Copilot Chatは、スキャンPDFやWord・Excel・PowerPointに貼り付けた画像内の文字を手掛かりに、関連ファイルを検索結果へ表示しやすくする予定です。
Microsoft 365 Roadmap ID 559613では、Android、デスクトップ、Webを対象に、2026年8月の一般提供が計画されています。ただし、2026年7月20日時点の状態は「In development」であり、パブリックプレビュー日も記載されていません。現時点では「対応予定だが、すべてのテナントで利用できる段階ではない」と判断する必要があります。ロードマップの日付や内容は変更される可能性があります。(Microsoft)
また、この更新で改善されるのは検索結果とのマッチングです。画像の意味を完全に理解する機能、PDFを編集可能な文書へ変換する機能、表画像をExcelのセルへ正確に復元する機能まで保証されているわけではありません。
まず押さえるべき変更点
Roadmap ID 559613に記載されている内容を整理すると、次のようになります。(Microsoft)
| 項目 | 2026年7月20日時点の公式情報 |
|---|---|
| 対象機能 | Copilot Chatの検索結果マッチング改善 |
| 対象コンテンツ | スキャンPDF、Word・Excel・PowerPoint内に埋め込まれた画像の文字 |
| 利用例 | Word内のスキャン契約書、Excel内の表のスクリーンショット、PowerPoint内のホワイトボード写真 |
| 対象プラットフォーム | Android、デスクトップ、Web |
| 対象クラウド | Worldwide Standard Multi-Tenant |
| リリース段階 | General Availability |
| 提供予定 | 2026年8月 |
| 現在の状態 | In development |
| パブリックプレビュー | 記載なし |
| Roadmap ID | 559613 |
注意したいのは、英語のロードマップタイトルに「can now」と書かれていても、提供状況はタイトルではなく、StatusとAvailability Dateで判断することです。今回の項目はまだ「Launched」ではありません。
Copilot ChatでスキャンPDFを検索する仕組み
Roadmap ID 559613には内部構成や必須設定までは記載されていません。ただし、Microsoftが公開しているSharePoint OCRとMicrosoft 365 Copilotの検索インデックスに関する資料をつなげると、仕組みは次のように整理できます。
スキャンPDF・Office内画像
↓
OCRで画像内の文字を抽出
↓
抽出した文字を検索インデックスへ登録
↓
キーワード検索・意味検索で関連ファイルを照合
↓
ユーザーのアクセス権限で結果を絞り込み
↓
Copilot SearchやCopilot Chatに結果を表示
これは公開情報から読み取れる基本構造であり、Roadmap ID 559613がSharePoint OCRを必須条件として直接指定しているわけではありません。
OCRで画像内の文字を抽出する
OCRは、画像化された文字を検索可能なテキストに変換する技術です。
MicrosoftのSharePoint OCRでは、画像や文書から印刷文字や手書き文字を抽出し、単語、行、段落などのテキスト情報として処理します。抽出された文字は検索用にインデックス化され、通常のテキストと同じようにキーワード検索の対象になります。(マイクロソフト ラーン)
そのため、従来は本文がすべて画像だったスキャンPDFでも、OCRが正しく適用されれば、画像に書かれた会社名、契約条項、製品番号などからファイルを探せるようになります。
Word・Excel・PowerPoint内の画像もOCR対象になる
SharePoint OCRの公式資料では、次のファイルがサポートされています。
- スキャンPDF
- テキストと画像が混在するハイブリッドPDF
- Wordファイル内の画像
- Excelファイル内の画像
- PowerPointファイル内の画像
docx、xlsx、pptxに埋め込まれた画像は抽出されたうえでOCR処理され、画像内の文字が検索インデックスへ登録されます。(マイクロソフト ラーン)
たとえば、Excelのセルに入力された「売上高」は従来から検索できます。一方、Excelに貼り付けた表のスクリーンショットにしか「売上高」という文字がない場合、その文字は通常のセルデータではありません。今回の変更は、このような画像内の文字も検索の手掛かりにしやすくするものです。
検索時は完全一致と意味の近さを組み合わせる
Microsoft 365 Copilotでは、従来型のキーワード検索に加えて、字面が完全には一致しない関連語や文脈を探すセマンティックインデックスが使われます。
たとえば「契約の延長条件」と検索したとき、画像内に「自動更新」「更新拒絶」「契約期間」と書かれた資料が候補になる可能性があります。Microsoft 365 Copilot Searchは、完全一致や部分一致による検索と、自然言語の意図を考慮した検索の両方に対応しています。(マイクロソフト ラーン)
