ASUS TUF シリーズのノートPCやデスクトップで、Windows 11 の起動直後に毎回ブルースクリーン(BSOD)や BitLocker の回復キー入力が求められると、仕事もゲームも何も始まりません。本記事では、実際に「コールドブート時にだけ BSOD が連発する」「HYPERVISOR_ERROR や storport.sys が出る」「BitLocker が毎回回復キーを聞いてくる」といった症状を想定し、原因の層ごとに丁寧に切り分けていく実践的な手順をまとめます。
想定している環境と症状の整理
この記事では、次のようなケースを想定しています。
- PC:ASUS TUF シリーズ(ノート/デスクトップ問わず)
- OS:Windows 11(Home / Pro 問わず)
- 症状:
- 5か月ほど前、スリープ復帰時に初めて BSOD が発生
- 直近 3か月は、電源投入直後(コールドブート直後)に 1〜4回の BSOD がほぼ毎回発生
- 一度ログインしてしまえば、その日の通常利用中は安定している
- 同じ日の再起動(ウォームブート)では BSOD が出にくい
- 起動のたびに BitLocker の回復キー入力を要求される
主な停止コード(ブルースクリーンの内容)は次の通りです。
| 停止コード / ファイル名 | 意味・関係しやすい箇所 |
|---|---|
| HYPERVISOR_ERROR | Hyper-V / VBS / 仮想化ベースセキュリティ / ハイパーバイザー層の不整合 |
| IRQL_NOT_LESS_OR_EQUAL | カーネルモードドライバーのバグや不正なメモリアクセス |
| SYSTEM_THREAD_EXCEPTION_NOT_HANDLED | 特定ドライバーの例外処理ミス・互換性問題 |
| storport.sys | ストレージ(NVMe/SATA/RAID)経路のドライバー・ファームウェアまわり |
すでに実施済みの対処としては、次のようなものが挙げられます。
sfc /scannowとDISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealthの実行- BIOS・各種ドライバーの更新(MyASUS など)
- Hyper‑V の無効化設定
- MyASUS ハードウェア診断:異常なし
- ミニダンプ(小さいメモリダンプ)は取得できている
ここまで揃っていると、「OSやストレージがもう限界なんだろう」とリセットしたくなりますが、闇雲に初期化する前に、原因の層を切り分けて潰していく方が再発防止にも役立ちます。
結論から先に:起動時 BSOD と BitLocker 回復が同時に起きるときの考え方
今回のような症状では、主に次のポイントを順番に確認していくのがおすすめです。
- 高速スタートアップ / 休止状態の無効化でコールドブート特有の不具合かを切り分ける
- クリーンブートで常駐ソフト・ドライバー競合を調べる
- 停止コードの傾向から、ハイパーバイザー周り(VBS・Hyper‑V)とストレージ経路(NVMe/SATA/SSD)を重点的に見直す
- BitLocker が毎回回復キーを要求する=ブート測定の不一致と捉え、TPM/BitLocker の整合性を取り直す
- それでも解決しなければ、ドライバーのクリーン再導入とカーネルメモリダンプの解析、最終的には「この PC をリセット」を検討する
| 原因の層 | 特徴的な症状 | 主な対処の方向性 |
|---|---|---|
| 電源管理 / 高速スタートアップ | 一晩置いた「最初の起動」だけ BSOD、多重再起動で安定する | 高速スタートアップ無効化・完全シャットダウンでの再現確認 |
| ハイパーバイザー / VBS / メモリ保護 | HYPERVISOR_ERROR、メモリ整合性オンで不安定 | VBS・メモリ整合性オフ、Hyper‑V 関連機能の停止 |
| ストレージドライバー / SSD | storport.sys、起動途中での固まり・再起動 | NVMe/SATA ドライバーの更新・ロールバック、SSD FW 更新 |
| BitLocker / TPM / 起動測定 | 起動のたびに回復キーを要求、構成を触ると悪化 | BitLocker 保護の一時停止 → 再有効化、周辺機器の整理 |
ステップA:コールドブート特有の不具合を切り分ける
「一晩放置した翌朝の起動だけおかしい」という場合、高速スタートアップ(ハイブリッドブート)や休止状態の復元処理で不整合が起きていることがよくあります。
高速スタートアップ・休止状態をまとめて無効化する
管理者権限の PowerShell またはコマンドプロンプトで、次のコマンドを実行します。
powercfg /h off
この 1行で、
- 休止状態(ハイバネーション)
- 高速スタートアップ(シャットダウン時にカーネル状態を保存しておく機能)
の両方が無効になります。高速スタートアップを GUI で切る場合は、
- コントロール パネル > 電源オプション
- 「電源ボタンの動作を選択する」
- 「現在利用可能ではない設定を変更します」をクリック
- 「高速スタートアップを有効にする(推奨)」のチェックを外す
という手順でも構いません。
完全シャットダウンで再現性を確認する
設定変更後、「普通のシャットダウン」ではなく、必ず完全シャットダウンを一度挟みましょう。
shutdown /s /t 0
このコマンドで完全に電源オフした状態にしてから、一晩放置 → 翌朝電源オンしてみます。
- BSOD と BitLocker 回復キー要求が消えた → 高速スタートアップや休止状態起因の可能性が高い
