Windows 11へアップグレード後、起動直後やスリープ復帰直後にCPU温度が95℃超まで跳ね上がり、数分ファン全開になる――Ryzen 7000+AIO水冷で起きやすいこの症状を、原因の切り分けからBIOS/ドライバ/電源設定の実務的対処までまとめます。
症状の特徴:Windows 10では出ないのにWindows 11だけで発生
今回のような「起動直後/スリープ復帰直後だけ異常に熱くなる」ケースは、負荷の高いゲームやベンチでは安定しているのに、OSの立ち上がり局面だけ挙動が崩れます。ポイントは“短時間の高温”そのものではなく、“高温が数分続く”こと、そして“復帰直後のみ”である点です。
- 初回起動直後またはスリープ復帰直後に、ファンが全開&CPU温度が95℃(熱限界付近)に張り付く(数分)
- しばらくすると一気に33〜37℃へ戻り、その後は安定
- ゲーム/CPU-Z等の負荷では68〜71℃程度で安定(冷却能力は足りているように見える)
- BIOS画面では正常(OS起因の可能性が濃い)
- まれに復帰直後0.4〜0.5GHzまでクロック低下し操作が重い(スロットリング/電源管理の乱れ)
- 対処でiGPU無効化やサーマルリミット75℃で改善 → その後スリープ復帰時だけ断続的に再発
- 再発時にAIOから「流水音」がして直後に温度正常化(循環再開を強く示唆)
| 挙動 | 判断の目安 | 次にやるべきこと |
|---|---|---|
| 起動/復帰直後に一瞬だけ温度が上がり、すぐ下がる | Windows初期化・バックグラウンド処理の範囲で起こり得る | まずはログを取り、再現性が低ければ様子見 |
| 95℃付近に張り付きが数分続く | 冷却が追いついていない/制御が破綻している可能性 | ポンプ給電/制御、iGPU/ドライバ、自動OC、スリープ方式を優先確認 |
| 復帰直後だけクロックが0.4〜0.5GHzまで落ちる | 熱・電力・ドライバが絡む保護動作の疑い | 温度だけでなくPPT/TDC/EDCやイベントログも見る |
まず押さえる前提:Ryzen 7000は高温に見えやすい
Ryzen 7000(例:Ryzen 5 7600)は、ブースト動作の都合で温度が上がりやすく「高温=即故障」とは限りません。とはいえ今回の“起動/復帰直後のみ95℃張り付きが数分”は、単なるブーストの範囲を超えている可能性が高いです。特に流水音の直後に急に正常に戻るという情報は、冷却水の循環が復帰直後に遅れている状況と整合します。
原因の見立て(優先度順)
実務上は「最短で再発率を落とす設定」に寄せつつ、ログと切り分けで人的時間を節約するのが得策です。
| 優先 | 原因候補 | 起きる理由 | 見分け方(簡易) |
|---|---|---|---|
| 1 | iGPUとWindows 11のドライバ競合(dGPU併用) | 復帰直後にグラフィック/電源周りの初期化が重なり、負荷や制御が乱れる | iGPU無効化で改善した事実が強い根拠。DDU後にdGPUのみで安定するか |
| 2 | AI OC/自動最適化がPBOや電力制御と干渉 | 復帰直後はセンサー/制御が立ち上がる局面。自動最適化が過敏に反応しやすい | AI系を完全OFF+PBO Auto/ECOで再現率が落ちるか |
| 3 | AIOポンプの復帰時初期化遅延 | 復帰直後に給電や制御が遅れ、循環が止まり温度が暴騰。循環開始で急落 | 復帰直後のポンプ挙動ログ、別ヘッダ/常時100%固定で改善するか |
| 4 | スリープ方式(S0/S3)や電源管理のバグ/相性 | デバイス復帰順序や電源復帰のタイミング依存で、特定環境だけ破綻する | スリープ無効→休止に切替で収まるなら濃厚 |
| 5 | マザーのポンプ制御回路 or AIO本体の断続的不良 | ヘッダ・ケーブル・ポンプ側の個体差で断続的に循環が遅れる | 空冷で再現しない/別ヘッダでも出る/別PCでも出るならRMA検討 |
最短で効く対処:再発率を下げる「4本柱」
根本原因の追跡より先に、まずは熱暴走を止める設定へ寄せるのが安全です。以下は「少ない変更で効果が出やすい順」です。
