Windows 11 24H2 への機能更新プログラムが適用できず「サービス終了」と表示されたり、インストール アシスタント/ISO での上書きインストールが100 % 完了後に失敗するという相談が急増しています。本記事では、セットアップ ログに記録される0x8007001F‑0x50016(重複ユーザープロファイル)エラーと、無効化された Microsoft Compatibility Appraiser タスクを根本から修復し、Windows Update と手動アップグレードの両方で 24H2 をインストールできるようにするまでの具体的な手順を網羅的に解説します。
症状―アップデート失敗の典型例
- Windows Update に「サービス終了」「更新プログラムは最新です」とだけ表示され、23H2/24H2 が降ってこない。
- Windows 11 インストール アシスタント、または
setup.exe
(ISO)での上書きインストールが進行率 100 % で止まり、Windows のインストールに失敗しました のポップアップが出てロールバック。 setuperr.log
内に0x8007001F‑0x50016
を確認。加えてCompatAppraiser.log
が生成されず、Task Scheduler > Microsoft > Windows > Application Experience
の Microsoft Compatibility Appraiser が無効になっている。
対策フロー全体図
以下の 4 ステップで原因を切り分け、順番に解決していきます。
- セットアップ ログでエラーの原因を確認
- レジストリをバックアップ
- 重複ユーザープロファイル SID を削除
- Compatibility Appraiser を有効化して評価を実行
最後に Windows Update または ISO でアップデートを再試行します。
手順 1 ― セットアップ ログで原因を特定
ログの一括収集
まず Microsoft 公式バッチ setuplogscollect.bat
を管理者 PowerShell で実行し、C:\$Windows.~bt\Sources\Panther\SetupLogs.zip
を生成します。ZIP を展開し、次の 2 ファイルを確認します。
setuperr.log
― エラーの要約setupact.log
― 詳細トレース
中段以降に 0x8007001F‑0x50016 :: The profile exists
の行があれば、重複プロファイル SID が原因でほぼ確定です。
Compatibility Appraiser 無効状態の判定
CompatAppraiser.log
や C:\Windows\CompatData\*
が存在しない場合、互換性評価が一度も走っていないため、Windows Update で新ビルドがホールドされ続けます。
手順 2 ― システム/レジストリの安全バックアップ
バックアップ方法 | 対象 | ポイント |
---|---|---|
Acelogix RegBak | システム & ユーザー ハイブ | GUI で日時別スナップショット 復元もダブルクリックで可 |
wbadmin start backup | OS イメージ | PowerShell から一発 外付け HDD 推奨 |
System Restore Point | システム保護 | 容量が小さく作成が速い レジストリのみ復旧時に便利 |
いずれか 1 つでも取得しておけば、レジストリ操作に失敗してもすぐ戻せます。
手順 3 ― 重複ユーザープロファイル SID を削除
レジストリエディタでの確認
regedit.exe →
HKEYLOCALMACHINE\
SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\ProfileList
サブキー名は S‑1‑5‑21‑XXXXXXXXX‑XXXXXXXXX‑XXXXXXXXX‑1001
のように SID 形式で並びます。同一ユーザーが複数回ログオンに失敗すると、末尾に -1003
や -1005
などが付いた複製 SIDが生成され、OS セットアップが「重複」と判断して停止します。
削除手順
- 削除対象 SID の
ProfileImagePath
を確認し、同一ユーザーの古いパス(たとえばC:\Users\Temp.MACHINE
)を特定。 - 右クリック → 削除。念のため該当ユーザーフォルダもエクスプローラーでリネーム or 削除。
- レジストリを閉じて PC を再起動。
SID サフィックスと推奨アクション早見表
末尾 | 生成原因 | 対処 |
---|---|---|
-1001 | 標準ユーザー 1 人目 | 残す |
-1003 | 一時プロファイル | 削除 |
-1005 | ドメイン再登録 | 環境次第で削除 |
手順 4 ― Microsoft Compatibility Appraiser を正常化
タスクスケジューラから手動で有効化
taskschd.msc
→ Microsoft › Windows › Application Experience- Microsoft Compatibility Appraiser を右クリック → 有効 → 実行
実行完了まで数分。ログオフや再起動で強制終了させないよう注意します。
コマンドラインで強制実行
CompatTelRunner.exe -m:appraiser.dll -f:DoScheduledTelemetryRun
「コマンド実行後ほぼ沈黙」という仕様ですが問題ありません。完了すると C:\Windows\CompatData
に数百 MB の JSON と XML が生成されます。
タスク XML を正常な PC から再インポート
何らかのツールが勝手にタスク内容を sc.exe start InventorySvc
に書き換えているケースがあります。その場合は:
- 正常な PC で該当タスクをエクスポート(右クリック → エクスポート)
- 問題の PC 側で同名タスクを削除し、XML を インポート
手順 5 ― 24H2 の再インストール
Windows Update からの適用
- Compatibility Appraiser が正常に走ると、およそ 24 〜 48 時間後に 機能更新プログラム 23H2/24H2 が表示されます。
- 非表示のままなら、「更新プログラムのチェック」を数回手動実行。
ISO/インストール アシスタントでの上書き
ホールドが外れていれば、ISO でも互換性チェックが通過し、そのまま「個人用ファイルとアプリを保持」インストールが成功します。必ずダウンロード直後の ISO を使い、setup.exe
はエクスプローラーで右クリック → 管理者として実行してください。
トラブルシューティング補足テクニック
DISM & SFC によるコンポーネント修復
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
sfc /scannow
イメージ破損で error 0x800f081f
が出ていると、アップグレード途中で別のエラーに化けることがあります。手順 1~4 を実施する前に実行しておくと二度手間を防げます。
隠れた互換性ブロッカーを探す
- 古い仮想化ドライバー(VMware 10.x 以前 / VirtualBox 5.x 以前)
- RSAT 2016 のような旧版管理ツール
- 改変 BIOS(メーカー非公式 TPM エミュレーション等)
これらがあると Appraiser が “Device not eligible” と判断し、再び WU がスキップされます。最新版へ更新またはアンインストールしてから評価を再実行してください。
よくある質問 (FAQ)
Q. 0x8007001F と 0xC1900101 の違いは?
A. 前者は ファイル転送 層での汎用 I/O エラー、後者は ドライバ 障害の総称です。今回の -0x50016 サフィックスは「ユーザープロファイル重複」を示す追加情報になります。
Q. Appraiser を無効にしたまま ISO だけで更新できない?
A. 24H2 以降のセットアップは互換性チェックの一部を ISO 内の appraiserres.dll
に委任しています。Appraiser を無効にしても最終段階で同様の検証が走るため、結果として失敗する可能性が高いです。
Q. ドメイン環境でも同じ手順で良い?
A. SID の管理に加え、Group Policy > Windows Update > Select the target Feature Update version
が固定されていないか確認してください。互換性評価を無効化する GPO が入っている場合は併せて解除が必要です。
まとめ ― 根本原因を解消してからアップデートを成功させる
Windows 11 24H2 へアップグレードできない場合、重複ユーザープロファイルと Compatibility Appraiser の無効化が 2 大ボトルネックです。この記事のフローで SID 整理 → Appraiser 復旧 → Windows Update/ISO 再実行と進めれば、高確率でエラー 0x8007001F‑0x50016 を解消し、次回以降の機能更新も自動で受信できるようになります。
アップグレードに成功したら、最後に不要になった古いユーザーフォルダを削除し、ディスククリーンアップから「Windows アップグレードログファイル」を整理しておくと、ストレージを最適化できます。
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