- 症状が変わらない → 別の層(ドライバー・ハイパーバイザー・BitLocker)を疑う
まずはここで「電源管理が原因かどうか」を切り分けておくと、後の調査がかなり楽になります。
ステップB:クリーンブートで常駐ソフト・ドライバー競合を調べる
電源管理で解決しない場合、次はクリーンブートで「起動時に読み込まれるもの」を最小限に絞り込みます。
クリーンブートの手順
- Windowsキー + R を押して「ファイル名を指定して実行」を開く
msconfigと入力して Enter- 「サービス」タブを開く
- 「Microsoft のサービスをすべて隠す」にチェック
- 「すべて無効」をクリック
- 「スタートアップ」タブを選択し、「タスク マネージャーを開く」をクリック
- スタートアップアプリをすべて「無効」にする
- PC を再起動する
この状態で、いつもと同じように一晩シャットダウン → コールドブートしてみます。
- クリーンブート状態では BSOD が出ない →
常駐ソフト / ドライバーのいずれかが原因なので、1つずつ有効に戻して再現する組み合わせを探す - クリーンブートでも BSOD が出る →
OS のコア部分・ドライバー・ファームウェア側の問題が疑わしい
ASUS や周辺機器のツール(RGB 制御、ゲームランチャー、オーディオユーティリティなど)は、起動直後にカーネルレベルのドライバーを触るものが多く、クリーンブート時だけ安定する場合は要注意です。
ステップC:HYPERVISOR_ERROR 対策(VBS・ハイパーバイザー周り)
HYPERVISOR_ERROR が頻出している場合、Windows 11 で標準的に有効になっている仮想化ベースのセキュリティ(VBS)やメモリ整合性、あるいは Hyper‑V 関連機能との相性が疑われます。
メモリ整合性(コア分離)を一時的に無効化
まずは Windows セキュリティの機能として有効になっていることが多い「メモリ整合性」を一時的にオフにします。
- 設定 > プライバシーとセキュリティ > Windows セキュリティ を開く
- 「デバイス セキュリティ」をクリック
- 「コア分離の詳細」を開く
- 「メモリ整合性」をオフにする
- 再起動
この状態で何度かコールドブートし、BSOD の頻度が下がるか、BitLocker の回復キー要求が変化するかを確認します。
Hyper‑V 関連機能を完全オフにする
Hyper‑V を GUI 上で無効にしていても、
- 仮想マシン プラットフォーム
- Windows ハイパーバイザー プラットフォーム
など、裏側でハイパーバイザーを利用する機能が残っている場合があります。まとめて無効化するには、
- 「Windows の機能の有効化または無効化」を開く
- 次のチェックを外す
- Hyper‑V
- 仮想マシン プラットフォーム
- Windows ハイパーバイザー プラットフォーム
さらに、ブート時のハイパーバイザー起動を止めるため、管理者権限のコマンドプロンプトで次を実行します。
bcdedit /set hypervisorlaunchtype off
その後、完全シャットダウン → コールドブートで挙動を確認してください。
BIOS の仮想化設定を切り替えてみる
ASUS TUF では、BIOS 設定に「SVM(AMD‑V)」「Intel VT‑x」などの仮想化項目があります。これらを一時的にオフにしてみるのも有効です。
注意:BIOS 設定を変更する前に、必ず C: ドライブの BitLocker 回復キーを控えておくことが重要です。起動構成が変わると、BitLocker が回復モードに入って起動できなくなる可能性があります。
ステップD:storport.sys から見るストレージ経路の見直し
停止コードに storport.sys が出ている場合、NVMe/SATA ドライバーや SSD ファームウェアなど、ストレージ経路に関わる部分の問題が疑われます。
NVMe/SATA コントローラー ドライバーを確認・更新
- デバイス マネージャーを開く
- 「記憶域コントローラー」や「IDE ATA/ATAPI コントローラー」「ストレージコントローラー」などを展開
- 各デバイスを右クリック > 「プロパティ」 > 「ドライバー」タブを開く
ここで、
- メーカー提供の専用ドライバー(Intel/AMD/ASMedia など)を使うか
- あえて Microsoft 標準ドライバーに戻すか
を試してみると、症状が変わる場合があります。
| 操作 | 効果のイメージ |
|---|---|
| メーカー最新版へ更新 | 既知の不具合修正・新しい Windows ビルドへの最適化 |
| Microsoft 標準ドライバーへロールバック | ASUS/チップセット固有のバグ回避・よりシンプルな経路で動作 |
SSD ファームウェアとファイルシステムをチェック
SSD メーカー(Samsung, Western Digital など)が提供しているユーティリティ(Magician、Dashboard など)があれば、
- SSD の健康状態(SMART)
- ファームウェアバージョンの更新
を確認しておきましょう。
Windows 標準のチェックとしては、管理者権限のコマンドプロンプトで次を実行します。
chkdsk /scan
起動ドライブのファイルシステムやメディアエラーがないかを、オンラインで軽く確認できます。
周辺機器をすべて外して起動してみる
意外と見落としがちなのが USB デバイスや外付け SSD/HDD です。BitLocker は起動時の構成(どのデバイスが付いているか)も測定対象になるため、
- USB メモリ
- 外付けストレージ
- USB ドングル類
をすべて外した状態でコールドブートし、
