が波及し、マザーボード上のレギュレータが追従できず瞬断→再認識を誘発することがあります。
  • 検証のコツ: モニタを 1 台に減らす/GPU の電源リミットを一時的に下げる/ベンチマーク中に USB の挙動を観察。
    負荷変動と不具合の発生タイミングが一致するなら、PSU の余裕不足も検討。

ノイズ/静電気/配線取り回しの観点

  • 前面 USB ケーブルの引き回し: GPU・VRM・ファンの近くを這わせるとノイズ被りが増えます。
    可能なら別経路に束ね直し、フェライトコアで高周波ノイズを抑制。
  • 静電気: 乾燥環境で接触後に入力死が起きやすいなら、アース付き電源タップや帯電防止マットの導入を。

Windows 側でできる「補助的」な確認と復旧

ハード起因が本線ですが、OS 側の不整合が重なって現象を増幅しているケースもあります。以下はハードの検証と並行して実施すると効果的です。

デバイスマネージャーでの再検出

  1. 「スタート」右クリック → デバイスマネージャー。
  2. 「ヒューマン インターフェイス デバイス」「キーボード」「マウスとそのほかのポインティング デバイス」を展開。
  3. 該当デバイスを右クリック → デバイスのアンインストール → 「ドライバーを削除」にチェック(表示される場合)。
  4. USB を挿し直すか、ハードウェア変更のスキャンで再検出。

USB 省電力の無効化

  • デバイスマネージャー:「ユニバーサル シリアル バス コントローラー」配下の各「USB ルートハブ(USB 3.0 など)」→ 右クリック「プロパティ」→「電源の管理」→電力節約のチェックを外す。
  • 電源オプション: コントロール パネル → 電源オプション → プラン設定の変更 → 詳細な電源設定の変更 → 「USB 設定」→「USB セレクティブ サスペンド設定」を無効。

チップセット/GPU ドライバーを最新化

AMD チップセットドライバー(GPIO/PCI フィルタなど)や GPU ドライバーの更新は、USB の安定性や割り込み管理に効くことがあります。
ただし、診断の順序としてはハード切り分け後に実施するのがセオリーです。

システムファイルの整合性回復

sfc /scannow
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth

クリーンブートとセーフモードでの再現確認

常駐ソフトが入力系フィルタ(キーフック/マウスフック)を入れていると症状が悪化します。
「msconfig」でクリーンブート、またはセーフモードで入力が正常化するなら、常駐ソフト由来の増幅が疑われます。

新しいローカルユーザーでの動作確認

別ユーザーで正常なら、元アカウントのプロファイル破損・レジストリの互換設定・スタートアップ登録の不整合が濃厚です。

イベントビューアで USB の異常を掴む

  • Kernel-PnP(ID 219/224):デバイスの読み込み失敗やリセット。
  • WHEA-Logger:ハードウェアの訂正可能エラーが多発していないか。

発生タイムスタンプと体感のフリーズ/UAC ポップのタイミングを突き合わせ、再現条件を絞ります。

UAC ダイアログが連発する問題の整理と対策

Discord をはじめ、多くの Electron 系アプリは「update.exe」で自己更新します。
入力不調により OK/キャンセル操作が中途半端になる、あるいはアプリが「管理者として実行」になっていると毎回昇格要求が出続けることがあります。
ハードを正した後も UAC が続く場合は、次を確認してください。

確実に効くチェックリスト

  1. アプリのプロパティ:exe の「互換性」タブにある「管理者としてこのプログラムを実行する」にチェックが入っていないか。入っていれば外す。
  2. タスク スケジューラ:アプリの自動更新タスク(例:DiscordUpdate)で「最上位の特権で実行する」がオンになっていないか、
    トリガーや実行ユーザーが妥当かを確認。不要な残骸タスクは無効化。
  3. 再インストール(ユーザーモード):一旦アンインストール後、%LocalAppData% 配下(Discord、SquirrelTemp など)の残骸を削除し、通常ユーザー権限で再インストール。
  4. 互換レイヤーの強制昇格を解除:
    HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\AppCompatFlags\Layers に対象 exe の RUNASADMIN が登録されていないか。あれば削除。
  5. UAC レベルの初期化:レジストリや設定で無理に下げ過ぎた場合は既定値に戻す(通常の 2 段目)。
  6. マルウェアスキャン:昇格を誘発する不審プロセスや、自己更新を偽装するアドウェアをフルスキャンで排除。

Linux ライブ起動でも発生した意味

Linux ライブ環境は Windows のドライバーやレジストリに依存しません。ここで同じ「キーボード無反応/ホイールのみ死ぬ」が再現するのは、USB 物理層・入力デバイス・電源・ノイズのいずれかが根である強い証拠です。
とくにホイールのみ機能しない場合は、マウスのエンコーダ物理故障と区別するために、別マウスでの再現確認が最優先になります。

「PCIe 増設 USB カード」での回避検証

マザーボード内蔵 USB コントローラーの不調が疑われる場合、ASMedia/Renesas 系コントローラーを搭載した PCIe x1 の増設 USB カードを一時的に用いて挙動を確認します。
これで完全に安定するなら、根はオンボード USB コントローラー or 配線側です。最終的にはマザーボード修理・交換を検討しつつ、暫定運用として増設カードを常用する選択肢も現実的です。

実地で使える診断フロー(保存版)