- iGPUを無効化してdGPU(RTX 3060)単独運用にする
- AI OC/自動最適化を完全に切る(DOCP以外を盛らない)
- AIOポンプを常時100%(フルスピード固定)にする
- スリープを避け、休止(ハイバネーション)へ切り替える
BIOS(UEFI)でやること
ASUS TUF X670E-PLUSのようなAM5環境では、BIOS側の自動制御が便利な反面、OS復帰直後の“過渡状態”で不安定さが出ると厄介です。まずは“素の状態”に戻して安定点を作るのが近道です。
iGPU無効化(優先)
- Primary Display:PCIe(dGPU優先)
- Integrated Graphics:Disabled(iGPU無効)
メニュー名はBIOSバージョンで前後しますが、概ねAdvanced → NB Configuration周辺にあります。iGPUを使わない運用なら、まずここを固めます。
AI OC/AI Optimizerを無効化(優先)
自動OCは便利ですが、復帰直後のセンサー/制御初期化と相性が悪いと“暴れる”ことがあります。
- AI Optimizer / AI Overclocking:Disabled
- ASUS系の最適化(Performance Enhancement等):Disabled/Auto(盛らない)
- AI Overclock Tuner:DOCP(EXPO/XMP相当)のみ
PBOはAutoまたはECOで様子見
「普段は問題ないが、復帰直後だけ制御が乱れる」場合、PBOで電力上限が広いほど熱の跳ね方が派手になります。まずはAuto、それでも気になるならECOモードで安定性を取りにいくのが実務的です。
AIOポンプは常時フルスピード固定
復帰直後の循環遅延が疑われるなら、ここが最重要です。
- AIO_PUMPヘッダにポンプを接続(推奨)
- CPU_FANにはラジエーターファン(回転監視対象)を接続
- Q-Fan制御:AIO_PUMPを100%固定(PWMならDuty 100%)
表示上2000rpmでも、実際の循環が遅れている/気泡で空転気味、というケースがあります。復帰直後の“挙動”をログで確認すると判断が速いです。
暫定の保護:サーマルリミットを低めに設定
どうしても再発を止めたい間は、Platform Thermal Throttle Limitを低め(例:75℃)にして保護するのは有効です。ただしこれは“症状を抑える”方向の手段なので、根本が解消したら適正値(既定付近)に戻す運用が安全です。
| 設定項目 | 推奨 | 狙い | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Integrated Graphics | Disabled | iGPUドライバ/復帰初期化の競合を排除 | iGPU出力は使えなくなる |
| AI Optimizer / AI OC | Disabled | 復帰直後の自動制御の暴れを回避 | OC自動最適化は使えない |
| PBO | Auto / ECO | 電力上限を穏やかにし温度の跳ねを抑制 | 性能が僅かに下がる場合あり |
| AIO_PUMP Q-Fan | 100%固定 | 循環遅延の可能性を潰す | 静音性より安定性優先 |
| Thermal Throttle Limit | 暫定で低め | 熱暴走の被害を止める | 根本解決後は戻す |
ドライバの整理:iGPUとAdrenalin周りを「残さない」
「iGPU無効化で一度解消した」という経過がある以上、Windows 11上での表示ドライバの組み合わせがトリガーになっている可能性は高めです。ここは“中途半端に残さない”のがコツです。
おすすめ手順(dGPUだけで運用する前提)
- (可能なら)ネットワークを一時的に切る/自動ドライバ適用を避ける
- セーフモードで起動
- DDU等でAMDのディスプレイドライバ(Adrenalin/iGPU関連)をクリーン削除
- 通常起動に戻す
- NVIDIA(RTX 3060)ドライバを最新で導入
- AMDチップセットドライバは最新をクリーン再インストール(表示ドライバとは分けて考える)