- BSOD が減るか
- BitLocker の回復キー要求が止まるか
を確認してみてください。
ステップE:BitLocker が毎回回復キーを要求する理由と直し方
毎回のように BitLocker の回復キーが出るのは、「前回起動時と今回起動時で TPM が測定した起動構成が一致していない」ことを意味します。つまり TPM や BitLocker の仕組みとしては正常に「何かおかしい」と判断している状態です。
TPM の状態を確認する
- Windowsキー + R で「ファイル名を指定して実行」を開く
tpm.mscと入力して Enter- 「TPM の状態」が「使用可能」「準備完了」など正常になっているか確認
注意:ここで「TPM のクリア」を実行すると、BitLocker の保護をすべてやり直す必要があり、データアクセスに支障が出る可能性があります。トラブルシュートの初期段階では、基本的に TPM のクリアは行わない方が安全です。
BitLocker 保護の一時停止 → 再有効化で測定値を取り直す
BitLocker の測定値を取り直すには、一度保護を一時停止し、正常に起動した状態で再有効化するのが定番の手順です。
- 管理者権限のコマンドプロンプトを開く
- 次のコマンドで C: ドライブの保護を一時停止
manage-bde -protectors -disable C:
- 完全シャットダウン
shutdown /s /t 0
- 翌朝、いつも通り起動して Windows にサインインする
- 再度、管理者権限のコマンドプロンプトを開き、保護を再有効化
manage-bde -protectors -enable C:
ここから数日、コールドブートを繰り返して、BitLocker 回復キーの要求頻度がどう変わるかを観察します。変化があれば、起動構成と BitLocker 測定値の不整合が主因だった可能性が高くなります。
ステップF:効果が高い順にドライバーをクリーン再導入
電源管理・ハイパーバイザー・ストレージ・BitLocker である程度絞り込んだあと、依然として BSOD が出る場合は、ドライバーを順番にクリーン再導入していきます。
優先度の高いドライバー
- AMD チップセットドライバー(または Intel チップセット)
ASUS TUF では、電源管理・PCIe・IOMMU など多くをチップセットドライバーが握っています。必ず公式サイトから最新版を入れ直しましょう。 - GPU ドライバー(RTX 3050 など)
Display Driver Uninstaller(DDU)などを用いてセーフモードで完全削除し、NVIDIA 公式サイトからクリーンインストールすると、BSOD が劇的に減る例があります。 - ストレージ / RAID / USB コントローラー
特に自作構成や外付けストレージを多用している場合は、ASMedia や RAID 関連ドライバーの入れ直しも検討しましょう。
1つドライバーを入れ直すごとに、完全シャットダウン → コールドブートで再現性を確認するのがポイントです。
ステップG:カーネルメモリダンプで原因ドライバーを特定する
ここまでやっても断定できない場合は、カーネルメモリダンプをきちんと取得して、WinDbg などで解析するのが最短ルートになります。
カーネルメモリダンプの設定
- Windowsキー + R で「ファイル名を指定して実行」を開く
sysdm.cplと入力し Enter- 「詳細設定」タブを開き、「起動と回復」の「設定」をクリック
- 「デバッグ情報の書き込み」で「カーネルメモリ ダンプ」を選択
- 保存先が既定の
%SystemRoot%\MEMORY.DMP(通常はC:\Windows\Memory.dmp)になっていることを確認し「OK」
この設定で、次に BSOD が起きたときに詳細なダンプが保存されます。
WinDbg で確認したいポイント
WinDbg(Microsoft Store から入る WinDbg Preview など)でメモリダンプを開き、コマンド欄に次を入力します。
!analyze -v
出力の中で、特に次の項目に注目します。
- Probably caused by:おそらく原因となったモジュール
- MODULE_NAME:問題を起こしたドライバーのモジュール名
ここに特定のドライバー名(例:nvlddmkm.sys、amdppm.sys、iaStorA.sys など)が繰り返し出ているようであれば、そのドライバーを重点的に更新・ロールバック・クリーンインストールする方針が立てやすくなります。
ステップH:最終手段として「この PC をリセット」を検討する
すべて試しても症状が改善しない場合、OS 側のどこかが深く傷んでいる可能性があります。そのときの最終手段が「この PC をリセット」です。
リセット時のポイント
- 設定 > システム > 回復 を開く
- 「この PC をリセット」をクリック
- 「個人用ファイルを保持する」を選択
(アプリや設定は消えますが、ユーザーデータは残ります) - 可能であれば「クラウドから再インストール」を選択
(ローカルの破損ファイルに引きずられにくい)
リセット前には、必ず次のものを控えておきましょう。
- インストール済みアプリの一覧
- Office や有料ソフトのプロダクトキー・アカウント情報
- ブラウザのブックマーク、パスワード(同期設定など)
- BitLocker 回復キー
ハードウェア起因の不具合でなければ、クリーンな状態に戻ることで BSOD や BitLocker 回復ループから抜けられるケースも多くあります。
よくある疑問と運用上の注意点
BitLocker はオフにしてしまってもいい?
