Microsoft TeamsのExpress voice enrollmentとは?2026年6月の変更点と管理者対応

Microsoft Teamsの「Express voice enrollment in Microsoft Teams」は、ユーザーが会議中に話した音声から、音声プロファイルを簡単に作成できる新しい登録方法です。

2026年6月10日の更新で特に重要なのは、登録を始める導線が「会議中の案内を待つ」方式から、「Teamsの[認識]設定で自分からオプトインする」方式へ明確化されたことです。管理者が機能を有効にしても、ユーザーの同意なしに音声プロファイルが作成されるわけではありません。(Microsoft)

管理者は、展開前にTeams AIポリシーのPassiveVoiceEnrollmentを確認してください。一般ユーザーは、Teamsデスクトップアプリの[設定]から[認識]を開き、音声認識へオプトインする必要があります。ユーザーへの登録案内は、後続バージョンで追加される予定です。(Microsoft 365 Message Center Archive)

目次

2026年6月10日の更新で何が変わったのか

今回のロードマップ更新では、提供時期や対象プラットフォームではなく、ユーザーが音声登録を開始する方法の説明が変更されました。

確認項目更新前の説明2026年6月10日更新後実務上の影響
登録の開始方法会議中に製品内プロンプトが表示され、そこから登録Teamsの[設定]→[認識]でオプトインし、会議中の発話から登録ユーザーへ操作方法を事前に案内した方がよい
製品内プロンプト初期導線として案内ロードマップ本文から記述が削除初期展開時はプロンプトが表示されない可能性がある
一般提供時期2026年6月変更なし展開準備の期限は変わらない
プラットフォームDesktop、Mac、Teams and Surface Devices変更なしWeb版やモバイル版は今回の対象として記載されていない
対象クラウドWorldwide Standard Multi-Tenant変更なし標準マルチテナントが対象

ロードマップの差分では、従来の「製品内プロンプトを受け取る」という説明が削除され、「Teams設定のRecognitionタブへ移動してオプトインする」という説明に置き換えられています。ステータス、提供リング、プラットフォームなどのメタデータには変更がありません。(Microsoft 365 Message Center Archive)

Microsoft 365 Message Centerの更新内容では、認知向上を目的としたユーザープロンプトは後続バージョンで提供されるとされています。そのため、初期展開時にプロンプトが出ないことを不具合と判断しないよう注意が必要です。(Microsoft 365 Message Center Archive)

Express voice enrollment in Microsoft Teamsとは

Express voice enrollmentは、通常のTeams会議で話した音声を利用し、音声プロファイルを生成する仕組みです。

作成された音声プロファイルは、次のような機能で利用されます。

  • 自分以外の声や周囲の雑音を抑える音声分離
  • Teams Roomsで誰が話したかを識別する話者認識
  • 会議の文字起こしに発言者名を正しく表示する話者属性
  • Microsoft 365 Copilotによる会議要約やインサイトの精度向上
  • 対応する会議室での参加者識別

特に効果が大きいのは、1台のTeams Roomsデバイスを複数人で利用するハイブリッド会議です。音声プロファイルがない参加者は「Speaker 1」などと表示されますが、認識されたユーザーは発言内容と名前を対応付けられます。(Microsoft)

従来の手動登録との違い

Express voice enrollmentは、従来の手動登録を置き換えるものではありません。2つの登録方法は併用でき、管理者が別々に許可・禁止できます。

項目Express voice enrollment従来の手動登録
PowerShell設定PassiveVoiceEnrollmentEnrollVoice
ユーザー操作[認識]でオプトイン後、通常の会議で話す指定された文章をマイクに向かって読む
完了までの目安通常は数回の会議その場で登録しやすい
向いている場面普段の会議の中で負担なく登録したいすぐに音声プロファイルを作りたい
登録音声のエクスポート登録用音声は保持されず、エクスポートできない手動登録時の音声をユーザーがエクスポート可能
ユーザーの同意必要必要

