Microsoft TeamsのAI Interpreterが更新され、リアルタイム通訳の精度向上、氏名・業界用語の認識改善、組織のカスタム辞書への対応、繁体字中国語の追加が行われました。2026年6月16日更新時点ではステータスが「Launched」となっており、対象環境への提供は完了しています。利用者側の移行作業は不要ですが、管理者はMicrosoft 365 Copilotライセンス、Teams会議ポリシー、カスタム辞書を確認しておく必要があります。(Microsoft)
Microsoft TeamsのInterpreterで変わったこと
今回の変更対象は、Microsoft Teamsの会議や通話で音声をリアルタイム翻訳する「AI Interpreter」です。人間の通訳者を会議に割り当てる従来の言語通訳機能とは異なり、AIが音声認識、翻訳、音声生成を連続して処理します。(Microsoft サポート)
| 変更点 | 利用者への効果 |
|---|---|
| リアルタイム通訳の品質向上 | 訳文や翻訳音声が以前より安定し、会話を追いやすくなる |
| 氏名・業界用語の認識改善 | 人名、製品名、社内用語、専門用語の誤認識を減らしやすくなる |
| カスタム辞書との連携 | 組織が登録した用語や表記を、会議間でより一貫して扱える |
| 繁体字中国語への対応 | 台湾など、繁体字中国語を利用する参加者との会議で選択肢が広がる |
公式情報では、英語、日本語、簡体字中国語、繁体字中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語が対象言語として案内されています。繁体字中国語は、設定画面や関連ドキュメントで「Chinese(Traditional, Taiwan)」などと表記される場合があります。(Microsoft Learn)
特に影響を受けるユーザーと管理者
一般ユーザー
次のような利用者は、今回の変更による効果を得やすくなります。
- 海外拠点や外国語話者との会議が多い
- 日本語と中国語を併用する取引先と商談する
- 製品名、部署名、プロジェクト名などの固有名詞を頻繁に使う
- 通訳音声と元の音声を同時に聞きながら会議へ参加する
- ライブキャプションや文字起こしも併用している
ただし、AI Interpreterを利用する本人にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要です。外部組織の参加者も、確認可能なMicrosoft 365アカウントと有効なMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要です。匿名参加者やゲストは、ライセンスを確認できないためInterpreterを利用できません。(Microsoft Learn)
Microsoft 365・Teams管理者
管理者に求められる主な対応は、機能のインストールではなく、利用条件の確認と通訳品質を高めるための用語整備です。
- 対象ユーザーへのMicrosoft 365 Copilotライセンス割り当て
- AI Interpreterを許可するTeams会議ポリシーの確認
- カスタム辞書に登録する社内用語の収集
- 繁体字中国語を利用する部門や海外拠点への周知
- ヘルプデスク向け資料や会議運用ルールの更新
ロードマップ上の対象は、WorldwideのStandard Multi-Tenant環境です。政府機関向けクラウドなどは、このロードマップ項目の対象として明記されていないため、個別の提供情報を確認してください。対象クライアントにはWindows・Macのデスクトップ、Web、iOS、Androidが含まれます。(Microsoft)
一般ユーザーがInterpreterを利用する手順
Teams会議の参加中に、次の手順でAI Interpreterを有効にします。
- 会議コントロールの「その他」を選択する
- 「言語と音声」を開く
- 「Interpreter」を選択する
- 「自分に対してオンにする」を選択する
- 「会議を聞く言語」で翻訳先の言語を選択する
- 元の音声と通訳音声の音量バランスを調整する
- 自分の音声を再現するか、自動音声を使うかを選択する
モバイル版では、会議コントロールの「その他」から「Interpreterをオンにする」を選択します。設定内容は今後の会議にも引き継がれるため、毎回同じ言語を選び直す必要はありません。(Microsoft サポート)
通訳精度を上げる話し方
品質が向上しても、AI通訳である以上、話し方や会議環境によって結果は変わります。
- 一度に複数人が話さない
- 文章を短く区切り、適度に間を取る
- 略語は初回に正式名称も伝える
- 重要な型番や金額はチャットにも記載する
- マイクを口元に近づけ、周囲の雑音を減らす
- 通訳が完了したことを確認してから次の人が話す
特に、発言の重なりが多い会議やテンポの速い議論では、翻訳音声が元の会話に追いつきにくくなります。画面共有やチャットを併用すると、誤訳が発生した場合も内容を補完できます。(Microsoft サポート)
管理者が確認すべき設定
AI Interpreterを許可するポリシー
AI Interpreterは、Teams会議ポリシーのAIInterpreterパラメーターで制御します。既定では有効です。