ただし、OCRが文字を誤認識している場合は、意味検索でも必ず見つかるとは限りません。小さすぎる文字、ぼけた写真、傾いた書類、背景とのコントラストが低い画像では、検索精度が下がる可能性があります。
最後にアクセス権限で検索結果を絞り込む
OCRによって検索可能になっても、権限のない文書まで表示されるわけではありません。
Microsoft 365 Copilotは、ユーザーが少なくとも閲覧権限を持つ組織データだけを表示します。セマンティックインデックスでも同じアクセス境界が維持されます。(マイクロソフト ラーン)
一方で、SharePoint側の権限が広すぎる文書は、もともと閲覧できるユーザーの検索結果に出やすくなります。Copilot導入前には、OCR設定だけでなく、共有リンク、サイトメンバー、組織全体への公開範囲も確認する必要があります。
検索対象になるものと、保証されていないもの
今回の更新は「画像が含まれるファイルなら何でも理解できる」というものではありません。
| コンテンツ | 検索対象としての判断 | 注意点 |
|---|---|---|
| 全ページが画像のスキャンPDF | Roadmapで対象と明記 | OCRの認識精度に左右される |
| テキストと画像が混在するPDF | SharePoint OCRで対応 | 新しくアップロードされたファイルが処理対象 |
| Word内のスキャン契約書 | Roadmapで対象と明記 | 画像内の文字を検索する機能 |
| Excel内の表のスクリーンショット | Roadmapで対象と明記 | 表をセル構造へ変換する保証はない |
| PowerPoint内のホワイトボード写真 | Roadmapで対象と明記 | 手書きや写真品質によって認識差が出る |
| 文字のない図、写真、グラフ | Roadmap 559613の対象とは明記されていない | 画像の意味理解とは別の機能 |
| ローカルPCにしかないファイル | 組織横断検索の対象外 | Microsoft 365へ保存するか、個別にChatへ提供する必要がある |
| iOS・Macからの利用 | Roadmap 559613には記載なし | 同時提供されると決めつけない |
| PDFの編集可能化 | 対象外 | 検索とファイル変換は別機能 |
| 画像表の完全なデータ化 | 対象外 | 構造化抽出には別の文書処理が必要 |
なお、SharePoint OCRでは、PDFとTIFFから抽出された文字は検索インデックスには登録されますが、「Extracted text」メタデータ列には表示されません。そのため、メタデータ列が空でも検索できる場合があります。(マイクロソフト ラーン)
Microsoft 365 Copilot SearchとCopilot Chatの違い
Roadmapの名称にはCopilot Chatが使われていますが、Microsoft 365 Copilot SearchとCopilot Chatは同じサービスではありません。
| 比較項目 | Microsoft 365 Copilot Search | Copilot Chat |
|---|---|---|
| 主な目的 | 必要なファイルや情報を探す | 質問、要約、比較、文書作成、作業の実行 |
| 操作方法 | 検索ボックスへ入力 | 会話形式で指示 |
| 適した使い方 | 「どの資料に書かれているか」を探す | 見つけた資料の内容を整理する |
| 主なデータソース | Microsoft Graph、Copilotコネクタ | Microsoft Graph、Copilotコネクタ、Webなど |
| ライセンス | 対象となるMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要 | Webベースと職場データベースで条件が異なる |
Microsoft 365 Copilot Searchは、対象となるMicrosoft 365 Copilotライセンスに含まれる機能です。Microsoft 365 Copilot Chatだけには含まれません。ライセンスを持たないユーザーには、従来のMicrosoft Searchが表示されます。(マイクロソフト ラーン)
Copilot Chatについても、Web情報を利用するチャットは対象のMicrosoft 365契約に含まれますが、ユーザーがアクセスできる組織データを検索する「work-based chat」にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要です。(マイクロソフト ラーン)
したがって、Roadmap ID 559613を見て、追加ライセンスのないCopilot ChatでもSharePointやOneDrive全体を検索できるようになる、と判断するのは早計です。ロードマップには、この機能固有のライセンス条件までは記載されていないため、一般提供時のメッセージセンターとサービス説明を確認する必要があります。
更新前に管理者が確認すること
Roadmapの状態と実際のロールアウトを分けて確認する
2026年8月は予定月であり、利用開始日ではありません。
管理者は、次の情報を組み合わせて確認します。
- Roadmap ID 559613のStatus