「Passive」という設定名ですが、ユーザーに知らせず音声プロファイルを作る機能ではありません。ユーザー自身が[認識]画面でオプトインした後に、会議中の発話が利用されます。音声プロファイルの生成には通常、数回の会議が必要です。急ぐ場合は[作成]または[更新]から手動登録できます。(Microsoft Learn)

影響を受けるユーザーとテナント

2026年6月10日時点のMicrosoft 365 Roadmapでは、対象サービスにMicrosoft TeamsとMicrosoft Copilot(Microsoft 365)、対象クラウドにWorldwide Standard Multi-Tenantが指定されています。対象プラットフォームはDesktop、Mac、Teams and Surface Devicesです。(Microsoft)

Microsoft 365 Message Centerでは、Education(EDU)テナントを除く商用Microsoft Teamsユーザーが対象とされています。(Microsoft 365 Message Center Archive)

影響が大きいのは、次のユーザーと担当者です。

  • 音声プロファイルをまだ作成していないTeamsユーザー
  • Teams Roomsを利用して複数人で会議へ参加するユーザー
  • Teamsの文字起こしや話者認識を利用する組織
  • Microsoft 365 Copilotやインテリジェント要約を利用する組織
  • Teams AIポリシーを管理するIT管理者
  • 音声データの取り扱いを確認するセキュリティ・法務担当者

Web版、iOS版、Android版は、今回のロードマップ項目の対象プラットフォームとして記載されていません。登録操作はTeamsデスクトップクライアントで行う前提で準備するのが安全です。

提供時期と確認期限

ロードマップでは、一般提供月が2026年6月とされています。一方、2026年6月8日に更新されたMessage Centerでは、段階的な展開予定が次のように案内されています。(Microsoft)

リリース区分展開開始完了予定
対象指定リリース2026年6月中旬2026年6月末
一般提供2026年6月末2026年7月上旬

ロードマップの「2026年6月」は、すべてのテナントで6月中に利用可能になることを保証する日付ではありません。一般提供の完了は7月上旬になる可能性があります。

ユーザーが音声登録を完了しなければならない期限は示されていません。ただし、管理者は対象指定リリースを使用している場合は直ちに、標準リリースの場合も2026年6月末までを目安にポリシーを確認してください。

一般ユーザーが音声プロファイルを登録する手順

音声プロファイルは、次の手順で登録します。

  1. WindowsまたはMacのTeamsデスクトップアプリを開きます。
  2. 画面上部の[設定など]から[設定]を開きます。
  3. [認識]を選択します。
  4. [音声認識]で[オプトイン]を選択します。
  5. 次の対象会議へ参加し、通常どおり発言します。
  6. 生成が完了すると、[音声プロファイルの完了]と表示されます。

[認識]が表示されない場合は、管理者が登録を許可していないか、対象テナントへの展開がまだ完了していない可能性があります。(マイクロソフトサポート)

数回の会議を待たずに登録したい場合は、オプトイン後に[作成]を選択し、画面に表示された文章を読み上げます。既存プロファイルを作り直す場合は[更新]を使用します。

音声登録の対応言語にはja-jpが含まれているため、日本語設定のTeamsでも利用できます。(Microsoft Learn)

管理者が確認すべきTeams AIポリシー

Express voice enrollmentは、CsTeamsAIPolicyのPassiveVoiceEnrollmentで管理します。設定変更はPowerShellで行い、EnabledまたはDisabledを指定します。既定値はEnabledです。(Microsoft Learn)

現在の設定を確認する

最新のMicrosoft Teams PowerShellモジュールを使用し、次のコマンドでポリシーを確認します。

Connect-MicrosoftTeams

Get-CsTeamsAIPolicy |
    Select-Object Identity, EnrollVoice, PassiveVoiceEnrollment, EnrollFace

Get-CsTeamsAIPolicyでは、テナントに存在するTeams AIポリシーを取得できます。(Microsoft Learn)