Set-CsTeamsMeetingPolicy -Identity <ポリシー名> -AIInterpreter Enabled
利用を禁止する場合は、次のように設定します。
Set-CsTeamsMeetingPolicy -Identity <ポリシー名> -AIInterpreter Disabled
自分の声を再現する音声シミュレーションの既定値は、VoiceSimulationInInterpreterで変更できます。
Set-CsTeamsMeetingPolicy -Identity <ポリシー名> -VoiceSimulationInInterpreter Enabled
今回の更新によって既存の管理ポリシーが自動的に変更されるわけではありません。以前にInterpreterを無効化している組織では、品質向上後も利用できないため、対象ポリシーを確認してください。(Microsoft Learn)
カスタム辞書を登録する
カスタム辞書は、製品名、サービス名、人名、部署名、略語などを正しく認識させるための機能です。登録はMicrosoft 365管理センターで行います。
- Microsoft 365管理センターにサインインする
- 「Copilot」から「設定」を開く
- 「Copilot Custom Dictionary」を選択する
- 「Upload Dictionary」を選択する
- テンプレートをダウンロードする
- UTF-8のCSVファイルへ用語を入力する
- 対象言語を選択してアップロードする
辞書の管理にはAI管理者ロールが必要です。1言語につき1つの辞書を登録でき、最大1,000件の用語を収録できます。反映には最大24時間かかる場合があります。(Microsoft Learn)
日本語の辞書では、最終的に表示させたい表記を「Term」列に記載し、「Sounds like」列に読み方を入力すると管理しやすくなります。
| Term | Sounds like | 用途 |
|---|---|---|
| Azure | アジュール | 製品名の誤認識防止 |
| Copilot | コパイロット | 英字表記で統一 |
| TAC | ティーエーシー | Teams Admin Centerの略称 |
| 多要素認証 | たようそにんしょう | セキュリティ用語の認識改善 |
日本語と繁体字中国語の会議を運用する場合は、言語ごとに辞書を用意します。辞書には機密情報、個人情報、顧客情報を登録せず、会議で繰り返し使われる一般的な組織用語に限定してください。(Microsoft Learn)
設定・更新・移行・料金・期限の確認ポイント
| 確認項目 | 結論 |
|---|---|
| 利用者の設定 | 会議中に本人がInterpreterをオンにする |
| 管理者の設定 | 既定では有効。過去に無効化していないか確認する |
| アプリの更新 | 専用プログラムの導入や手動移行は案内されていない |
| データ移行 | 会議データや既存設定の移行は不要 |
| 料金 | 更新自体の追加料金は案内されていないが、利用者にはMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要 |
| 利用時間 | Microsoft 365 Copilotライセンスには1人当たり月20時間の通訳利用枠が含まれる |
| 展開期限 | 2026年6月16日更新時点でLaunched。利用者側の対応期限はない |
| 辞書の反映 | アップロード後、利用可能になるまで最大24時間 |
Microsoft 365 Copilotの契約価格は、契約形態、販売店、地域によって異なる可能性があります。導入判断ではライセンス単価だけでなく、Interpreterを必要とするユーザー数と月間の会議時間を確認してください。20時間を超えた利用は、利用可能なシステム容量の影響を受けます。(Microsoft Learn)
利用前に知っておきたい制限事項
今回の品質向上後も、AI Interpreterが人間の通訳者と同等の正確性を保証するわけではありません。
- 人名、性別、専門用語を誤って解釈する可能性がある
- 発言が重なると通訳の遅延や欠落が起きやすい
- 会議の録画には通訳音声ではなく元の音声が保存される
- 翻訳済みトランスクリプトは会議中のみ利用でき、終了後は元の発言言語が表示される
- Teams無料版、タウンホール、ウェビナーなど、一部の会議形式では利用できない
- 予定されていない会議や一部のTeams Rooms構成では利用できない
契約交渉、法務、医療、安全管理など、誤訳による影響が大きい場面では、重要事項を文書でも確認し、必要に応じて専門の通訳者を手配してください。(Microsoft サポート)
管理者と利用者が今すぐ行うこと
一般ユーザーは、外国語を使う次回の会議でInterpreterが表示されるか確認し、音量バランスと翻訳先言語を事前に設定します。
管理者は、対象ユーザーのMicrosoft 365 CopilotライセンスとAIInterpreterポリシーを確認してください。そのうえで、誤認識されやすい製品名、部署名、略語を10~30件程度集め、まずは小規模なカスタム辞書から運用を始めるのが現実的です。実際の会議結果を確認しながら用語を追加すれば、今回の品質向上を組織固有の通訳精度改善につなげられます。

コメント