ポイントは、「AMD=全部消す」ではないことです。AM5環境ではチップセットドライバは安定性にも関わるため、表示(iGPU)だけ排除し、チップセットは最新で整えるのが現実解になりやすいです。
| 対象 | やること | 狙い |
|---|---|---|
| AMD Adrenalin / iGPU表示ドライバ | 完全削除(DDU推奨) | 復帰直後のドライバ初期化競合を排除 |
| NVIDIAドライバ | 最新版導入 | dGPU単独の安定動作に寄せる |
| AMDチップセットドライバ | 最新を再導入 | 電源管理/USB/PCIe周りの相性改善を狙う |
Windows 11の電源設定:スリープ復帰トラブルを避ける
断続的に再発する、しかも「スリープ復帰時だけ」という状況では、スリープ復帰というイベント自体を避けるのが最も手堅い対処です。特にPCを日常運用で使う人ほど、原因追跡より先に事故確率をゼロに近づける価値があります。
不具合が落ち着くまでの推奨運用
- スリープ:無効
- 休止(ハイバネーション):有効
- 普段は「画面オフ+ロック」、離席が長いなら「休止」
- 高速スタートアップは無効のままでOK(再現性の揺らぎを減らす)
スリープ状態の確認(コマンド)
管理者権限のコマンドプロンプト/PowerShellで、次を実行すると利用可能なスリープ方式が分かります。
powercfg /a
ここで表示される内容によっては、OS/BIOS/デバイス構成がS0(Modern Standby相当)寄りになっている場合もあります。いずれにせよ、再発がスリープ復帰に紐づくなら、休止に寄せるだけで実害を止められるケースが多いです。
電源プランの基本(今回の症状に合わせた無難な値)
- プロセッサの最小:5%
- プロセッサの最大:100%
このあたりは既に試されている通り、決定打にならないこともあります。ただ、切り分け中に極端な設定が混ざるとログ解釈が難しくなるので、土台は標準寄りにしておくと得です。
切り分けテスト:ソフト/設定か、ハードかを一気に分ける
今回の構成(ASUS TUF X670E-PLUS / Ryzen 5 7600 / 240mm AIO / RTX 3060)で、ゲーム中は68〜71℃で安定している以上、冷却能力は“だいたい”足りています。問題は復帰直後の一瞬に冷却/制御が追いつかないこと。ここを短時間で判定するテストを並べます。
OSを変えてスリープ復帰だけ反復する
- 予備SSDにWindows 10、またはLinuxを入れる
- 「スリープ → 復帰」を10回程度繰り返す
これで再現しなければ、ハード故障よりもWindows 11+ドライバ+BIOS(AGESA)の組み合わせ依存が濃厚になります。逆にOSを変えても出るなら、ポンプ/ヘッダ/配線などハード側へ寄せて考えやすくなります。
AIO配線/ヘッダを変える(ポンプ遅延の切り分け)
- ポンプをAIO_PUMP → 別ヘッダへ一時的に挿し替え(制御方式の影響を切る)
- 可能なら、ポンプ電源がSATA給電タイプの場合は給電経路も見直す
「ヘッダを変えると再発率が変わる」なら、制御/給電のタイミングが絡んでいる可能性が上がります。
空冷クーラーへ一時換装(最も強い判定)
手間は増えますが、AIO由来かどうかを最短で分けられます。空冷で復帰直後に95℃張り付きが起きないなら、AIOポンプの復帰遅延/断続的不良に傾きます。
ログの取り方:復帰直後に何が起きたかを“証拠化”する
断続的な症状ほど、主観では原因が迷子になります。HWiNFOのログとイベントビューアをセットで使うと強いです。
HWiNFOで記録したい項目
- CPU温度(Tctl/Tdie、CPU Package)
- CPUクロック(Core Effective Clockがあると便利)
- CPU電力(Package Power、PPT/TDC/EDC)
- ポンプ回転数(AIO_PUMPのRPM)
- CPUファン回転数
- (あれば)Coolant温度
ログの読み方(ざっくり指針)
| ログの形 | 起きていることの推測 | 次の打ち手 |
|---|---|---|