登録方法ごとの設定パターン

EnrollVoiceとPassiveVoiceEnrollmentは独立して動作します。

EnrollVoicePassiveVoiceEnrollmentユーザーが利用できる登録方法
EnabledEnabled手動登録とExpress登録
EnabledDisabled手動登録のみ
DisabledEnabledExpress登録のみ
DisabledDisabled音声登録不可

Express voice enrollmentだけを無効にする場合は、次のコマンドを実行します。

Set-CsTeamsAIPolicy `
    -Identity Global `
    -PassiveVoiceEnrollment Disabled

Express登録を有効にする場合は、次のように設定します。

Set-CsTeamsAIPolicy `
    -Identity Global `
    -PassiveVoiceEnrollment Enabled

音声登録を完全に禁止する場合は、両方を無効にします。

Set-CsTeamsAIPolicy `
    -Identity Global `
    -EnrollVoice Disabled `
    -PassiveVoiceEnrollment Disabled

EnrollVoiceだけを無効にしても、PassiveVoiceEnrollmentが有効ならExpress登録は利用できます。音声登録をすべて止めたい組織では、必ず両方の値を確認してください。(Microsoft Learn)

一部ユーザーで先行検証する

全社ポリシーを変更する前に、IT部門や協力ユーザーへ個別ポリシーを割り当てて検証すると安全です。

New-CsTeamsAIPolicy -Identity Pilot-ExpressVoice

Set-CsTeamsAIPolicy `
    -Identity Pilot-ExpressVoice `
    -EnrollVoice Enabled `
    -PassiveVoiceEnrollment Enabled

Grant-CsTeamsAIPolicy `
    -PolicyName Pilot-ExpressVoice `
    -Identity [email protected]

Grant-CsTeamsAIPolicyでは、ポリシー名と対象ユーザーを指定してTeams AIポリシーを割り当てられます。(Microsoft Learn)

既存設定からの移行で注意すること

Microsoftは、従来のCsTeamsMeetingPolicyにあったEnrollUserOverrideから、音声、顔、Express登録を個別に制御できるCsTeamsAIPolicyへ管理を移しています。(Microsoft Learn)

また、以前からEnrollVoiceを無効にしていたテナントについては、2026年5月にその状態がPassiveVoiceEnrollmentへ一度コピーされています。従来から音声登録を禁止していた組織で、Express登録だけが突然有効になることを避けるための処理です。(Microsoft 365 Message Center Archive)

ただし、次の3つは別の管理項目です。

  • 新しい音声プロファイルの登録を許可するか
  • 既存の音声プロファイルを削除するか
  • Teams Roomsが既存プロファイルを使って参加者を認識するか

PassiveVoiceEnrollmentを無効にしただけでは、すでに作成済みの音声プロファイルが自動的に削除されるわけではありません。管理者はTeams管理センターで登録状況を確認し、必要に応じてプロファイルを削除できます。Teams Roomsでの人物認識も、デバイス設定または会議ポリシーで別途管理します。(Microsoft Learn)

追加料金と必要なライセンス

2026年6月10日のロードマップとMessage Centerには、Express voice enrollment自体の新しい有料SKUや追加課金についての記載はありません。したがって、音声登録機能そのものについて新たな購入手続きが必要とは案内されていません。(Microsoft)

ただし、作成した音声プロファイルを活用する機能には、別のライセンス条件があります。

利用したい機能主なライセンス・条件
Express voice enrollment今回の情報では追加SKUの案内なし
Teamsのインテリジェント要約Teams PremiumまたはMicrosoft 365 Copilot
音声形式の会議要約Microsoft 365 Copilot
Copilotによる会議インサイトMicrosoft 365 Copilotと必要な会議ポリシー
Teams Roomsでの人物認識Teams Rooms Pro
完全な会議要約文字起こしの有効化。録画を無効にすると一部情報が制限される