  1. 背面 I/O 直挿し・有線デバイスで再現性を観察(ハブ・前面ポート・無線は一旦禁止)。
  2. 別マウス/キーボードに入れ替え(できれば新品)。改善したらデバイス交換で終わり。
  3. 改善なし → 別 PC に現行デバイスを接続。別 PC でもおかしければデバイス故障。
  4. 現行 PC 側が怪しい → 前面/背面/2.0/3.x/A/C を総当りしてポート起因かを見る。
  5. BIOS 初期化 → USB Legacy/XHCI Hand-off/C-state/Idle Control を適正化。
  6. PSU/GPU 低負荷化して再現性を見る(モニタ 1 枚・パワーリミット抑制)。
  7. 配線を整理(前面 USB ケーブルを GPU から離す、フェライトコア装着)。
  8. それでも再現 → PCIe USB カードで検証。安定すればオンボード USB の疑い。
  9. 並行して Windows 側の補助対策(省電力無効化、ドライバー更新、SFC/DISM、クリーンブート)。
  10. 最後に UAC 連発対処(プロパティ/タスク/再インストール/互換レイヤー解除)。

管理者向け:コマンドで「いま何が繋がっているか」を素早く把握

pnputil /enum-devices /class USB
pnputil /enum-devices /class HIDClass
powercfg /devicequery wake_armed
Get-PnpDevice -Class USB,Keyboard,Mouse | Format-Table -Auto

上記で接続/認識状態や省電力、ウェイク可否を俯瞰できます。不要なウェイクデバイスは「デバイスマネージャー → 電源の管理」で無効化しておくと、スリープ復帰時の USB 不安定を避けられます。

トラブルシューティング早見表

現象原因候補即効性のある対処恒久策
マウスホイールのみ無反応エンコーダ故障/USB 3.x ノイズ干渉別マウス試験/USB 2.0 直挿しデバイス交換/配線見直し・フェライト
キーボード完全無反応デバイス故障/ポート障害/給電不足別キーボード直挿し/別 PC 検証ポート切替・マザー点検/PSU 余裕化
UAC が毎回出るアプリが管理者実行/更新失敗互換設定解除/再インストールタスク設定適正化/プロファイル修復
Windows と Linux で同症状ハードウェア起因が濃厚入力機器交換/ポート変更USB コントローラ診断/増設カード

よくある落とし穴とアンチパターン

  • UAC を無効化しても根本解決しない: 昇格確認は「結果」であって「原因」ではないことが多い。
  • BIOS 更新だけで満足: 更新後の設定が混在すると、むしろ不安定化する場合も。CMOS クリアをセットで。
  • 無線ドングルを USB 3.0 直挿し: 2.4GHz と干渉しやすい。USB 2.0 ポートや延長で距離を取る。
  • 安価なバスパワーハブの常用: 給電不足の温床。セルフパワーへ移行。

安全のための注意事項

  • PC 内部作業は必ず電源オフ・電源ケーブル抜線・放電後に。静電気対策(手首アース等)を推奨。
  • PSU・マザーボードの検証で分解を伴う場合、メーカー保証条件を確認。
  • レジストリ変更はバックアップを取得してから。復元ポイントの作成も忘れずに。

最終判断の目安

次のいずれかに当てはまるなら、ほぼハード交換領域です。

  • 別マウス/キーボードでも 2 台連続で同じ症状。
  • 全ポートで再現し、別 PC では正常。
  • PCIe 増設 USB カード使用時だけ完全に安定する。

この場合は、マザーボードの USB コントローラー故障や前面パネル配線不良の可能性が高く、マザー修理/交換が現実解です。暫定運用としては増設 USB カードの常用も選択肢になります。

今回のケースのまとめ(再掲)

  • Windows と Linux の両方で入力トラブル → OS ではなくハードが主因。
  • UAC 連発は副次症状。まずは入力系の物理切り分けに集中。
  • デバイス交換やポート変更で改善しなければ、USB コントローラー/電源/ノイズを疑う。
  • 最終的な判断は PCIe 増設 USB カード検証が決め手になりやすい。
  • ハード正常化後も UAC が続くなら、管理者実行の解除・タスク再構成・クリーン再インストールで収束させる。

付録:復旧後にやっておくと安定する設定

  • 電源オプションで USB セレクティブサスペンドを無効化。
  • デバイスマネージャーで各 USB ルートハブの省電力をオフ。
  • AMD チップセットドライバーを最新化、BIOS は安定版へ固定。
  • スリープ復帰を多用する場合、powercfg /devicequery wake_armed で不要デバイスのウェイクを解除。
  • 前面 USB ケーブルの取り回しを見直し、GPU から距離を取る。

ケース別の所要時間目安(実務間隔)

作業目安成功率の感触備考
別デバイス直挿しテスト10〜15 分高最短でデバイス故障を断定できる。
ポート総当り・給電経路検証20〜30 分中前面配線の不具合発見に効く。
BIOS 初期化・設定最適化20 分中更新残骸の除去に有効。
PCIe USB カード検証15 分高オンボード USB 故障の決定打。
UAC 連発の是正10〜20 分高管理者実行解除・再インストールで解消しやすい。

結び

今回のように「入力不調+UAC 連発」が同時に起きると視点が散りがちですが、Linux でも再現という事実は圧倒的な指標です。OS ではなくハードに注力し、デバイス交換→ポート切替→BIOS/電源→配線→増設カードの順で詰めれば、多くのケースは短時間で収束します。UAC は最後に整えるだけで十分。高品質な入力機器と安定した USB 経路を確保し、再発の芽を断ちましょう。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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