| 復帰直後にCPU電力(PPT)が高い+温度も高い | 復帰直後のバックグラウンド処理/ドライバ初期化で負荷が上がっている | iGPU/ドライバ整理、AI OC OFF、PBO Auto/ECO |
| CPU電力が低いのに温度だけ95℃に張り付く | 冷却が機能していない(循環遅延・ポンプ不調・密着不良) | ポンプ100%固定、配線/ヘッダ変更、空冷換装で判定 |
| ポンプRPMは一定だが、流水音の後に温度が急落 | RPM表示と実流量が一致していない可能性(気泡/空転/制御タイミング) | スリープ回避、RMAも視野に入れて証拠を集める |
イベントビューアで見るポイント
- 「Windowsログ → システム」
- Kernel-Power(復帰のタイミング、異常終了の痕跡)
- 復帰直後に特定ドライバがエラー/再初期化していないか
ログは「再発した回」だけでなく、再発しなかった回も保存すると差分が見えて判断が速くなります。
それでも解決しない場合:ハード不良を疑う基準
設定とドライバを整えても再発し、特に流水音→急に正常化が繰り返される場合は、ハード側の断続的な問題も現実的です。
AIO本体で起こり得ること
- ポンプの立ち上がりが不安定(復帰直後に回り始めが遅い)
- 微細な気泡が循環を邪魔し、あるタイミングで“抜ける”
- 内部抵抗の変化で実流量が落ちる(RPM表示は出ているのに冷えない)
マザーボード側で起こり得ること
- 特定ヘッダの制御/給電が復帰直後に不安定
- USB/監視系の立ち上がり順でポンプ制御が遅れる(AIOがUSB制御タイプの場合に起こりやすい)
RMA/相談時に用意すると強い材料
- 再発時のHWiNFOログ(温度・電力・ポンプRPMの時系列)
- イベントビューアの該当時刻の記録
- 「スリープ復帰で高温張り付き → 流水音 → 正常化」という再現シナリオ
- 別OS/別ヘッダ/空冷での再現性の有無
再発防止のための運用Tips(現実的に効くものだけ)
- 原因が固まるまではスリープより休止(PC用途によっては総合的に安定)
- “自動最適化で盛る”より、Auto/ECOで熱と挙動を穏やかにする
- BIOS更新後は一度設定を最小限(DOCPのみ)で再構築する(古い設定の持ち越しを避ける)
- 配線は念のため再点検(EPS/CPU補助電源、ポンプ/ファンのヘッダ差し間違い、分岐の過多)
現場で使えるチェックリスト
- ☐ BIOS:内蔵GPU無効/Primary Display=PCIe
- ☐ BIOS:AI OC/AI Optimizer無効、AI Overclock Tuner=DOCPのみ
- ☐ BIOS:PBO=Auto or ECO(任意でPPTを軽く制限)
- ☐ BIOS:AIO_PUMP=常時100%固定、接続端子(AIO_PUMP/CPU_FAN)を再確認
- ☐ Windows:スリープ無効→休止へ、高速スタートアップ無効
- ☐ ドライバ:iGPU関連を完全削除(DDU等)、NVIDIAのみ運用、チップセットは最新
- ☐ 記録:HWiNFOログ+イベントビューアで復帰直後の挙動を保存
- ☐ 切り分け:別OS/別ヘッダ/空冷で再現性を比較
- ☐ 収束しない:AIOまたはマザーのハード不良も視野に入れてRMA検討
まとめ:本質は「復帰直後だけ冷却と制御が噛み合わない」
Windows 11への移行後にだけ、起動直後/スリープ復帰直後にCPU温度が95℃超へ張り付く場合、疑うべきは恒常的な冷却不足よりも、復帰直後の過渡状態での“競合”や“初期化遅延”です。特に今回のように、iGPU無効化で改善した経過と、流水音の直後に温度が正常化する挙動があるなら、
- iGPU(内蔵GPU)とドライバの相性
- 自動OC(AI OC/AI Optimizer)と電力制御
- AIOポンプの復帰時循環遅延
この3つが最優先の当たり所になります。安全側の運用としては、iGPU無効+AI OC無効+ポンプ100%固定+スリープ回避(休止へ)を軸に、ログで“どれが効いたか”を確定させるのが、最短で安定へ持ち込むルートです。

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