「回復キーを毎回入れるのが面倒だから、いっそ BitLocker を無効化したい」という気持ちは分かりますが、BitLocker は紛失・盗難時のデータ保護の最後の砦です。ノート PC や持ち運び用途の多い ASUS TUF では、基本的にはオンのまま運用することを強くおすすめします。
今回の記事で紹介したように、まずは
- 高速スタートアップの無効化
- 構成の固定(周辺機器を付けっぱなしにしない など)
- BitLocker 保護の一時停止 → 再有効化
で回復キーループを解消できないかを試してみてください。
BIOS の初期化や TPM のクリアはしても大丈夫?
BIOS の初期化や TPM のクリアは、確かに「一発逆転」感がありますが、
- BitLocker が有効なすべてのドライブで回復キーが必要になる
- 場合によってはドライブにアクセスできなくなるリスクがある
といった大きなデメリットがあります。回復キーをすべて安全な場所にバックアップし、他の手段を試してもどうしてもダメなときの最終手段として考えてください。
「ログイン後は安定」なら放置してもいい?
起動さえ乗り切れば安定して使えるため、つい放置してしまいがちですが、
- 起動時の BSOD は、ファイルシステムやストレージに徐々にダメージを蓄積するリスクがある
- BitLocker 回復ループは、ある日突然「回復キーが分からないので起動不能」になる危険がある
といった問題があります。早めに原因の層を特定しておくほど、データを失わずに済む可能性が高くなります。
まとめ:原因の層ごとに順番に潰していく
ASUS TUF × Windows 11 という環境で、
- コールドブート時に BSOD が連発する
- HYPERVISOR_ERROR / IRQL_NOT_LESS_OR_EQUAL / SYSTEM_THREAD_EXCEPTION_NOT_HANDLED などが出る
- storport.sys が絡むエラーが記録されている
- 毎回 BitLocker の回復キーを要求される
といった状況は、一見バラバラのトラブルに見えますが、実際には
- 高速スタートアップを含む電源管理・ハイブリッドブート
- VBS / ハイパーバイザー / 仮想化
- ストレージドライバー / SSD ファームウェア
- BitLocker / TPM / 起動測定の整合性
- 常駐ソフト・デバイスドライバーの競合
といった複数の層が絡み合って起きていることがほとんどです。
本記事で紹介した手順のポイントをもう一度まとめると、次のようになります。
- 高速スタートアップと休止状態を無効化して、コールドブート特有かどうかを確認する
- クリーンブートで常駐ソフト・ドライバー競合を切り分ける
- VBS / メモリ整合性 / Hyper‑Vを一時的に止めて HYPERVISOR_ERROR の影響を確認する
- NVMe/SATA ドライバー・SSD ファームウェア・周辺機器を見直して storport.sys 関連を潰す
- BitLocker 保護の一時停止 → 再有効化で TPM の起動測定と整合性を取り直す
- 必要に応じてドライバーのクリーン再導入とカーネルメモリダンプの解析を行う
- どうしても直らない場合は、バックアップと回復キー確保のうえで「この PC をリセット」を検討する
一つひとつのステップは地味ですが、焦らずログを取りながら順番に試していくことで、「毎朝の BSOD と BitLocker 回復キー地獄」から抜け出せる可能性は十分にあります。この記事が、あなたの ASUS TUF と Windows 11 環境を安定させるための道しるべになれば幸いです。

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