- Microsoft 365管理センターのメッセージセンター
- 対象テナントへのロールアウト開始通知
- 対象ユーザーのライセンス
- Android、デスクトップ、Webでの表示差
ロードマップが「Launched」になっても、すべてのテナントへ同日に反映されるとは限りません。実際の展開通知とテナント上の動作を基準に判断してください。
SharePoint OCRの設定と費用を別に確認する
Microsoftが公開しているSharePoint OCRは従量課金サービスです。利用するには、Microsoft 365管理センターでAzureサブスクリプションを従量課金へ関連付ける必要があります。関連付け後は、既定でSharePointサイトのライブラリにOCRが有効になります。(マイクロソフト ラーン)
ただし、Roadmap ID 559613には、SharePoint OCRの有効化が必須であるとは書かれていません。そのため、次のように分けて確認する必要があります。
- Copilot Chat側の検索マッチング改善
- SharePoint側のOCR処理
- OCRの課金対象と処理量
- 対象サイトの設定
- 過去ファイルへの適用方法
OCRの公式価格資料では、限定的な無償枠の案内は2026年6月までとされています。2026年8月以降の導入では、無償で使えると仮定せず、最新の課金条件と処理量を確認してください。(マイクロソフト ラーン)
過去のファイルが自動処理されるとは限らない
SharePoint OCRの公式資料では、OCRを有効にした後にアップロードされた画像だけがスキャン対象とされています。(マイクロソフト ラーン)
そのため、何年も前から保存されている次のような資料は、そのままでは画像内文字が検索できない可能性があります。
- 過去のスキャン契約書
- 紙文書をPDF化した保管資料
- 画像だけで作られた議事録
- 古いExcelに貼り付けた表画像
- PowerPointに保存されたホワイトボード写真
Roadmap ID 559613には、既存ファイルを自動的に再OCRするとは書かれていません。過去資料を対象にする場合は、再処理やバックフィルの方法を確認してください。
単純な再アップロードは、バージョン履歴、共有リンク、更新日時、保持ポリシーに影響する可能性があります。大量のファイルを操作する前に、少数の代表ファイルで検証するのが安全です。
ファイルと画像の制限を確認する
SharePoint OCRの公式資料には、OCR対象画像について次の制限が示されています。(マイクロソフト ラーン)
| 項目 | SharePoint OCRの制限 |
|---|---|
| 画像のファイルサイズ | 50MB未満 |
| 最小画像サイズ | 50×50ピクセル |
| 最大画像サイズ | 16,000×16,000ピクセル |
| 対応言語 | 150以上 |
| 過去ファイル | OCR有効化後にアップロードされた画像が対象 |
| SharePointサイト | サブサイトは非対応 |
これらはSharePoint OCRの制限であり、Roadmap ID 559613固有の仕様として公表されたものではありません。一般提供後に追加の条件が公開された場合は、そちらを優先してください。
SharePointサイトを検索可能な状態にする
Microsoft 365 Copilotのセマンティックインデックスからファイルを取得するには、対象のSharePointサイトが検索可能な状態である必要があります。
SharePointの「このサイトを検索結果に表示する」が無効になっている場合、そのサイトはMicrosoft Searchとセマンティックインデックスの両方から除外されます。(マイクロソフト ラーン)
検索できないときは、OCRだけでなく次の設定も確認します。
- ファイルがSharePointまたはOneDriveに保存されているか
- SharePointサイトが検索対象になっているか
- ユーザーに閲覧権限があるか
- サイトやファイルが検索対象から除外されていないか
- 対象ファイルがOCR有効化後に登録されたものか
権限の過剰付与を先に見直す
Copilotは新しいアクセス権を作るわけではありません。しかし、従来は見つけにくかった画像内の文字まで検索できるようになると、既存の過剰共有が表面化しやすくなります。
特に確認したいのは、次のような文書です。
- 人事評価資料
- 給与や報酬に関する資料
- 契約書や見積書
- 個人情報を含む申請書
- 組織全体リンクで共有された機密文書
- 退職者や異動者が所有していた共有フォルダー
Copilotはユーザーが閲覧できる情報だけを表示します。だからこそ、OCR導入前に閲覧権限が適切かを確認することが重要です。(マイクロソフト ラーン)
利用者が画像内文字を見つけやすくする検索方法
検索語だけを入力するよりも、画像内の特徴的な文字、ファイル形式、部署、年度、用途を組み合わせると結果を絞りやすくなります。
Word内のスキャン契約書を探す例
Wordに貼り付けられた契約書画像のうち、
「自動更新」と書かれている2025年度のファイルを探して
Excel内の表画像を探す例
Excelに貼り付けられた表の画像から、
「営業利益率 12.5%」を含む資料を探して