インテリジェント要約にはTeams PremiumまたはMicrosoft 365 Copilotが必要で、音声要約にはMicrosoft 365 Copilotが必要です。Teams Rooms上の音声・顔認識はTeams Rooms Pro専用機能です。(Microsoft Learn)

音声登録を有効にしただけで、すべてのユーザーがCopilotの会議要約を利用できるわけではありません。ライセンス、文字起こし、録画、会議ポリシーを併せて確認してください。

音声データとプライバシーの注意点

音声プロファイルは個人を識別するためのデータです。導入時は、技術設定だけでなく、利用目的や削除方法も社内へ説明する必要があります。

確認項目Microsoftの説明
ユーザーの同意登録前にオプトインが必要
AIモデルの学習音声・顔プロファイルをモデル学習には使用しない
Express登録時の録音継続的な処理のため、登録用の音声録音は保持しない
ユーザーによる削除Teamsデスクトップアプリからいつでも登録解除可能
未使用プロファイル1年間使用されない場合は自動削除
アカウント削除後Teamsアカウント削除後90日以内に削除
Voice Isolationのローカルデータ暗号化され、14日後に新しいコピーへ置き換え
管理者による操作Teams管理センターで状態確認と削除が可能
管理者によるエクスポート不可。エクスポートはユーザーが管理

Express voice enrollmentでは登録用の音声録音を保持しないため、手動登録とは異なり、音声プロファイルの横にエクスポートボタンが表示されません。プロファイル自体の削除やオプトアウトは、ユーザーがいつでも実行できます。(Microsoft Learn)

表示されない・登録できない場合の確認ポイント

[認識]が設定に表示されない

次の順序で確認します。

  1. 対象ユーザーに適用されるCsTeamsAIPolicy
  2. PassiveVoiceEnrollmentまたはEnrollVoiceの値
  3. 対象テナントへの段階展開が完了しているか
  4. Teamsデスクトップアプリを利用しているか
  5. Teamsアプリが最新の状態か

[認識]は、組織の管理者が機能を許可している場合にのみ表示されます。(マイクロソフトサポート)

会議中に登録を促す案内が表示されない

2026年6月10日のロードマップでは、会議中のプロンプトを待つのではなく、ユーザーが[設定]→[認識]からオプトインする説明へ変更されています。

ユーザープロンプトは後続バージョンで提供予定です。初期展開では、プロンプトが表示されなくても異常とは限りません。(Microsoft 365 Message Center Archive)

「音声をキャプチャできませんでした」と表示される

ネットワーク制限によってMicrosoftの音声サービスへ接続できない可能性があります。Microsoftは、次のエンドポイントが許可されているか確認するよう案内しています。

*.speech.microsoft.com

プロキシ、ファイアウォール、SSLインスペクションを利用している組織では、セキュリティ担当者と通信要件を確認してください。(Microsoft Learn)

管理者とユーザーが今すべきこと

一般ユーザーは、組織の方針を確認したうえで、Teamsデスクトップアプリの[設定]→[認識]を開きます。音声認識を利用する場合はオプトインし、早く登録したい場合は手動登録を選択してください。

管理者は、次の順序で対応すると抜け漏れを防げます。

  1. Get-CsTeamsAIPolicyで現在の設定を確認する
  2. 手動登録とExpress登録のどちらを許可するか決める
  3. 一部ユーザーへポリシーを割り当てて先行検証する
  4. 音声データの目的、保存期間、削除方法を社内へ案内する
  5. ヘルプデスクへ[認識]画面とトラブル対応手順を共有する
  6. Copilot、Teams Premium、Teams Rooms Proのライセンスを確認する
  7. 必要に応じて*.speech.microsoft.comへの通信を確認する

今回の更新で最も注意すべき点は、ユーザーが会議中の案内を待つのではなく、自分で[認識]設定を開いてオプトインする必要があることです。ポリシーを有効にするだけで終わらせず、ユーザーへの操作案内まで実施することが、スムーズな展開につながります。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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