PowerPoint内のホワイトボード写真を探す例
PowerPointのホワイトボード写真に
「Phase 2」と書かれている企画資料を探して
検索結果が多すぎる場合
次の条件を追加します。
- ファイルの種類
- 作成者
- 部署名
- 年度や期間
- プロジェクト名
- 保存場所
- 画像内にある固有名詞
- 近くに書かれている別の単語
Web版では、SharePointのドキュメントライブラリやフォルダーを指定して検索範囲を絞ることもできます。対象ライブラリやフォルダーを添付するか、その場所を示すことで、ファイル内容に加えて列のメタデータも検索の手掛かりとして利用されます。(マイクロソフト ラーン)
Copilot Searchで探してからChatで整理する
実務では、次の順序が分かりやすいでしょう。
- Copilot Searchで該当ファイルを探す
- 検索結果の原文を開く
- 正しいファイルであることを確認する
- Copilot Chatで要約や比較を依頼する
- 回答に表示された参照元を再確認する
Copilot Searchは情報発見、Copilot Chatは詳しい分析や作業の継続に向いています。Microsoftも、検索結果からChatへ移り、追加の質問や作業を行う利用方法を案内しています。(マイクロソフト ラーン)
検索できないときの確認ポイント
| 症状 | 主な確認ポイント | 対処 |
|---|---|---|
| 画像内の語句で検索しても出ない | 機能が未展開 | Roadmapとメッセージセンターを確認 |
| 新しいファイルは出るが古いファイルは出ない | OCR有効化前にアップロードされた | 過去ファイルの再処理方法を確認 |
| 特定サイトだけ出ない | サイトが検索対象外 | SharePointの検索設定を確認 |
| 同僚には出るが自分には出ない | 閲覧権限の違い | ファイルとサイトの権限を確認 |
| PDFは検索できるが抽出文字列が列に出ない | PDFのOCR文字は検索インデックスのみ | メタデータ列ではなく検索結果で確認 |
| 一般的な単語で別資料ばかり出る | 検索条件が広すぎる | 固有名詞、年度、ファイル形式を追加 |
| 近い資料は出るが完全一致しない | OCRの誤認識 | 前後の単語や言い換えでも検索 |
| Chatの回答と原文が異なる | 生成回答の誤り | 引用元ファイルを開いて確認 |
Microsoftは、生成AIの回答が100%正確であることを保証していません。検索で正しいファイルが見つかっても、Chatによる要約や回答は原文と照合する必要があります。(マイクロソフト ラーン)
専用OCRや文書処理を使うべきケース
Roadmap ID 559613が向いているのは、画像内にある文字から必要な資料を見つける用途です。
一方、次の用途には検索機能だけでは不十分です。
| やりたいこと | Copilotの画像内文字検索 | 別の仕組みが必要な理由 |
|---|---|---|
| スキャン契約書を探す | 適している | 文字を手掛かりにファイルを発見できる |
| 古い会議資料を探す | 適している | 写真や画像内の固有語を利用できる |
| 請求書の金額を会計システムへ登録する | 不十分 | 項目単位の構造化抽出と検証が必要 |
| 表画像をExcelのセルへ変換する | 不十分 | 行列構造の復元は検索機能ではない |
| 契約条項を法的証拠として正確に転記する | 不十分 | OCR結果の人手確認が必要 |
| 大量の過去文書を一括処理する | 不十分 | バックフィル、監査、エラー処理が必要 |
| 手書き申請書を自動受付する | 不十分 | 入力検証と業務フローが必要 |
「探せればよい」のか、「項目を正確に抽出して業務システムへ登録したい」のかで、選ぶ仕組みは変わります。Copilotの検索機能を文書入力システムの代わりとして設計しないことが重要です。
まとめ:2026年8月までに準備すること
Copilot Chatは、スキャンPDFやWord・Excel・PowerPoint内の画像に書かれた文字を手掛かりに、検索結果を改善する予定です。ただし、2026年7月20日時点ではまだ開発中であり、一般提供予定は2026年8月です。
導入前には、次の順序で確認してください。
- Roadmap ID 559613のStatusを確認する
- メッセージセンターで自社テナントの展開時期を確認する
- Microsoft 365 Copilot SearchとCopilot Chatのライセンスを区別する
- SharePoint OCRの設定、従量課金、対象サイトを確認する
- OCR有効化前の既存ファイルをどう扱うか決める
- SharePointサイトの検索設定と閲覧権限を見直す
- スキャンPDF、Word、Excel、PowerPointの代表ファイルで検証する
- 検索結果と原文が一致するか利用者に確認してもらう
最初から大量の文書を再アップロードするのではなく、契約書、表画像、ホワイトボード写真など、実際の業務で使う少数のファイルから検索精度と権限動作を確認するのが安全です。

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